大学入試センター試験が始まり、受験シーズンが幕を開けた。1990年にスタートしたセンター試験は今年で20回目、その前身の共通一次試験の導入は79年だったから、ちょうど30年前のことだ。
この間に入試事情は様変わりし、数字の上では志願者全員がどこかの大学に入れる「全入時代」が近づいている。しかしこれに伴う入学者の学力低下問題も深刻だ。新たな選抜システムを探る時期である。
かつて、大学入試には難問奇問が続出し、受験生に過度な負担を強いた。その反省から、基礎学力はまず統一テストで判定しようと国公立大に導入されたのが共通一次だ。
私立大も参加し、どの教科を使うかは各大学に委ねたセンター試験もこの理念を受け継いできた。今では私立大の大半が利用して選考の資料にしている。その限りでは一定の成功を収めた仕組みだろう。
しかし、少子化と大学数増加のもとで「入りやすい大学」が増え、基礎学力が不十分な入学者が目立つのが実情だ。センター試験の一部の教科だけで合否を決める大学が多いし、面接などが中心のアドミッション・オフィス(AO)入試も当たり前になった。大学生の約4割が本来の学力試験を経ていないという。
こうした状況を受けて、中央教育審議会などは大学進学を望む高校生の基礎学力を見極める「高校・大学接続テスト」の検討を提言し、久々に入試改革論議が高まっている。
まずは各大学が形ばかりのAO入試など学力軽視の選抜をやめるべきだが、高大接続テストも重要な選択肢だろう。ただ、現行のセンター試験と別に設けるのでは屋上屋を架すことになりかねない。センター試験を高大接続テストに衣替えするといったやり方が現実的だ。
入試改革をめぐっては、ほかにも国立大の入試日程を分散して複数受験・複数合格を可能にすべきだという意見などが出ている。センター試験も年に複数回の実施を求める声がある。高大接続テストに転換するならそれがより妥当な姿になろう。
全入時代が到来するなかで、入試の弾力化と基礎学力の担保をいかに両立させるか。時代に合わせた制度改革をためらってはならない。