2008年11月08日 社説 


[全駐労脱退]

県民の共感得る活動を


 全駐労沖縄地区本部(與那覇栄蔵委員長、六千五百人)が沖縄平和運動センターを脱退した。日米両政府が合意した在日米軍再編で基地の整理縮小が現実味を帯びてくる中で、「自ら働く根拠の日米安保を否定する運動に理解を得るのが難しくなった」というのが理由だ。

 全駐労の前身、全軍労が米軍占領下の無権利状態の職場で、米軍の大量解雇に事実上のストライキで抵抗してきた闘争を知る世代にとっては、複雑な感情がわいてくるのではないだろうか。

 終戦直後、沖縄の人たちは生きるための働き口を基地に求めるしかなかった。

 団体交渉権、スト権など労働者の基本的権利などが認められなかった米軍政下の一九六三年に全軍労を結成。米軍基地に職を得ながら基地撤去を訴え、大衆運動の中核を担ってきた。

 しかし、この矛盾こそまさに沖縄が戦後ずっと、置かれてきた現実だった。全軍労・全駐労はその矛盾を積極的に生きることによって、沖縄の内にある矛盾をあぶり出してきたのである。

 基地に対する県民の思いと同じ歩調で歩んできた全軍労・全駐労は、労働、平和運動で県民の支持を受けてきたといっていいだろう。

 一方で復帰前の過酷な労働差別があった時代を知らない三十―四十代の組合員が全体の六割以上を占めるようになった。

 三十―四十代といえば、結婚し、子どもができ家族を持つ。簡単に仕事を変えることができないのも事実だ。

 基地従業員は準公務員的な地位で、条件のよい職場として基地を選ぶ若い層も増えている。基地内への就職を目的にした専門学校ができるような時代だ。

 復帰前と復帰後、さらに冷戦崩壊以降では、基地に対する住民の意識は確実に変わりつつある。

 そういう意味では全駐労は大きな曲がり角にきている。だが、方針転換はこれが初めてではない。

 九七年度の運動方針で「米軍基地の撤去を組織の方針として掲げることはできない」と明記して波紋を広げた。基地撤去は自分の首を絞めるようなものという考えが広がったからだ。

 九八年の米軍普天間飛行場の包囲行動では組織的参加を見送った。海兵隊削減要求に賛同できないからだった。職場を失う不安からである。

 今後、連合傘下で基地の整理縮小と日米地位協定の見直しに取り組んでいくという。

 沖縄平和運動センターは二十七団体、約二万五千人になった。基地は地元が望まないにもかかわらず、国策によって沖縄に置かれている。基地の整理縮小による従業員の転職は国が責任を持たなければならない。

 全駐労には基地の整理縮小と雇用確保を同時に追求していくような取り組みを期待したい。

 二律背反的な矛盾を生きる存在として、これからも積極的に平和運動にかかわってほしい。それがあってこそ県民の共感が得られると思う。



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