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社説:ダブル党大会 民主は早期に政権構想を示せ

 自民、民主両党の党大会が18日、そろって開かれた。「天下分け目」の衆院選を年内に控えた大会だ。麻生太郎首相、小沢一郎代表両党首は選挙勝利へ全力を挙げる決意を示した。

 それぞれ採択した運動・活動方針で自民党は民主党による政権交代を「幻想にすぎない」と切り捨て、民主党は「09年を歴史に記される年にする」と冒頭にうたうなど、政権選択を意識した。だが、両大会とも物足りなかった。自民党は置かれた状況への危機感に乏しく、民主党は具体的な政権像を国民に伝えるメッセージ性を欠いていたためである。

 麻生首相のあいさつで総じて感じられたのは、楽観的な見方だ。経済危機に関し自ら用いていた「100年に1度」との表現について「世界中で(そう)言われると、何となく我々もそれに合わせた顔をする」と述べ、「日本は先進国で一番傷が浅いと言われる」と強調した。選挙勝利の決意を最後に示したが、演説の多くは75兆円規模の経済対策などの実績アピールに割かれた。

 自民党は昨年に続き、運動方針に「立党以来最大の危機」と明記した。だが、総裁の2度にわたる政権投げ出しで政権担当能力への疑問は強まり、参院選で露呈した集票マシンの衰えも歯止めはかかっていまい。総裁選で巻き返しを図ったが、麻生内閣の支持率は低迷している。このまま選挙に突入すれば、それこそ政権維持が「幻想」になりかねないがけっぷちだろう。

 そんな状況認識や、なぜ楽観論を示し得るかの具体的裏付けが首相あいさつでは示されなかった。自民党はまだ、本当の意味で危機感に乏しいのではないか。政権公約作りも停滞する現状を見ると、そう思わざるを得ない。

 一方、小沢氏はあいさつ冒頭から選挙を前面に出し、「一刻の猶予もならない」と政権交代を訴えた。印象的だったのは「政権は国民が選ぶもの」と投票で主権を行使する「自覚」を国民に促したことだ。「自公政権を続けるか、民主党中心の政権かを選択していただかなくてはならない」と決起を迫る論法は小沢氏らしかった。

 ただ、国民に選択の責務を説くのなら、それに見合う判断材料もこの大会を機に示すべきだった。政権公約はもとより、同党が掲げる「脱官僚支配」の政権運営を可能とする構想はどんな中身か、早急に公表すべきだ。仮に選挙の直前まで出し惜しみをするのであれば、共感は広がるまい。

 党大会は、国民や支持者に党首が所信や政策を発信する重要な舞台である。今回、民主党は選挙対策に党の資金を集中するため、派手な催しは一切せず「節約運営」を徹底した。華美な演出など、もちろん不要だ。だが、有権者への具体的メッセージを忘れては困る。

毎日新聞 2009年1月19日 東京朝刊

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