Winnyの将来展望について(2003/10/10)


1.はじめに

 ここのところバージョンアップ無しですいません。いろいろ首突っ込んでいるので忙しいのと、ここのところ疲れ気味なのと、別に考えているのがあるのと、現状のWinnyであまりやりたいネタが無いということでWinnyの方は放置になってます。

 アイデアの方はいろいろと出るのですが、根性なしで手の方が動かないのでとりあえずネタだけ表に出しときます。


2.Winnyの今後

 BBSに関しては、クラスタ化よりはやはり先に読み書きの安定化だろうと思ってます。クラスタ化はもっと参加者が増えて全キーが一つのノード内で保持しきれなくなるほどにならないと、そもそも導入の必要がありません。

 これに関して良く出てくる案としてBBSキャッシュへの書込みを許す(つまりBBSノードが落ちても書き込めるようにする)というのがあるのですが、これをやるためにはその前にスレ管理の問題から認証部分をもっと強化する必要があり、すると現行の弱々なトリップ認証部の手直しが必要になる、と連鎖的に解決すべき問題が発生して面倒なので現在放置状態になってます。

 まぁこれは認証キー長をもっと長くすれば良いだけなんですが、実際にやろうとしてみると今度はBBS閲覧時などの処理時間的問題や通信量増大などの問題が出てきます。トリップの強化だけならどうにかなりそうなのでやる予定ではありますが。


3. BBSの安定化

 そもそもBBS書込み先を分散させる方式は私の方では失敗する(書込みロストとのトレードオフになるので別の問題が生じる)と思っているのであまりやる気がでないというのもあります。安定させるだけならもっとよさそうな案もあるのですが、これをやるぐらいならP2P-BBSだけ独立で一から作り直した方が早いかもと。

 一応この案を書いておくと、安定したBBS読み書きノードを確保したければ、各自のプロバイダの鯖の方に普通にBBSを作って、他からこれにリンクを張るシステムを作ることで、より分散的だけど見かけ上2ちゃんのような大きなBBSになるんじゃないのか?という案です。これはプロバイダの鯖を常に立ち上がってるBBSノードの一種として見なすということでもあります。

 ピアのダウンを自由に許す条件下だとP2P型BBSは安定させるのが思ったより難しいみたいなので、2ちゃんの代わりというだけならこの方式の方が手っ取り早い気がします。

 とりあえず上の案で作るのはそんなに難しくないと思いますので、やる気のある方はチャレンジしてみてはどうでしょうか?

 たとえば一番簡単そうなのは、各個人で立ち上げたBBSへのリンクを自由に登録して全体で大きなBBSに見せるBBS登録サイトを作るということです。このままでは匿名性に問題ありますが、ノード維持側の匿名性に関してだけなら今のWinnyBBSと本質的には変わらないでしょう。ピアの維持もそれほど必要にならないので、これならWinnyBBSのようにファイル共有システムの機能を持たないでも成り立つはずです。それぞれのスレッドの管理はWinnyのBBSの様に各BBS管理者に任せることになるでしょう。

 ただこれだけだと、安定しているのはいいけど匿名BBSじゃないとか、スレ一覧でどこに書込みがあったのかBBSスキャンする必要があるだとか、解決すべき問題点は多いと思いますが。


4. コンテンツ提供者側の集金問題

 話変わりますが、最近私の方ではコンテンツ流通側とは逆側のコンテンツ提供者側に関するシステムについて考えてることが多いです(コンテンツ提供者向けのシステムであって、よくあるようなコンテンツの保護技術に興味があるわけではないので注意)

 そもそも私がファイル共有ソフトに興味を持ったのは、当時ファイル共有ソフト使用ユーザーから逮捕者が出たということ(これは明らかに変だと思った)というのもありましたが、どうやったらコンテンツ作成側にちゃんとお金が集まるのか?ということに、もともと興味があったからです。

 インターネットの一般への普及の結果、従来のパッケージベースのデジタルコンテンツビジネスモデルはすでに時代遅れであって、インターネットそのものを使用禁止にでもしない限りユーザー間の自由な情報のやりとりを保護する技術の方が最終的に勝利してしまうだろうと前々から思ってました。そしてFreenetを知って、もはやこの流れは止められないだろうと。

