(cache) ブッシュ大統領の2008年一般教書演説
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*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

ブッシュ大統領の2008年一般教書演説

2008年1月28日

 下院議長、チェイニー副大統領、議員、来賓、そして国民の皆さん。私が初めてこの壇上に立ってから7年が過ぎました。その間、わが国は、想像を絶するさまざまな試練を受けてきました。私たちは、戦争と平和、世界経済における競争の激化、そして国民の健康と福祉といった問題で厳しい決断を迫られました。これらは活発な議論を要する問題であり、私たちはそれに応えて精力的に議論を行ってきたといっていいと思います。しかし、歴史には、私たちは意見の違いこそあれ、目的を持って行動したと記録されることでしょう。そして、私たちは一丸となって、米国の自治の力と強靭(きょうじん)さを世界に示しました。

 私たちは皆、国民のための仕事をするために選出されてワシントンにやって来ました。それが、この議会という組織の目的であり、宣誓した意義もそこにあります。そして、それは、私たちが今後も果たして行かなければならない責任です。

 第110回議会は、本会期終了後も長期にわたって、わが国の安全と繁栄に影響を及ぼすでしょう。この選挙年に、私たちが課せられた責任を認識し、それらを果たす決意をしていることを、国民に示しましょう。共和党と民主党は票の獲得を競い合うと同時に、結果を出すために協力することができることを、国民に示しましょう。

 機会の拡大から国防まで、私たちは順調に仕事を成し遂げてきました。しかしまだやり残した仕事があり、米国民は私たちにその遂行を期待しています。 今後待ち受けている仕事をする上で、私たちは、わが国を偉大にした哲学に基づいて行動しなければなりません。私たちは米国人として、自らの運命を決め、歴史の方向性を決める個人の力を信じています。私たちは、この国を先導する最も信頼できる指針は庶民の知恵である、と信じています。従って、私たちが行うすべての事柄において、自由な人々は賢明な選択をすることができると信じ、彼らが将来に向かって生活を向上させることができるようにしなければなりません。

 豊かな将来を築くために、私たちは国民を信頼してその財産を彼らに任せ、彼らが米国経済を発展させることができるようにしなければなりません。私たちが今夜ここに会している今、米国経済は不透明な時期を迎えています。米国は52カ月連続の雇用増加という新記録をつくりましたが、現在は雇用成長が減速しています。賃金は上昇しましたが、食料やガソリンの価格も上昇しています。輸出は増加しつつありますが、住宅市場は落ち込んでいます。全米の家庭で、景気の先行きに不安が生じています。

 長期的には、米国人は、米国の経済成長に自信を持つことができます。しかし、短期的には、成長が減速していることは誰の目にも明らかです。そこで先週、私の政権は、個人向けの減税と企業投資の奨励策を含む、充実した包括的景気対策について、ペロシ下院議長およびベイナー共和党院内総務と合意に達しました。この法案にたくさん詰め込みたいという誘惑が出てくることでしょう。しかし、そうすれば、法案の可決を遅らせたり、頓挫させることになりかねません。しかし、どちらも受け入れることはできません。これは、わが国の経済成長を持続させ、国民の雇用を維持する素晴らしい合意です。そして、本議会は、この法案を出来るだけ早急に可決しなければなりません。

 税金に関しては、すべきことがほかにもあります。議会が動かない限り、過去7年にわたって行ってきた減税のほとんどが廃止されるでしょう。ワシントンには、減税措置を失効させることは増税ではないと言う人がいます。その考えを、自分の税金納付額が平均1800ドル増えることになる、1億1600万人の米国の納税者に説明してみてはどうでしょう。また、個人的には喜んでより高い税金を支払うと言う人もいます。私は彼らの熱意を歓迎します。そして、内国歳入庁が小切手と郵便為替のどちらも受け付けるということを喜んでここに報告します。

 米国人の大部分は、税金は十分に高いと思っています。米国の家庭はすでに、ほかにも家計を圧迫するさまざまな問題を抱えていますから、連邦政府が給料から差し引く金額が上がることを心配しなければならないようになってはなりません。この不安を取り除く唯一の方法があります。それは、減税の恒久化です。そして、増税法案が私の手元に届いた場合、私は拒否権を発動するということを、連邦議員は承知しておくべきです。

 私たちが国民を信頼して各自の財産を任せるように、彼らが支払う税金を賢明に使って、彼らの信頼を得る必要があります。来週私は、151件の無駄な、あるいは肥大化した事業を廃止または大幅に縮小する予算を提出します。これで削減できる支出は総額180億ドルにを上回ります。私が提出する予算は、2012年の財政黒字化を目指して、米国を正しい進路に維持するものとなるでしょう。米国の家庭は家計の収支を合わせなければなりませんから、政府もそうすべきです。

