◎疲弊する北陸経済 「全国」以下の指標目立つ
米株安と円高の進行で東京株式市場の日経平均株価が急落し、取引時間中に一時八〇〇
〇円台を割り込んだ。年明け以降、オバマ次期米大統領が推進する大型景気対策への期待から株価が九〇〇〇円台に乗り、「実体経済の悪化を株価は織り込んだ」との見方も聞かれたが、期待は泡のように消えてしまった。
日銀金沢支店が出した一月の「北陸の金融経済月報」を見ると、百貨店売上高、乗用車
新車登録台数、新設住宅着工戸数、鉱工業生産指数など、実体経済を映す指標は、直近の数字がいずれも全国平均を下回った。以前は全国平均を大きく超えていた有効求人倍率も昨年十一月は0・87(全国平均0・76)倍と、徐々に差がなくなってきている。景気のけん引役だった製造業の不振で、北陸経済の先行きは厳しさを増している。
十五日の東京株式市場は、ほぼ全面安の展開で、下げ幅は四〇〇円を超えた。取引時間
中の八〇〇〇円割れは昨年十二月八日以来およそ一カ月ぶりである。株価の急落は、決算期を迎える北陸企業の業績にも大きな影響を及ぼすのは間違いない。
北陸の金融経済月報のなかで、特に気になるのは、昨年七月以降、五カ月連続で全国平
均を下回った新設住宅着工戸数である。直近の数字である昨年十一月は、全国平均が対前年同月比で0・0%と健闘しているのに対し、北陸はマイナス19・5%と大きく落ち込んだ。
個人消費の指標である百貨店売上高も経済環境が悪化した昨年七月以降、五カ月連続で
全国平均を下回り、直近の昨年十一月は、北陸の既存店がマイナス7・3%(全国平均マイナス6・4%)だった。乗用車新車登録台数も昨年十一月がマイナス22・0%(全国平均マイナス18・9%)、同十二月がマイナス17・9%(同マイナス17・3%)と二カ月連続で全国平均を下回っている。
昨年十月の鉱工業生産指数は医薬品など化学が11・1%と好調な半面、一般機械はマ
イナス21・7%、電気機械は同14・8%と大きな差が開いた。全業種の平均値ではやはり全国平均を下回っており、製造業の苦境が続いている。
◎春闘スタート 雇用「最優先」で協調を
日本経団連と連合が〇九年春闘のスタートとなる首脳会談で、雇用の安定・創出に労使
が協力する共同宣言を採択したのは望ましいことである。賃上げに関する労使の主張は隔たりが大きく、今後の交渉は難航が予想されるが、国民生活の安定は何よりも雇用が維持されてこそであり、企業も労働団体も雇用の安定に努力する社会的な責任を負っていることをまず共通認識としたい。
経団連は昨年十二月に正式発表した〇九年春闘指針で、雇用問題に対する姿勢を後退さ
せた。当初案で雇用の安定を「最優先する」としていたのを、「安定に努力する」という表現にとどめたのである。世界的な不況で自動車、電機などの企業業績は激しく落ち込み、一層の景気悪化予想に経営側は警戒心を募らせている。
しかし、失業者の増加と雇用不安の拡大が続けば、景気の負のスパイラルは加速するば
かりであり、厳しい経営環境にあっても従業員の雇用の安定を最優先する姿勢を失わないでほしい。
労働側も雇用の確保を第一とし、そのために賃上げ要求を我慢しなければならない企業
があることを認識せざるを得まい。雇用維持のため、従業員が仕事を分け合い、ある程度の賃下げも甘受する「ワークシェアリング」を緊急避難的な措置として受け入れることも選択肢に挙げられよう。ただ、ワークシェアリングの制度化については、時間をかけて議論を深める必要があると思われる。
一方、連合が八年ぶりに要求するベースアップ(ベア)は、やはり個々の企業の労使交
渉に判断をゆだねるほかあるまい。一律のベア要求は企業の経営実態にそぐわないとしても、物価上昇や内需拡大に配慮して賃上げをすべきという主張には一理ある。経団連も昨年の春闘指針で「企業と家計を両輪とした経済構造」を実現する必要性を説き、企業の利益を賃金や賞与などの底上げ原資とする考えを示したのではなかったか。
不況時にあっても着実に業績を上げている企業は少なからずある。余力のある企業はベ
ア要求に積極的こたえてほしい。