<< 2009年01月 >>
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

オバマ大統領就任演説で「責任」について思ったこと

2009/01/21 14:21

 

 

 とうとう米国で新政権が発足しましたね。なんだかんだ言って、初のアフリカ系大統領の誕生で、米国は新しい一歩を踏み出すことになるのでしょう。そしてそれは、世界にもさまざまな影響を与え、世界のありよう、枠組みを変えていくのかもしれません。日本時間のきょう未明に行われたオバマ大統領の就任演説を見ていて、そんなことを考えるとともに、演説の中身を読んで、指導者と国民との間で国家に対する認識の大きな部分が共有されている米国が少しうらやましくも思えました。

 

 就任演説について、今朝の産経は1面で「新しい責任の時代」と大見出しをつけ、3面のワシントンの有元隆志記者の記事で次のように指摘しています。

 

 《オバマ氏は選挙戦などでたびたび「責任」の重要性に言及してきた。それは政府の責任であり、一人一人の責任でもあった。

「責任」に重きをおいたのは、1961年に同じ民主党ケネディ元大統領が就任演説で、「国があなたたちに何ができるかではなく、あなたたちが国のために何ができるかを問いかけよ」と訴えたのを意識したとみられている。》

 

 確かに、就任演説でオバマ氏は、現下の経済危機についてもその責任は「困難な決断を行い新たな時代に向けた準備を怠ってきた我々全員にもある」と述べ、国民を免責していません。日本だったら、首相をはじめ政治家がこういう言い方をしたら、どういう受け止めをされるだろうかと考えました。もちろん、米国と日本はこの問題に対する立場が違いますし、また直接民主制と間接民主制の差異もありますが、国民にも「責任」を問うということが、日本では許容されるだろうかと。そこで以下、外務省の仮訳をもとに、演説から私が気になった部分を引用してみます。

 

 「政府ができること、そしてやるべきことに関する限り、この国が依存するのは、米国民の誠意と決意である。それは、堤防が決壊した時に他人を迎え入れる優しさであり、友人が職を失わないように自らの労働時間を削減する無欲さであり、煙に包まれた会談を駆け上がる消防士の勇気であり、また、子供を育てようという親の石である。こうしたものこそが、最終的に我々の運命を決めることになる」

 

 「勤勉と正直、勇気とフェアプレー、寛容と好奇心、忠誠と愛国心といった、我々の成功が依拠する価値は古くからのものである。これらは真実である。これらは我々の歴史を通じ、進歩の静かな原動力であった。必要なのは、これらの真実に報いることである。今、我々に求められているのは、新たな責任の時代、すなわち、米国民のそれぞれが、自らと国家及び世界に対し義務を負っていることを認識することである。困難な任務に対し全力で奉仕すること以上に我々の精神を満足させるものはないということを強く認識し、嫌々ではなく義務を果たすことである。これこそが市民権の代価であり約束である。これこそが我々の自信の源である」

 

 …国の歴史も成り立ちも人種構成も宗教も、何もかもが異なる米国と単純に比較するのは乱暴であることは分かっていますが、改正教育基本法に「愛国心」という言葉を盛り込むことすらマスコミや与野党内の猛反発でできなかった我が国とは、やはり全く違うなあと感じ入った次第です。また、日本で首相や政府高官がこういうことを述べたら、国民としての当事者意識の薄いマスコミや左派・リベラル系国会議員らからふくろだたきに遭うのではないかとも思いました。

 

 直接であろうと間接であろうと、民主主義制度下においては、国民(有権者)に政治のあり方に対する責任があるのは当然のことだと考えますが、その点を指摘することは日本では何かタブーのようになっている気がします。マスコミは、政府や政治家の批判は書き放題でも、その政治家を選んだ有権者に批判の目を向けたり、応分の責任の負担を求めたりすることは決してしません。というか、そんな反発を買うような恐ろしいことは考えもしないことでしょう。

 

 で、今朝の新聞各紙を読んでいたところ、少し面白いことに気付きました。毎日新聞は1面トップと6面を使ってこのオバマ就任演説の内容について詳細に報じているのですが、私が注目した部分がなぜか省略されていたのです。訳の巧拙はあえて言いませんが、例えば「忠誠と愛国心」の部分や「これこそが市民権の代価であり約束」といった部分は毎日の記事からは抜け落ちていました。たまたまかもしれませんが、同様に詳報を掲載した朝日にはちゃんと載っていましたし、毎日の訳者だか書き手だか編集者だかの好みや考え方、意向が反映しているのかもしれませんね。私は実際、ここはとても大事な点だと思うのですが。

