町田市の鶴川サナトリウム病院(日野研一郎院長)で起きたインフルエンザの集団感染で、20日午後3時現在の発症者数は前日より4人増えて累計116人(うち死者3人)となった。都は感染ルートの特定を急いでいるが、病棟間は患者が自由に行き来できる状況ではないのに各病棟で多くの発症者が出たことから、職員の移動で感染が拡大したとの見方が強まっている。【江畑佳明】
■対策徹底せず
同病院によると、17日現在の入院患者は計448人で、平均年齢は83歳。寝たきりや車いす生活で自由に移動ができない患者も少なくない。さらに建物は南、中央、北と三つの病棟がつながった形になっているが、各階の病棟間を扉で仕切って一つのフロアを構成しており(一部を除く)、患者はフロア間を行き来できないようになっている。
一方、職員、患者ともに発症した7フロアのうち5フロアは3~9日にかけてまず職員の発症がみられ、その後に患者の発症が確認された。職員のうち医師や技師はフロアをまたいで仕事をしていたほか、フロアごとに担当を決めている看護師も仕事を終えるとフロア外に出ていたという。
さらに、都は病院からインフルエンザ発生の報告を受けた7日、職員のマスク着用や手洗いなど「標準予防策」の徹底を指導した。その後も指導を繰り返したが、19日に実施した3度目の立ち入り調査の際にもマスク未着用の職員が見られるなど、病院側が感染拡大防止策を徹底していなかったことも明らかになっている。
こうした点から、都は職員の移動によりインフルエンザウイルスが拡散したとの見方を強めている。ただ、南棟と中央棟については入院中の認知症患者が徘徊(はいかい)するケースもあり、患者間で感染が広まった可能性もあるとしている。
■B型は未検出
都は20日、発症者24人ののどの粘液のうち11人分からA香港型が検出されたと発表した。インフルエンザ治療薬のタミフルが効かないケースがあるとされるAソ連型やB型は検出されなかった。残りの13検体は陰性だったが、都の担当者は「既に治ってしまって陰性となった可能性もあり、感染していなかったとは言いきれない」と説明している。
〔都内版〕
毎日新聞 2009年1月21日 地方版