政府は25日、アフリカ東部・ソマリア沖の海賊対策のため、海上自衛隊艦艇の派遣を可能にする新法案を来年3月までにまとめ、国会に提出する方針を固めた。ただ、ねじれ国会で審議の難航は必至。当面の「つなぎ」として、現行自衛隊法に基づく海上警備行動を発令し、艦艇に日本船を護衛させる案も検討している。
ソマリア沖の海賊はロケット砲などで武装しており、取り締まりの際に戦闘になる恐れもある。政府はすでに、自衛隊の艦艇が海賊に武器を使っても憲法が禁じる「武力行使」にはあたらないという見解をまとめており、警察や海上保安庁に認められている範囲の武器使用は可能との立場だ。ただ、具体的な使用基準をどう定めるかなど、派遣に向けた課題も多く残されている。
麻生首相は25日夕、首相官邸で記者団に対し、新法について「考えてもいい」と述べた。さらに「(新法は)時間がかかると思うので、取り急ぎということであれば、海上警備行動で対応するということ」と語った。
新法については、河村官房長官が26日、自民党の保利耕輔政調会長と会い、法案を検討する与党プロジェクトチーム(PT)を立ち上げるよう要請する。自衛隊海外派遣に慎重な公明党もPTでの議論は容認する構えだ。
政府が検討している新法はソマリア沖に限らず海賊行為全般を自衛隊艦艇が取り締まるための「一般法」。これまで国内法にはなかった「海賊罪」を新たに設け、日本人や日本の積み荷を載せていない外国船への海賊行為も取り締まり対象とする。国連平和維持活動(PKO)参加に続く、自衛隊による国際貢献の新分野と位置づける考えだ。