2009-01-21
研修という名の社畜養成機関
確かに、研修は一種の社畜を養成するのにも役立ってしまってるよな。
http://d.hatena.ne.jp/yellowbell/20090120
「性行為に対する個人の思想信条を衆目の場で吐露せざるをえない研修内容について、研修が参加者に対して強制性を伴っている以上はセクハラに該当する」というご意見は一般的に見ても当然かと思います。
対して、「参加者には正解を求めていないのであるから、性行為に対する個人の思想信条を隠して仮面の人格で議論することも、また沈黙することも個人的判断で可能である以上は、研修の必然的な*1内容として許容範囲である」とするid:takerunbaさんのご意見*2ももっともかと思います。
研修の必然的な内容ではないと思うけどな。あの議論は。そんでもって、進め方にも問題はある。正解がない話にかかわらず、特定の答えもった奴が別の答え持ってる奴を論破するんじゃ集団思考停止大会としか見えない。
あえて言うなら、組織的レイヤー(観察者視点)で語るべき話であるなら、最初からその前提を提示すべきだったかもしれません。「これは純粋に研修についてのテクニカルな話題なので、当事者として読むと問題の多い記述が含まれます」とか、「参加者の不快感に対しては誠意ある対応を取るように準備した上での研修であったはずです」とか、そういった企業研修で当然プロの研修講師さんがなされているような配慮をエクスキューズしておくのがよかったのかもしれません。
散々ビジネスについて偉いこと言っときながら、そこらへんができてなかったのも叩かれる原因なのかもな。
これ、めちゃくちゃ多い。てか、新人研修のDQNぶりをわざわざ晒してる企業もある。
こいつなんかめちゃ有名だな。
http://www.e-classis.co.jp/recruit_08camp.html
http://blog.fideli.com/recruit/category_3/
・・・見てて頭がクラクラするというか、研修成績悪い奴は夕食、風呂なしだもんな。てか、別世界だわ。穴掘り研修だもんな。俺だったらばっくれる。「穴掘るんだったら違う穴掘ったほうがいい」って。
俺がいたS急便もかなり体育会系の研修だったけど、そこまで滅茶苦茶じゃなかったな。
これらは、企業の日常業務では到底ありえないような行為が、教育・研修という大義名分で行われてはいないか?という疑問の一例です。
ここのところは、労働組合も、企業労務も本来充分注意を払う必要がある部分です。
ともすれば、外注研修講師さんに丸投げし信用してしまうことが多いので、その研修の中で行われている理不尽に光が当たらないことがままあるからです。
当然注意すべきというか、本来、研修のカリキュラム作ったりするのって、労務担当の仕事だろ。丸投げだったらどうしようもない。そんでもって、研修の中身の監督は、企業側の責任だ。
ところが、上記のような疑問があったときに返してしまいがちな言葉があります。
「お客さんはもっと厳しいからねえ」
まあ、こういう言葉吐く奴に限って客とまともに接したことがないということが多い。厳しさの方向性が全然違うわけで。まともな客が要求する厳しさって「信義則」に対する厳しさなんだよな。
「それを乗り越えるから研修でしょう。いやなことをやらない研修なら、やる価値はないんだよ」
そもそも研修というのは、集団洗脳の場所じゃなくて、まっさらな奴に仕事で最低限必要なスキルを身につけさせること。具体的に何をつけるべきかといったらここらへんだろう。
・実務に必要な接遇、応対のスキル。
少なくとも穴掘りで身につくとは思えないけどな。
「研修はあなたを一人前にするためのものに会社がお金を出してやってるんだよ。残業とか言うなら、自分一人で一人前になってみなさい」
研修といえども、入ったからには雇用関係は出てくる。雇用期間中は雇用主としての信義則を守るべき話。
研修期間中とはいえ、タダ働きを強要するのって、雇用側の甘えにすぎねえわけで。
「研修のことでの話を会社に持ち込みなさんなよ。研修の場で解決してきてよ。研修でチームワーク壊しちゃって、お前らなにしに行ったの」