 政府に対する国民の信頼は、議会の「イヤーマーク」、つまり審議もせずに、ぎりぎりになってこっそり持ち込まれることが多い利益誘導型プロジェクトによって損なわれています。昨年、私は皆さんに、こうした利益誘導型予算の件数と金額を自主的に半減するよう求めました。また、票決に付されることさえない利益誘導型予算を委員会報告書に紛れ込ませないよう求めました。残念なことに、どちらの目的も達成されていません。そのため、今回、利益誘導型予算の件数と金額を半減していない歳出予算案を私に送ってきた場合、私は拒否権を発動して皆さんに差し戻すつもりです。

 そして、私は明日、議会で票決が行われない利益誘導型プロジェクトは今後すべて無視するよう、各連邦政府機関に指示する大統領命令を発令します。これらの項目に予算を割り当てる価値が本当にあるならば、議会はそれについて公に審議し公開投票を行うべきです。

 私たちが共同で責任を負っている事柄は税金と歳出の問題にとどまりません。住宅問題に関しては、住宅所有の責任を持つ国民を信頼して、彼らが住宅市場の混乱期を乗り切ることができるようにしなければなりません。私の政権は、「ホープ・ナウ(HOPE NOW)」連合を組織し、抵当流れを回避しようと苦闘する多くの住宅所有者を支援しています。そして、議会はさらに支援の手を差しのべることができます。今夜、私は皆さんに、ファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)を改革し、連邦住宅局を近代化し、住宅所有者の住宅ローン借り換えを助ける州の免税債発行を可能にする法案を通過させるよう求めます。米国の家庭は試練の時を迎えており、これらの措置を取ることにより、より多くの人々が住宅を手放さずにすむ手助けができます。

 質の高い医療を提供できる未来をつくるために、私たちは患者や医師を信頼して医療面での判断を任せ、より質の高い情報と選択肢を与えて彼らを支援しなければなりません。私たちには共通の目標があります。それは、すべての米国人のために医療をもっと安価にし、サービスを受けやすくすることです。その目標を達成する最善の方法は、政府の管理ではなく、利用者の選択肢を拡大することです。従って、私は雇用主を通じて医療保険に入っていない人々に対する税法上の不利を廃止するよう提案しています。このひとつの改革で、民間保険が何百万もの人々の手に届くようになることから、私は議会に対し、この提案を今年中に可決させるよう求めます。

 また議会は医療貯蓄口座を拡大し、中小企業のために団体健康保険制度を設け、医療情報技術を促進し、意味のない医療訴訟のまん延の問題に取り組まなければなりません。これらの措置を取れば、皆さんの医療に関する決断が議会の廊下ではなく、主治医の診療室で個人的に行われるようになるでしょう。 教育に関しては、学生は機会を与えれば学ぶということを信じ、親が学校に成果を要求できるようにしなければなりません。全米の至る所に、夢を抱く子どもたちがいます。そして、彼らの夢を実現できる唯一の望みの綱が、きちんとした教育です。

 6年前、私たちは協力して「落ちこぼれ防止法(No Child Left Behind Act)」を可決しました。そして今日、その成果を否定することは誰もできません。昨年、4年生と8年生は、数学でこれまでの最高得点を取りました。読解力は高まりつつあります。アフリカ系米国人とヒスパニック系の学生は、これまでで最高の成績を上げました。今、私たちは、説明責任を向上させ、州と学区に柔軟性を与え、高校中退者の数を減少させ、苦闘している学校に特別な支援を提供するために協力しなければなりません。

 議員の皆さん、落ちこぼれ防止法は超党派的成果であり、成功しつつあります。そして、私たちには、米国の子供や、親や、先生に対し、この優れた法律を強化する義務を負っています。

 また、私たちは、学校のレベルが基準に満たない場合は、子供たちを支援するためにさらに多くのことをしなければいけません。皆さんが承認したワシントンDCの機会均等奨学金 (Opportunity Scholarships) というバウチャー制度のおかげで、わが国の首都に住む最も貧困な家庭の子供たち2600人以上が、宗教系の学校やその他の私立学校で新たな希望を見出しました。悲しいことに、これらの学校は米国の都市中心部の多くで激減しています。そこで、私は、学習のライフラインともいえる、これらの学校の強化を目的とするホワイトハウス・サミットを開催するつもりです。そして、これらの学校をより多くの子供たちに開放するために、私は皆さんに、ペル子供奨学金(Pell Grants for Kids)と称する、新たな3億ドルのプログラムを支持するよう求めます。私たちはこれまで、低所得層の大学生が自分の可能性を最大限に実現するために、ペル奨学金がいかに役立っているかを見てきました。私たちは協力して、この奨学金の規模と対象範囲を拡充してきました。今、それと同じ精神で、一定の基準を満たせない公立学校に押し込められた貧しい子供たちを、そこから解放する手助けをしましょう。

