ドイツやフランスなどユーロ採用16カ国の金融政策を担う欧州中央銀行(ECB)が4カ月連続で政策金利を引き下げた。域内景気の急激な悪化とインフレ圧力の弱まりからみて当然の判断だ。欧州の不振は一段と深刻になる兆候もある。ECBは各国政府と連携して躊躇(ちゅうちょ)なく景気刺激に動くべきだ。
今回の0.5%利下げでユーロ圏の政策金利は年2.0%と、2003年6月から2年半余り続いた最低水準に並んだ。世界金融市場の混乱を受けた昨年10月の利下げ前に比べて金利は半分以下になった。
政策変更の声明にある通り、欧州経済は二重の困難に直面する。まず世界需要の減退による域外輸出の落ち込みで、とりわけ輸出への依存度が高いドイツは大幅なマイナス成長が必至だ。第二に金融機関が融資に一段と慎重となっており、域内経済も縮こまる傾向を強めている。
物価面をみても利下げをためらう要素はない。昨年12月の域内消費者物価上昇率は前の月を0.5ポイント下回る1.6%と、ECBが物価安定の目安とする「2%未満、2%近辺」を下回る。現時点では中期的にインフレが再燃する気配もない。
米国の連邦準備理事会(FRB)や英国のイングランド銀行に比べ、ECBの利下げには慎重さが伴う。一部理事が利下げ見送り論を主張するなど市場予想はばらついた。トリシェ総裁は今回の利下げを全会一致で決めたと語った。足並みの乱れがなかったと強調したいのだろう。
総裁は記者会見で「次の重要な会合は3月になる」と語り、次回の政策決定会合となる2月5日の利下げ決定はないと示唆した。急速な金融緩和への慎重論にも配慮してバランスをとった可能性がある。だが不確実性が非常に高い局面で、次回の利下げを先延ばしすると示唆することが賢明かどうか、疑問がある。
気掛かりなのはドイツの大手銀行の動きだ。最大手のドイツ銀行は昨年10―12月期の最終損益が赤字になりそうだと表明した。コメルツ銀行はドレスナー銀行買収のために公的資金の追加投入を求めた。金融システムの不安再燃は避けねばならない。ECBには金融緩和と資金供給の両面で機敏に動く必要があろう。