過酷な勤務や医療事故で訴えられる可能性などが敬遠され、小児科や産科、救急医療の医師が不足している。17日に始まった大学入試センター試験を受験した医学部の志願者に、今の医療現場はどう見えているのだろうか。
長崎県の青雲高3年北原貴之さん(18)は小学生のとき、パーキンソン病に苦しんでいた祖母を亡くし「なぜ助けられないのか」と思い、医師を目指すようになった。「どの科を選ぶかは、学びながら考えたい。とにかく人を助けたい。医師を取り巻く状況がどう変わろうと、思いに変わりはない」と力強く語った。
昨年10月、東京都内で複数の病院に受け入れを拒否された妊婦が死亡し、救急医療の在り方がクローズアップされた。
福岡市の予備校生吉永駿さん(19)は外科医志望だが「小児科医や救急医が足りず、多くの人が困っていることは明らかなので希望を変えることも考えたい」。
一方、救命医や産科医は避けたいという受験生もいた。熊本市の予備校生浜諒輔さん(19)は「激務の上、勤務時間が決まっておらず、訴訟リスクが高い」というのが理由。福岡市博多区の辛島直道さん(20)も「医師不足でますます重労働になる。重責に耐えられそうにない」と話した。
国は医師不足に対応しようと、2009年度入試で大学医学部の総定員を08年度比で約700人増員。九州・山口・沖縄の国立・私立12大学では約100人増えた。
大分県の大分舞鶴高3年の甲斐逸平さん(18)は定員増を歓迎し「地方の医師不足を心配している。病院の少ない地域で医師になりたい」と、環境は厳しくても地域医療に従事する夢を語った。
佐賀県の龍谷高3年の男子生徒(18)は「医師が少なくても診療に集中できる仕組みや待遇にしてほしい」と、医療現場の改善を期待していた。
=2009/01/18付 西日本新聞朝刊=