 貿易について、私たちは、米国人労働者が世界で誰とでも競争できることを信じ、海外の新しい市場を開拓して彼らを支援しなければなりません。わが国の経済成長は、米国の製品、農産物、サービスを世界中でどれほど販売できるかにかかっており、その傾向は今日ますます強まっています。そのため私たちは、貿易と投資の障壁をできる限り取り除くよう努力しています。ドーハ・ラウンドの貿易交渉の妥結に向けて取り組んでおり、今年中に満足できる合意に達しなければなりません。同時に、自由貿易協定を可決して、新しい市場を開拓する機会を追求しています。

 ペルーとの間で締結した素晴らしい協定を議会が承認したことに感謝します。そして、今度は、コロンビアとパナマと韓国との協定を承認するよう求めます。現在、これらの国々から多くの製品が非課税で米国に入ってきていますが、米国製品の多くはこれらの市場で法外な関税を課せられています。これらの協定によって条件が平等となり、わが国にとって1億人近い消費者へのアクセスが向上するでしょう。また、世界で最も優秀な労働者に質の高い雇用を提供することになるでしょう。彼らが作る製品は「米国製」と表示されています。

 これらの協定は、米国の戦略的利益も促進します。皆さんに審議していただく最初の協定は、米国の友人であり、暴力と恐怖に立ち向かい、麻薬密売人と戦うコロンビアとの協定です。この協定を可決しなければ、南北アメリカ大陸で誤ったポピュリズムを広めようとする者に勢いを与えることになります。そこで、私たちは協力してこの協定を可決し、この地域の隣人たちに民主主義が生活の向上をもたらすことを示さなければなりません。

 貿易は、より質の高い雇用や選択肢、そして価格の低下をもたらします。しかし、一部の米国人にとっては貿易が失業を意味する場合もあるため、連邦政府は彼らに支援の手を差し伸べる責任があります。私は、失業者が新しい技術を習得し再就職するのを支援できるよう、議会に対し貿易調整支援政策の再承認と改革を求めます。

 将来のエネルギー安全保障を確立するため、私たちは、米国の研究者や起業家の創造的才能を信頼し、次世代のクリーンエネルギー技術開発を支援しなければなりません。私たちの安全、繁栄、そして環境を維持するには、石油に対する依存度を下げる必要があります。昨年、私は、今後10年間で石油消費量を削減する法案を可決するよう皆さんに求め、皆さんはそれに応えてくれました。今、私たちは協力して次の措置を講じるべきです。二酸化炭素の排出量を抑えながら石炭による発電を可能にする新技術に資金を提供しましょう。再生可能エネルギーと温暖化ガスを排出しない原子力の利用を増やしましょう。未来の自動車やトラックの動力源となる、高性能電池技術や再生可能燃料の開発に投資を続けましょう。インドや中国などの開発途上国が、クリーンエネルギー資源の活用を増やす上で役立つ、国際クリーン技術基金を新たに設立しましょう。そして、温暖化ガスの増加を遅らせ、止め、最終的には削減する可能性のある国際協定を結ぼうではありませんか。

 この協定は、すべての主要国が参加を約束し、ただ乗りする国がない場合にのみ、効果を発揮します。米国は、エネルギー安全保障を強化し、地球規模の気候変動に取り組むことに専心しています。そして、これらの目標を達成する最善の方法は、米国が引き続き先頭に立って、よりクリーンでよりエネルギー効率の高い技術の開発を目指していくことです。

 将来に向け米国が競争力を保ち続けるためには、米国の科学者や技術者の技能を信頼し、彼らが未来の重大な前進を目指して研究に従事できるようにしなければなりません。昨年、議会は、米国競争力イニシアチブを支持する法案を可決しましたが、資金拠出までには至りませんでした。米国が科学面で優位を保つために、この資金拠出は不可欠です。そこで私は、自然科学分野で不可欠な基礎研究のための連邦政府からの援助金を倍増し、米国が世界で最も活力ある国であり続けることができるようにすることを議会に求めます。

 生命と科学の問題について、私たちは、医学研究者の革新的精神を信頼し、彼らが倫理的境界線を尊重しながら新たな治療法を発見できるようにしなければなりません。昨年11月、私たちは、科学者が成人の皮膚細胞を初期化し、胚性幹細胞のように機能させる方法を発見するという画期的偉業を目撃しました。今回の画期的発見は、人間の生命を破壊することなく医学の先端を切り開くことにより、私たちが過去の論争に終止符を打ち、前に進んでいくように促す可能性を秘めています。

