国立大病院における新生児集中治療室(NICU)の未設置解消を目指す文部科学省が先月末、福井大医学部付属病院(永平寺町)を含む九大学病院に、二〇〇九年度から四年間で最低六床のNICUを整備する計画を発表した。NICUの整備で医療現場はどう変わるのか。
早産未熟児や切迫早産などの重症母体が全国的に増えており、高度な医療技術を持つ大学病院での分娩(ぶんべん)件数は年々増加。〇五−〇七年の間に20・4%増えた。県内で唯一NICUを確保する県立病院では〇八年、NICUの病床稼働率が六割から九割で推移し、慢性的な満床状態だった。
福井大医学部付属病院の小児科病棟には現在、未熟児診療室がナースステーションのすぐ隣にある。診療室には保育器を備えたベッドが六床あり、急変の可能性がある出生体重一〇〇〇グラム以下の新生児や、母胎にいる期間が二十七週以下の新生児を診察できる高度な医療態勢がある。しかし、小児科が対応しているため、専任の医師や看護師の常置が必要なNICUの基準には満たない。
国が定めるNICUの基準を満たすためには、当直体制を考慮に入れ、専任の医師を五人、看護師を十五人以上確保する必要がある。四〇〇グラムで生まれてきた新生児の細い血管に点滴を打ち、小さい気管支に呼吸器を取り付けるなど専門的な技術も要求される。全国的な小児科医不足が重なり、同病院は〇九年までの人材確保が困難と判断。一〇年度での整備を目指す。
付属病院にNICUが整備されると、二十四時間体制で専任の医師が対応できるようになり、県民の安心感は高まる。現状では小児科医が兼務しているため、医師や看護師たちの精神的な負担も軽減される。
一方、大幅な人員の増加により、年間約五千万円の赤字が見込まれるという。真弓光文理事(60)は「県内の病院に医師を派遣するという大学病院の責任を果たしつつ、人材の確保を早急に進めていきたい」と話した。
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