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選択を前に(4)医療 体制見直し急務

地域格差拡大に対策を


診察を待つ家族(久美愛厚生病院で)

 9日午後8時過ぎ、幼児を抱えた若い夫婦が、心配そうな表情で高山市大新町の久美愛厚生病院に駆け込んできた。診察を終えた夫婦は「夜間でも診てもらえて良かった」と安堵の表情を浮かべた。同病院が昨年11月に開設した小児夜間初期救急診察室。毎週金曜夜、同市医師会から小児科、内科の医師7人が交代で派遣され、初期診療にあたっている。

 医師不足に悩む飛騨北部地域の同病院、高山赤十字病院、飛騨市民病院は昨年4月、県内で初めて総合病院同士による医療連携協定を結んだ。研修医や医師の派遣、救急休日・夜間診療で連携を強化するためだ。

 その成果の診察室開設は、主に重症患者を治療する救命救急センターの高山赤十字病院に軽症患者が集中するのを防ぐのが狙い。高山市保健部の森下斉・担当監は「限られた医師とスタッフなので、医師会、病院の緊密な連携は重要。今回の取り組みは地域医療の自立を目指すものだ」と話す。

 2006年と08年に行われた県政世論調査で、特に力を入れてほしい県の政策は「保健・医療体制の充実」がいずれもトップだった。

 県がまとめた長期構想によると、介護や入院、通院を必要とする高齢者は05年の6万9000人から、35年には12万8000人に増える見通しで、県民が求めるように医療体制の充実は大きな課題だ。

 一方、県内の人口10万人当たりの医師数は173人(06年)で、47都道府県では40位と全国平均(206・3人)を大きく下回っている。また、医師数3641人(同年12月時点)のうち、岐阜圏が1802人と最多で、飛騨圏は268人と最も少ない。04年から県全体で159人増えたが、飛騨圏は9人減少し、地域間格差も広がっている。

 地域の医師不足に対応するため、県は今年度から、岐阜大学医学部に県内出身者を優先的に入学させる地域枠(10人)を新設。同学部学生や県内出身者を対象にした医学生奨学金制度も導入し、定員の45人を上回る57人に貸し付けを決めた。

 さらに、義務年限を終えた自治医科大学(栃木県)卒業の医師を県職員として採用する「ドクタープール制度」や、県内全域の救急患者に対応するドクターヘリを導入する。

 県医療整備課は「限られた医療資源を効果的に生かすためには、地域での連携が不可欠」と指摘する。将来を見据えた医師確保と、地域バランスを考えた医療体制の見直しが急務だ。


候補の主張 届け出順

 木下一彦氏 67(無新) 「産科・小児科・救急医療への支援や院内保育所、産休・育休保障への支援を強める。医師の公的任用、公募などで医師を確保するプール制、ドクターバンク、代替要員の保障などで不足地域に医師を派遣・確保する取り組みを進める」

 古田肇氏 61(無現) 「地域医療体制確保のため、開業医と病院間や総合病院間の連携を進め、救急診療や周産期母子医療を強化している。さらに、岐阜大医学部への県内高校生入学枠の設定や修学資金の貸し付け、ドクタープール制度の創設などを進める」


2009年1月16日  読売新聞)
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