 従って私たちは、このような倫理的医学研究のための資金援助を拡充しています。そして、有望な研究手段を尽くすとともに、しかるべき尊厳を持って生命を扱うことを確実にしなければなりません。そのために、私は、人間の生命の売買、特許化、あるいはクローン化などの非倫理的な活動を禁止する法案を通過させるよう議会に求めます。

 司法の問題については、建国の父たちの英知を信じ、憲法を文字通りに解釈する判事に権限を与えなければなりません。私は、気まぐれで判事の小づちを振るのではなく、法律の条文に従って裁定する者を判事候補として指名してきました。これらの指名の多くについて、その後の手続きが不当に遅れています。彼らは正式な承認を受けるに値する人物であり、上院は各候補者に対する信任投票を速やかに行うべきです。

 全米各地の地域社会において、私たちは米国民の善良な心を信じ、彼らが困窮している隣人を助けられるようにしなければなりません。この7年間に、幸福の追求は奉仕の道に通じることを発見した国民が増えています。ボランティア活動を行っている米国人は記録的な数に上っています。かつてないほど多額の慈善寄付が行われています。宗教団体は、連邦政府の新たな支援を受けながら、絶望している人々に希望をもたらしています。そして、宗教団体が連邦政府からの援助を求めて競争するときに、彼らを平等に扱うことを保証するために、私は、皆さんに慈善の選択(Charitable Choice)条項を恒久化するよう求めます。

 今夜、思いやりの軍隊 (the armies of compassion) は、メキシコ湾岸で新しい日に向かって行進を続けています。米国は、この地域に住む人々の強さと回復力をたたえます。私たちは、彼らが以前より強く優れた地域社会を構築するのを支援するという公約を再確認します。そして今夜私は、カナダ、メキシコ、米国が参加する今年度の北米サミットを、4月にニューオリンズで開催することを皆さんに報告します。

 そのほかにも、私が議会で繰り返し提起していますが、議会がそれに対処していない緊急の課題が2つあります。それは、エンタイトルメント・プログラム(一定の基準を満たした者に政府が給付金を交付する制度)の支出と移民の問題です。社会保障、メディケア(高齢者向け医療保険制度)、メディケイド(低所得者と身障者を対象とする医療扶助制度)などのエンタイトルメント・プログラムの支出が、追いつかないほどの勢いで増加していることは、ここにいる皆さんの誰もが知っています。このまま行けば、米国にはこの先、大増税、突然の大幅な給付削減、あるいは膨大な財政赤字という辛い選択が待っていることは、皆分かっています。私は、これらのプログラムの改革案を策定しました。そして私は、私たちの子供や孫のためにこれらの重要なプログラムを守るため、議員の皆さんが提案を行い、超党派の解決策を見出すよう求めます。

 もうひとつの緊急の課題は、移民問題です。米国は国境を守る必要があります。そして、皆さんの支援を受け、私の政権はそのための措置を講じています。不法入国を止めるために柵や先端技術を配備して、現場での法執行を強化しています。国境における「キャッチ・アンド・リリース(捕まえては送還する)」政策を実質的に終了し、今年の終わりまでに、国境警備員の数を倍増する予定です。しかし、私たちはまた、外国労働者が米国に来て、わが国の経済を支えることができるようにする合法的な手段をつくらない限り、国境を完全に守ることは決してできないということを認識する必要があります。これによって、国境での警備の負担を軽減し、法執行機関が米国人に危害を加えようとする者に集中して取り締まりを行うことが可能になります。また、米国内の不法滞在者の取り扱いに関して、分別のある、人道的な方法を見出さなければなりません。不法移民問題は複雑ですが、解決は可能です。そしてこの問題は、米国の法律と最高の理想の両方を守る方法で解決されなければなりません。

 これは、国内問題です。しかし、米国民のために豊かな未来を築くことができるかどうかは、海外で敵に立ち向かい、世界で問題を抱える地域で自由を促進することにもかかっています。

 わが国の外交政策は明確な前提に基づいています。私たちは、人は機会が与えられば、自由と平和の未来を選ぶ、と信じています。過去7年間に、私たちは自由の歴史における感動的な瞬間を目撃してきました。グルジアとウクライナの市民が、自由で公正な選挙の権利を求め立ち上がるのを見ました。レバノンの人々が、独立を要求して街頭でデモを行うのを見ました。アフガニスタンの人々がタリバンの独裁政治から抜け出し、新しい大統領と新しい議会を選ぶのを見ました。また、喜びに満ちたイラク人たちがインクの染みがついた指を上げて、自由を祝うのを見ました。こうした自由の映像に私たちは勇気付けられました。

