12/9 ※勢いで書いていた部分をちょっと修正と加筆しますた。
side ???
人間ほど思慮深く適応能力の高い動物はいないだろう。
考える力があるゆえに己の現状を理解し、またその時もっとも有効な手段を考える事ができるのだ。
ゆえに私は考える、これからどうするかを。
具体的な案はある。今の状況を受け入れなんとか生きていく、というのが一つの案だ。
だがこれを選択するのを邪魔する厄介な物がある。
好奇心だ。
理性では解っている。安全こそ第一。
死地に赴くなど問題外。
しかしその理性をねじ伏せてしまうのが好奇心と言うもの。
だから私は揺れている。あの光景を見てみたい、と。
あそこはまかり間違えば死亡フラグが立ちかねない場所、戦場になりえる場所なのだから。
だから「行くな」と理性が告げる。
だけど「面白そうだから行きたい」と好奇心が囁く。
私は悩んだ、それこそ二日間全く食事を取らないほどに。
いや、ただ単に食料が調達できなか(ゲフンゲフン
気がつくと私は『その場所』に来てしまっていた。
ああ、不味い。どうやら空腹から冷静な判断が出来なかったようだ。
このままでは危険だ。そう判断しその場から立ち去ろうと振り向く。
「にゃ~。にゃ~にゃ~」
解った、神は俺が嫌いらしい。
いや、取り繕うのも止めだ。俺は来てしまったんだ、自分の意思でこの場所に。
もう逃げないし偽らない事にする。だから言わせてくれ。
―うはっ! ユフィ、テラ可愛いィィイ!
俺に名前はまだ無い。人間だった頃はあったが今のこの体には関係ないものだ。
今の俺は唯の野良猫。後にアーサーと名づけられる運命にある。
コードギアス 道楽のアーサー ~こんにちわ私アーサー(予定)です~
side アーサー(仮)
「怪我しちゃったのかにゃ? にゃ~にゃにゃ~」
目の前に現れた猫語で話す少女に心の底から感動を覚える。
これが天然系か。テレビ画面越しに見るよりもインパクトがでかい。
しかしどうしたものか、今更だがちょっとドキドキしてきた。
と、ユフィが手を差し出してきた。
え? どうしろと? いや決まってるここは。
素直に匂いをかぐ! ……良い匂いがします。
こう、高貴な香りがプンプンしますよ。
思わず頬をこすりつけてしまう。
しかもユフィさん「にゃ~にゃ~」ってまた萌えそうな事言ってくれて、正直堪りません。
そして俺を抱き上げるユフィ。それを素直に受ける俺。
ああ、どうせならこのままお持ち帰ってくださいお願いします!!
「えへ」
あ、そういや居たね君も。目の前に現れたまだ綺麗な頃のスザクを見てちょっとテンションの下がった俺。
せっかくユフィのおかげで夢心地だったのにどうしてくれる。
理不尽な怒りを覚えた俺はとりあえず。
「にゃぁ~」
可愛く鳴き。
「う゛ぅ」
「あら」
(ざまぁみろスザク!)
差し出されたスザクの指に噛み付いてそして内心で高笑いを上げてやった。
俺の至福の時を妨害した罪は重いのだ。
あのあと少し移動した俺はまず怪我の手当てをしてもらった。
スザクに触られるのが嫌でずっと威嚇していたのはここだけの秘密。
「ネコ苦手なんですか?」
「僕は好きなんですけど……」
スザクには聞いてない。そう言いたくてまた威嚇行動をする。
あ、別にスザクのこと嫌いなわけじゃないぞ。
ただ単に野郎に触れられたくないだけだ。
誰が好き好んで男に触れられたいと思う?
そんなの同性愛者同士でしてくれ、そういうものを否定しないが俺自身はノーマルなんで。
「片思いばっかりなんです」
……怖気が走りました一瞬。
それにしてもこれからどうしようか?
確か二人はこれから街を見て回ってシンジュクゲットーの方を見に行くはず。
とりあえず危なくない程度についていく事にするか。
それから二人と一緒に街中を歩き続けた、さっきまでは。
今はまたも至福の時を味わっている。
何故かって? 抱きかかえられているからだ、ユフィに。
どうやら俺の前足の怪我を気にしてくれたらしい。
おっとただ抱きかかえてると思うなよ。
さっきはスザクに見せるために腕を伸ばしていたが今度は違う。
当たってるんだよ! この大きなモノがぁぁああ!!
多分今の表情を人間に直して鏡で見たら自分自身で引くだろう。
それぐらいやばい自信がある。
と、急に足を止めるユフィ。どうしたのかと彼女の顔を見上げると。
「私にシンジュクを見せてください」
先ほどとは打って変わって真剣な表情がそこにあった。
シンジュクゲットーにやってきた俺達はその惨状を目にした。
立ち並ぶ墓。その真新しさから数日前にあったという殲滅戦のときの戦死者の物だろう。
いや戦死者というよりも犠牲者といった方がいいか。
供えられている人形がその証拠だ。
……でもこのパチモンチックなのがちょっと雰囲気を殺してしまう。
そして後で暢気に観光気分の学生達よ。
少しは自重しろ。
「出てけよ! ブリタニアの豚共!」
声に気付き後ろを向くと数人の男が学生達を囲むようにしてその場にいた。
え~と、あれは……そう玉城だ!
