米総合金融機関大手のシティグループが「総合」の看板を下ろす。先週発表した再建案によれば、預金、融資、投資銀行などを担う中核部門に業務を集中する一方、個人向けの証券仲介や消費者金融を非中核部門として売却を視野に入れる。
金融危機の猛威を改めて印象づけた。シティは1998年、銀行、証券、保険の統合で生まれ、総合化の波を世界の金融機関に広げた草分けだ。しかし住宅バブル崩壊による赤字は止まらず、路線の急転換を強いられた。わずか2年前に傘下に収めた日興コーディアル証券が、一転して売却候補になるのは象徴的だ。
シティの路線転換は金融総合化の落とし穴を示している。融合の難しさだ。「98年の統合は終わっていなかった」。同社のトップが嘆いたのは10年後の昨年だった。派閥や文化の衝突で重複する部門の合理化も進まず、部門を横断するリスク管理の体制づくりも不十分だった。
ウォール街では、総合化がバブルの伏線になったとの批判もある。組織が大きく複雑になり、顧客の需要をきめ細かく把握しにくくなった。各社は経済実態を超える収益目標を設定し、社員を行き過ぎた投融資に走らせたという指摘である。
表面化したのは、これらの弱点を放置した経営であり、総合金融という事業モデルは必ずしも間違っていない。顧客が1カ所で多様な商品を取引できる利便性は高い。米銀JPモルガン・チェースは昨年、証券大手のベアー・スターンズを買収した。邦銀も過去10年、証券会社や消費者金融会社の買収で総合化を進めてきた。経営のかじ取り次第で致命傷を負いかねないというシティの重い教訓を、経営に生かすべきだ。
シティの最終赤字は、昨年10―12月期で5四半期連続になった。抜本的な再建策は、米金融機関の経営環境が今後も厳しいことの裏返しでもある。財務体質の悪化は貸し渋りを通じて実体経済を圧迫する。
米政府は先週、バンク・オブ・アメリカへの追加支援を決めた。金融機関の不良債権を買い取る専門銀行(バッドバンク)を設立する構想もある。抜本的な解決策が求められるのは、民間だけでなく、20日に発足するオバマ政権も同じだ。