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【社説】

核軍縮 米ロ協調で転機の年に

2009年1月20日

 今年は核軍縮で転機の年になるかもしれない。協調外交を掲げて、核兵器の削減や核物質の管理強化に意欲を見せるオバマ米大統領が二十日、就任する。推進役を期待したい。

 オバマ氏は候補者だった昨年七月、ベルリンで演説し、「核兵器のない平和な世界を追求すべき時が来た」と強調した。米議会に包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を促すと言明している。

 核軍縮の機運は米国のかつての指導層にも広がっている。元国務長官のキッシンジャー、シュルツ両氏ら四人は二〇〇七年一月、共同で米紙に寄稿し、核廃絶を求める声明を出した。

 米ソ冷戦時代には「相互確証破壊」(核兵器を使えば互いに滅びるという恐れ)から核による均衡は有効であったが、いまやその効果は失われた。北朝鮮が核実験をし、イランはウラン濃縮計画を断念しない。さらに国際的なテロ組織が核兵器を手にする危険もある。こういう現実を見れば、各国は核兵器そのものをなくすことを究極の目標にすべきだ−という考えだ。かつて核戦力を背景にした外交を進めた高官たちがそろって核廃絶を掲げた点を評価したい。

 核軍縮のカギを握るのは、全世界の核弾頭の95%を保有する米国とロシアである。両国は旧東欧圏などへの影響力行使をめぐって対立しているが、核拡散と核物質や技術の危険な流出を防ぎたいという点では利害が一致している。

 米ロ間の第一次戦略兵器削減条約(START1)が年内で失効するが、両国は協調して新条約締結に向けた合意を目指すべきだ。そうなれば、核軍縮への大きな節目となる。

 オバマ新政権にはインド、パキスタンなどにCTBTの早期署名、批准を促すよう望みたい。

 国際社会の動きに、日本は敏感でありたい。被爆国であると同時に、米国が提供する核の傘の中にいるという矛盾はある。

 だが原爆の悲惨さを体験した国として、米ロ両国に核軍縮交渉の進展を働き掛け、国際社会でも兵器用核分裂物質の生産禁止を求める条約(カットオフ条約)の交渉開始を引き続き呼び掛けるべきだ。

 今年は国際原子力機関(IAEA)の事務局長選出が行われ、天野之弥ウィーン国際機関代表部大使が立候補している。選出されれば、北朝鮮やイランについて核の軍事転用を監視する重責を担うことになる。

 

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