いわゆる「派遣切り」など、製造業を中心に人員の削減が広がる中、政府は人手不足の業種で雇用を生み出す対策を打ち出しています。その候補となっているのが農林水産業や介護の分野がですが、果たして政府の思惑通りに行くのでしょうか。
「生きたまま刺身でも、こりこりおいしいですし、あとは普通のエビ料理ですね、天ぷら、から揚げ」(岡田土建工業 岡田巖社長)
中南米が原産のエビ、「バナメイ」。ビニールハウスでこのエビを養殖しているのは、なんと新潟県内の建設会社です。
「ちょうど今作業している人たちは、『岡田土建』の資材置き場から、エビの出荷作業を応援にきている人」(岡田土建工業 岡田巖社長)
エビの養殖を始めたのは、3年前。公共工事が大幅に減少する中、本業の利益はピーク時の半分以下にまで落ち込んでいました。社員を解雇しないためには、新しい収入源が必要。そのため、水産業に乗り出したのです。社員にとっては、まったく畑違いの仕事ですが・・・
「こっちの方が楽しい、エビは生き物だもの」(社員)
とはいえ、なかなか採算には乗らず、この2年間ボーナスはほとんどなし。新入社員も、5年間採用していません。
「正直に言えば、雇用を守るなんて大それた発想は難しすぎた。とてつもなく難しい課題だと改めて認識はしてますが、始めたのだからやめるわけにはいかない」(岡田土建工業 岡田巖社長)
日に日に深刻さを増す、雇用環境の悪化。政府は農林水産業で求人を募集し始めたほか、介護の分野で失業者を受け入れようという案も打ち出しました。人手不足の分野で新たな雇用を生み出すという発想ですが、果たして受け皿となるのでしょうか。
富山県内の介護施設。地元の建設業者が事業を拡大しようと、6年前に別会社として設立しました。
スタート当初からの人手不足。建設会社の経理担当だった女性も介護施設で働くことになり、ヘルパー2級の資格も取得しました。しかし、それまでの仕事とのギャップは大きく、職員同士の人間関係にも苦労したといいます。
「過去の仕事はマイペースで進めるところもあったんですけど、ここはやっぱり協力的に、チームワークでやらないと、できないものですから」(建設会社から出向した社員)
一方、介護事業は順調に拡大し、職員の数は6年で倍以上に。雇用を生み出すことにつながったのですが・・・
「きちんと教育できないなら、去ってもらうしかないだろうという思いはありましたよ。一番迷惑するのは、利用者であるお年寄りですから」(朝日建設 林和夫社長)
職員が増えるほど言葉遣いや対応が粗いというクレームが目立つようになり、重要なのは職員の数ではなく、介護に向いている人を時間をかけて教育することだと痛感したといいます。
「介護の方では人が足りない。でも、一方でクビ切りが始まっている。ミスマッチだ、さあ行け、そんなものではないとは思う」(朝日建設 林和夫社長)
農業や介護など人手不足の分野で、雇用を生み出そうという政府の緊急避難策。技術や能力の訓練にまで踏み込んで支援をしなければ、計画倒れになりかねません。(19日13:32)