(cache) ブッシュ大統領による一般教書演説
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*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

ブッシュ大統領による一般教書演説

米国議会、ワシントンD.C.

2002年1月29日

 ありがとう。下院議長、チェイニー副大統領、議員の皆様、来賓の皆様、国民の皆様。われわれの集うこの夜、わが国は戦時下にあり、景気は後退し、文明世界は前例のない危機に直面している。しかし、わが国の現状はかつてないほど力強い状況にある。

 われわれは前回、衝撃と苦難の中で、ここに集まった。そして、わずか4カ月の間に、わが国は犠牲者を慰め、ニューヨークとペンタゴンの再建を始めた。強力な「連合」関係を構築し、世界の何千人ものテロリストを捕らえ、逮捕し、アフガニスタンにおけるテロリスト訓練基地を破壊した。国民を飢えから救い、そして1つの国を残虐な圧制から開放した。

 カブールの米国大使館には、再び米国旗が翻っている。かつてアフガニスタンを占拠していたテロリストは、現在、グアンタナモ基地の独房を占めている。そして、部下に命をかけろと命じたテロ指導者は、自らは逃げ回っている。

 米国とアフガニスタンは、今や、テロと戦う同盟国である。両国は、アフガニスタンの再建を目指すパートナーである。そして、今晩、開放されたアフガニスタンの暫定指導者であるハミド・カルザイ議長を迎えた。

 前回、この議場にわれわれが集まった時には、アフガニスタンの母親や娘たちは、自宅で囚われの身で、働くことや学校に行くことが許されなかった。現在、女性には自由が与えられ、アフガニスタンの新政権の一部閣僚は女性である。女性問題担当相のシマ・サマル博士を紹介したい。

 われわれの前進は、アフガニスタン国民の勇気と、同盟国の決意と、米軍事力の成果である。私は、わが軍に行動を起こすことを命令したとき、軍の勇気と力量に全幅の信頼をおいていた。そして今夜、彼らのおかげで、われわれはテロに対する戦いに勝利を収めつつある。米軍の兵士たちは、米国に敵対するすべての敵に明確なメッセージを伝えた。たとえ7000マイル離れようとも、海や大陸を隔てようとも、山頂や洞窟に潜んでいようとも、わが国の正義の手から逃れることはできない、というメッセージである。

 この4カ月間に、完全に消え去ることのない悲しみと痛みが多くの米国人にもたらされた。失った2人の息子を身近に感じるために、彼らが亡くなった場所であるグラウンド・ゼロを毎日訪れる引退した消防士がいる。ニューヨークで行われた追悼式で、亡くなった父親にフットボールを捧げた幼ない男の子がいる。フットボールに添えられたカードには「愛するお父さん、このボールを天国に持っていって下さい。いつの日かまたお父さんとプレーのできる日がくるまで、もう僕はフットボールをしたくないから」と書いてあった。

 先月、マザリシャリフで死亡したCIA職員で海兵隊員の夫マイケル氏の墓前で、シャノン・スパンさんは「センパーフィ、愛しの人」(訳注:Semper Fi=米海兵隊のモットーで「常に忠実」の意)と別れの言葉を述べた。ここにシャノンさんを招いている。

 シャノンさん、そして愛する人を失ったすべての人々に、わが国の大義は正しく、また自由のために命を捧げたマイケル氏をはじめとするすべての人のおかげであることを、わが国は決して忘れないことを、私は保証する。

 わが国の大義は正義であり、またそうあり続ける。われわれがアフガニスタンで見たものは、われわれが最も怖れていたことを裏付けるものであり、この先にある任務の真の大きさを示していた。われわれは、罪なき人々の死を笑う敵の姿を写したビデオに、彼等の憎悪の深さを見た。そして、その憎悪は、敵のたくらんだ破壊の狂気に見ることができる。われわれは、米国の原子力発電所や上水道施設の図面、化学兵器の製造法の詳細な説明書や米国の都市の監視地図、そして米国や世界各地の重要建築物の綿密な説明書を発見した。

