【WEBアニメスタイル】アニメブームと手塚治虫・補足
先週は「アニメ様365日」で4回かけて『火の鳥2772 愛のコスモゾーン』について触れた。業界のある人に「何故、『火の鳥2772 愛のコスモゾーン』があんなに長いのか分からない」と言われたけど、自分でもあんなに長くなるとは思わなかった。自分にとって、あの作品とその頃の手塚治虫の発言に感じた違和感が、それだけ気になるものだったのだろう。
第42回 アニメブームと手塚治虫
第43回 『火の鳥2772 愛のコスモゾーン』
第44回 『火の鳥2772 愛のコスモゾーン』の苦悩
第45回 手塚治虫のマンガとアニメーション
「アニメ様365日」で『火の鳥2772 愛のコスモゾーン』について書き終えた後に、Amazonで注文した「観たり撮ったり映したり 増補・改訂 愛蔵版」が届いた。これはキネマ旬報で連載していた手塚治虫のコラムをまとめたもので、この「増補・改訂 愛蔵版」は1995年の刊行。この本は一度買ったはずなのだが、見あたらなくなっていたので、また買ってしまった。
この中に「アニメ家族の断絶」という回があり、商業アニメ寄りのアニメイベントがアート的な作品を認めていない事、、アートよりのアニメイベントが商業アニメを認めていない事、アリメカのアニメマニアが日本の一部の作品のみに注目している事、あるいは、広島国際アニメーションフェスティバルの最中に、たまたま広島に来ていたとある有名アニメーター(本文を読むと誰の事であるか大体分かる)が、まるでフェスティバルに興味を持たないのをがっかりしたというエピソード等を取り上げて、それを「アニメ家族の断絶」として嘆いている。広島国際アニメーションフェスティバルが始まったのが1985年だから、それ以降に書かれた原稿なのだろう。
この時はむしろ、アート寄りのアニメイベントの主催者が、国産の劇場アニメやTVアニメを閉め出そうとしているのに対して、若干否定的な立場になっているとも見える。なるほど、なるほど。もっと、『火の鳥2772 愛のコスモゾーン』以降の商業アニメに関する発言をチェックしてみたい。
また、「観たり撮ったり映したり 増補・改訂 愛蔵版」巻末には、手塚治虫と石上三登志の対談が掲載されている。これは『火の鳥2772 愛のコスモゾーン』が完成した後のものであるようだ。連載で引用した「SFアニメ大全集」の対談ほどは、ズバズバと言ってはいないが、同じ内容をちょっと切り口で語っていて面白い。手塚治虫は『宇宙戦艦ヤマト』はほとんど観ていないのだが、『ヤマト』のファンの声が聞こえてくるので意識せざるを得ないという発言もある。石上さんが、『火の鳥2772 愛のコスモゾーン』の中に、ディズニー的なアニメーション、今様のSFアニメーション、そして、その間で悩んでいる部分が、それぞれどのように作品に現れているかを指摘しているところがあり、これは流石だなと思った。
以下は余談。さっきも書いたように「観たり撮ったり映したり 増補・改訂 愛蔵版」は1995年の刊行で、僕が買ったのは1刷。刊行当時のチラシがそのまま挟んであり、それが「キネマ旬報社のアニメの本」というタイトルで、『天地無用!魎皇鬼』関連書籍や、篠原恵美や折笠愛の写真集の情報をまとめたものだった。いやあ、懐かしかった。
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