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[4685] コードギアス 道楽のアーサー 【現実 憑依物】
Name: 量産化の☆◆30ba27f3 ID:3235ca5e
Date: 2008/12/18 23:38





12/9 ※勢いで書いていた部分をちょっと修正と加筆しますた。








 side ???




人間ほど思慮深く適応能力の高い動物はいないだろう。

考える力があるゆえに己の現状を理解し、またその時もっとも有効な手段を考える事ができるのだ。

ゆえに私は考える、これからどうするかを。

具体的な案はある。今の状況を受け入れなんとか生きていく、というのが一つの案だ。

だがこれを選択するのを邪魔する厄介な物がある。

好奇心だ。

理性では解っている。安全こそ第一。

死地に赴くなど問題外。

しかしその理性をねじ伏せてしまうのが好奇心と言うもの。

だから私は揺れている。あの光景を見てみたい、と。

あそこはまかり間違えば死亡フラグが立ちかねない場所、戦場になりえる場所なのだから。

だから「行くな」と理性が告げる。

だけど「面白そうだから行きたい」と好奇心が囁く。

私は悩んだ、それこそ二日間全く食事を取らないほどに。

いや、ただ単に食料が調達できなか(ゲフンゲフン

気がつくと私は『その場所』に来てしまっていた。

ああ、不味い。どうやら空腹から冷静な判断が出来なかったようだ。

このままでは危険だ。そう判断しその場から立ち去ろうと振り向く。



「にゃ~。にゃ~にゃ~」



解った、神は俺が嫌いらしい。

いや、取り繕うのも止めだ。俺は来てしまったんだ、自分の意思でこの場所に。

もう逃げないし偽らない事にする。だから言わせてくれ。









 ―うはっ! ユフィ、テラ可愛いィィイ!








俺に名前はまだ無い。人間だった頃はあったが今のこの体には関係ないものだ。

今の俺は唯の野良猫。後にアーサーと名づけられる運命にある。




















 コードギアス 道楽のアーサー  ~こんにちわ私アーサー(予定)です~




















 side アーサー(仮)



「怪我しちゃったのかにゃ? にゃ~にゃにゃ~」



目の前に現れた猫語で話す少女に心の底から感動を覚える。

これが天然系か。テレビ画面越しに見るよりもインパクトがでかい。

しかしどうしたものか、今更だがちょっとドキドキしてきた。

と、ユフィが手を差し出してきた。

え? どうしろと? いや決まってるここは。

素直に匂いをかぐ! ……良い匂いがします。

こう、高貴な香りがプンプンしますよ。

思わず頬をこすりつけてしまう。

しかもユフィさん「にゃ~にゃ~」ってまた萌えそうな事言ってくれて、正直堪りません。

そして俺を抱き上げるユフィ。それを素直に受ける俺。

ああ、どうせならこのままお持ち帰ってくださいお願いします!!



「えへ」



あ、そういや居たね君も。目の前に現れたまだ綺麗な頃のスザクを見てちょっとテンションの下がった俺。

せっかくユフィのおかげで夢心地だったのにどうしてくれる。

理不尽な怒りを覚えた俺はとりあえず。



「にゃぁ~」



可愛く鳴き。



「う゛ぅ」

「あら」

(ざまぁみろスザク!)



差し出されたスザクの指に噛み付いてそして内心で高笑いを上げてやった。

俺の至福の時を妨害した罪は重いのだ。


















あのあと少し移動した俺はまず怪我の手当てをしてもらった。

スザクに触られるのが嫌でずっと威嚇していたのはここだけの秘密。



「ネコ苦手なんですか?」

「僕は好きなんですけど……」



スザクには聞いてない。そう言いたくてまた威嚇行動をする。

あ、別にスザクのこと嫌いなわけじゃないぞ。

ただ単に野郎に触れられたくないだけだ。

誰が好き好んで男に触れられたいと思う?

そんなの同性愛者同士でしてくれ、そういうものを否定しないが俺自身はノーマルなんで。



「片思いばっかりなんです」



……怖気が走りました一瞬。

それにしてもこれからどうしようか?