 過去7年間に、私たちは、酔いもさめるような映像も見てきました。私たちは、レバノンとパキスタンで、大勢の会葬者が暗殺者の手にかかった愛する指導者の棺を運ぶのを見守りました。着飾った結婚式の招待客が血まみれでヨルダンのホテルからよろめき出てくる様子、モスクや市場が爆破されて吹き飛ばされるアフガニスタン人やイラク人、そしてロンドンとマドリッドでは爆弾でバラバラに破壊された列車を見ました。そして晴れた9月のある日、何千もの米国民が、瞬く間に命を奪われるのを見ました。これらの恐ろしい映像は、私たちに厳然たる現実を思い出させてくれます。それは、自由の前進がテロリストと過激派によって妨害されるということです。自由を嫌悪する邪悪な人間たちは米国を嫌悪し、何百万もの人々を彼らの暴力的支配の下に従わせようともくろんでいます。

 2001年9月11日の同時多発テロ以降、私たちは、これらのテロリストや過激派との戦いに挑んでいます。攻勢を維持し、圧力をかけ続け、敵に公正な裁きを与えます。

 私たちは、21世紀における決定的なイデオロギー闘争に従事しています。テロリストは、私たちが大切にする人間性と良識のあらゆる原則に反対しています。しかし、このテロとの戦いにおいて、私たちが敵と同意している点がひとつあります。それは、長期的には自分の運命を自由に決めることができる人々は、テロを拒絶し、圧制の下で生きることを拒否するということです。だから、テロリストはレバノン、イラク、アフガニスタン、パキスタン、そしてパレスチナ占領地区の人々にこの選択肢を与えないように戦っているのです。だから、私たちは、米国の安全と世界平和のために、自由という希望を広めているのです。

 アフガニスタンでは、米国、北大西洋条約機構に加盟する25カ国、友好国15カ国が協力し、アフガニスタンの人々が自らの自由を守り、国家を再建することを支援しています。これらの軍人や民間人の勇気のおかげで、かつてはアルカイダの安全な避難場所であった国が、今は、少年少女が学校に通い、新しい道路や病院が建設され、人々が新たな希望を抱いて将来に目を向けている若い民主主義国になりました。こうした成功は継続されなければなりません。そのため、アフガニスタンに駐留している米軍に、3200人の海兵隊員を追加派遣しています。彼らはそこでテロリストと戦い、アフガン軍と警察を訓練する予定です。タリバンとアルカイダに打ち勝つことは、わが国の安全保障上重要であり、私は、議会がアフガニスタンにおける米国の極めて重要な任務を支持してくれることを感謝します。

 イラクでは、テロリストと過激派が、誇り高い国民に自由を与えないようにするために戦い、そして世界各地を攻撃するための安全な避難所をつくるために戦っています。1年前、私たちの敵は、イラクを混乱に陥らせようとしており、その努力が成功しつつありました。そのために私たちは戦略を見直し、方針を変えました。私たちは、イラクへの米軍増派を行い、新たな任務を与えました。それは、イラク軍と協力してイラク人を守り、敵をその拠点に追い詰め、イラク国内のどこであろうとテロリストに聖域を持たせない、というものです。

 イラク人は、何か劇的なことが起こったことにすぐに気付きました。米国が彼らを見捨てる準備をしているのではないかと懸念していた人々は、代わりに、何万もの米軍が彼らの国にやってくるのを見ました。彼らは、米軍が近隣にやって来てテロリストを一掃し、敵が戻ってこないよう、その地に留まるのを見ました。また、治安の改善に続いて日常生活を向上させるために、米軍が、外交官やその他の熟練した公務員を含む地域復興チームと共にやって来るのを見ました。イラクにいる米国の軍隊と民間人たちは、勇気を持って業務を遂行し、功績を挙げています。彼らにはわが国を挙げて感謝しています。

 イラク人自身の間でも、テロリストと戦う機運が急激に高まりました。2006年の秋、スンニ派の民族指導者たちは、アルカイダの残虐行為にうんざりし、「アンバルの覚醒(かくせい)」と呼ばれる民衆蜂起を起こしました。昨年、同様の運動が全国に広がりました。そして、今日、一般市民の活動には、テロリストと戦う8万人を超えるイラク市民が参加しています。バグダッドの政府も、昨年10万人以上のイラク兵と警官を新たに追加しました。

 敵は依然として危険であり、まだやらなければならないことは残っていますが、米国の増派とイラク国民のテロとの戦いの盛り上がりによって、わずか1年前まではほとんどの人が想像できなかったような成果を挙げました。昨年ここに集まったときには、多くの人々が暴力行為を封じ込めるのは不可能だと言っていましたた。1年後の今、目立つテロ攻撃は減り、民間人の死者は減り、宗派間の殺人も減っています。

