第2章 職場、家庭、地域への男女の共同参画をめぐる状況

1 ライフスタイルの変容

進む晩婚化

 平均初婚年齢の推移をみると、昭和50年には、妻24.7歳、夫27.0歳であったが、平成10年には、妻26.7歳、夫28.6歳まで上昇した。未婚率の推移をみると、女性については、20歳代後半層では、昭和50年の20.9%から平成7年には48.0%まで上昇し、約半数の女性が未婚の状況にある。30歳代においては、昭和50年には未婚率は前半層7.7%、後半層5.3%であったが、平成7年には前半層19.7%、後半層10.0%となっており、30歳代においても未婚率は上昇している。

女性にとって結婚の負担感につながっている、家事・育児責任

 結婚に対して負担を感じる(感じている)者がどのような内容の負担を感じているかを聞いたところ、女性の場合、「家事の負担」、「仕事と家庭を両立させるのが困難な負担」が4割近くと高くなっており、「経済的負担」を第一に挙げる男性と対照的である(第7図)。女性の結婚への負担感は、仕事をもつ女性が増加しているにもかかわらず、女性が家庭責任を負っている状況に変化がないことから生じていると考えられる。

図7


2 就業の分野における男女の共同参画

時系列的には上方シフトしている、我が国のM字カーブ

 日本の女性の年齢階級別労働力率の時系列の動きをみると、男性と異なりM字カーブの形状は依然として残してはいるが、全体として上方シフトしている(第8図)。

図8

未婚者と有配偶者で大きく異なる、年齢階級別労働力率の状況

 女性の年齢階級別労働力率は、未婚者と有配偶者ではその形状が大きく異なる。未婚者の場合、逆U字型を描く一方、有配偶者の場合、45〜49歳をピークとする山形を描く(第9図)。育児の時期と重なる、20歳代、30歳代にかけて、未婚者と有配偶者の労働力率の差が大きい。

図9

増加しつつある継続就業型志向

 家事、育児、介護などの家庭における負担の重さなど、女性の就業を取り巻く環境は厳しいものの、仕事への考え方には変化がみられる。
 女性と職業についての考え方の推移をみると、「女性は職業をもたない方がよい」「結婚するまでは職業をもつ方がよい」という考え方は後退、「子どもができたら職業をやめ、大きくなったら再び職業をもつ方がよい」(再就職型)が依然として割合が大きく、「子どもができてもずっと職業を続ける(継続就業型)が近年増加している(第10図)。

図10

女性の就業と少子化

 女性が継続して就業する国では出生率が低い傾向があるという考え方もあるが、育児負担の大きい25〜34歳の女性の労働力率と合計特殊出生率の関係について先進諸国の状況をみると、女性の労働力率の高い国では、合計特殊出生率は比較的高くなっていることがわかる(第11図)。我が国に比べ労働力率も出生率も高いスウェーデンなどでは、男性も含め育児休業制度が普及し、保育サービスも充実しているなど、女性が仕事と育児の両立をしやすい、働きやすい状況にあるため、女性の就業が必ずしも少子化につながっていないと考えられる。

図11

女性雇用者の姿

 女性労働者の平均勤続年数は長期化する傾向にあり、平成10年で平均勤続年数は8.2年、平均年齢も37.2歳になっている。10年以上の平均勤続年数の者も、女性全体の3割程度になるに至った(第12図)。

図12

職階、勤続年数が影響する男女間の賃金格差

 男女間の賃金格差の要因の中でとりわけ影響が大きいのは、職階(部長、課長、係長への昇進状況)と勤続年数であると考えられる(第13図)。時系列でみると、勤続年数の長期化により勤続年数の影響度は縮小傾向にあるが、職階についてはほとんど変化がない。

図13

多様化する、女性の就業形態

 女性雇用者の場合、短時間雇用者をはじめとして、就業形態が多様である点が特徴となっている。この点をやや詳細にみるため、女性雇用者の雇用形態別の状況をみると、20歳代までは「正規の職員・従業員」が7割を占めるが、30歳を超えると、パートなどの非正規労働者の割合が高まる(第14図)。