確か二人はこれから街を見て回ってシンジュクゲットーの方を見に行くはず。

とりあえず危なくない程度についていく事にするか。

それから二人と一緒に街中を歩き続けた、さっきまでは。

今はまたも至福の時を味わっている。

何故かって? 抱きかかえられているからだ、ユフィに。

どうやら俺の前足の怪我を気にしてくれたらしい。

おっとただ抱きかかえてると思うなよ。

さっきはスザクに見せるために腕を伸ばしていたが今度は違う。

当たってるんだよ! この大きなモノがぁぁああ!!

多分今の表情を人間に直して鏡で見たら自分自身で引くだろう。

それぐらいやばい自信がある。

と、急に足を止めるユフィ。どうしたのかと彼女の顔を見上げると。



「私にシンジュクを見せてください」



先ほどとは打って変わって真剣な表情がそこにあった。














シンジュクゲットーにやってきた俺達はその惨状を目にした。

立ち並ぶ墓。その真新しさから数日前にあったという殲滅戦のときの戦死者の物だろう。

いや戦死者というよりも犠牲者といった方がいいか。

供えられている人形がその証拠だ。

……でもこのパチモンチックなのがちょっと雰囲気を殺してしまう。

そして後で暢気に観光気分の学生達よ。

少しは自重しろ。



「出てけよ! ブリタニアの豚共!」



声に気付き後ろを向くと数人の男が学生達を囲むようにしてその場にいた。

え~と、あれは……そう玉城だ!

黒の騎士団のムードメイカー兼お荷物の玉城だ!

しかし今やっているのはチンピラみたいに喧嘩を吹っかけているけど。

と、俺の横を走り抜ける人物が一人。

スザクだ。そして彼等の間に入り仲裁をしようと試みるが。

何故か標的がスザクに。

そしてスザクに殴りかかる玉城、だが。



 ―玉城……無茶しやがって。



いや死んでないけど。ただスザクに投げられただけ。

そして倒れこんだところに飛び掛る影が一つ。

そいつは玉城の顔のところを横切ると同時に縦線を刻み付けて行った。

勿論犯人は俺。

なんとなく見てると引っ掻きたくなるんだよな、あの顔。

痛がる玉城に威嚇する俺と自分には敵わないと諭すスザク。

それが効いたのか仲間の一人が提案し玉城たちは引き上げて行く。

しかしネコにやられる大の大人……全くもって情けない。

ふ、もう二度と俺の前に姿を現さないほうが



「これ以上この方を侮辱することは許しません」



あ、俺が後向いてる間にイベント消化しないでくれ!

負け犬の背中を見送っていい気になっている俺の後ろでサクサクッと進行していく事態。

ユフィのカッコいいところを見逃してしまって落ち込んだのは言うまでもない。




















凄いな。

それは四機のサザーランドを相手にするランスロットを見た素直な感想だ。

俺は運動場跡地らしき場所隅の通路でスザクの勇姿を見ていた。

勿論、ロイドさんたちとである。

え? ユフィ? 危ないからってトレーラーに残ってもらってる。

だけどこの後乱入することになるのだろう、あの戦闘の中に。

……別にユフィのほうが危険だからこっちにきたんじゃない。

本当だぞ。

っと、それよりも戦闘だよ戦闘。

四機のサザーランドを相手にしているランスロットはその機動力を生かして互角の勝負をしている。

いや僅かにランスロットのほうが押してきている。

実際四機相手なら高スペック相手でも何とかなるのが普通だと思うのだが。

これがチート能力という奴か。



「凄いねぇ。君もそう思わない?」

「にゃ~」



いや全く俺もそう思いますね。だけどロイドさんネコに同意を求めるのは電波な人だと思われますよ?

そう思いながら俺の体の下に居る―正確には俺が乗っているんだけど―ロイドさんに答える。

だがそんな俺の余計な心配は届かず、だが「うん、うん」頷いている。

もしかして同意したのわかってるのか。

とその時戦闘に変化が起きた。

運動場の外壁を飛び越えてサザーランドが一体躍り出てきた。

ああ、ヴィレッタさんがオレンジの救援に来たのか。

しかしロボットが入り乱れて戦闘するのって凄い、男の浪漫だと思う。

俺はネコだけど。



(どうせなら人間で介入したかったよ、ギアスには)



そんなことを思っているとと、サザーランド三機が離れて行く。



「あ、ちょっとやばいかもね此処」



そう言って通路の奥に引っ込むロイドさん、勿論俺も一緒だ。

そして思い出す何たら爆弾だか爆雷だかを使うと言う事に。

そして放たれる筒状のもの。

って、



(耳がぁぁあああ! 耳がぁぁあああ!!)