 

カテゴリ: 政治も  > 政局    フォルダ: 指定なし

コメント(6)  |  トラックバック(1)

 
 
このブログエントリのトラックバック用URL:

http://abirur.iza.ne.jp/blog/trackback/881611

コメント(6)

コメントを書く場合はログインしてください。

 

2009/01/21 14:59

Commented by tora3 さん

深夜にも関わらず、オバマ大統領の就任演説に聞き入ってしまいました

>勤勉と正直、勇気とフェアプレー、寛容と好奇心、忠誠と愛国心
>嫌々ではなく義務を果たすことである。これこそが市民権の代価であり約束である

 一人の人間の精神の在り方について、他者への奉仕は、自己の権利主張と一体のものですね 権利があるところ、当然に、必ず義務が伴います
 しかし、日本では戦後数十年続く教育崩壊により、権利しかないのが「民主主義的」であり、「自由」であると洗脳されています。
 これでは魅力ある大人の個人は生まれません。精神的にいつまでたっても未熟だからです。プロ市民や、社民的リベラルの方々の人間の薄さ、軽さはもはや目を覆いたくなります

>例えば「忠誠と愛国心」の部分や「これこそが市民権の代価であり約束」といった部分は毎日の記事からは抜け落ちていました

 よくマスゴミフィルターで洗脳される現象がありますが、毎日ほど露骨にやるところは少ないですね。貧すれば鈍するかな

 利他精神、国家への貢献を正面から賞賛できる当たり前の精神の復活が急務ですね

 
 

2009/01/21 15:01

Commented by bakaichi さん

全く同感です

日本で
「日本は我々の家です、あなたの母が貴方を産み、貴方の父が支え、一人一人が手を携えて来た、私達の『家』です、
多くの苦しむファミリーを励まし,勇気付け、共に明日へ向う、希望と勇気と協力を共有できる喜びを感謝します、我々を産み落とし苦労して去っていった多くの日本人に、そして今共に時代を分け合う総ての日本の人々にこの日を、この役割を下さった事を感謝します」と首相が就任演説で言えますでしょうか?」
メディアはそういったコンセプトをどう評価するでしょうか?

 
 

2009/01/21 15:25

Commented by siegfried さん

 調子の良いことを言う奴にかぎってペテン師が多いものです。浮かれていないで冷静に今後を見極めるべきです。何しろ三百代言出身だから口先だけで行動が伴わない可能性があります。千三つで無蹴ればいいのですが。

 
 

2009/01/21 15:36

Commented by 鈴木 茂 さん

 確かに、私も非国民かもしれませんが、愛国心について、自民党政府が唱える、国を愛する態度を養うなどという、立派な心掛けはありませんが、せめて、民主党の唱える国を愛する心を涵養したいと思っています。

 自民党支持者には、言ってもわからないでしょうが。
 
 ま、いいか

 
 

2009/01/21 15:39

Commented by イド さん

アメリカ大統領はまず、「先住民を虐殺し土地を強奪して建国した歴史」の反省からスタートすべきだと考えます。

日本の首相は「日本はいまだにアメリカの占領下にあることを説き、日本人に自主独立の気概を求める」ことから始めるべきだと考えます。

 
 

2009/01/21 16:02

Commented by tomikyu08 さん

「困難な決断を行い新たな時代に向けた準備を怠ってきた我々全員にもある」の前段にある、「経済はひどく疲弊している。それは一部の者の強欲と無責任の結果だが、」という言葉も、また、日本では、共産党や社民党員ですら、国会や、公の場では発言できないでしょう。
せいぜい、遠まわしにそれに近いことを言うのみで、こうハッキリとは言えないと思います。

 
 
トラックバック(1)

2009/01/21 15:32

毎日新聞とオバマ大統領の就任演説 [Kyan's BLOG III]

 

オバマ大統領就任演説で「責任」について思ったこと - 国を憂い、われとわが身を甘やかすの記:イザ!で、今朝の新聞各紙を読んでいたところ、少し面白いことに気付きました。毎日新聞は1面トップと6面を使ってこ…