研修は一銭も生みださない。研修は個人の能力を上げるためのもの。研修は本来個人がやっておくべきことを企業がやっていること。
だから、研修は仕事じゃない。仕事じゃないから、そこで起こった問題は個人で解決すべきこと。
それがいやなら研修行かなくていいよ。でも、それで使えない人材になるなら、自己責任だからね。自分で金払ってセミナー行っといで。
はい、絵に描いたようなパワハラいっちょ上がりです。
どう見てもパワハラだよな。だが、研修という名目でパワハラが隠されてるというのがすげえ問題。
ここで研修の内容に一部セクハラに受け取られる接触があったことを労組が企業に言っても、「あんまり今から甘やかさないでね」と言われるのが関の山です。それ以前に、相談された人が「いやあ研修だからねえ。僕らも同じように鍛われたよ」などとかたづけちゃうこともあるでしょう。
まあ、日本の労組が立身出世大好きな人のオナニーの場所になってるというのは定説だがな。これって労組も弱すぎ。そもそも労組の役割って労働者の保護だけじゃないんだよね。企業側に対して、「これ、社会的にやべえんじゃないか」と伝える部分も重要。会社にとっての神経だよね。
それが麻痺した会社の末路って、それこそ雪印とかパロマなわけで。
そうです。実は、研修という時空間は会社組織への通過儀礼という性格を持って、極めて独立性の高い治外法権を現実的に有している場合があるのです。*3
確かに、研修期間という名目で待遇下げることもまかり通ってるからなあ。バイトでも研修期間中は時給下げてるところがかなり多い。そんでもってアレな企業だと、研修期間がほぼ無期限というところもあるわけで。
そんでもって、その手のDQN研修大好きなところは、スキルの習得以前に「会社教」に染めあげて、転職を防いだり、自分の頭で考えることを放棄させることで従順な羊を作り上げるという性質がある。その結果どうなるかといったら、いつしか不法行為に手を染めて、気がついたら大問題、責任はすべて押し付けられ後悔したときは塀の中という現実がある。
特に新人研修に顕著ですが、「モラトリアムを捨てるために、今までの自分を客観視しよう」という手法があります。
自己分析などと呼ばれていますが、これは通常の精神状態でやると綺麗ごとが並ぶだけです。
かといって、他人に聞いても同じです。遠慮していいことを書いたり、そもそもよく話したこともないので上っ面しかわかりません。
そこで、昔ながらの研修手法の中には、一旦参加者の価値観を混乱に陥れ、全員を赤裸々モードに以降させようとするものが多くあります。
まあ、無人島の話なんかまさにそうだよな。TVで言うところの「サバイバー」の参加者の状態に落としてくという感じかな。それやるのって、そこまで社員が信用できねえのかって感じだけどね。
要はなんでもいい、ただできるだけ答えが出ず紛糾し時間がかかる議題を与えて、お互いの価値観を指弾し非難されつつ半日程度を無駄に論争させる。さらにそれを発表させて、他グループの批判に晒すことで自分の気持ちの中で更なる内的議論を触発する。そうしてすべての価値観に「?」がついた頃合いで、「さあ、ご自分の自己分析をしてみてください。そして、議論を通してあなたがどんな人だったか、グループ内のみんなに聞いてみて、あなたの自己分析と比べてください」とやる。
そこで出てくる他人の評価こそ、短時間で導かれた自己評価の近似値である。とする手法です。
大筋で、その手のGDに関する見解は俺と合ってる。とはいっても、研修でやる必然性はないわな。
そもそも、企業にとって必要なことは、社員の性格、価値観を評価することじゃなく、社員に、仕事をまっとうさせるための技能的スキルを習得させることが必要なんでね。性格、価値観の把握は、本人に合った技能的スキルの付け方を見極める意味ではいいかもしれないけど、評価したところでしょうがない。
通常、講師さんはここに至るまでに参加者さんと十分な信頼関係を築くのが普通ですから、研修室でこれらの問いが発せられたとしても、純粋な思考実験としてとらえられて、ハラスメントには至らないことがままあります。
例えるなら、芸人さんがタブーに触れるようなきわどい話をしても眉をひそめる人がいない(あるいは少ない)ように、あらかじめ「そういうものだ」という信頼関係を築くのです。
