山形市のNPO法人「地球のステージ」代表で精神科医の桑山紀彦さん(45)が15日、イスラエル軍から攻撃を受けているパレスチナ自治区ガザ地区に入り、救急医療活動を始めた。桑山さんは、毎日新聞の電話取材に「市民たちは『世界に見捨てられた』と孤立感にさいなまれている。日本をはじめ世界はもっとパレスチナに目を向けてほしい」と窮状を訴えている。
桑山さんは15日午前、エジプト国境からラファ検問所を通りガザ地区南部に入った。検問所から車で約10分のラファ市立病院を拠点に、現地やベルギーの医師とともに救命救急活動に携わっている。攻撃対象の中心になっているガザ市に比べ、ラファ市の被害は少ないものの、市中心部の建物も狙われ、多数のけが人が出ており、瀕死(ひんし)の患者も担ぎ込まれているという。
桑山さんは、東ティモールや津波被害を受けたインドネシアで心に傷を負った人への心のケアを中心に、海外支援活動を続けてきた。「地球のステージ」は03年5月、ラファ市に事務所を開設。同市の福祉財団と協力し、子供たちの戦争のストレスが報復テロへと結びつかないよう、絵画や演劇、サッカー教室などを開いてきた。
8日に日本を出発し、当初は北部からガザ地区に入ろうとしたが、封鎖されて入れず断念。エジプト経由で南部からガザ地区に入った。検問所で足止めされたが「医師として受け入れたい」という福祉財団の招へい状を手に交渉を重ね、通過が認められた。
桑山さんは「イスラエル軍機が絶えず飛んでおり、外出しにくい状態。皆バラバラに避難しており、安否状況を確認できない」と実情を語った。19日には、ラファを離れる予定という。【大久保渉】
毎日新聞 2009年1月17日 東京朝刊