消火作業が続けられた住宅火災の現場=21日午後7時11分、愛知県新城市大宮
21日午後4時ごろ、愛知県新城市大宮の会社員瀧川康男さん(58)方から出火、木造2階建ての住宅430平方メートルが全焼した。現場から2遺体が発見された。瀧川さんの母フミさん(81)と、孫で保育園児の稀良斗(きらと)ちゃん(5)が火事に巻き込まれており、1遺体は稀良斗ちゃんと確認された。新城署は、もう1遺体はフミさんとみて確認を急いでいる。
同署によると、瀧川さん方は4世代8人が同居。稀良斗ちゃんを連れて母親の由美子さん(33)が保育園から帰宅したところ、玄関近くのパソコンなどがある3畳間から出火しているのに気づいた。出火当時、家族4人が家の中にいたが、由美子さんの呼びかけで、フミさんらはいったん家の外に逃げた。しかし、インフルエンザのため2階で寝ていた稀良斗ちゃんの兄(8)=小学2年=を助けようと、フミさんは再び家の中に戻り、稀良斗ちゃんはフミさんの後を追って家の中に入ったという。由美子さんは「一瞬のことで止められなかった」と話しているという。1階居間付近で2遺体は折り重なるようにして見つかった。
稀良斗ちゃんと同じ保育園に子どもが通う近所の女性によると、由美子さんは最初バケツに水をくんで火を消そうとしたが、火の勢いが増したため、家族に「逃げて」と叫んだという。稀良斗ちゃんの兄は2階から飛び降りたらしい。フミさんは、由美子さんの都合が悪いときに、稀良斗ちゃんの送り迎えをしていた。稀良斗ちゃんはフミさんを「ばあちゃん」と呼び、よくなついていたという。女性は「保育園で、また明日ね、と別れたばかりなのに」と涙ぐんだ。
近所の男性(61)によると火の回りが早く、火柱が窓から噴き出して、消火は消防隊に任せるしかなかったという。家族はぼうぜんと消火活動を見つめ、由美子さんはしゃがみこんで泣きじゃくっていたという。男性は「あまりにかわいそうで、かける言葉もみつからなかった」と話した。
現場は市の中心部から北東に約3キロ。田畑の中に民家が点在している。
地元の区長(65)によると、フミさんは腰も曲がらず元気だった。2人のひ孫を連れてよく農作業に出かけ、ひ孫たちは畑の周りで遊んでいたという。