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2009年1月18日

◎消費増税の明記 むなしく響く仮定の議論

 政府と与党が、今週に閣議決定する経済財政の中長期方針について、二〇一一年度から の消費税率引き上げを前提としない形でまとめることで合意したのは当然の判断である。増税ありきの方針を見直すなら、税制改正法案の付則への消費税明記も見送るのが筋だろう。

 景気の底がまだ見えない深刻な経済状況のなかで、一一年度から消費税を上げる条件と した「経済好転」の時期を見定めるのは極めて困難である。いずれ景気が上向いても、どの程度回復した時点で増税するのか、そのタイミングは専門家の間でも見方が分かれる。内閣府が示した「経済財政の中長期方針と十年展望」の原案では、一一年度から消費税率を1%ずつ上げ、一五年度に10%とする前提で基礎的財政収支の見通しを試算したが、実現しない仮定の話では説得力がない。

 さらに言えば、近づく総選挙で与党が衆院再議決に必要な三分の二の議席を失えば、法 案が通る見通しは立たなくなる。軸足がぶれない数少ない主張として消費税増税にこだわる麻生太郎首相自身も、いつまでその座にいるか分からない。政治や経済が不透明さを増すなか、仮定に仮定を重ねた議論はむなしく響くばかりである。

 自民党内の「増税ありき」との反発を受け、内閣府が新たに出した基礎的財政収支の見 通しは、消費税増税と据え置きの両パターンを示し、経済が順調に回復しても黒字化は一八年度にずれ込むとしている。財政再建派はだからこそ増税は避けられないとするが、この厳しい予測はまず歳出削減や無駄使い排除の徹底的な取り組みを促しているとみるべきだろう。

 小泉純一郎元首相が主導し、国会議員の定数削減などを目指す議員連盟が活動を始めた 。こうした国会改革をはじめ、国出先機関の統廃合、独法改革など歳出削減につながる課題は目白押しである。一つ一つの具体的な道筋を示し、さらには社会保障の全体像を描かないと増税に対する国民の理解は得られまい。麻生首相にそれらをやり抜く覚悟があるのか疑念が広がっていることも、増税論議をむなしくさせる大きな要因である。

◎義仲を大河ドラマに 北陸で誘致の枠組みを

 富山県と長野県が、源平合戦で活躍した木曽義仲と巴御前を主人公にした大河ドラマの 実現に向けて動き出した。二〇〇二年に放映された「利家とまつ」の例を見ても分かる通り、大河ドラマの観光誘客効果は非常に大きい。義仲は北陸全体にゆかりのある人物だけに、石川県も全面的に協力してはどうか。激しい競争に勝ち抜くために、誘致へ向けた大きな枠組みをつくりたい。

 源平合戦の際、義仲は長野を出発し、源氏の先兵として北陸各地で平氏との合戦を重ね ながら上洛した。その足取りは、現代の北陸新幹線のルートとほぼ重なっており、新幹線の開業に合わせて大河ドラマの放映が実現すれば、観光誘客面での相乗効果が大いに期待できよう。たとえハードルは高くても、誘致に取り組んでみる価値は十分にある。

 仮に、義仲が大河ドラマ化されれば、火牛の計で知られる倶利伽羅合戦(津幡町、小矢 部市)はクライマックスシーンの一つとなるに違いない。老将斎藤実盛が白髪を染めて奮戦した篠原の戦い(加賀市)もドラマを彩る名場面として描かれよう。石川県内には「木曽街道」と呼ばれる道も残っている。石川県が、ゆかりの市町とともに誘致活動に参加しても違和感はないはずである。

 「利家とまつ」の誘致にあたって、石川県内では官民挙げての推進組織が設置され、東 京の石川県人会関係者らも積極的に誘致活動を後押しした。この経験は今回も生きるだろう。

 義仲は平氏を京から追い払うことに成功したものの、その天下は短期間に終わった。義 仲を討った源頼朝がその後、覇権を握ったためか、「逆賊」との見方をされることも少なくない。ただ、義仲が源平合戦の主役級の人物であったのはまぎれもない事実であり、その人物像にもっと光が当てられてもよいように思われる。

 実際、全国の義仲ゆかりの地でも再評価の動きが出ている。大河ドラマ誘致活動を、北 陸に刻まれたかつての「時代のスター」の足跡を掘り起こし、ふるさとの歴史を見つめ直す契機にしたい。


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