市区町村が運営する国民健康保険で、保険料(税)を滞納する世帯が、五世帯に一世帯の割合となっていることが明らかとなった。
厚生労働省の発表によると、一カ月でも滞納した世帯は、昨年六月一日現在で四百五十三万世帯に上った。七十五歳以上は昨年四月から後期高齢者医療制度に移ったため世帯数は減少したが、加入世帯に占める割合は20・9%と過去最悪の結果だ。
都道府県別では、世帯数で最も多いのは東京都の六十四万世帯で、割合は大阪府の28・5%が最も高い。
滞納が増えた原因について、厚労省は「無所得や低収入の人が増え、年々上昇する保険料を支払う余裕がないため」と分析している。今年は景気後退でさらに事態が悪化する可能性が高い。保険料の算定方法の見直しが必要となろう。
滞納は、国保を運営する自治体財政を脅かすだけに、各市町村は収納率アップに力を入れてきた。二〇〇〇年度からは滞納者対策として、病院窓口で全額支払いが必要になる資格証明書や有効期間の短い短期保険証が交付されるようになった。
昨年、資格証明書が交付されたのは三十三万九千世帯と前年より千世帯減り、短期保険証は過去最高の百二十四万世帯に交付された。資格証明書での受診は、後で手続きすれば七割が還付されるものの、保険証は返納させられ、実質的には「無保険」の状態だ。受診控えにつながる懸念が指摘されている。
子どものいる家庭で、資格証明書にされて無保険となれば深刻だった。このため中学生以下の子に対しては、四月から短期保険証を交付するよう国保法が昨年、改正されたばかりだ。
しかし、問題は滞納が発生しやすい国保の構造にあるのではないか。加入者は自営業者や農林水産業従事者のほか、会社員や公務員を退職した仕事のない人が約半数を占め、低所得者が圧倒的に目立つ。最近では非正規労働者も加入する。保険料を払いたくても払えない生活の苦しい世帯に対して、なお一層の減免策や相談体制などの充実が求められよう。
厚労省は国保の財政状況も発表した。全国合計した実質赤字は四百四十五億円増の三千七百八十七億円で、全国約千八百自治体の七割が赤字に陥っている。このままでは保険料の値下げなどはできまい。病院に行けない人をつくらないためにも、医療保険制度の在り方を抜本的に考え直す必要がある。
自民党行政改革推進本部の公務員制度改革委員会は、官僚OBが再就職を繰り返す「渡り」のあっせんや、あっせんの首相による承認を容認した政令について「党に相談なく決めた」として認めない方針を決めた。
政府の方針に党が公然と異議を申し立てたのは異例だ。問題となったのは昨年末に閣議決定した国家公務員の退職管理に関する政令で、「元職員でも必要不可欠な場合はあっせんできる」と、あっせんが可能と受け取れる表現が盛り込まれていたことが発端となった。
麻生太郎首相は昨年十月の参院予算委員会で「渡り」のあっせんは禁止されるとの認識を示していたのだから、こうした政令を決定したのがそもそも間違いだったのではないか。
天下りは官製談合の温床になりやすいばかりでなく、天下りを繰り返す「渡り」で官僚は多額の退職金を受け取れるため、国民の批判は強い。
二〇〇七年に成立した改正国家公務員法では、各省庁が行う再就職あっせんをやめ、官民人材交流センターで一元化し、再就職等監視委員会が監視や承認を行うことが決まった。ところが、監視委人事は国会の承認が必要で、野党の賛成が得られないため、政令で首相があっせんを承認することにした。
麻生首相は、衆院予算委員会で、渡りを原則承認しないとしながら「国際機関での勤務経験が極めて豊富」「外国当局との交渉に十分な知識経験を有する場合」は例外と述べた。抜け道を残しているようなものだ。
民主党や自民党を離党した渡辺喜美元行政改革担当相だけでなく、党内からも撤回の声が強いことをしっかりと受け止めねばならない。就任時から「霞が関寄り」が指摘されてきた首相の改革への姿勢が問われよう。
(2009年1月19日掲載)