六千四百人以上の死者など多大の被害を出した阪神・淡路大震災から十四年。内陸が震源の地震はその後も頻発している。阪神と同じタイプの直下型にハード、ソフト両面で備えは大丈夫か。
公営復興住宅に入居の被災者が誰にもみとられず亡くなる孤独死が、昨年も四十六人いた。大震災の傷跡は今も消えていない。
わが国では太平洋側の海溝を震源とする東海、東南海・南海地震の発生を心配する声が早くから強い。しかし、新潟県中越地震など阪神以後のマグニチュード(M)6以上の地震の多くは、内陸が震源である。
特に、内陸でも直下の活断層が震源の直下型地震は、破壊の猛威を振るう。直下型の岩手・宮城内陸地震では土砂災害が続発、道路の寸断、旅館の埋没など記憶に新しい。同じ型の阪神・淡路は都市化地域が襲われたため、一段と被害が大きかったのも当然だ。
地震研究の現状では、発生は予知できない。だが太平洋側の海溝が震源の大地震は、発生周期の大まかな推定や地殻変動の観測網充実など、警戒の手掛かりは皆無ではない。一方、直下型などはいつ起きるか不明だし、震源になる断層は日本のどこにもある。
二〇〇七年十月から一般国民に提供が始まった緊急地震速報は、自治体の防災無線に乗せたり、さまざまな活用が考案されている。しかしその仕組みから直下型など震源が足元だと、役に立たない。
東海地震の警戒宣言で公共交通機関が止まると、通勤者が徒歩帰宅を強いられる帰宅難民が問題になり、首都圏、近畿圏、中部圏で直下型地震が起きた場合も同様の問題が提起されている。だが、いきなり地震が襲って建物は倒壊、道路は寸断された状態で、多数の人が徒歩で移動できるのか。
阪神大震災で、死者の圧倒的多数が倒れた建物や家具の下敷きになり圧死した。これを最大の教訓とし、東海地震で被災が予想される静岡県を筆頭に、温度差はあるものの各地で公共施設、民間住宅双方の耐震診断、改修がやっと軌道に乗ってきた。
耐震改修は犠牲者を減らす最も有効な手だてである。だがそもそも直下型地震が不意に襲ったら、どう行動すればよいのか。災害時に無理に帰宅せず、防災拠点などに集め、逆に災害復旧に協力してもらう手順など、阪神の体験を振り返り、その後提起された問題とも突き合わせ、直下型への新しい取り組みの方法を見いだしたい。
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