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2009年1月20日

◎「歴史都市」認定 城下町の代表格への出発点

 歴史まちづくり法に基づく「歴史都市」認定は、金沢にとっては「城下町」のナンバー ワンを目指す都市づくりのゴールではなく、出発点との認識を持ちたい。歴史遺産の復元や周辺整備などで手厚くなった国の支援制度を最大限に活用し、北陸新幹線開業へ向けて、金沢の顔を際立たせる取り組みを加速させる必要がある。「歴史都市」のくくりを超え、城下町の代表格という金沢独自の評価を国の内外に定着させる一歩にしたい。

 歴史まちづくり法は、国土交通省、農林水産省、文化庁の三省庁が共同で所管し、都市 づくりの基軸として歴史と文化を明確に位置づけた点に意義がある。

 たとえば道路の無電柱化にしても、これまでは国交省の道路行政の中で扱われ、全国一 律的な道路構造の基準に縛られていた。用水も農業施設という性格上、農水省が所管し、市街地を流れる歴史的用水を開渠化して景観を向上させるという発想も強く打ち出されていなかった。都市づくりで歴史や文化の視点を優先し、行政の縦割りの弊害を改めて補助金の使い勝手をよくしたことは前進である。

 「歴史都市」の認定、つまり金沢市の歴史的風致維持向上計画が認定を受けたのは、世 界遺産運動のなかで城下町遺産の文化財指定などを進めてきたことが大きい。新法は国が指定するような文化財を中心に、そのまわりを含めて面的整備を推進するのが狙いであり、核になる史跡や町並みなどの価値の高さが前提となる。金沢城跡の国史跡指定をはじめ、城下町遺産の価値を高めてきたことが第一弾の認定に結びついたといえる。

 「歴史都市」には金沢をはじめ岐阜県高山、滋賀県彦根、山口県萩、三重県亀山の五市 が選ばれた。認定を得ることが当面の課題だったとは言え、その呼称に満足しているわけにはいかない。歴史まちづくり法には多くの自治体が関心を示し、今後は追加認定が見込まれ、やがて「歴史都市」の希少価値も薄れてくる。新法を使って都市の個性に磨きをかけ、城下町の代表格といえば誰もが真っ先に金沢の名を挙げるくらいに認知度を高めていきたい。

◎日韓漂着ごみ協議 海洋投棄の禁止措置を

 日本海沿岸に大量に流れ着くごみの削減策を話し合う日韓の実務者協議が来月からスタ ートする。いや応なしに押し寄せる漂着ごみは、長い海岸線を持つ石川県や富山県にとっても、頭の痛い問題だ。北國新聞社の自然環境調査団による調査でも能登沖に浮かぶ舳倉島と七ツ島で大量の漂着ごみが見つかっている。二国間協議を通じて、韓国政府に海洋投棄の縮小・中止を強く働き掛けてもらいたい。

 環境省の調査によると、日本海側に漂着するごみは、流木のほか、容器のふたや食品ト レー、たばこといった生活系のごみ、ロープや浮きなどの漁業系のごみが目立つ。財団法人「環日本海環境協力センター」(富山市)の試算では、漂着ごみは年間約十五万トンに達している。

 昨年は日本海沿岸にハングルが記された大量のポリタンクが漂着した。環境省の調査で は、日本海沿岸に約四万三千個のポリ容器が漂着し、このうち約一万八千個にハングル表記があった。日本の排他的経済水域(EEZ)では、韓国の密漁船が投棄した網やバイカゴが大量に見つかっており、韓国が発生源のごみは相当量に上るとみられる。

 これらの漂着ごみは景観を悪化させ、処理費は自治体の負担になる。石川県や富山県の 海岸線からは、酸性の液体が入ったポリ容器や使用済みの大量の注射器なども見つかっており、沿岸住民に健康被害の懸念もある。

 韓国は日本海の海上二カ所にごみの投棄区域を設けており、昨年は約六百万トンを投棄 した。環境保全に厳しい目が向けられている時代に、海にごみを捨てる行為は許されない。むしろ日韓が歩調を合わせ、中国に対して大気汚染や海洋汚染対策の強化を要求していく方向に進まねば、東アジアの自然環境は悪化するばかりである。

 韓国は日本以上に中国の大気汚染の影響を受け、毎年数千億円規模の損害を受けている という。だが、海洋ごみに関しては、自分たちが加害者の立場にあることを理解し、海洋投棄を速やかに中止してほしい。


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