大学入試センター試験問題作成者の氏名公表方針の撤回を要求する声明
複数の新聞報道によると、文部科学省高等教育局の学生課長は、二月二十六日に開かれた自由民主党の「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」総会に出席し、大学入試センター試験(以下、「センター試験」と略す)の問題作成者の氏名を公表することを前提に、公表の仕方を今後検討するとの方針を明らかにした。同席した大学入試センター関係者も、公表について検討すると述べたという。
その理由として「センター試験の透明性を高める」ことがあげられているが、これまで問題作成者の氏名が公表されてこなかったのは、試験の公正性を確保するためであり、情報公開一般の論理では扱えない性質の事柄であるからである。各大学の入学試験においても、問題作成者の氏名は公表されないことが通例である。こうした点を考慮することなく、拙速に上記方針を決定するならば、センター試験の根幹を揺るがす事態が生ずる危険性が大きい。
公表が試験実施以前に行われた場合の弊害はいうまでもないが、たとえ事後に退任者に限って公表するにしても、問題作成の責任が大学入試センターあるいは各委員会ではなく個人に帰せられ、作成者が外部の圧力に晒される結果を生むことが懸念される。また、専門分野の配置が明らかになることから、後任者の推定も容易となろう。これらによって、問題作成者への就任を忌避する傾向の強まることも危惧される。
大学入学試験制度は、その公正性がまず配慮されなければならない。本委員会は、文部科学省および大学入試センターに対し、今回のセンター試験問題作成者の氏名公表方針の撤回を要求するものである。
2004年3月19日
日本歴史学協会常任委員会