 昨年ここに集まったときには、過激派の民兵組織がイラクの広い地域で破壊行為を重ねていました。その民兵の中には、イランが武器を提供して訓練した者もいました。1年たって、連合軍とイラク軍はこれまでに、何百人もの民兵を殺し、あるいは逮捕しています。そして、さまざまな背景を持つイラク人が、こうした民兵に勝つことが、自分たちの国の未来にとって極めて重要であることを認識しており、その数は増えています。

 昨年ここに集まったときには、アルカイダはイラクのあちこちに聖域を持ち、ちょうど彼らの指導者たちがイラクからの安全な出口を米軍に申し入れたところでした。今日、安全な出口を探しているのはアルカイダの方です。彼らは、以前確保していた拠点の多くから追い出されました。そして、過去1年間に、私たちは、何百人ものアルカイダの重要な指導者や工作員を含む、何千人ものイラクの過激派を捕らえたり、殺したりしました。

 先月、ウサマ・ビンラディンは、アルカイダに反抗しているイラクの部族指導者をののしり、イラクで連合軍の兵力が増強されていることを認めるテープを公表しました。皆さんの中には、この増派の効果を否定する人もいるかもしれませんが、テロリストの間では誰も疑いを持っていません。アルカイダは、イラクから敗走中であり、この敵は敗北することになるでしょう。

 昨年ここに集まったときには、イラクに駐留する米軍の規模は拡大していました。今日では、今述べたような進展が見られたことで、「成功に応じた帰還 (return on success)」政策を実施し、イラクに送った増派軍は帰国し始めています。

 このように状況が進展したのは、米軍兵士の果敢さと司令官たちの素晴らしい才能によるものです。今宵、私は、前線にいる兵士たちに直接語り掛けたいと思います。陸軍、海軍、空軍の兵士の皆さん、海兵隊員の皆さん、沿岸警備隊員の皆さん。昨年、皆さんは、私たちが頼んだことをすべてやり遂げてくれた上、それ以上のことも遂行してくれました。この国は、皆さんの勇気に感謝しています。私たちは、あなた方の功績を誇りとしています。そして、今夜、この神聖なる議場で、米国民を証人として、私たちは皆さんに厳粛に誓います。今後の戦いにおいて、皆さんがわが国を守るために必要なものは、すべて提供します。そして私は議会に対し、わが軍に十分な資金を提供することによって、これらの勇敢な兵士たちに対する責任を果たすよう求めます。

 イラクにいる私たちの敵は大きな打撃を受けています。しかし、彼らはまだ敗北しておらず、今後もまだ厳しい戦いが予想されます。今年の私たちの目標は、2007年の成果を維持し、さらに発展させながら、私たちの戦略の次の段階に進めむことです。米軍の役割は、作戦を主導することから、イラク軍とパートナーを組むことへ、そして最終的には警備監視任務へと移行しつつあります。この移行の一環として、陸軍旅団の戦闘部隊1隊と、海兵隊遠征隊1隊がすでに帰還していますが、補充は行いません。今後数カ月のうちに、陸軍4個旅団と海兵隊2個大隊がこれに続いて帰国します。合計すると、2万人以上の兵士が帰還することになります。

それ以上の米軍兵力の削減は、イラクの状況や、司令官の勧告に基づいて行われることになります。ペトレイアス将軍は、あまりに早急な削減は「イラクの治安部隊の崩壊、イラクのアルカイダの失地回復と、暴力行為の著しい増加」を招くと警告しています。議員の皆さん、やっとここまで来て、これほどの成果を挙げながら、そんな状況が起こることを許すわけにはいきません。

 今年、イラクの指導者が政治的和解に向けて達成しつつある進展をさらに進めるに当たり、私たちは彼らと協力していきます。地方レベルでは、スンニ派、シーア派、クルド人が、彼らのコミュニティーを再生し、自分たちの生活を再建するために、協力し始めています。州においては、バグダッドと同じ程度の進展が見られなければなりません。いくつかの心強い兆しがあります。イラクの中央政府は、石油からの収入を州と分かち合っています。議会は最近、年金法案とバース党員排除の改革を行う法案を可決しました。彼らは今、州権限法について審議しています。イラク人はまだ長い道のりを進まなければいけません。しかし、何十年もの独裁政権と宗派間の武力衝突という苦しみの後で、和解が行われつつあります。そして、イラク国民は、自分たちの未来を支配しています。

