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社説:財政健全化 国民と共有できる目標を

 内閣府は、政府の経済財政諮問会議が16日決定した「経済財政の中長期方針と10年展望」策定のための10年代後半までの財政試算を公表した。

 政府が「骨太の方針06」で公約した11年度までの国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化は、世界経済が急速に回復し、同年度に消費税率を引き上げても不可能と試算されている。また、世界経済が順調に回復し、日本経済も1%台半ばで推移、消費税率も11年度から1%ずつ5年間引き上げる想定でも、基礎的財政収支の黒字化は18年度まで延びてしまう。

 消費税を現状の5%で維持するケースや、世界景気が底ばいで推移するケースでは、基礎的財政収支赤字は解消しないどころか、国内総生産に対する長期債務残高の比率は拡大する。それだけ、日本の財政は厳しい状況に置かれている。

 今回の試算は、世界経済の先行きや、消費税率の想定、歳出削減のパターン、社会保障の機能強化などの前提条件をさまざまに組み合わせており、多様な選択肢を提示しているという点で参考になる。

 当面、財政政策では景気テコ入れが最重要課題である。同時に、10年代半ばに向けて、国民が安心を実感できる社会システム構築の道筋も提示しなければならない。そのためには、歳入、歳出両面で大がかりな対策を取らなければならない。歳入面では国民負担の増加である。

 もちろん、そのためには歳出の全面的な洗い直しが前提だ。国民が納得する形でなければ、消費税率のみならず、ほかの税の引き上げも不可能である。現状が増税を持ち出すことのできる環境にないことは明らかである。

 ただ、この問題は短期的視点のみでは方向を誤ることになる。財政出動後をどうするのかこそが大事だからである。政治や行政はこの点をふまえ、財政がその機能を取り戻す方策を示さなければならない。赤字を安易に容認する姿勢は許されない。国民も財政健全化は自らの問題と考えなければならない。

 折から、財政制度等審議会の西室泰三会長が08年度第2次補正予算案に盛り込まれている定額給付金について撤回を求めた。財政審委員の大勢が見直しが必要との意見だからという。財政審は11月の建議ではこの問題には触れておらず、遅すぎたという感はあるが、歳出を国民が納得のいくものにする観点から、定額給付金の見直し要求は当然のことだ。

 景気最重視型の財政運営が行われているだけに、このことは大事である。

 財政健全化は次の総選挙で最大の争点になる。与党のみならず、民主党をはじめとする野党も、中長期的視点まで踏まえ、国民と共有できる財政再建策を提示しなければならない。

毎日新聞 2009年1月18日 東京朝刊

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