ホーム > きょうの時鐘


2009年1月20日

 称賛やまず米国の新ヒーローになったという。奇跡的な不時着を成功させたあの機長である。オバマ新大統領の登場前に大惨事を回避した安堵感が重なって見えた

不時着は機体がグライダー状に飛行したことを意味している。どんな巨体も翼があれば滑空できる事実を示し、恐竜が進化して鳥になる途中の翼竜が飛ぶ姿を思わせた。もっとも、恐竜が楽々と空を飛べたのではないとの説もある

「4本の足」で必死に助走したとの説が先日紹介されたばかりだ。巨体が飛ぶには巨大な力を要し、野鳥の「自爆」で推進力をなくしながらも神懸かり的な腕で全員を助けた奇跡に、超大国の再生を重ねたとしても不思議ではない

人間はグライダーではなく自分の力、すなわちジェットエンジンで飛べと説く名著に「思考の整理学」(外山滋比古著)がある。経済危機から中東紛争まで自力解決を放棄した「オバマ頼み」はこのグライダーに近い

度を越した期待は急降下しがちだ。名機長にも限界がある。新大統領誕生が秒読み段階の今こそ、自力エンジン開発に汗を流せと少し皮肉な見方があってもいいだろう。


ホームへ