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2004.11.13








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(b3面)be Report
クリーニング市場縮小するも店減らず
低料金と高級へ二極化

クリーニング市場は縮んでいる
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 クリーニング業界の二極化が進んでいる。この10年ほどで市場規模が4割縮小するなか、チェーン店網の拡大をはかる大手は低料金で攻勢を強める。一方、数多くの苦情に商機を見いだし、高級化して専門性を生かす新サービスで巻き返す動きも活発だ。(森川敬子)

 「100円クリーニング」で知られる業界大手「きょくとう」(本社・福岡市)が今秋、東京のクリーニング店を初めて合併・買収した。家族経営的だが、都内に11店舗ある。同社は2年前に川崎市に工場を建て、同市周辺に「100円」店11店を展開中。「これまで培ったノウハウを生かし、次は東京だ」。牧平年廣社長は意気込む。

 その川崎市はいまクリーニング激戦区と化している。「100円」に加え「96円」も登場。一つの通りにほかのチェーン店や自家仕上げの地元のクリーニング店が50メートルと離れずひしめきあう。都内も同じ様相になるかもしれない。

 きょくとうは02年に株式を上場し、今年2月期の売上高は約54億円。約790店が北部九州、中国地方を中心にある。今年4月には兵庫県内で71店舗を持つ業者を買収、大阪市にある子会社を来年早々に合併し、関西地区にも力を入れる方針。地方圏から大都市圏へ駆け上がる勢いだ。

 「100円」はジャケットやズボンなどほとんどの品目が対象で約70店ある。同社の主力ではないが、「十分利益を上げている」と牧平社長は胸をはる。乾燥と仕上げを一体化した高速処理機の導入や、工程のマニュアル化で人件費を削るなどした結果だという。「100円ショップのように、一つの『文化』をつくりたい」(牧平社長)。2年前、「詐欺まがい」と雑誌に書かれて裁判中だ。

 低価格の元祖ともいえるのはホワイト急便(本部・熊本市)だ。130社が加盟するフランチャイズチェーン方式で全国に1万2千店ある。グループの売上高は525億円。広報部は「今後10年で4万軒以上の個人店が高齢化でやめると見込まれる。市場でシェアを拡大する絶好の機会。営業に力を入れる」と攻めの姿勢を鮮明にする。

 川崎で「96円」を出したのはここのグループ関連会社。きょくとうも同根だ。「同業他社は気にならない」と低価格を先導する余裕をみせる。

 業界紙「全国ドライ新聞」の日笠京介編集長は、「地方の大手が東京や名古屋、大阪に進出し、都市部を中心に競争が激化する」とみる。「安売り合戦は一段落した。今後は高級・専門化と低料金の二極化が進むだろう」

カルテや夜間集配も

 背広の上下で6千円――。創業98年の老舗(しにせ)、白洋舎(東京都渋谷区)が4月から本格的に始めた高級仕上げの「カスタムクリーニング」の料金だ。首都圏の百貨店内のカウンターなどで受け付ける。

 全国92の営業所と約970店を展開するが、画一的な低料金チェーンとは一線を画す戦略。専門の職人の手で「買った当時のように立体的に仕上げる」がうたい文句で、預かり時にシミの有無や客の希望をカルテに書き込む。

 「宣伝なしでも、ブランド品などをこれで丁寧に洗ってほしいという需要が増えている」と経営企画室の阿武典子係長。都心の高級マンション数棟では、フロントでクリーニングサービスも始めた。

 「苦情の中に商機がある」と02年から独自の展開を始めたのは京都府宇治市の「ハッピー」。店舗なしで、インターネットや電話などで注文を受け、全国宅配する。シミや黄ばみなど衣服の現状をパソコンに入力し電子カルテを作成。クリーニング方法と変色や縮みの可能性、費用や納期などを客に電話で説明する。

 橋本英夫社長は、「不満の多くはIT化とカウンセリング、独自の洗浄技法で解決できる」と話す。平均単価は3500円と高めだが、顧客数は約8千人と順調に伸び、売上高は2億円に達する見込み。「高い水洗い料金を取ってドライしかやらないとか、デタラメな業界の体質も客離れの一因。2千億円の潜在市場がある」と橋本社長。

 首都圏に約200店を持つ東京都足立区の「喜久屋」は昨年から、新サービスを始めた。インターネットで全国から申し込め、冬物を秋まで、夏物を翌春までクリーニング後に無料保管する「e−closet」と、首都圏で午後11時まで自宅集配する「ムーンライトデリバリー23」だ。

 利用者はそれぞれ約3千人。デリバリーは共働きや単身世帯のほか高層マンションの上層階居住者らに利用され、売り上げの6%を占める。中畠信一社長は「収入のある30代の需要をつかみたい」。

 健闘を続ける零細の個人店もある。川崎の激戦区にある40年来のクリーニング店主(63)は「100円と96円がほぼ同時にできて、これでおしまいかと思った」と2年前を振り返る。売り上げは激減したが、半年ほどすると再び客足が戻ってきた。「あっちで断られたとか、失敗した品が持ち込まれる」。別の激戦区のクリーニング店主(69)も言う。「うちの価格は低料金の店の3倍はするけど、客は減らない。むしろ高級品が集まる」。生き残りを賭けたそれぞれの模索が続く。

 ◆業界標準なく苦情絶えず

大手業者が加盟する全国クリーニング協議会の山本博生事務局長は「業界には洗いや仕上げの統一基準がない。工程を簡素化しても、消費者が満足してくれればそれでいいという部分がある」と話す。

 改正クリーニング業法が10月施行された。努力義務ながら利用者に処理方法を説明し、苦情の申し出先を明示する条項が盛り込まれたのは、そんな現状を踏まえた動きだ。

 事実、国民生活センターに寄せられる苦情相談は「汚れが落ちていない」「接客対応が悪い」など年間約1万件と、ここ10年ほど改善されていない。個人店主らが加盟する全国クリーニング生活衛生同業組合連合会の金子征実事務局長は「店側がシミや虫食いに気づかず預かり、あとでトラブルになるケースが多い。相互対話で、ある程度解決できるはず」と話す。

 いいクリーニング店をどう見分けたらいいか。金子事務局長は「価格だけで品質は判断できない。結局は近所の評判や仕上がりの状態、トラブル時の対応を見て決めるしかない」と言う。


 参考情報 クリーニング店(取次店を除く)は、クリーニング師の国家資格がないと開業できず、都道府県への届け出が必要だ。危険性のある溶剤を使うため工場の立地に制限があり、地価の高い東京などの大都市圏では零細業者が多く、大手は地方で育ってきた。高度成長期に創業した家族経営の店は後継者難で、今後急速に減る見込み。


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