黒の騎士団のムードメイカー兼お荷物の玉城だ!
しかし今やっているのはチンピラみたいに喧嘩を吹っかけているけど。
と、俺の横を走り抜ける人物が一人。
スザクだ。そして彼等の間に入り仲裁をしようと試みるが。
何故か標的がスザクに。
そしてスザクに殴りかかる玉城、だが。
―玉城……無茶しやがって。
いや死んでないけど。ただスザクに投げられただけ。
そして倒れこんだところに飛び掛る影が一つ。
そいつは玉城の顔のところを横切ると同時に縦線を刻み付けて行った。
勿論犯人は俺。
なんとなく見てると引っ掻きたくなるんだよな、あの顔。
痛がる玉城に威嚇する俺と自分には敵わないと諭すスザク。
それが効いたのか仲間の一人が提案し玉城たちは引き上げて行く。
しかしネコにやられる大の大人……全くもって情けない。
ふ、もう二度と俺の前に姿を現さないほうが
「これ以上この方を侮辱することは許しません」
あ、俺が後向いてる間にイベント消化しないでくれ!
負け犬の背中を見送っていい気になっている俺の後ろでサクサクッと進行していく事態。
ユフィのカッコいいところを見逃してしまって落ち込んだのは言うまでもない。
凄いな。
それは四機のサザーランドを相手にするランスロットを見た素直な感想だ。
俺は運動場跡地らしき場所隅の通路でスザクの勇姿を見ていた。
勿論、ロイドさんたちとである。
え? ユフィ? 危ないからってトレーラーに残ってもらってる。
だけどこの後乱入することになるのだろう、あの戦闘の中に。
……別にユフィのほうが危険だからこっちにきたんじゃない。
本当だぞ。
っと、それよりも戦闘だよ戦闘。
四機のサザーランドを相手にしているランスロットはその機動力を生かして互角の勝負をしている。
いや僅かにランスロットのほうが押してきている。
実際四機相手なら高スペック相手でも何とかなるのが普通だと思うのだが。
これがチート能力という奴か。
「凄いねぇ。君もそう思わない?」
「にゃ~」
いや全く俺もそう思いますね。だけどロイドさんネコに同意を求めるのは電波な人だと思われますよ?
そう思いながら俺の体の下に居る―正確には俺が乗っているんだけど―ロイドさんに答える。
だがそんな俺の余計な心配は届かず、だが「うん、うん」頷いている。
もしかして同意したのわかってるのか。
とその時戦闘に変化が起きた。
運動場の外壁を飛び越えてサザーランドが一体躍り出てきた。
ああ、ヴィレッタさんがオレンジの救援に来たのか。
しかしロボットが入り乱れて戦闘するのって凄い、男の浪漫だと思う。
俺はネコだけど。
(どうせなら人間で介入したかったよ、ギアスには)
そんなことを思っているとと、サザーランド三機が離れて行く。
「あ、ちょっとやばいかもね此処」
そう言って通路の奥に引っ込むロイドさん、勿論俺も一緒だ。
そして思い出す何たら爆弾だか爆雷だかを使うと言う事に。
そして放たれる筒状のもの。
って、
(耳がぁぁあああ! 耳がぁぁあああ!!)
キュィンキュィン五月蝿い。しかも通路の中だから反響して威力倍増!
耳を押さえてのた打ち回ってる俺。そしてロイドさんの上から引力に引かれて落ちていく。
ネコの耳は人間よりも高性能といがこれほどとは。
地面に激突した俺はそのことを実感しながら意識を手放す。
この後見れるはずだった凛々しいユフィのイベント。
そんなことを思って次に目を覚ました俺が見たものは。
「あら、目が覚めた?」
笑顔で声を掛けてくれる女性だった。
(セシルさん俺をお持ち帰りしてくれ!)
優しい眼差しで言葉をかけてくれた彼女にそう願わずにはいられなかった。
あとがき
コードギアスの世界に来た人間(名前なし)。
でもアーサーに憑依してしまったためまともに介入も出来ずにただ見てるだけ。
そんな変な話。
書いた理由は。
「あ~なんか憑依モノ書きたいな~」という衝動にかられ、
「どうせなら終わったばかりのギアスがいいな~」などと思い、
「でも普通にルルとかに憑依しても面白くないだろうな~」などと思案した結果がこれ。
構想・え? それなに? おいしいの?
執筆・勢いに任せて書けばいいや。で、三時間くらいです。
後悔・大いにしてます orz
※ 三話から本腰を入れて執筆に入りました。でも暫くは日常をのんびり書いていきます。
※ 11/16 テスト板より移動。ちょっとドキドキ。