◎高速道路値下げ 県境越えた交流の拡大を
土日祝日に、北陸自動車道や東海北陸自動車道など地方の高速道路を上限千円で乗り放
題とする料金値下げをぜひ実現させたい。金沢西インター―富山インター間は現行料金で千七百五十円かかる。これが千円で済むなら、県境を越えて安近短の行楽や買い物を楽しむ人はかなり増えるだろう。地域のイベントや祭りを活性化し、個人消費の拡大につなげるチャンスである。
値下げの対象は、自動料金収受システム(ETC)を搭載した普通車などに限られる。
中日本高速道路金沢支社によると、ETCの利用率は昨年十一月の段階で72・7%に達しており、国交省は実勢価格で一万円前後するETCの機械を購入する場合、費用の一部を助成する方針という。乗り放題が実現すれば、一挙に普及が進むのではないか。
上限千円の料金は、五十キロを超えるあたりから、割安感が出てくる。金沢西―富山の
場合、約六十二キロ離れているから、石川県から富山県へ、あるいは富山県から石川県へと、県境を越えた休日のドライブが大幅に増えるだろう。ショッピングセンターやファッションビル、商店街なども買い物客を遠方から集めるよい機会になり、県境を越えた交流人口の増加が期待される。
全国的に名の知られた祭りや観光地には、関西や中京方面からの入り込み客が増えるだ
ろうが、これまで地域住民が中心だった小さなイベントや催しなども、アイデア一つで集客を図り、大きく育てることが可能になる。
ガソリン価格の下落もあり、財布を気にせずに気軽に隣県へ足を延ばせるようになる意
味は大きいが、ネックは他県の情報を知る機会が少ないことだ。石川県人は富山県のことを、富山県人は石川県のことを知っているようで知らない。観光施設やイベントなどの情報を隣県の人にももっと知ってもらう工夫がより重要になる。
値下げによって、中日本高速道路など高速道路六社の料金収入が減り、債務の返済計画
に支障が出る懸念もあろう。だが、地域が活性化し、消費が増える経済効果は、それ以上に大きいはずだ。
◎「渡り」あっせん容認 政令撤廃を決断のとき
官僚OBが再就職を繰り返す「渡り」のあっせんや、あっせんの首相による承認を容認
した政令について、自民党の公務員制度改革委員会が認めない方針を決めた。この政令をめぐっては渡辺喜美元行政改革担当相が離党の最大の理由とし、党内でも不満がくすぶっていた。党と政府の対立が先鋭化する異例の展開は、公務員制度改革の取り組みそのものに対する麻生太郎首相への不満が表面化したとみることもできる。
改正国家公務員法では、三年間の移行期間を経た二〇一一年末以降、渡りのあっせんを
禁止している。これに対し、昨年十二月に閣議決定された政令は、移行期間中については「必要不可欠な場合」には容認する例外規定が盛り込まれた。これでは天下りに厳格に対応する立法趣旨にそぐわず、「必要不可欠」という文言が抜け道に利用されかねないとの懸念がせり出すのも無理はない。改革委が主張する通り、政令撤廃の決断もやむを得ないのではないか。
麻生首相は衆院予算委で、渡りのあっせんについて「原則として承認しない」としなが
ら、例外として国際機関での勤務経験が極めて豊富、外国当局との交渉に十分な知識経験を有する―などのケースを挙げた。首相は自民党改革委の見直し方針を受け、あらためて撤回しない考えを示したが、決めたばかりの政令を変えれば再び迷走批判を招くことを恐れているのだろう。
官僚の再就職支援を一元化する「官民人材交流センター」は昨年末に発足した。政府は
国家公務員制度改革のスケジュールを示す「工程表」案を提示し、改革期間を一年短縮する方針も打ち出した。だが、中央省庁幹部人事を一元管理する「内閣人事局」も一〇年四月の設置時期を示すにとどまり、組織形態などには踏み込んでいない。
公務員制度改革は日本の官僚制度を抜本的に変える大仕事であり、政権がよほど安定し
ないとやり抜くことはできないだろう。今回の政令論議を含め、今の麻生政権に官僚の抵抗をはねのける突破力があるのか甚だ疑問である。