 アフガニスタンでわれわれが発見したものは、われわれのテロに対する戦いは、アフガニスタンで終るどころか、ほんの始まりにすぎないことを示した。昨年9月11日の同時多発テロで旅客機をハイジャックした19人の犯人の大半がアフガニスタンの基地で訓練を受けていた。他にも数万人ものテロリストが訓練を受けている。殺人の手口を学んだ数千人の危険な殺人者、その多くが無法政権の支援を受けており、警告なしに爆発する時限爆弾のように、今や世界中に散らばっている。

 わが国の法執行官と連合諸国のパートナーのおかげで、多数のテロリストが逮捕されている。しかし、数万人もの訓練されたテロリストがいまだに逮捕されずにいる。こうした敵は、世界全体を戦場と見なしている。だから、われわれは、彼らがどこにいようとも追跡していかなければならない。訓練基地が存在する限り、またテロリストをかくまう国家が存在する限り、自由は危険にさらされる。そして、米国も同盟国も、それを許すべきではなく、また許すことはない。

 わが国は、引き続き、2つの大きな目的を断固として,忍耐強く、粘り強く追い求めていく。第1に、われわれは、テロリスト基地を壊滅し、テロのたくらみを打ち砕き、そして彼等を裁きにかける。第2に、われわれは、化学・生物・核兵器を手に入れようとしているテロ政権が、米国や世界を脅かすのを阻止しなければならない。

 米軍は、アフガニスタンにあるテロ訓練基地を壊滅させた。しかし、そうした基地は、少なくとも十数カ国に存在する。ハマスやヒズボラ、イスラム聖戦、ジャイシェ・ムハマドなどのテロリストの地下組織は、人里離れたジャングルや砂漠で活動し、また大都市の中心部にも潜んでいる。

 最も目に見える軍事行動はアフガニスタンで行われているが、米軍はそれ以外の場所でも活動している。現在米国は、フィリピンに軍隊を派遣している。それは、米国人1人を処刑し、いまだに複数の人質を押さえているテロリストのメンバーをフィリピン軍が追跡する訓練を支援するためである。米軍は、ボスニア政府と協力して、米国大使館の爆破をたくらんだテロリストを捕らえた。米国海軍は、兵器の輸送や、ソマリアにテロ基地が築かれるのを阻止するために、アフリカ沿岸を巡視している。

 私は、すべての国々が米国の呼びかけに応えて、自国や米国に脅威を与えているテロリストの寄生者を排除することを期待する。多くの国々が積極的に行動している。パキスタンは現在、テロの一掃を図っており、私は、ムシャラフ大統領の強い指導力に敬意を表する。

 しかし、中にはテロと対決することに及び腰の政府もある。もし、そうした政府が行動を起こさないならば、間違いなく米国が行動を起こす。

 われわれの第2の目的は、テロを支援する政権が、大量破壊兵器によって米国や友好・同盟国を脅かすのを阻止することである。これらの政権の中には、9月11日以後、沈黙を保つ政権もある。しかし、われわれには、彼らの正体が分かっている。北朝鮮は、自国民を飢えさせる一方で、ミサイルや大量破壊兵器で武装している政権である。

 イランは、これらの兵器を求め、テロを輸出している。そして、選挙で選ばれていない少数の者がイラン国民の自由への望みを絶っている。

 イラクは、引き続き米国への敵意を誇示して、テロを支援しつづけている。イラク政権は、10年以上にわたり炭疸菌、神経ガス、そして核兵器の開発をたくらんできた。この政権は、既に毒ガスを使い、何千人もの自国民を殺害している。その後には、死んだ子供の上に覆いかぶさる母親の死体が残されていた。この政権は、国際査察に同意した後に、査察官を追い出した。この政権は、文明社会の目から何かを隠している。

 このような国々と、そのテロリスト協力者は、世界平和を脅かすために武装した、悪の枢軸である。大量破壊兵器を入手しようとするこれらの政権がもたらす危険は重大であり、また増大しつつある。彼らが、テロリストに大量破壊兵器を供与する恐れもあり、そうなれば、その兵器はテロリストが自分たちの憎悪をはらす手段になるのである。彼らが、わが国の同盟国を攻撃したり、米国を脅そうとすることもありうる。いずれの場合も、無関心の代償は破滅的なものになる。

