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定額給付金、大歓迎!寄付のススメ 辞退せず主体的活用を
島根大法文学部准教授 毎熊浩一
定額給付金について、本紙(十三日付)に次のような声が載った。「本来なら、もっと困っている人を支援すべきだ」(松江市内のタクシー運転手)、「雇用や住宅対策などしっかりした目的に使ってほしい」(横浜市内の女性)。全く同感である。このような思いを生かすべく、以下提言する。
まずは給付金をしっかり受け取ろう。そして、それ(の一部でも)を寄付に使ってはどうだろうか。もちろん、受給も使途も個人の自由である。「一円でも、もらえるだけでありがたい」(首相の地元・飯塚市の男性)と考えようと、貯蓄に回そうと、そのために責められることがあってはならない。
だが、もし受け取りを辞退するつもりの人がいれば、しばし待ってもらいたい。というのも、首相自ら「必要がないなら取りに行かなくて結構だ。余った分はよそへ回せる」と述べているように、そのお金は「国庫」に戻るだけだからである。この場合「よそ」、つまり、何にどう使うかは、再び国民の手の届かないところにいく。
だとしたら、自分で「よそ」を決め、「もっと困っている人」なり「しっかりした目的」なりに回してはどうか。例えば、本紙(十八−二十日付)に連載されていた自死遺族、難病や差別に苦しむ人々、体力低下が懸念されている子どもたち、そういった人たちを支えるNPOや福祉関係団体などに。あるいは役所。そしてもちろん政党への寄付も考えられていい。
ここで、皮算用をしてみよう。内閣府の調査(二〇〇五年)によると、前年に寄付をしなかった人(三割弱)のうち「今後寄付をしたいと思う」と答えた人は14・3%。これを手掛かりに、仮に松江市民の一割(約二万人)が寄付に賛同したとしよう。一人当たり一万二千円だから、全体で二億四千万円となる(加算金は考慮外)。
くしくもこれは、昨年度、島根県共同募金会に寄せられ、最終的に障がい者支援や高齢者福祉などに使われた募金総額にほぼ等しい。また、ある調査によれば、NPO法人の年間収入総額の中央値は約二百七十万円(〇三年度)。ごく単純に言えば、環境保護からまちづくりまで、さまざまな公益的活動を行う団体を、百団体近くもまかなえる計算になる。少なくとも「ないよりはあった方がいいという程度」(十三日付、松江市内のスーパー経営者)の定額給付よりも、よっぽどマシな効果が見込めそうだ。
とはいえ、額の大小はあくまで結果論にすぎない。最大の意義は、寄付行為自体にある。つまり、これは、既定の予算配分に異を唱え、より有効な公金活用法を提示するという、一種の「政治参加」なのである。
さて、定額給付金に対しては当初、自治体側からも多くの批判が上がっていた。が、結局は、あきらめ感が漂うだけになってやしないだろうか。後は淡々と給付事務をこなす、と。分権時代にそれでは面白くない。そこで、寄付に絡めて、以下、自治体に提言する。
例えば、市町村が率先して寄付促進運動を展開してはどうか。なるほど、事務の煩雑さや制度設計の困難さを懸念する向きもあろう。しかし、給付申請書を送る際に、寄付呼びかけのチラシを同封するくらいなら、たいしたコストもかかるまい。もちろん、寄付先たり得る活動・団体の情報、地域課題の所在や対策の状況を示すデータなどがあるとなお望ましい。
他にもさまざまに構想できようが、いずれにせよ、「中央政府」の「愚策」に粛々とおつき合いする以上の何かが、「地方政府」には求められている。
まいぐま・こういち 長崎県出身。九州大学卒。島根大講師、同助教授を経て現職。松江市市民活動センター運営委員会委員、米子市市民自治基本条例検討委員会アドバイザー。行政学
('08/12/01
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