意識される第2次金融危機、政府頼み状況に懸念

2009年 01月 16日 17:51 JST
 
記事を印刷する |

 [ニューヨーク 15日 ロイター] ロンドン銀行間取引金利など銀行間市場の金利が低下しているにもかかわらず、第2次信用危機の到来が意識され始めている。一部アナリストは、現在のクレジット市場回復が中銀の流動性供給策や政府の支援策があってこそではないかと懸念している。

 ネットブラック・キャピタルのアナリスト、ジェス・ブラック氏は、短期的な対策として、問題の部分に資金がつぎ込まれてきたが、過剰な借り入れといった「根本的要素にはきちんと対応していない」と指摘する。

 巨額な公的資金の投入で、2008年第4・四半期に短期金融市場の流動性ひっ迫は緩和した。

 LIBORはここ数カ月急速に低下。3カ月物ドルLIBORと3カ月物米国債利回りの差であるTEDスプレッドは今週、100ベーシスポイント(bp)を下回った。100bp割れは、リーマン(LEHMQ.PK: 株価, 企業情報, レポート)破たん以来初めてで、金融市場が極度のパニック状態から抜け出つつあることをうかがわせた。

 ところが、米銀大手のバンク・オブ・アメリカ(バンカメ)(BAC.N: 株価, 企業情報, レポート)やシティグループ(C.N: 株価, 企業情報, レポート)の財務内容悪化が取りざたされるとLIBORは下げ止まった。

 アナリストからは、懸念が第2次世界金融危機に結びつくことを懸念する声が出ている。

 調査会社エリオット・ウェイブ・インターナショナルのプレッチャー最高経営責任者(CEO)は「一時的な小康状態であって、それが終われば株は新安値をつけ、TEDスプレッドは昨年10月の過去最大よりさらに拡大する」と指摘。国債増発を伴う景気浮揚策は失敗に終わるケースが多いとし、米国債バブルとデフレ不況の危険性に警鐘を鳴らす。

 同氏によれば、1720年代に英国で起こった「南海会社バブル」、それに続く株価急落は、世界経済の現状を考えるうえで参考になる。「信用供与を拡大して問題解決を図ったがうまくいかなかった。それが、いま銀行システムで起こっていることだ」という。

 米政府は今年、約2兆ドルの国債を発行する見通し。アナリストは米国債市場の規模は5兆8000億ドルになると予想している。

 強気なアナリストは、米連邦準備理事会(FRB)の資金供給で企業や個人の借り入れ環境改善の兆しを指摘する。

 しかし、政府の不良資産買い取りは、銀行システムや米経済に審判を下す時期を先延ばしするに過ぎないとの意見も聞かれる。ネットブラック・キャピタルのブラック氏は「今回のクラッシュをもたらした過剰問題はまだ解決していない」と述べている。

 失業者の増加が続き、個人消費がさらに冷え込み、それが企業業績を圧迫、株価や社債下落へとつながれば、投資家が復讐をこめて再び売りに出る可能性がある。「どの指標をみても、弱気市場が終わった気配はない」とプレッチャー氏は語っている。

 (John Parry 記者;翻訳 武藤邦子)

 
 
Photo

編集長のおすすめ

  • ニュース
  • 写真
  • ビデオ
Photo
世界経済
中東和平プロセス
イラク問題
北朝鮮の核問題
環境問題
日米関係
米国における人種問題