 われわれは、連合諸国と緊密に連携をとり、テロリストやテロ支援国家が大量破壊兵器の製造と運搬に必要とする材料や技術そして専門知識を入手できないようにする。われわれは、不意の攻撃から米国と同盟国を守るために、効果的なミサイル防衛を開発・配備していく。そして、あらゆる国が、「米国は国家の安全を確保するために、必要なことを行う」ことを認識するべきである。

 われわれは慎重に行動する。しかし、時はわれわれの味方ではない。私は、危険が高まっているのに、何か事が起こるのを座視するようなことはしない。私は、危機が近づくなかで、傍観するようなことはしない。米国は、世界で最も危険な政権が、世界で最も破壊的な兵器により、われわれを脅かすことを許さない。

 われわれのテロに対する戦いは、順調に始まったが、まだ、始まったばかりである。この戦いは、われわれの時代に終了しないかもしれない。しかし、この戦いは、われわれの時代に戦わなければならないし、また、われわれの時代に戦っていく。

 われわれには、途中で止めることはできない。もし、テロ基地を現状のまま放置し、テロ国家を阻止しないままに、今、止めてしまうならば、われわれの安全保障に対する意識は、誤りであり、また一時しのぎにすぎないことになる。歴史は、米国と同盟国に行動を求めてきた。そして、自由のための戦いを闘うことは、われわれの責務であり、また名誉でもある。

 われわれの最優先課題は、常に国家の安全でなければならない。そして、私が議会に提出する予算には、そのことが反映されている。私の予算は、この戦いに勝つこと、わが国土を防衛すること、そして経済を回復させること、という米国にとっての3つの大きな目標を支える。

 9月11日のテロは、米国の最良の部分、そしてこの議会の最良の部分を引き出した。そして、私は、議員諸氏の結束と決意を国民の皆さんと共に称賛したい。今や、米国民が、国内問題についても同様の精神で取り組むのは当然である。私は、自分の党の一員であることに誇りをもつ。しかし、戦いに勝利を収め、国民を守り、米国に雇用を創出するためには、まず第1に、共和党員でもなく、民主党員でもなく、米国人として行動しなければならない。

 この戦いには膨大な費用がかかる。われわれは、月に10億ドル以上、つまり、毎日3000万ドル以上を費やしている。さらに、われわれは今後の作戦に備える必要もある。アフガニスタンにおいて、高価な精密兵器は、敵を負かし、罪のない人々の命を助けることが証明された。そして、われわれには、そうした精密兵器がもっと必要だ。われわれには、古くなった航空機を新しいものに入れ替え、軍隊をより機敏なものとし、世界のどこへでも素早くかつ安全に派遣する必要がある。わが軍の兵士に、最高の兵器と装備を与え、最高の訓練を受けさせることは、当然である。そして、彼らの給与も引き上げる必要もある。

 私の予算には、過去20年で最大の国防予算の増額が含まれている。自由と安全には費用がかかるが、かかりすぎるということはない。わが国を守るために、費用がいくらかかろうとも、われわれはそれを支払っていく。

 私の予算の次の優先課題は、新たな攻撃の脅威に対して国民を守り、わが国を強化するために、可能な手はすべて打つということである。9月11日の事件からの時間と距離が、われわれの安全を高めてくれるわけではない。この事件による教訓を踏まえて行動する必要がある。米国はもはや広大な海で守られてはいない。海外での活発な行動と、国内での警戒の強化によってのみ、われわれは攻撃から守られる。

 私の予算では、国土防衛戦略の継続のための予算をほぼ倍増している。この戦略では、生物テロ、緊急対応、空港・国境警備、そして情報収集強化の4分野に重点を置いている。炭疸菌やその他の人命にかかわる病に対するワクチンを開発する。勇敢な警官や消防士の訓練と装備のために、州や地域社会に対する支援額を増額する。情報の収集と共有の強化、国境パトロールの拡大、空の旅の安全強化、米国への訪問客の出入国状況を追跡する技術を活用する。

 国土の安全保障は、米国を強くするだけではなく、多くの改善を生み出す。生物テロの研究から得られた知識により、公衆衛生の改善がもたらされる。警察と消防組織の強化により、街が一層安全になる。国境警備の強化は、違法麻薬に対する戦いの助けとなる。そして、政府が国土の安全保障強化に努めていく中でも、米国は引き続き警戒を怠らない市民の目と耳に依存している。

