準大手ゼネコン「西松建設」(東京)が国内外で多額の裏金を作っていたとされる事件で、同社の国沢幹雄社長(70)が、裏金の使途の一つとみられる福島県の建設会社への融資の一部を指示していた疑いが強いことが関係者の話でわかった。融資総額は2億数千万円。無担保のうえ、実質的に全く返済されていないことから、原子力発電所関連工事の地元対策などに絡んだ不明朗な資金提供とみられている。
この融資は、西松建設が子会社「松栄不動産」(東京)など関係する2法人を通じて行っていたことも判明。国内外で作られた20億円超の裏金の使途解明を進めている東京地検特捜部は、この融資をめぐる国沢社長の関与などについて調べている模様だ。
関係者によると、西松建設は03年以降に複数回にわたり、総額2億数千万円にのぼる資金を松栄不動産に提供。この金は、さらに別の関係法人を通じて福島県の建設会社に融資名目で流れたとされる。経緯を知る関係者によると、このうちの一部は国沢社長の指示で実行されたという。
西松建設が国内で裏金を使う場合には、発覚しないように松栄不動産を介在させ、資金の流れを複雑にするケースがあったといい、2億数千万円の中にも裏金が含まれている疑いが強いとみられている。
関係者によると、「融資」は無担保で実行されたうえ、西松建設側から実質的に返済の要求はなく、現在も借入残高の確認書を毎年交わすだけの不自然な取引を継続。また、「融資」以前に、西松建設側と建設会社との間に取引はほとんどなく、複数のゼネコン関係者は「建設会社は、原発関連工事の地元対策などに絡むゼネコン側からの資金の受け皿という面もあった」と指摘している。