キュィンキュィン五月蝿い。しかも通路の中だから反響して威力倍増!

耳を押さえてのた打ち回ってる俺。そしてロイドさんの上から引力に引かれて落ちていく。

ネコの耳は人間よりも高性能といがこれほどとは。

地面に激突した俺はそのことを実感しながら意識を手放す。

この後見れるはずだった凛々しいユフィのイベント。

そんなことを思って次に目を覚ました俺が見たものは。



「あら、目が覚めた?」



笑顔で声を掛けてくれる女性だった。


(セシルさん俺をお持ち帰りしてくれ!)


優しい眼差しで言葉をかけてくれた彼女にそう願わずにはいられなかった。







あとがき


コードギアスの世界に来た人間(名前なし)。
でもアーサーに憑依してしまったためまともに介入も出来ずにただ見てるだけ。
そんな変な話。


書いた理由は。
「あ~なんか憑依モノ書きたいな~」という衝動にかられ、
「どうせなら終わったばかりのギアスがいいな~」などと思い、
「でも普通にルルとかに憑依しても面白くないだろうな~」などと思案した結果がこれ。


構想・え? それなに? おいしいの?

執筆・勢いに任せて書けばいいや。で、三時間くらいです。

後悔・大いにしてます orz


※ 三話から本腰を入れて執筆に入りました。でも暫くは日常をのんびり書いていきます。


※ 11/16 テスト板より移動。ちょっとドキドキ。



[4685] 第二話
Name: 量産化の☆◆30ba27f3 ID:3235ca5e
Date: 2008/11/09 05:15

















 side アーサー(予定)



ふはははは、遅い。遅いぞ貴様等ァアアア!

貴様等に足りない物それは!

情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ!

そして何より




  速 さ が 足 り な い !!




冒頭からハイテンションの俺は周囲に展開する包囲網を突破しながら叫ぶ。

なぜこんな事を叫ぶかというと、アレである。

あの無印前半の最大の?イベント、




アーサーと鬼ごっこ!!




でも俺が逃げ切っても何にも無いのが寂しいところだ。

どうせならナナリーかシャーリーのキスが欲しい。

会長でもいい、カレンも捨てがたい。

でもニーナは遠慮したい。

だって、ねぇ。

そんなことを思いながらルルーシュを筆頭に追いかけてくる鬼の集団から逃げる逃げる。

彼等も必死だ。なんせみんながみんなおのれの欲望を満たすためだけに動いている。

しかも手強い。アメフト部とか完璧なフォーメーションで迫ってきたしな。

シールドつきの速いこと速いこと。

だがあの場所に着くまでは捕まるわけにはいかない。

そして出来る限り人目に付くわけにもいかない。

人目についたが最後、ルルーシュが苦労するだけだ。がんばれルルーシュ。

というか馬術部、いい加減貴様等は校内を疾走するなバカヤロウ!!