 クリスマスの数日前に、旅客機の中でマッチに火をつける乗客の姿が、乗務員の目にとまった。乗務員と乗客は素早くその男を取り押さえた。この男は、アルカイダによる訓練を受けた男であり、爆発物を身につけていた。機内の人々が注意を怠らなかったことで、200人近い人々の命が救われた。その時の乗務員、ハーミス・ムタルディエさんとクリスティナ・ジョーンズさんを紹介する。

 国家と国土の安全保障のための予算に次いで、私の予算の最後の重要優先課題は、米国民のための経済の安全保障である。戦いに勝ち、国土を防衛し、米国経済をよみがえらせる、という重要な国家目標を遂行するために、わが国の財政は赤字に転じる。しかし、議会が支出を抑え、財政的に節度のある行動を取る限り、この財政赤字は、小規模かつ短期的なものになる。われわれには明確な優先課題がある。そして、われわれは海外で示したものと同様の目的と決意をもって国内でも行動しなければならない。われわれは、この戦いに勝ち、景気後退を克服する。

 仕事を失った国民に救いの手を差し伸べる必要がある。そのために、私は、失業手当と、医療保険への直接支援の延長を支持する。しかし、米国の勤労者は、失業手当以上に、安定した給料が必要である。働く米国には、繁栄がある。したがって、私の経済安保計画は一言に要約される。雇用である。

 良い雇用を作り出すには、良い教育が必要である。この点では、われわれは素晴らしいスタートを切っている。共和党と民主党は、落ちこぼれ児童をつくらないような歴史的な教育改革を達成するために協力した。共和党のジョン・ボーナー委員長(下院教育・労働力委員会)や、ジョージ・ミラー下院議員(同委員会の民主党最古参委員)などの両党の皆さんと仕事をしたことに、私は誇りを抱いている。そして、ジャド・グレッグ上院議員(保健・教育・労働年金委員会の共和党最古参委員)。それに、改革の内容があまりにも満足できるものなので、友人の民主党エドワード・ケネディ議員(同委員会委員長)さえもほめてあげたいくらいだ。私がこのようなことを言うことを、クローフォードのコーヒーショプの人たちは信じられないと思う。しかし、この法案でわれわれが行ったことにより、駆け引きせずに、結果に集中すれば、何が可能になるのかが示された。

 しなければいけないことは、ほかにもまだある。児童の就学前教育と幼児教育プログラムを改善して、入学後の読み書きや授業についていくための準備を、子供たちに行う必要がある。教育大学と教員養成の質を高め、「すべての教室に、優れた教師を」という米国の重要目標に向けた教師募集活動を開始する必要がある。

 良い雇用はまた、安定した供給と妥当な価格のエネルギーにも依存する。議会は、資源保護の奨励、技術促進、インフラ構築の法律整備に務める必要がある。そして、議会は、国内におけるエネルギー生産拡大の立法措置を取り、米国の外国石油への依存を減らす必要がある。

 良い雇用は、貿易の拡大に依存する。新しい市場の開拓により、新たな雇用が創出される。そこで、私は議会に、貿易促進権限付与法案の承認を求める。貿易とエネルギーという2つの重要な課題に関して、下院は雇用創出法案を通した。そして、私は、上院に対してこの法案の可決を求める。

 良い雇用は、健全な税制に依存する。昨年、議会の中には私の減税規模は小さ過ぎると考える議員がいた。中には、大き過ぎると考える議員もいた。しかし、減税が実施されると、国民の大半は、その規模はほぼ適正と受け止めた。議会は、国民の意見に耳を傾け、税率削減、子供のいる家庭における税額控除の倍増、相続税の廃止をもって、それに応じた。長期的成長のためにも、国民の将来に対する計画を支援するためにも、これらの減税を永続的なものにしよう。

 景気後退から抜け出す道、そして雇用を創出する道は、工場と設備への投資を促し、減税を加速させて、国民の消費に使えるお金を増やすことにより、経済を成長させることである。米国の勤労者のために、景気刺激策法案を成立させよう。

 良い雇用は、福祉改革の目的でなければならない。この重要な改革を再度承認するに際して、われわれは、その目的が政府への依存度を減らし、すべての米国民に仕事の尊厳を与えることにあることを、常に覚えておかなければならない。