それでも、本来的に研修そのものへの疑問を呈する人も出てきます。その際には、オブザーバーとして講師の手伝いをさせるなどのケアを取るのが普通です。
まあ、そりゃそうだわな。
俺がS急便入ったときも、結構アレな研修はあった。同期が40人入って、研修クリアしたのが20人だった。
具体的にどんな研修をやったかというのを書く。何かの参考になるだろう。
オリエンテーション終わったら、バスに乗せられて江ノ島まで行く。江ノ島に研修所があったんだよね。
研修期間は携帯電話没収+財布は預かり。持っていいのはジュース代、煙草代程度。
初日は夕食のみ。夕食は完食が義務。何故かというと、その夕食等にかかる経費は、ドライバーの売上から出てるわけで。それをわからせるため。好き嫌い、アレルギーがあるものについては、班の仲間に食べてもらったりするという感じ。その時点で、同期が1人離脱。なんでも、足のついてない人間を見てしまったとか。俗に幽霊というらしいが。食後は、研修講師の紹介。チームごとに研修講師がつく。研修講師は各店舗の係長がやる。
その後、全員が壇上に立って。自己紹介+入社動機を大声で叫ぶ。借金返済が理由というのがかなり多い。金額も聞かれるが、200万以内だったら「それぐらいだったら借金と呼ばん!」と講師から野次が飛ぶ。
俺は、「商売やる金稼ぎたかったからきた」と。「がんばれやー」と言われた。研修生の年齢層はかなり高い。俺が最年少に近かった。
で、就寝時間に寝巻きに着替えるのだが、俺は寝巻きのかわりに龍と虎がプリントされてる法被コートを。浅草とかで売ってるアレな。そのインパクトの強さで人気者に。馬場ガウンという渾名が。
翌日からは5時半起床。食事の前に浜辺をランニング。大体10キロぐらいかな。たまに江ノ島の山のほうも走る。
食事の後は、綾瀬の教習センターまで行って、そこで研修。グループを大まかに分けて午前、午後とカリキュラムが分かれる。運転技能の習得研修と、社歌、社是、安全運転10則を暗記することと分かれる。あとは礼儀作法、接遇か。これはきちんとした対処を要求される。
社是、安全運転10則については、暗記した上で、壇上に立って大声で叫ぶことが要求される。詰まったり、声が小さければやり直し。俺は両方とも一発でクリア。社歌も第一段階は1発クリア。その後第2段階で苦戦する。
講師からは、「めちゃくちゃ頭いいな」と高評価。そんでもって、昼食後に食堂歌唱がある。飯食った後に社歌を歌わされるんだが、これも大声で叫ぶんで、途中で戻しそうになるんだよね。これは2回目でなんとかクリアした。
運転技能の習得が結構難しい。というのも、2トンだけでなく4トンも要求される。コースはかなり狭くてシビア。さらにいえば、研修用のトラックにはバックカメラなる便利なものはない上、パワステすらない。ハンドルの重さは慣れるけど、感覚、ミラーの使い方は慣れるまで少し時間がかかる。研修としてはそっちのほうがメインかな。いずれにせよ、仕事に必要なんで、研修内容は納得。これが5日目まで続く。クリアしなければ追試。それがクリアできなきゃいつまでたってもコースに出せないんで皆必死になってやってる。
夜は22時就寝というのがずっと続いてたな。次々に脱落する人が出てくる。
例外は最終日の夜。その日の夕食は酒付き、そしてグループごとの出し物だが・・下ネタ続出。あとは研修ネタ使う人も多かった。実際、チンコ出した奴もいた。まあ、野郎ばっかりだからそういう真似ができるが。
見ものは、全員円卓になって目を閉じてる中で「S川ブルース」が流れる中、講師が研修生に「よく頑張ったな」と暖かい言葉かけるんだよね。普段の厳しいアレと大違いで。そうすると、大の大人でも泣き出す奴が続出するんだよな。俺は泣けへんかったけどさ。
研修最終日は、講師からはなむけの言葉を貰って、所属する各店舗に挨拶に行って終了。
他の店舗は「まだまだ始まりだ、気抜くんじゃねえぞ!」だが、俺が配属する店舗については「からだに気をつけろな」と無駄に優しい。まあ、俺がいた店ってめちゃくちゃハードなところで、毎週のように辞める奴が多かったからなあ。多分、それもあるだろう。
まあ、「まだまだ始まりだ」というのは、配属されてからすげえ痛感したけど。こういう感じだった。