ネコギアス 道楽のアーサー(偽) 第二話 ~追いかけっこ~












前回から数日。……前回って何だ? 不思議と頭に浮かんだが……まぁいいか。

とりあえず今の俺は気ままな野良猫に戻っている。

セシルさんのところに何時までも厄介になるわけにも行かないし一度経験したら止められない。

そう、原作を生で見ることを。

あの興奮が忘れられない。まるで薬をうってしまった様な高揚感。知らないけどね薬なんて。

とにかく前回見た戦闘。唸るモーター。弾ける金属音。耳を劈く爆弾の音……は、いいか二度と聞きたくないあれは。

とにかくブラウン管越しに見るのと実際の目で見るのとが違うのを実感してしまったが最後。




 ―今度は紅蓮弐式とか見てぇ。ってか学園生活とかナナリーとかシャーリーとかミレイさんとかナナリーが見たい。




そんな衝動に駆られたんです。

あれ? ナナリー二回いった? ……好きなんです俺。

とにかくそんな訳で俺は今ここにいる。

「アッシュフォード学園」

なんともまぁ広い事広い事。純日本人の魂を持つ俺には非常識な広さだね。

敷地内を見て回るのに一日使ってしまったよ。

猫の足だと本当に苦労するね。途中何度休憩を入れたことか。

休憩時間に屋上にいた女生徒たちと戯れたり。

中庭で放課後の時間をすごす女生徒とスキンシップしたり。

本当に広い学園だよ、ここは。

で、そんなこんなで夜になってクラブハウスの前まで来たんだが。

なにやら入り口の前に二つの人影が。

も、もしや……。




「ルルーシュ僕ら学校では他人でいよう」




イベント見逃したーーーー!!??

え? これって!? このイベントって!?

チキショウ今日だったのか!? 今日転校してきたのか!?

なんて間の悪い男だよお前は! ……いや俺が悪いのか?

セシルさんのところでのんびりするべきではなかったのか!?

くそ、今夜は草葉の陰で泣いてやる!!

心の中は大荒れだ。

そんな俺の胸中など知らず別れる二人。

俺はクラブハウス近くの茂みで泣く泣く眠りにつくのだった。











翌日、時は来た。

ある物がイベントの開始を告げに接近しているのだ。

それは芳醇な匂いを漂わせてクラブハウスのドアの前に止まった。




 ―待っていたぞピザの配達員!!




そう今回こそ、このイベントだけは実行してやる。

これはおれ自身の自己満足ではない。

なぜならこのイベントでまだ綺麗なスザクが生徒会に入る切欠になるイベントだからだ。

ピザの配達員がドアの前に立つと同時に開かれる。

どんだけ待ち望んでいたんですか、貴方は。

いやそれよりもまず言いたい事がある。




 ―C.C.俺だー! 結婚してくれー!




いや冗談だけど。本音はこっち。




 ―C.C.俺だー! ギアスをくれーー!!!




出来ればマリアンヌみたいな感じの強化版で!

相手の体を乗っ取るのがいい! ギ○ュー隊長みたいに「チェーンジ!」て言ってみたい!

そうすればこの体ともおさらばできるしな!

けれど俺の心の叫びは届かない。一方通行の想いは辛い物があります。

くだらない事を考えながら彼女の横を通り過ぎる。

うむ、広々としたいい空間ではないか。

そこで後の扉が閉じる音がした。

C.C.を見上げる俺。しかしC.C.は気付かずにピザの入った箱を上機嫌に持っている。




 ―さてC.C.俺をルルーシュのところまで案内してくれ。




当然俺の思考が届いているわけではないが歩き出すC.C.。

俺はその後ろについていくだけだが。

……目の前でゆれる桃が俺の思考をかき乱します。

おのれこの魔女が! いや魔性の女が!

我が精神を蝕むつもりか!!

この身体が人型だったなら直にでも賢者タイムに移行するためどこかの個室に移動しただろう。















「最近プニプニーってなってません二の腕とか」


「絶対に触るなよ」




C.C.のお尻なら触りたいと思った奴、手を上げろ。

今から君と僕らは同志だ!

今、ここに立ち上げよう「C.C.のお尻を愛でる会」を!

とりあえず会長は俺で会員は挙手が早かった順にNo1、No2としていく。

当面の敵はマオだ。アイツはきっと相容れないだろうからな。

それよりも、と意識を切り替え机の上に乗っかっているカバンを見る。

とりあえず後ろ足で立ち上がり爪を立てカバンに引っ掛ける。

ごそごそと仮面の入ったカバンを引き落とそうとするが、これが重たいのって!?



「ふぎゃっ!?」



バランスを崩して落下してしまったではないか!

だけど同時にカバンも開いたのでこれ幸いと仮面を装着。

カシャンと音を立ててフィットする。気分は石仮面を被る感じだ。




 ―俺は猫を止めるぞ、ゼロォォォォォオオオオ!!




