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「派遣切り」の影響、空き室急増

1月20日(火)

雇用情勢の悪化で入居者がほとんどいなくなったアパート。夜に明かりがともるのは階段(左端)を除いて1室(右上)だけだ=長野市内

 県内で賃貸アパートなどの空き室が急増している。非正規労働者の寮として派遣会社などが契約していた部屋が、企業の「派遣切り」に伴い、一気に解約されたことが影響している。ほとんどが空き室になってしまったアパートもあり、建設費などの返済が残っている大家は動揺を隠せない。

 長野市郊外の3階建てアパートは、ワンルーム全12室のうち9室が昨年夏まで埋まっていた。しかし、同年12月20日を境に入居が1室だけになった。市内の半導体関連メーカーに派遣され、アパートに入居していた8人を派遣会社が解雇し、退室させたためだ。

 所有者は市内の女性(73)。10年ほど前に老後の自立した生活のために−と貯金をつぎ込んで土地を買い、建物は借金して建設した。入居は安定し、返済も順調だった。そこに降り掛かった突然の大量解約に、女性は「借金をどう返していけばいいのか」。

 ローンの返済期間はまだ十数年も残っている。家賃を1割ほど、2カ月分だった敷金を1カ月分にそれぞれ引き下げたが、今のところ新規入居の申し込みはない。「子どもたちに借金を残すわけにはいかない。この先が心配で眠れない」と嘆いた。

 上伊那地方の仲介業者は、扱っているワンルームや2DKのアパート計100室ほどのうち、派遣会社と契約していた約30室が昨年10月から12月にかけて解約された。「大家さんから、何とか埋めてくれと頼まれている。家賃引き下げなどで新規入居者を開拓したい」とする。

 ただ、「営業努力」にも限界があるとの声も。長野電鉄(長野市)の不動産事業部は、須坂市内の賃貸物件で同様に計20件弱の解約依頼があったという。担当者は「通常なら来年度の新規契約の話がある時期だが、今年は人の動きがほとんどない」とため息交じりだ。

 企業の借り上げ社宅の管理を請け負っている大手不動産業者(東京都)によると、都内や、自動車関連業の多い愛知県などを中心にアパート解約の動きが進んでいる。長野県内も含め「解約件数が新規契約件数を上回っている状況は全国共通」という。

 県宅地建物取引業協会(長野市)の長沢一喜副会長は「県内は数年前からアパートの新築が相次ぎ、入居者の確保が難しくなっていた。アパート経営者にとって、今回の大量解約はダブルパンチだ」。家賃収入の激減でアパート建設費の返済が滞り、土地や建物を手放さざるを得ない大家が出る可能性もある−と懸念している。

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