警察庁が飲酒運転根絶シンポジウムを開催


  
   協賛団体として当会議所も協力高速道路料金引き下げなどを要望


 警察庁は10月9日、東京・港区虎ノ門のニッショーホールで「飲酒運転根絶シンポジウム――あの悲劇を忘れない。しない、させない飲酒運転――」を開催した。飲酒運転や飲酒事故を厳罰化した改正道路交通法が昨年9月に施行されて1年が経過したことから、10月に入り警察庁では全国一斉に飲酒運転根絶のキャンペーンを展開しており、今回のシンポジウムもその一環。当会議所も協賛団体として、同シンポジウムの開催に協力した。
 シンポジウムではまず、主催者を代表して警察庁交通局の東川一局長が、「悪質な飲酒運転は、被害者だけでなく、加害者やその家族まで巻き込んで悲惨な結果を招く。本日のシンポジウムは、周囲の人たちが飲酒運転を見逃さずに止めさせるために、平素から何をすべきか考えるきっかけになればとの思いで開催した。多くの人を巻き込む悲劇を繰り返さないために、参加された一人ひとりがこのシンポジウムを通して飲酒運転根絶に対し改めて意を強くし、それぞれの活動に活かしていただきたい」と挨拶。続いて、愛国学園大学教授・茨城大学名誉教授の鈴木由紀生氏が「飲酒運転根絶―飲酒者を囲む人の重要性―」と題して基調講演を行い、飲酒運転を抑止するための留意点などを説明した。
 メインプログラムのパネルディスカッションでは、まずパネラーを務める警察庁交通局交通企画課長の倉田潤氏が、飲酒事故の現状と飲酒運転根絶の取り組みついて報告。それによると、平成18年8月に福岡市で幼児3人が死亡した飲酒運転事故を契機に、警察庁では飲酒運転の取締りを強化したことが功を奏し、昨年の飲酒運転事故は前年比35.0%減の7,558件だった。飲酒運転による死亡事故の減少も顕著で、29.6%減の430件。倉田氏は、「飲酒事故は平成12年をピークに減少傾向にある。福岡の事件を受けての取り締まり強化と昨年の改正道交法施行による厳罰化によって、特に平成18年と19年は大きく減少し、10年前の3分の1の水準となっている」と話した。
 続いて、居酒屋チェーン「つぼ八」を運営しているつぼ八総務部法務審査課専任部長の高橋裕和氏、宮城県警察本部交通部参事官兼交通企画課長の後藤政次氏、ジェイアールバス関東元会長でASK(アルコール薬物問題全国市民協会)・飲酒運転対策特別委員会委員長を務める山村陽一氏のパネラー3氏が、それぞれの立場から飲酒運転問題に対する活動や取り組みを報告した後、ディスカッションに移った。
 その中で、一番問題視されたのが、飲酒運転に対する厳しい罰則や世論があるにもかかわらず、いまだに飲酒運転を続けるドライバーが後を絶たないこと。山村氏は、「地域社会で最も尊敬される職業である教職員による飲酒運転事故が、私が調べただけで昨年1年間で74件もあった。分析してみると、ほぼ半数がアルコール依存症かその疑いの強い人だった」として、日本の飲酒風土が依存症を助長していると訴えた。山村氏は、「節度ある“飲酒技術”を教える人間を育てる必要がある」とも述べ、飲酒運転防止のためのインストラクター養成事業を今年から始めたことを報告。ほかのパネラーからは、警察庁だけでなく、厚生労働省など他省庁との連携が不可欠との意見が相次いだ。