2009/01/19 09:00
携帯電話機やスマートフォンがカーナビの機能を備えつつあり,フィンランドNokia社や米Google社などがこれらに向けて経路案内機能の開発に注力しています(Tech-On!関連記事1,2)。そこで昨年末,こうした動向を踏まえつつ,カーナビ市場全体がどう変わっていくのかを「GoogleとNokiaが変えるカーナビ」にまとめるべく,さまざまな企業を取材してきました。
その取材でナビ機能の開発に携わる多くのエンジニアにお会いしていると,ほぼ全員が注目機種として挙げるものがあります。それが2008年を代表する製品でもある米Apple社の「iPhone」です。3.5型と大きなタッチパネル式液晶ディスプレイを搭載し,GPS機能を内蔵します。「発売された瞬間に,これはカーナビとして使えると思った」とは某社のエンジニア。
ただし,注目機種として挙げられるのと同時に,「なんとかならないものか」という嘆きの声も必ず添えられます。実はこのiPhone,カーナビとして使うには厳しい制約があるのです。それが「リアルタイムルートガイダンス」機能の搭載が禁止されていること。リアルタイムルートガイダンスとは,現在位置に応じて,音声や文字,矢印などで目的地にユーザーを案内する機能のことです。カーナビの要の機能の一つになります。
このため,現在,複数の企業がiPhone向けに地図サービスを提供しているのですが,多くは地図上に現在位置の印を付けるまでに留めてあり,目的地まで案内する機能はありません。一応,「ギリギリまで挑んでいる」ものもあります。例えば,携帯電話機などに向けて経路案内サービス「全力案内!」を提供するユビークリンクは,iPhone向けアプリケーションにおいて,地図上に自分の位置と目的地までの矢印を表示します。ただし上記の制約を守るため,自動的に表示画面を更新する「自動リルート機能」は搭載しません。現在位置を確認するには,手動で表示画面を更新させる作業が必要となります。
こうしたギリギリを狙う企業がある一方で,アプリケーションの提供をやめる企業もあります。ナビタイムジャパンは2008年12月,iPhone向けに経路案内アプリケーションを提供することをやめました。「リアルタイムルートガイダンスができないのは,致命的」(ナビタイムジャパン)と言います。同社は「ビジネス上の齟齬」もやめた理由として挙げていますが。
この制約の狙いは実のところ,よく分かりません。さまざまな憶測がありますが,取材中に聞いた意見で最も多いのは,「ユーザーがiPhoneを使いながら運転している時に事故を起こした場合,その責任がApple社に及ぶことを恐れている」というものでした。たしかにApple社にとって経路案内機能は,数多くのアプリケーションの中の一つ。しかも,自ら手掛けていないアプリケーションにまで責任はとれない,という見方に説得力はあります。本当のところは分かりませんが。
真相はさておき,せっかく多くのエンジニアが魅せられるほどのハードウエアで,エンジニアが開発した自慢の経路案内機能が使えないのは,やはりもったいない。この機能を手掛けるエンジニアはみな,「目的地まで最も速い経路をすばやく演算し,分かりやすくユーザーに伝える」ことにしのぎを削っています。その点が封じられてしまえば,他者のアプリケーションと差異化できません。Apple社にはぜひ,この制約を解除して欲しいなあと思う今日このごろです。
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