システムトレード実践

■自分で検証をすることの大切さ

既に説明したように、システムトレードとは、自己裁量を入れずにあらかじめ決めておいた売買ルールに従って、機械的にトレードを行う手法です。

裁量トレーダーのように、マーケットが動いている最中で自分の相場観を発揮することはありません。

システムトレーダーは、検証作業で自分の力量を発揮することになります。マーケットは資金を回収する場所に過ぎません。

だから、システムトレーダーは検証作業が一番大切な仕事であり、その検証作業を怠ってはいけません。間違っても、自分の資金を運用するための売買ルールを他人から教わろうという他力本願な姿勢ではいけません。

なぜならば、その人は間違ったことを教えているかも知れないからです。また、その人が教えてくれた売買ルールは、自分の資金量や性格に合っていないかもしれません。

だから、そういうことも含めて、自分自身で検証しなければなりません。

もちろん、本・セミナー・DVD・Eブックなどを参考に、売買ルールを作ってみるのは良いことです。しかし、そこに書いてあることを何の検証もせずに、いきなりマーケットで試すということだけはやめたほうが良いでしょう。


■自分で検証をするために必要なこと

自分で検証をするということになると、検証をするための環境が必要です。必要なのは、過去データとそれを加工するためのツールです。これらの環境をきちんと用意して、運用シミュレーションが出来るプログラムを組まなければなりません。

もちろん、「チャートを眺めながら、手で検証する」という方法もあるでしょう。しかし、当たり前ですが、この方法ではすぐに限界がきます。

手作業だと、効率の良い検証作業が出来ません。時間がかかりすぎますし、計算を間違う可能性も高いです。また、自分にとって都合の良いチャートしか見ないという罠にも陥ります。

コンピュータが発達していなかった頃であればともかく、今の時代にシステムトレードをやるのであれば、何らかの形でコンピュータを使うべきです。

検証をする環境について、より具体的に説明します。

例えば、株システムトレードの場合、

過去データ:株価データ、出来高データ、財務データなど
加工するためのツール:プログラミング言語、データベースソフト、表計算ソフトなど

となります。

少ない銘柄での検証ならば、エクセルのような表計算ソフトで事足りるかもしれません。しかし、本格的な株システムトレードをするためには、エクセルでは不十分です。

日本株だと、約4000銘柄が上場しています。それらの株価データを管理するだけでも大変です。これらのデータを加工するということになれば、さらに大変です。

しかし、本来であれば、この大変さを乗り越えて初めて優秀なシステムトレーダーになることができるのです。ちなみに、私の場合、VBやC#を使ってプログラムを書き、独自のシミュレーション環境を作っています。

いま、システムトレードがブームですが、今後、毎年継続的に利益を上げるシステムトレーダーが出てくるとすれば、それはプログラマー出身者であるのは間違いありません。

優秀なプログラマーは自分で理想の検証環境を作り出して、有効な売買ルールを作り出すことが出来る可能性があるからです。

これからの時代、プログラミング経験のない人がトレードを行おうとするのは、それだけでもハンデがあると言えるのかもしれません。



■検証環境のためのトレード用ソフト

システムトレードを行うのであれば、プログラミングの知識があるべきだというのが私の考え方です。

しかし、システムトレードという考え方は、トレード経験もトレードセンスもない普通の投資家が勝ち続けるためには必要なものですから、プログラミング知識がないという理由だけで諦めるのは、非常に勿体無い話です。

自分自身でプログラミングが出来ないのであれば、市販の検証用ソフトを活用することも選択肢として考えるべきです。

市販の検証用ソフトを使うと、そのソフトの中で使える機能に限定されるという不自由さはあります。また、検証用ソフトによっては決して安くないものもあります。

しかし、その市販の検証用ソフトの機能だけで有効な売買ルールがつくれるのであれば、それは悪い話ではありません。

いちからプログラミングを学んで検証環境を整えるよりは、はるかに効率が良いでしょう。あなたの時給と時間を考えれば明らかです。

別の見方をすれば、何の準備もせずに、いきなりマーケットで腕試しをして蒙る損失よりは、はるかに安い金額であるとも言えます。

したがって、有効な売買ルールが見つかるのであれば、検証用ソフトは安い投資です。

自力で検証環境を作りたいという欲求があったとしても、それはシステムトレードの熟練度が高くなってからでも遅くはありません。

検証用ソフトにつきましては、こちらをご覧ください。

株システムトレードソフト比較



■十分なサンプルで検証することの大切さ

システムの結果を信用するためには、十分なサンプルで検証することが大切です。つまり、「長い検証期間」と「多くのトレード対象」ということが重要になります。


●長い検証期間

検証期間については、可能な限り長いことが理想です。株については、少なくとも、10年程度の検証期間は欲しいところです。5年で相場の1サイクル(上昇・下落・レンジ)が来るならば、そのサイクルを2回体験していることになります。

上昇相場でも下落相場でもレンジ相場でも有効に機能しているのか、それとも、ある特定の相場つきに限り有効なのかを区別する必要があります。

「ある売買ルールが買いのエントリーで利益が出た」と言っても、それが上昇相場でしか有効でなかったならば、それは果たして利用する価値があるでしょうか?

上昇相場か下落相場かレンジ相場かを判定するロジックを別に持っていれば良いですが、そうでなければ、あまり有効な売買ルールだとは言えません。


●多くのトレード対象

ある売買ルールが多くのトレード対象について有効であれば、信頼性が高いといえます。

株システムトレードの場合、例えば、ソフトバンク1銘柄で有効な売買ルールというのはやはり不安があります。たまたま、ソフトバンクにフィッティングされている売買ルールである可能性が高いからです。

できれば複数銘柄で有効に機能していることが良いでしょう。理想は上場全銘柄です。

上場全銘柄について検証をして、そこから優位性だと判断できる売買ルールが構築できるのが良いのは言うまでもありません。