西日本高速、本州四国連絡高速など高速道路会社六社と国土交通省は、高速道路料金の引き下げ案を発表した。休日(土日祝日)の地方の一般高速道路で乗用車を上限千円で乗り放題とし、瀬戸大橋など本州四国連絡道路も上限千円とする画期的なものだ。特に瀬戸大橋の大幅な値下げは長年、地元が要望してきたことである。大いに歓迎したい。
財源五千億円を盛り込んだ二〇〇八年度第二次補正予算案の成立後に、二年間実施する。自動料金収受システム(ETC)の利用が条件となり、一万―二万円するETC車載器の購入者に対して五千二百五十円の助成を〇八年度内に始める予定だ。
休日乗り放題の対象は、普通車と軽自動車で、本四道路分の料金は別枠で徴収される。ただ、別料金区間を挟んでも、前後の高速道路料金は二重徴収されない。岡山インターから高松中央インターまで普通車で通常五千三百五十円かかるのが千六百五十円、高知インターまでは同じく七千二百円が二千円となる。これなら瀬戸大橋の利用促進への弾みとなろう。
岡山県は中四国の交通結節点に位置する好立地を生かし、基盤施設や交流拠点の整備に力を入れてきた。しかし、発展の妨げとなったのが高速道路の料金であり、とりわけ本四道路の高額な料金は中四国一体化への足かせとなってきた。
昨年四月で開通二十周年を迎えた瀬戸大橋は、七月に通行台数が累計一億台を突破したが、料金がネックとなり、見込みより九年以上も遅れた。開通時の普通車料金は早島―坂出間で六千三百円。その後、段階的に引き下げられ、現在は四千百円だが、割高感は否めない。
総合経済対策の一環として、昨秋から本四道路ではETC車の休日昼間と平日夜間の半額割引などを車種を限定して行っている。今回の引き下げ案では、新たに平日朝夕が半額となる通勤割引が導入されるなど、平日の割引が拡充される。また、一般高速道路では、平日昼間を三割引きにする。
これらの引き下げが実施されれば、交流の障害となっていた高いハードルがかなり下がり、クロスポイントとなる岡山県の優位性が高まるはずだ。魅力ある都市づくりや観光振興に向けて戦略を再構築する必要があるだろう。加えて中四国地域全体の一層の連携も欠かせまい。互いに力を合わせ、新しい交流時代へと、大きく踏み出すチャンスとしたい。
四月一日に全国十八番目の政令指定都市に移行する岡山市が、市民向けの説明会を始めた。政令市への理解を深め、行政と市民が協働でまちづくりを進める機運を盛り上げていきたい。
説明会は十五日から始まり、すべての中学校区できめ細かく開催する。すでに終了した会場では「組織が複雑になり、市民の要望が届きにくくなるのでは」といった不安や「市民への具体的なメリットが分かりにくい」などの指摘があった。市側は、市民の生の声を参考に不安解消に努めなければならない。
行政に対して多くの批判が出るのは、一方的に情報が伝達されることだ。垂れ流し的な説明に陥りやすく、理解が広がらない。社会が高度、専門化しているだけに、よほど丁寧な説明を心掛けないと周知徹底が困難になっている。
改善策は、工夫を凝らした対話形式の模索であろう。市民の意見を行政に反映させるシステムづくりにもつながる。今回の市民説明会を通して、互いの共通理解を促進する方策を見つけてほしい。今後の行政運営に役立とう。
新たな権限や財源が手に入る政令市は、岡山市の裁量を拡大する。市民生活を豊かにし、自立したまちづくりが可能になる。個性的で誇り高い都市へ生まれ変わることもできよう。
可能性を最大限生かすには、行政に任せるだけでなく、市民の側が積極的に参画しようという意識改革がなによりも大切だ。説明会では「自分たちのできることを協力し、よりよいまちをつくりたい」との意見もあった。行政に対する政策提言や活動への参加が増えればまちづくりに活力が生まれる。
政令市移行がゴールではない。行政と市民が一緒になって育てていく粘り強さが必要だ。
(2009年1月18日掲載)