図14

比較的小さい情報関連分野の男女間の所定内給与額の格差

 情報関連職種のうち、システムエンジニアとプログラマーにおける男女間の賃金格差について、就労者の大多数を占める年代である20歳代、30歳代でみると、全職種と比較して小さくなっている(第15図)。

図15

女性に就労の機会を与える在宅ワーク

 在宅就労という新しい勤務形態は、通勤の時間的コストや精神的負担を削減できるほ か、自由に就業時間帯を選べるなど柔軟な勤務形態を可能にすることから、女性に就労の機会を与えるものとして期待されている。在宅ワーカー(テレワーキングのうち「自宅で請負の仕事を行う」人)の属性については、4分の3以上を女性が占めており、かつ子供を持つ女性が約半数を占めている。また、女性の在宅ワーカーを年齢階級別でみると、30歳代が71.6%を占めている。また、最終学歴でみると、女性労働者全体に占める大卒以上の割合は9.9%であるが、在宅ワーカーでは41.9%と、高学歴の女性が多く就労していることがわかる。

地域の政策・方針決定過程への女性の参画状況

 農山漁村の女性は、それぞれの生活の運営や地域社会の維持・活性化に大きな貢献をしているものの、地域の政策・方針決定過程への参画は十分ではない。例えば、農業委員会の委員や、農業協同組合・沿海地区出資漁業協同組合の正組合員・役員における女性の割合も、就業人口に占める女性の割合と比較すると低い水準となっている。しかしながら、これらの地域の政策・方針決定過程に関わる団体における女性の参画については、ほとんどの都道府県が指標・目標を策定し、これに向けた取組が進められている。


3 男女の家庭・地域生活への参画

妻中心の家事、子育ての役割分担意識

 家庭での男女の役割分担意識をみると、家事については、2割前後が「夫も妻も同じように行う」、7〜8割が「妻が行う」(「もっぱら妻が行う」「主に妻、夫も手伝う」)としている(第16図)。子育てについては、4割前後が「夫も妻も同じように行う」、5〜6割が「妻が行う」としている。家事、子育てとも、「夫が行う」(「もっぱら夫が行う」「主に夫、妻も手伝う」)は非常に低い。
 妻の就労形態により男性の意識は異なり、妻がフルタイムで働いている場合は、家事、子育てとも、「夫も妻も同じように行う」とする者の割合が高まる。

図16

妻の負担となる家事、育児

 夫の家事、育児の状況を具体的な内容に踏み込んでみると、家事については、どの項目についても3分の1から3分の2の夫がほとんど何もしない状況にある(「まったくしない」「月1〜2回程度する」)(第17図)。「毎日・毎回する」「週3〜4回程度する」というレベルになると、ゴミ出しなどについては2割程度が行っているが、他の項目については、1割前後である。
育児については、「遊び相手をする」「風呂に入れる」については半数の夫が行っているが、「食事をさせる」「寝かしつける」「おむつを替える」「泣いた子をあやす」については半数程度がほとんど何もしていない状況にある。

図17


4  高齢男女の暮らし

進む高齢化

 総務庁統計局「人口推計」によれば、平成11年10月1日現在、我が国の総人口は1億2,669万人であり、うち、高齢者人口(65歳以上人口)は2,119万人で、総人口に占める高齢者人口の割合(高齢化率)は16.7%である。
 高齢者人口を男女別にみると、女性1,237万人に対して男性は882万人で、男女の比率は女性100に対して男性71.3となっている。
 長い高齢期をいかに過ごすかは、男性に比べて女性にとってより重要な問題になっている。

女性が担う、同居介護

 高齢の寝たきり者の主な介護者の続柄をみると、86.1%が同居者が主な介護者となっており、その内訳としては、年齢が上がるにつれ、配偶者の割合が減少し、子及び子の配偶者の割合が上昇する。また、75歳以上では子の配偶者の割合が子より高くなっていることが注目される。
 また、寝たきり者の主な介護者(同居)の場合、続柄にかかわらず、女性の割合が高い。特に、子の配偶者の場合は、99.7%が女性である(第18表)。

表18


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