ただ、法案を提出しても、本格審議は来年度予算成立後の4月以降となる可能性が大きい。そこで浮上したのが、自衛隊法82条に基づく海上警備行動の発令だ。海上警備行動は、武器を持った外国の艦艇、不審船などへの対処について、海上保安庁の能力を超えると判断される場合、防衛相の命令で発令する。これまで99年の能登沖・北朝鮮不審船事件、04年の中国原子力潜水艦の領海侵犯事件の2件で発令された。
海上警備行動は日本国民の生命や財産を守るのが目的で、外国商船を襲う海賊への対処はできない。自衛艦が日本船に並走して護衛するといった運用が想定されている。
対応を急ぐ背景には、ほかの主要各国が海賊対策に乗り出していることへの焦りがある。主要8カ国(G8)で、ソマリア沖の海賊対策に艦船を派遣したことがないのは日本だけ。中国が海軍艦船を26日に派遣すると決めたことで、政府内で「対応を急がねばならない」(河村長官)との意見が強まった。(金子桂一、丹内敦子)