2009/01/07
甘利行革担当大臣へ申し入れ
 
内閣府特命担当大臣 (規制改革)
行政改革担当・公務員制度改革担当
甘利 明殿

 現下の官僚内閣制においては、総理大臣及び府省等大臣は誰が就いてもよろしく、官僚主導の政(まつりごと)及び政策さえ実行できれば、それでよしという慣習・風潮があり、「国民の雇い、官吏」としての使命・責任を忘れた官僚の驕り高ぶりを蔓延させている。

 このような状況下において、昨年末、世情等の混乱の隙をみて、脱兎のごとく「天下り関連政令」を閣議決定させた。このことは、麻生内閣が霞ヶ関守旧派の代弁者、行政改革の抵抗勢力であることを国民に意識づけさせたと思料する。

 就中、再就職等監視委員会の委員が任命されなければ不可能になる今後3年間の各省天下り斡旋を、「総理の承認」において行えるようにしたこと、今まで密かにやってきた「渡り斡旋」を是認したこと、などは党行革本部の平場の議論などまったくなされず決定された言語道断の暴挙である。これらのことは「天下りを根絶すべし」という国民の声を完全に無視したことになるといえまいか。

 さらに、内閣人事局にかかる人事制度改革も中身が見えてこないのも異常事態である。年功序列の固定身分制で降格・減給もクビもない制度の延長上に天下りがある。民間が大不況の中でもがき苦しんでいる状況下において、公務員のみ労働基本権の制限や身分保障にアグラをかいた仕組みの給与法に守られ、ボーナスのカットすらできない。公正中立の旗をかなぐり捨て、総理や大臣の言うことも聞かない、国民の利益よりも省益の死守に走る曲学阿世の徒といえるだろう。

 このような状況を打開するためには、まず第一に、消費税を上げる前に公務員給与のカットを行うことが先決である。内閣人事局の設置は、任用制度や給与制度の改革とセットでなければならないのに、その政治意思も伝わってこないのは、官僚主導体制を容認していると思わざるを得ない。

 また、無駄遣いのシンボルである雇用能力開発機構は福田内閣当時、廃止・解体・整理が決められた。しかし、麻生内閣においては、高齢・障害者雇用支援機構との統合という手段によってカンバンの架け替えにすらなっていない温存がはかられた。消費税増税の前に徹底した行政改革を行う方針ではなかったのか。

 このように、行政改革ひとつをとってみても政策実行の後退・転換がみえることは、改革に期待を寄せる国民の声に反することにはならないのだろうか。

 このような内閣ならば、現下の100年に一度の大津波に際して必要な、100年に一度の危機管理プランも作れない内閣といわれても致し方ないといえよう。100年に一度の危機には、それに備えた政治体制をもって実行に当たらなければならない。

 危機に臨んでこそ政治家の真価は問われるのである。今こそ為政者は党利党略を排し、至醇な熱烈な情緒と精神をもって、国家と国民のために命を燃やす時である。日本はひとつ。

 為政者が確乎たる主義・信念に基づいた政策によって政治を動かさぬ限り国家国民は崩壊の危機を免れない。私は政治生命を賭して甘利大臣に申し入れする。

1.今国会における内閣人事局関連法案の中に、任用・給与制度改革法を入れること。給与法改正を行い、国家公務員人件費を来年度よりカット(目標2割)すべきである。

2.各省による天下り斡旋の総理による承認と、渡り斡旋を容認した政令等を撤回すべきである。雇用能力開発機構を統合する閣議決定を撤回し、福田内閣当時の廃止・解体・整理の方針にそって決定し直すべきである。

 以上の提言を速やかかつ真摯に審議実行いただきたい。すでに閣議決定されたからとか、合意形成されたものであるからという理由だけでは、国民は納得しないであろう。甘利大臣の為政者としての真摯な対応を期待するものである。

平成21年 1月 7日
衆議院議員 渡辺喜美