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【産科医解体新書】(21)リスク高まる飛び込み分娩

2009.1.21 08:12

 一度も病院にかからずに、陣痛が始まってから受診し、分娩(ぶんべん)することを「飛び込み分娩(出産)」と言います。いろいろなリスクが隠れていることが多く、救急などで運び込まれると僕らも緊張します。何よりも困るのは、正確な妊娠週数が不明なこと。僕らだって昨日の晩ご飯すら思いだせないのですから、10カ月近く前の最終月経日を思いだしてもらうのはほとんど困難です。

 赤ちゃんの検査も、それまでまったくしていません。実は日本は、妊婦健診でのエコー検査がどこよりも充実している国です。エコー検査時、皆さんの多くは「赤ちゃんが男か女か」にしか関心がないと思いますが、僕ら医師は、赤ちゃんの成長の度合いと大きな病気がないかを毎回確認しています。その際に疑わしい病気があれば、血流を調べたり、エコーの回数を増やしたりして対応します。万が一、その施設で対応できないほどの病気が疑われれば、大きな病院へ紹介することになります。

 このように、通常は10カ月をかけて妊娠によって起こるリスクを少しずつふるいにかけていくのです。それが飛び込みでは、いきなり分娩に至ります。僕らは短い時間であらゆるリスクに対応しなければなりません。現場は混乱し、事故が起こる可能性が高まります。それでもひとたび事故が起これば、飛び込み分娩だからといって僕らが免責されるわけではありません。

 もしその場で対応できない病気が見つかれば、母体搬送が必要になります。たとえ妊婦健診を受けていても、いざというときの母体搬送には手間がかかるし、場合によっては受け入れ先がないことはザラにあります。飛び込み分娩のようにリスクが不明の場合、受け入れ可能な施設が限られますので、さらに搬送は困難になります。

 妊婦健診をきちんと受診することは、母体と胎児の健康を守るために最低限必要なことなのです。(産科医・ブロガー 田村正明)

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