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予算10万円で 初めて着物を誂える(後編)

 着物用の反物を選んだら、次は、羽織を合わせます。
 着物と羽織は、「お対(つい)」とか「アンサンブル」といって、同じ色柄で仕立てることもありますが、男の着物は色柄がシンプルなので、カジュアルな着物の場合は、違う色を合わせることが多くなりました。そのほうが、おしゃれだからです。

 茶系の着物にあわせて羽織用に選んだのは、グレーと墨色の紬2反。帯は、店主のお勧めに従いました。鏡の前に立った洋服のままの高橋さんに、まずは半襦袢を。次に、手早く反物を着物風に身体に巻いていきます。

 

半襦袢
この半襦袢の胴は綿、ブルーの袖はポリエステル。この上に着物を着ると、長襦袢を着ているように見えるので、長襦袢は不要。カジュアルな着物には、白以外の半衿を付けて着る。ここではグレーの半衿を合わせています。

仮着付け
反物を着物や羽織風に、仮着付け。「実際に着物を着た感じがよくわかりますね」と、高橋さんは感心しきり。

羽織2色
左はグレーで少し光沢があり、右は墨色で光沢がない。着物より羽織の色が目立つことに気が付いた高橋さんは、柔らかい色のほうのグレーを選びました。

羽織紐選び
羽織をグレーに決めたら、次は羽織紐を。だんだん余裕がでてきた高橋さん。羽織紐を指定して合わせてもらい、「目立ちすぎるかな?」 視線は、次に合わせたい羽織紐に・・・。


いろいろな帯を合わせて納得

 高橋さんは、自分でコーディネートしてみたくなってきたようです。店主が選んでくれた縞の帯を合わせていましたが、「ほかの帯も合わせたい」と、オーダーが出ました。

 左の4本は木綿(4000円)、右の1本は絹(4万円)。西陣織(※)の絹の帯を合わせると、
「いいな。これが一番合うんじゃないか」
「いい帯を合わせると、着物もずっとよく見えるんです」
しかし、予算10万円では買えません。木綿の4本のうちで迷ったのが、下段左の博多織(※)ふうの茶色い帯。あとは目立ちすぎたり、溶け込みすぎたりするようです。結局、店主が選んでくれた縞柄の帯がよいと得心。


※西陣織(にしじんおり)/博多織(はかたおり)
「西陣」も「博多」も帯の産地です。通常、「西陣織」、「博多織」といった場合、正絹(絹100%)のものをさします。
織柄に特徴があるのが、博多織です。伝統的な博多織の柄は「献上博多」といい、上の画像の左端と右端の帯がその柄ゆきを踏襲しています。ただし、画像の帯は木綿なので、「綿博多」といいます。西陣織は、柄の特徴はありません。織り方も色々です。本来は、京都の西陣で織られた帯という意味ですが、今では絹の高級な帯の代名詞のように用いられることが多くなりました。

仕立て上がりまで40日を目安に

「ああ、いいですね」「お似合いです」
反物を選び、小物を合わせるうちに、どんどん表情が変わっていった高橋さん。

 最後に採寸。ネットで注文するときは、身長から着丈を割り出してくれますが、初めて誂えるときは、できれば呉服店に行ったほうがよいでしょう。スーツのオーダーと同じように、呉服店が寸法を保存しておいてくれるので、二度目からは、よほど体型が変わらないかぎり採寸は不要です。

仕立てあがるまでに約40日。急ぎの場合は、別途料金がかかるそうです。

最終回には、この着物を着て、浅草にでかけます。


予算10万円で誂えました。

撮影協力:
たちばなや
正絹紬着物(裏地・仕立て付き) 39,800
正絹紬羽織(裏地・仕立て付き) 38,000
角帯 4,000
羽織紐 5,000
半襦袢(紐、半衿付き) 7,000
足袋 2,900
腰紐1本 300
草履 3,000
ステテコ サービス
100,000(消費税別)

森 恵子(もり・けいこ)

和文化と文学を得意ジャンルとする編集者・ライター。幼い頃から日本舞踊に親しみ、着物歴は長い。着物雑誌やムックの編集執筆、著者インタビューなどを多く手がける。着物関係の著書に『シネマきもの手帖』がある。

2008年12月24日  読売新聞)

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