これがラグビーなのか・・・!?
2001年から7年連続で対抗戦優勝を飾っている早稲田の連勝記録を「53」で止めたのは、帝京だった。
8年振りに早稲田を破った帝京は、対抗戦初優勝。両校は大学選手権の決勝で再び対決することになった。
対抗戦2敗の早稲田に対し、帝京は無敗。経験値で早稲田に利あり。力では帝京との前評判。両校優勝の可能性も視野に入れて放送に臨んだ。前半の10分間は、帝京の前に出る圧力が早稲田を翻弄した。次第に対応してきた早稲田は、3-3で終わるかと思われた前半の終了間際、豊田主将がトライを決めて流れを掴んだ。
8年連続で決勝の大舞台を踏む早稲田に対し、帝京は初めての決勝。その違いが微妙に試合の流れに影響した。帝京は慶応との1回戦では、徹底して自らのラグビースタイルを押し通したが、決勝では時折、早稲田の土俵に下りて戦いを挑んだ。目に見えぬ重圧が帝京の選手達から余裕を奪ったのかも知れない。早稲田が対抗戦の雪辱を果たした決勝戦。両校の力の差は、点差ほどはなかった。来季もこの両校の激突が話題を集めるだろう。
この決勝戦で残念な出来事があった。試合の流れを変えるきっかけになったシーンだったかも知れない。
前半10分を過ぎた時間帯に早稲田が左オープンの攻撃でスローフォワード。その直後に起こったボールの争奪でのラフプレーをtvkのカメラが捉えていた。遺憾ながら、実況席では見落としてしまった。
倒れて、人が折り重なり動けない状態の選手が、起き上がろうとした瞬間の頭部への「ひざ蹴り」
偶発的な行為だと思いたかった。しかし、何度見ても、私には「ひざ蹴り」にしか見えない。
右膝は閃光のごとく頭部を強打。必死に頭をもたげた無抵抗の選手は再びグラウンドに沈んだ。
私は、第45回全国大学ラグビー選手権大会の決勝戦を実況した。自分の放送は必ずビデオで検証する。より良い放送を目指すために反省は欠かせない。しかし、2009年1月10日の放送のビデオは、試合が始まって「10分33秒」で止まった。もう、それ以上は見る気持ちになれなかった。
広いグラウンドを30名の選手が入り乱れて戦うラグビーだけに、レフリーが全てを完璧に見ることは難しい。
だからと言って、生命の危険に直結するような行為は断じてあってはならない。レフリーの目の前で起こっていたら、厳しく断罪されただろう。邪魔な選手の排除が目的だったかも知れないが、このままでは膝蹴りした選手も不幸になる。本当に、これがラグビーなのか・・・。胸が痛む。
ラグビーは英国で生まれた紳士のスポーツだ。本来、競技者が楽しむために生まれたのがラグビー。
レフリングは取り締まることが目的ではなく、試合が円滑に進行することを旨としている。非紳士的な行為など無いのが大前提。大学日本一を競う晴れの舞台で、好勝負に水を差した行為が悔やまれてならない。