和歌山県すさみ町の国保すさみ病院が、一般車を改造して緊急車両の指定を受けた救急医師派遣自動車(ドクターカー)を県内で初めて配備した。今月末から本格運用する。昨年の道路交通法施行令の改正で、医療機関がドクターカーを運行できるようになった。消防の要請を受けて出動するドクターヘリの「自動車版」。高垣有作院長は「すさみ町は面積が広い上、基幹病院からも遠い。消防の要請が前提だが、少しでも早く到着し現場で治療することで救助できる命を守りたい」と話している。 医師が救急現場に駆け付ける際、一般車だと交通規則に従うため到着が遅くなる場合がある。施行令の改正で一般車を改造して赤色灯とサイレン、警告マイク(拡声器)を装備し、緊急車両の指定を受けることで、緊急走行時に赤信号の通過も認められるようになった。 新生児搬送用に特化したドクターカーは既にあるが、一般車を改造したドクターカー配備は県内で第1号という。 高垣院長は「国道42号は交通事故が多い。以前には、事故で車内に閉じこめられた負傷者がいて、消防の要請で病院の車で現場に駆け付けたが、渋滞して車では現場に到着できず、走って向かった苦い経験があった」と話す。施行令改正を知り、すぐに警察と陸運局に申請したという。 病院では、ドクターカーに気管内挿管セットなど緊急そ生に必要な機材を積み込んでいる。出動時には、前を走るドライバーがバックミラーで「救急」の赤い文字が確認できるよう、字を左右逆にしたシールを取り付ける。 国保すさみ病院には常勤医師4人と非常勤医師1人の5人が勤務している。常勤の2人は日本外傷学会の外傷初期診療トレーニングコースを修了している。非常勤医師は南和歌山医療センターの救命救急スタッフでもある。 高垣院長は「ドクターヘリと連携すれば医師の数が2倍になるため、場合によっては立体的な運用も可能。病院には医師が少ないので昼間の対応が主になるが、少しでも改善につながれば」と話している。