 米国民は、経済の保障が、健康の保障なしには、直ちに消滅することを知っている。私が今年議会に望むのは、患者の人権法を制定すること、保険未加入の労働者が医療保険に加入できるように支援すること、退役軍人の医療補助支出に歴史に残るような増加を認めること、そして、処方された医薬品を支給対象に含めるメディケア(高齢者医療保険制度)の健全化と近代化を図ることである。

 良い雇用から、定年後の保障が生まれるべきである。私は、議会に対し、401K(確定拠出型年金)と年金制度のための新たなセーフガードの制定を求める。懸命に働き、生涯をかけて貯蓄してきた労働者に、会社の倒産によりすべてを失うようなリスクを負わせてはならない。会計基準と情報公開義務をより厳格にすることにより、米国企業の従業員と株主に対する説明責任を高め、そして企業行動基準を最高水準に引き上げることが必要である。

 定年後の保障は、社会保障の確約を守ることにかかっており、そして、われわれは確約を守る。われわれは、社会保障を財政的に安定させ、若年勤労者には望めば個人年金に加入することを可能にする必要がある。

 議員の皆さん、私は皆さんと共に、今後数カ月にわたり、他の課題にも取り組む。生産的な農業政策、環境の浄化、特にマイノリティにおける持ち家の拡大。そして、慈善団体や宗教団体の良い活動を奨励する方法である。こうした重要な国内問題に、テロに対する戦いで示したものと同様の協力精神によって、私と共に取り組んで欲しい。

 過去数カ月間、私は、この試練の時におけるわが国の真の姿を見ることができた。われわれの敵は、米国は弱く、物質主義的で、恐怖と利己心により分裂すると信じ込んでいた。彼等は邪悪と同じくらい間違っていた。

 米国民は、勇気と同情、力と決意をもって堂々と応じた。私は、英雄たちに会い、多くの家族の肩を抱き、救助隊員の疲れきった顔を目の当たりにして、私は米国の人々に畏敬の念をおぼえた。

 そして、私の思いに皆さんの共感を頂ければと願う。危機にあるわが国に力と冷静さと慰めをもたらしてくれる1人の米国人、ファーストレディのローラ・ブッシュに、私は感謝の意を表する。

 9月11日に起きた悪行を望む者は、誰一人としていない。しかし、米国が攻撃された後、国民全体が鏡を見て、より良い自分に気付いたようだった。われわれは、お互いに、国に対して、そして歴史に対して責任ある市民であることを、思い起こした。われわれは、蓄積できる物よりも、自分たちがなしうる善行に考えを及ぼし始めた。

 長い間、わが国には「良いと思ったら実行しろ」という教えがあった。今、米国には、「さあ進もう」という新しい倫理と信条が芽生えている。兵士の犠牲、消防士の堅い友情、そして一般市民の勇気と寛容の中に、われわれは、責任の文化がどのようなものであるかを、垣間見ることができた。われわれは、自己よりも大きい目標を目指す国家でありたいと、願っている。われわれには、比類なき機会が与えられた。そして、この機会を逃がしてはならない。

 私が今夜、国民の皆さんにお願いしたいのは、今後少なくとも2年間、あなたがたの人生の4000時間を、自分の隣人と国家の奉仕に費やして欲しいということである。既に奉仕を行っている多くの人々に感謝をする。奉仕の方法について迷っている人には、奉仕を始める相応しい所がある。米国に生まれた最善を継続し広げるために、USA自由部隊への参加を勧めたい。自由部隊は、3つの分野に重点を置く。国内の緊急事態への対応、地域社会の再構築、そして米国人の慈しみの心を世界に広げることである。

 USA自由部隊の目的の1つは、国土の安全である。米国には、主要な緊急事態に際して動員可能な引退した医師や看護婦を必要とする。警察や消防組織を手助けするボランティアを必要とする。危険を見抜く訓練を十分につんだ輸送作業員や公益事業施設の作業員を必要とする。

 わが国はまた、地域社会の再構築に従事する市民を必要とする。子供たち、特に両親が刑務所に入れられている子供たちを愛してくれる精神的指導者を必要とする。そして、問題を抱える学校により有能な教師を必要とする。USA自由部隊は、20万人以上の新たなボランティアを募り、アメリコーやシニア部隊による成果をさらに拡大し、改善していく。