 まぁそう考えて2ちゃんの某スレで書いたは良いが、冷静に考えるとJavaで書かれているFreenetそれ自体はどうやっても実用的でなく、一般に広まらないだろうということで、衝動的に設計部分から煮詰めなおしてWinny作ってしまいましたが(私はJava信じない派)

 ここで私はこういうFreenet的なP2P技術が本質的にインターネットの世界では排除不可能と考えていますし、その事実が認知されていけば必ず自然に別のビジネスモデルが立ち上がってデジタルコンテンツ流通のパラダイムシフトが起こるだろうと考えていました。もしこの問題がクリアできなければインターネットそのものを学者などだけへの許可制にして一般では使用禁止にするしかないだろうとも。よってこれが将来インターネットでキーになる技術であろうと。

 ということで、コピーフリーでも成り立つコンテンツへの課金システムという方面で何か新しい流れが出るだろうと期待して待っているわけですが、どうも一向に出る気配がないですねぇ。


5. コピーフリーでも成り立つコンテンツ製作者側の集金モデル

 では、何かこれでうまくいくものがあるのか?というと、私の方では確実にあると思ってます。私の方でも現実的でないものを入れれば4つか5つは思いつきます。

 いくつか書いてみると、まず性善説を信じて単純に

カンパに頼る

というのがありますがこれは現在のシェアウェアの課金システムと同じであまり現実的ではないでしょう。何かメリットがなければタダですむところにお金は出さないでしょうから。

 あと2ちゃんで前にも書きましたが別の案として

「インターネットプロバイダ側で強制的にコンテンツ代金を一定額徴収してしまう(もしくは文化税的税金方式)」

というのもあります。この方式はISPや回線事業者の方々に検討してみて頂きたいモデルではありますが、ただこれはちと後ろ向きでしょう。どんなにコンテンツに人気が出てもそれほどお金が集まりませんし、それに誰がどういう基準でそれを分配するのかという大きな問題が残ります。

 ということでもっと積極的にお金が流れるモデルというのが理想ですが、こちらで思いつくものでこれに相当するのは、

「現在の株のシステムに近いもの」

です。例としてもう少し詳しく書くとこんなシステム→デジタル証券システム

 インターネットオークションやシェアウェアの課金システムに似た部分もありますが、現在の株式のシステムをより簡略化しデジタルコンテンツ向けにしたシステムです。こういうのはインターネットオークションやシェアウェアの課金システムなどをやっている方々に検討してほしいモデルですが、ビジネス的にはデジタル証券の認証サーバーを用意するだけですので鯖さえ確保できれば誰でも始められるサービスなのではないかと。

 良く考えれば分かりますが、コンテンツを見ている方が積極的にそれにお金を出したくなれば良いわけです。それなら、ユーザー側にコンテンツを見抜く目があればユーザー側にも見返りがあるようなモデルにすれば積極的にお金は集まるはずですし、コンテンツ供給側にその一部でもリターンされればコンテンツはコピーフリーでもかまわないはずです。現状でもコンテンツ制作側には一部しかお金が戻ってきていません。

 そもそも現在のコンテンツ流通の根本的な問題点はコピーやその配信にあるのではなく、前にも書きましたが、情報はタダが当たり前というインターネット世界における集金モデルの不備でしょう。既出の情報は共有前提でタダが基本というインターネットの世界において、すでにタダ扱いになっている箇所で昔のモデルに基づいてお金を取ろうとしているので現状矛盾が生じているのではないかと。既出の情報はタダでも、将来出てくる情報とその可能性でお金が取れるはずです。こういう可能性を無視してP2P技術そのものを悪と決め付けて排除しようとすると最終的にインターネット技術そのものの排除につながるでしょう。


6. 最後に

 ということで、他にも案はたくさんあるとは思いますが、とりあえずファイル共有ソフト(というかインターネットそのもの)による自由なコンテンツ流通とコンテンツ制作側の利益確保とは矛盾しないものだと思います。問題はこれが可能なのにこれをやろうとしないで思考停止していることではないのでしょうか?とりあえず後ろばかり向いていても先に進まないと思いますので、やる気のある方はこういうシステムを考えてみてください。

 なお、こんなこと考えているので放置になってますがWinnyもちまちまとバージョンアップしていく予定ですのでそちらは気長にお待ちください。とりあえずファイル共有側も含めてトリップ認証周辺は変えたいところです。


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