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【社説】

自民と民主 決戦へ憂いは断てるか

2009年1月19日

 「危機」と「好機」。対照的な環境にある自民と民主がそれぞれ党大会を開いた。迫る総選挙決戦へ気勢を上げるのはいいが、掛け声ばかりや風頼みの元気では情けない。有権者をしらけさせるな。

 小泉政権最後の年を含めてこの四年、恒例の年頭演説をする自民党総裁は大会ごとに顔が変わって麻生太郎首相で四人目だ。示された覚悟や決意は一年ともたない惨状が繰り返されてきた。

 低支持率にあえぐ麻生総裁もまた同じ道をたどるなら自民政権もいよいよ最期かもしれない。そんな焦燥と脱力感から抜け出せずに迎えた党大会だった。運動方針も「立党以来最大の危機が続いている」と前年の文言を踏襲する。

 国民の信任を得ない政権が三代続いた結果、党支持率は民主に迫られ、あるいは逆転された。大会参加者は危機に立ち向かう強いメッセージを期待したことだろう。

 麻生演説がこれに応えたかといえば心もとない。経済危機を切り抜けられないはずがない、先進国で最初に脱出する、と説く一方、足元の党内でさえ政局色が強まる政策の中身に踏み込まなかった。

 例えば定額給付金や消費税増税、あいまいさが否めない道路の一般財源化問題である。政権の求心力がさらに薄らぐのを憂え、精神論で火種を覆う意図があるなら、決戦の陣頭には立てまい。

 「政権交代前夜」と意気込む民主の大会は演出もなく地味だった。好機だと浮かれる党内を引き締めたい執行部の思惑だろう。

 その分、発せられる言葉は激しかった。小沢一郎代表は「自公政権が一日長く続けば、それだけ国民生活の被害は大きくなる」と断罪。「国民の、国民による、国民のための政治」実現を訴えた。

 だが、民主への追い風の正体も一皮むけば自公政権の迷走であり、民主が積極的な支持を受けているわけではない。政権を担う確たる受け皿になっていない。

 年金・医療の改革や子育て支援など民主の政策には、財源の裏付けがないとの批判がつきまとう。ソマリアの海賊対策も定まっていない。オープンな党内論議で有権者を引きつけるマニフェストができるか、力量が問われる。

 きょうから参院予算委で第二次補正予算案の審議が始まる。後には二〇〇九年度予算案が控える。国会論戦は有権者にとって総選挙へ重要な判断材料となる。決戦の年にふさわしい言葉と政策の対決を、自民、民主双方に求める。

 

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