【萬物相】夫婦間の強姦罪
4000年前のバビロニアのハンムラビ法典は既婚女性が性的暴行を受ければ、経緯を問わずに姦通(かんつう)と見なし、強姦(ごうかん)犯とともに川に投げ捨てられた。夫が妻を助けることを望む場合だけ助け上げたという。強姦を意味する「レイプ」も略奪を意味するラテン語の「ラプタス(raptus)」に由来する。このように、妻の性を夫の財産とする考え方が受け継がれ、妻を強引に犯しても罪には問わない慣行が20世紀後半まで続いた。
17世紀に英国の大法官マシュー・ヘイル卿は「婚姻契約」の際、「夫が関係を望めば、妻はいつでも応じる」という「撤回できない同意」を行ったと見るべきだとする理論と判例を残した。これを初めて打破したのは1984年の米ニューヨーク連邦控訴裁だ。判決は別居中の妻を強姦したとして男に有罪を言い渡した。英国も91年、夫婦間に強姦に対する免責権をなくし、ドイツも強姦罪の成立要件から「婚姻外の性交」という表現を削除した。
ドイツは強姦罪の対象を「女性」から「他人」に変更し、男性も被害者となる可能性を認めた。1981年にはフランスも夫婦間の強姦被害者に夫を含めた。韓国は刑法297条の強姦罪の対象を「婦女」に限定している。このため、裁判所は96年に女性に性転換した男性を強姦した男に無罪を言い渡した。裁判所は結婚した女性も同条文の「婦女」には含まれないと見なしてきた。70年には浮気した妻を監禁、暴行し、強引に性行為に及んだ男に懲役8月が言い渡されたが、強姦罪に関しては無罪判決が出た。
釜山地裁は16日、性的関係を拒否したフィリピン人の妻をガス銃と凶器で脅し、強引に性行為に及んだ男(42)に懲役2年6月(執行猶予3年)を言い渡した。04年にソウル中央地裁が妻に性的暴行を加えた夫に強制わいせつ罪を適用したことはあるが、夫婦間での強姦罪を認定したのは今回が初めてだ。判決は「強姦罪の対象である『婦女』に婚姻中の婦女が含まれないという根拠は何もない」と指摘した。
今回の事件は凶器まで突きつけた悪質な事例で、上級審の判断も残されている。裁判所も「個別の事件ごとに判断しなければならない」とした。「夫婦の寝室での出来事まで法律でどうこう言えない」という主張から、民法826条の「同居義務」に性生活も含まれると見る解釈など反対論も根強い。夫婦間の強姦罪が離婚の口実や浮気の報復手段として悪用される懸念もなくはない。そうかといって、配偶者を所有物と考える時代錯誤的な考えはなくならなければならない。
金泓振(キム・ホンジン)論説委員
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