 そして、米国は、わが国の慈しみの心を世界のあらゆる場所に広げるための奉仕をする市民を必要とする。そのために、われわれは、平和部隊の約束を新たにして、今後5年間にボランティアの数を倍増させ、そして平和部隊に、イスラム世界における開発と教育と機会を促進する新たな活動に参加することを求める。

 この困難の時は、比類なき機会を与えてくれている。この機をとらえて、われわれは、自らの文化を変えていかなければならない。数百万もの奉仕と慎みと優しさの行為によりはずみがついた勢いを通して、より大きな善をもって邪悪に勝つことができる。そして、われわれには、この戦時下に、永続する平和をもたらす価値観に世界を導く大いなる機会が与えられている。

 どの社会でも、父親と母親は、自分たちの子どもが教育を受け、貧困や暴力に無縁の生活を送って欲しいと願うものだ。しいたげられることを願ったり、奴隷になることを望んだり、秘密警察が深夜扉を叩くのを心待ちにする人など、この地球上に1人もいない。

 これを疑うような人は、アフガニスタンを見るがよい。イスラムの「街」は、圧制の崩壊を歌いながら祝う人々で溢れた。懐疑的な人はイスラム教の豊かな歴史を見るがよい。それは、何世紀にもわたる学問と寛容と進歩の歴史である。米国は、自由と正義を守ることで、先頭に立つ。自由と正義は、すべての人々にとり、正しく真実であり不変だからである。

 いかなる国も、これらの願望をわがものにすることはできないし、また、そうした願望から免れることはできない。われわれには、自分たちの文化を押し付ける意思はない。しかし、米国は、法の支配、国家権力の制限、女性に対する尊敬、私有財産権、言論の自由、公正な裁判、そして宗教面の寛容さという人間の尊厳の交渉の余地がない要求を擁護して断固たる立場を取る。

 米国は、イスラム世界を含む世界のあらゆる地域で、こうした価値観を主張する勇敢な人々の側に立つ。われわれには、脅威を排除し、憤りを抑えること以上に大きな目標がある。われわれは、テロに対する戦いの向こうに正義と平和の世界を求めている。

 この機会に、共通の危機がかつての敵対関係を消し去りつつある。米国は、平和と繁栄をもたらすために、かつてない形で、ロシアや中国そしてインドと協力している。世界のあらゆる地域で、自由市場と自由貿易と自由社会に生活の向上をもたらす力があることが証明されている。ヨーロッパからアジア、アフリカからラテンアメリカにいたる友好・同盟国と協力して、わが国は、テロの努力には自由の勢いを止める力のないことを実証していく。

 前回の演説で、私は、普段の生活が戻ってくることを願うと述べた。ある意味では、普通の生活が戻った。しかし、別の意味では、これまでの生活は決して戻ってこない。この困難な時を生き抜いてきたわれわれは、その困難な時によって変わった。われわれは、もはや決して疑うことのない真実を知らされた。邪悪は現実のものであり、その邪悪に立ち向かっていかなければならない。われわれは、あらゆる人種と宗教の違いを超えて、共に悲しみ、共に危険に立ち向かう1つの国である。米国の国民性の底には、道義心がある。その道義心は、不信感に勝る。そして、多くの人々が、悲運の時に、むしろ悲運の時にこそ、神が身近にいることを見出した。

 われわれが、瞬時に認識したのは、これからの10年が自由の歴史の中で決定的な時になるということ、そして、われわれは歴史上比類なき役割を果たすことを求められているということであった。世界が、これほど明確で、重大な選択を迫られたことは滅多になかった。

 われわれの敵は、他人の子どもたちを自殺と人の使命に追いやっている。彼らは、圧制と死を大義と信条として受け入れる。われわれは、それとは異なる遠い昔わが国が建国の日に選んだ道を支持する。われわれは、そのことを今日再確認する。われわれは自由とすべての命の尊厳を選択する。

 われわれは、目標に向かって断固として進む。われわれには、自由のために払う代償が分かっている。われわれは、自由の力を示してきた。そして、国民の皆さん、この重大な戦いにおいて、自由が勝利を収める。

 皆さん、ありがとう。