リーダーは北極星のような存在であるべきだという意見がある。なぜか。
北極星は地球の自転軸の延長線上にあるため、いつも真北の方向に見える。航海や天体観測などの際に固定点として目標になり、位置確認といった業務に重要な役割を担う。
政治や企業経営などのリーダーは、自らの理念、理想を掲げて北極星のように同じ場所で輝き、組織の目標となるべきという考え方である。日本のトップリーダーの麻生太郎首相はどうだろう。総額二兆円の定額給付金をめぐり、発言が二転三転する「ぶれ」が目立つ。
特に問題になったのが、高額所得者の受給の是非についてだ。当初、高額所得者が受け取るのは「さもしい」「人間の矜持(きょうじ)の問題」と批判的な見方を強調していた。だが、今国会になって「盛大に使ってほしい」と考えを百八十度変えた。
景気刺激策の比重が高まったからだという。野党に発言のぶれを追及されると、「さもしい」発言を事実上撤回した。過ちがあれば率直に非を認めるべきだが、首相の考えが本当に変わったとは思えない。
「さもしい」などの表現には疑問が残るが、何千万、何億円も年収のある人が受け取るべきではないというのは一つの見識ではあった。首相が肝心のところでぶれるご都合主義では、北極星にはなれまい。