モラトリアムの甘えを捨てさせ、自立し自律した人材を鍛えるのは、プロの手に任せるのが一番ですから。
同時に、きわどい手法を使うのに身内がやっては後々遺恨が残るということもあります。
すると結局、研修は企業が企画した自己啓発セミナーのような体裁を取ることが多くなります。
企業が採用する自己啓発セミナーの中には、理論学習よりも洗脳的手法を使うことがままあります。
尊厳に係る罰ゲームや特定の誰かに対して謝らせたり、手をつないで明かりを落として決意を語ったり、旅立ちの儀式と称して皆で抱き合ったり、参加者の感情を揺さぶって、擬似的な高揚感とともに「みんなのためなら死ねる!」というような連帯を作る研修を、私は多く見てきました。
S急便の新人研修も大概アレだけど、罰ゲームや連帯責任はなかったぜ。厳しい状況に落しといて、その後に優しい言葉かけるというのは典型的な洗脳のテクニックだが。そんでもって研修は全部自前でやってるしな。
まあ、S急便の場合は、社畜じゃ仕事にならねえというのはあるけどね。ドライバーの裁量に任される側面があまりにも多いし。いわば、半分個人事業主のような感覚の奴が多かった。俺にとっては結構居心地よかったな。とはいっても、労災とかのケアが結構貧弱だし、労災でケガしても現職復帰には時間がかかる。俺が辞めたのもそういう理由。右足首の靭帯やっちまったんでね。辞めるときは結構慰留されたんだが。あとはこの業界入るには年齢制限ギリギリに近かったというのもあった。
企業は、そこで起きている内容は関知しません。
修了した従業員たちに、「ごくろうさん。これからがんばってな」とやるだけです。
骨も牙も抜かれた若い人材は、こころからそれに「はい」と答えるのです。Sir,Yes,Sir!と海兵が答えるように。
そして、大部分の参加者たちは、その高揚も連帯も、3日もしないうちに忘れていきます。
まあ、これじゃただのオナニーだよなあ。経営者と人事のオナニーに研修が使われるのも金の無駄のような。
日本人は、教育ということばにきわめて曖昧な特権を与えてきました。
そこで得られるものが大きいと知っているだけに、そこで行われていることに寛容できました。
体育会系脳筋老害が跋扈してるからなあ。そいつ等駆逐するのが先のような。
そもそも、個々のスキルを鍛える方法って、科学的、理論的アプローチが先で、精神論はその後についてくるものだとは俺は考えるんだけど。要するに、きちんとした土台があってこその精神論。精神論はブースターにはなるけど、エンジンにはならねえ。それを取り違えるとどうなるかというと「竹槍でB29落す」というバカな真似になっちまうわけで。その辺ひっくり返っちまってる奴が結構多い。
イケイケドンドンの時代は、精神論だけでもなんとかなったけど、不景気の時代は、それまで培ってきた理論、スキルという土台が必要になる。そういう土台がなければどうにもならねえ。
著名な芸術家は結構ドラッグやってる奴も多いが、ドラッグやるからいい作品を出すんじゃなくて、元々いい作品を出せる土台があるからイイ作品を出す。ドラッグはそのためのブースターにすぎねえわけで。
何もないやつがドラッグに手を出したからいい作品が出せるわけじゃない。ただのジャンキーの出来上がりだ。
多くの研修をそうした聖域にしてきたのは、「文句があったら即戦力で入ってこい」という、企業人のモラトリアムに対する不寛容なのかもしれません。
それもあるが、そもそも経営者、人事が「精神論という名のドラッグ中毒」が多いってのも大きいんじゃないかな。
そして残念ながら、私にはそのことに対する処方は思いつきません。
その辺は、長い目で見ると、そういう企業は精神論という名のドラッグに溺れて自滅することは多いだろうが・・・。
不景気によって、そこらへんの篩い分けが出来るようになる部分も大きいかと。とはいっても、そこで働く人にも痛みはあるからなあ。
個人的には、企業の良心に任せるのは限度があると思うし、宗教というフレームワークがないから、労働関係の法規の強化で何とかするしかないのかなと。法規の強化とペナルティの強化をワンセットとした形で。
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