 イラクにおける任務は、わが国にとって困難で苦しいものでした。しかし、私たちが成功することは、米国の重大な利益にかなっています。自由なイラクは、アルカイダに安全な避難所を与えません。自由なイラクは、中東の何百万もの人々に、自由な未来が可能であることを示します。そして自由なイラクは、米国の友人であり、テロとの戦いのパートナーであり、世界の危険な地域における安定の源となります。

 対照的に、イラクで失敗すれば、おそらく過激派に勢いを与え、イランの力を強め、テロリストに友好国や同盟国や米国本土への新たな攻撃を仕掛ける基地を与えることになります。敵はその意図を明らかにしています。彼らの方に勢いがあるように見えたとき、イラクにいるアルカイダの最高司令官は、ここワシントンを攻撃するまでは、休まないと宣言しました。米国民の皆さん。私たちも休みはしません。この敵を打ち負かすまでは休みません。これから何年かたって、人々が過去を振り返ったとき、この世代が立ち上がり、困難な戦いに勝ち、より希望に満ちた地域と、より安全な米国を残したのだと言ってもらえるように、私たちは今、困難な仕事をしなければなりません。

 私たちは、聖地パレスチナでも過激主義勢力に立ち向かっていますが、そこには希望を持つ新たな理由があります。パレスチナ人は、国民が尊厳を保ちながらイスラエルと共に平和に生きることができる国家を達成するためには、テロと立ち向かうことが不可欠であると考える大統領を選出しました。イスラエル人は、平和で民主的なパレスチナ国家は、永遠の安全保障を生み出すことができると考える指導者を擁しています。今月、ラマラとエルサレムで、私は両方の指導者に対し、米国、そして私は、今年末までに彼らがパレスチナ国家の範囲を定める和平合意を達成するのを助けるために、できる限りのことを行うと確約しました。民主的なイスラエルと民主的なパレスチナが平和に、協力して生きる聖地が実現する時がやってきました。

 私たちは、テヘランの政権が体現する過激主義勢力にも立ち向かっています。イランの支配者は善良で才能のある人々を抑圧しています。そして、中東で自由が進むときには、それがどこであろうと、イランの政権がそれに反対しているように見えます。イランは、イラクの民兵グループに資金と訓練を提供し、レバノンでヒズボラのテロリストを支援し、聖地での和平を邪魔しようとするハマスの活動を支援しています。テヘランは、より射程距離の長い弾道ミサイルも開発しており、核兵器を作るために使われる可能性のあるウランを濃縮する能力の開発を続けています。

 イラン国民への私たちのメッセージは明確です。私たちはあなた方と争ってはいません。私たちはあなた方の伝統や歴史を尊重しており、あなた方が自由を手にする日を待ち望んでいます。イラン指導部へのメッセージも、やはり明確です。交渉を始められるように、検証できる形で核濃縮活動を中止すること。そして、国際社会に復帰するために、核開発の意図と過去の行動を申告し、国内での圧制を止め、海外でのテロ支援を止めること。しかし、とりわけ、イラン指導部は次の点について認識しなければなりません。すなわち、米国はわが軍を脅かすものには立ち向かいます。米国は同盟国を支持し、ペルシャ湾におけるわが国の重大な利益を守ります。

 国内では、私たちは、わが国を守るための、すべての合法的かつ有効な対策を実施し続けます。これは、私たちに与えられた最も厳粛な義務です。私たちは、同時多発テロ以降、米国土が攻撃されていないことをありがたく思っています。これは、敵側の欲望や努力の不足によるものではありません。過去6年間に私たちは、ロサンゼルスで最も高いビルに飛行機で突入する企みや、米国行きの旅客機を大西洋上で爆破する企みなど、これまで数々の攻撃を阻止してきました。米国政府で働く献身的な人々は、テロリストの計画の遂行を阻止するために昼夜を問わず懸命に働いています。これらの善良な市民は米国人の命を救っており、この議場にいる誰もが彼らに感謝しなければなりません。

 彼らに対する私たちの義務はそれだけではありません。彼らが米国民を守るために必要な手段を提供しなければなりません。そして、彼らに提供できる最も重要な手段のひとつは、テロリストの交信を監視する能力です。私たちは、米国を守るために、テロリストが誰と話しているのか、何を話しているのか、何を計画しているのかを知る必要があります。昨年、議会は、その実現に役立つ法案を通過させました。しかし、残念ながら、議会は2月1日にこの法案の期限が切れるように設定しました。つまり、この金曜日までに議決が行われなければ、テロリストの脅威を追跡するわが国の能力が弱められ、米国民に対する危険が増すことになります。議会は、極めて重要な情報の流れが中断されないようにしなければなりません。また議会は、米国を防衛する努力を支援してきたと考えられる企業のために、法的責任からこうした企業を保護する法案を通過させなければなりません。これまで審議には十分時間をかけました。今は採決の時です。

