愛媛男性死亡:民事は「他殺と推認」 保険全額支払い命令

2009年1月16日 2時30分 更新:1月16日 16時20分

 愛媛県警が自殺と判断した男性の妻(48)が「自殺ではない」としてえひめ南農協(同県宇和島市)に生命保険金の特約分の支払いを求めた訴訟で、松山地裁宇和島支部(小崎賢司裁判官)は15日、「他殺と推認できる」として2500万円全額の支払いを命じた。捜査結果を否定する異例の判決となったが、県警捜査1課は「やれる限りの捜査をして、事件性が薄いと判断した」としている。

 遺体で見つかったのは同県愛南町の漁業の男性(当時64歳)。

 判決によると、男性は06年10月21日朝、自分の船で沖合のいけすに行き、行方が分からなくなった。船は2日後に見つかったが無人で、男性は船の発見現場とは半島を挟んで反対側の海上で11月2日に発見された。

 遺体の足にはロープでいかり(重さ約10キロ)が巻き付き、後頭部と背中に打撲の跡があった。死因は呼吸停止状態で海に入ったことによる心原性ショックとみられ、船には餌や魚が残されていた。

 県警は殺人の疑いがあるとして60人態勢で数カ月間捜査したが、最終的に第三者の関与は薄いと判断。07年3月に「自殺の可能性が高い」と遺族に説明した。農協も、生命保険金のうち不慮の事故などで死亡した際に加算される2500万円を支払わなかった。

 妻は07年10月に提訴し、(1)いかりは夫の物ではない(2)海流や風向きから船と遺体の発見位置が不自然(3)歯科の予約をしているなど自殺の動機がない--などと主張。農協側は「打撲は足を海に投げ出した際、船べりなどに打ち付けてできた」などと反論していた。

 判決は原告側の主張を認定した上で「本人の船以外の場所で打撲を負い、いかりの結びつけ、水没がなされた」と判断。犯人が検挙されていない事実だけでは事件性を否定できず、「他殺と合理的に推認できる」と結論付けた。

 妻は「警察に聞き入れられなかったことを全面的に理解してもらえた。今後も自分で真実を究明したい」と話した。えひめ南農協の林正照組合長は「今後のことはJA共済連愛媛と協議したい」としている。【川上展弘、後藤直義】

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