 新世紀の危険からわが国を守るために必要なのは、優れた情報活動と強力な軍隊だけではありません。敵意を生み出し、過激派が人々の絶望につけ込むのを許す環境を変えることも必要です。従って米国は、より自由で、希望に満ちた、思いやりのある世界を築くために影響力を行使しています。これは、わが国の国益を反映しています。そしてそれは、私たちの良心が命ずることです。

 米国は、スーダンの集団虐殺に異議を唱えます。そして、キューバからジンバブエ、そしてベラルーシからビルマに至る国々における自由を支援します。 米国は、強力な教育面のイニシアチブと人道的援助により、世界の貧困との戦いを主導しています。また、私たちは、ミレニアム・チャレンジ・アカウント (Millennium Challenge Account) を創設して援助を提供する方法を変えました。このプログラムは、開発途上国で、民主主義、透明性、法の支配を強化するものです。私は、皆さんに、この重要なイニシアチブに十分な資金を提供するよう求めます。

 米国は、世界の飢餓との戦いを主導しています。今日、世界における食糧援助の半分以上は、米国が提供しています。そして、今夜、私は、開発途上国の農家から直接作物を購入して食糧援助を提供するという、画期的な提案を支持するよう議会に求めます。そうすれば現地の農業を強化して、飢餓の循環を断ち切ることができます。

 米国は、疾病との戦いを主導しています。皆さんから支援を受け、アフリカの15カ国でマラリアによる死者の数を半減させるために活動しています。また、エイズ救済緊急計画のもとで140万人が治療を受けています。私たちは、もっと多くの人々を治療し、希望をもたらすことができます。従って私は皆さんに、行動を変化させ、このプログラムを成功に導いた原則を維持するよう求めます。そして、向こう5年間で300億ドルを追加拠出することを承認することによって、HIV/AIDSとの戦いのために拠出することを約束した当初の金額を倍増することを議会に求めます。

 米国は、世界中に希望をもたらす力です。なぜなら、私たちは思いやりのある国民だからです。そして、最も思いやりのある米国人の中に、前に出て私たちを守ってくれた人たちがいます。私たちが自由で平和に暮らせるよう、自分の命や体を危険にさらしてきたすべての人々との約束を守らなければなりません。過去7年の間に、私たちは、退役軍人に対する財政支援の金額を95%以上増額しました。そして、さらに増額しながら、新たな戦争と新たな世代のニーズを満たすために退役軍人制度の改革も行わなければなりません。私は、ボブ・ドール上院議員とドナ・シャレーラ元米国保健福祉省長官が提言する改革案を立法化するよう、議会に要求します。そうすれば、わが国の傷病兵の介護制度を改善し、彼らが希望と期待と尊厳のある人生を築くことを支援することができます。

 軍人の家族もまた、国のために犠牲を払っています。愛する者が家からはるか遠方で戦っている間に、その家族は眠れぬ夜を過ごし、子供を育てる日々の苦労を耐え忍んでいます。私たちには彼らを支援する責任があります。従って、彼らが保育施設を利用できる機会を広げ、連邦政府全体を対象に軍人の配偶者の採用を優先する新たな制度をつくり、兵士が利用しなかった教育手当を配偶者や子供に振り替えることができるようにするために、皆さんが私に協力していただけるよう求めます。米国軍人の家族はわが国に奉仕して、わが国に希望を与えています。ですから今夜は、私たち米国民が彼らをたたえましょう。

 力強さ、わが国の力強さの秘密、そして米国の奇跡は、わが国の偉大さが政府にではなく、国民の精神と決意にあるということです。1787年に憲法制定会議がフィラデルフィアで開かれたとき、この国は連合規約のもとでの制約を受けることになりました。その規約は「われらここに署名した代表者」という言葉で始まっていました。ガバヌーア・モリスが新憲法の序文の起草を頼まれたとき、彼はひとつの重要な改定を提案し、米国と世界の歴史の流れを変えた次の言葉で文を始めました。それは「われら人民」という言葉です。

 建国の父たちは、国民を信じることによって、偉大で高潔な国は、すべての人々の心に宿る自由の精神の上につくることができると考えました。それに続く世代は、国民を信じることによって、このもろくて若い民主主義国家を、世界最強の国家へ、そして何百万もの人々の希望の光へと変えました。私たちが国民を信頼し続ける限り、わが国は繁栄し、わが国の自由は保障され、米国はその強さを保つことができるでしょう。

 ですから今夜、自由の力を確信し、国民を信頼して、国民への奉仕に取り掛かりましょう。 この国に神のご加護がありますように。