……くだらない事を考えたがこれで準備は完了した。

あとはプランAでいく。

プランA。あと先考えずにGO!作戦。

つまり何も考えてないわけだが。

ふむ、意外にかぶり心地は悪くない。

しかし男がかぶった後だと考えると……微妙だ。

それよりも見た目はどうなんだろう? まずは誰かに見せて感想が欲しい。

って、誰に見せるかは決まっているんだが。

俺は紅茶の香りのする部屋に静かに侵入した。

だがそのまま見せてもつまらないしここはインパクトある登場の仕方をするか。

邪な考えが浮かんだ俺は見つからない位置までテーブルに近づき、後ろ足に力をこめて大ジャンプ!




シュタッ!

「にゃあッ!(我が名はネコ・カ○ス!)」




心のイメージCVは中田○治先生だ!

突然の乱入者に「ほわぁっ!?」と情けない声をあげ更に椅子から転げ落ちてしまうルルーシュ。

むぅ、流石想定外のことに弱い男。アニメよりも数段リアクションがでかい。

ところでナナリー、その困惑顔は止めてくれ。

「にゃあ?」なんて言われただけで悶絶物だよ!

と、ここでルルーシュが復活。なにやら面白い顔で俺のことを見ているけど気にしない。



さぁルルーシュ、 運 動 の 時 間 だ よ 。














 side ルルーシュ




く、まさかこんな事になるなんて。

今俺は、いきなり現れた猫にゼロの仮面を盗られて取り返すべく追っている。

なんで猫が!? とか C.C.の奴は何をしていたんだ! とか色々と思うことがあるが今放っておく。

それよりも早く仮面を取り返さなければ。

こんなときテロリスト共を使えたら。それはでないが。

もし間違って人に見られでもしたら。く、ギアスをかけて忘れさせねばならない。

いや、それよりもカレンに見つかる方が不味い。

彼女には既にギアスを使ってしまっているしそれに―!?



「うわぁ!」



く、こんな物に突っ込んでしまうとは情けない。

上を見ていたせいで茂みに突っ込んでしまった事に内心で舌打ちをしてしまう。

はっ!? それよりも猫は!




「にゃぁ」


「ぐッ!?」




いきなり背中に衝撃を感じると共に憎たらしい鳴き声が耳に入ってきた。

お、おのれ猫。貴様わざわざ戻ってきて俺をクッション代わりに使ったな!

く、早く起き上がって……貴様なぜこちらを見ている。




「ふっ」


「ッ!?」




聞こえたぞ、今確かに鼻で笑ったな!

憎たらしい事にあの猫は俺をクッションにした後こちらを振り向いて鼻で笑ったのだ。

しかも俺が立ち上がるまでその場で伸びまでした。

いいだろう、貴様の挑戦を受けてやる。

このルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、全力を以って貴様を捕獲してやる!













 side アーサー(予定)



フハハハハ、遅いぞルルーシュ。

そんな事では俺は捕まえられないZE。

俺はルルーシュをおちょくりながら校舎入り口を目指す。

右へ左へ。時々股抜けして足をもつれさせる。

芝生の上に尻餅をつくルルーシュ君。

校舎入り口についた俺は後ろを振り向き敵の現在位置を確認。

そして校舎内に侵入した俺はすぐさま右に転進する。



敵は第一防衛ライン(校舎入り口)を突破! 本艦の真後ろまで接近してきています。

ええい、こうなっては囮だ。デコイ発射!

了解、デコイ発射!



すぐさま傍にいる女生徒の足に擦り寄る俺。

言っておくが上は見てないからな! 紳士な俺は決して卑怯なマネは(チラ)うむ素晴らしい眺めだって、違うぞ!

オレハナニモミテイナイ。




「きゃっ!? え? ネ…コ…?」


「何この仮面? これって―」




後は頼んだぞ名も無き君。私はその間に脱出する。

彼女達が俺の存在を確認し何を被っているか確認した時点で発進だ。

曲がり角を曲がる時、勿論後方の確認は怠らない。

今は丁度ルルーシュの魔眼が少女達に牙を向く瞬間だ。

……微妙だ、もっと面白い言い方は無いものか。

おっと、ルルーシュがこっちに来た。逃走再開。

これは敗走ではない! 戦略的撤退である!

と、ここで校内放送が流れる。




「こちら生徒会長のミレイ・アッシュフォードです」




おお、この麗しい声の持ち主はミレイさんだ。

走りながら彼女の声を聞く俺。

だがしかしなんともいや~な予感がひしひしと感じる。




「猫だ! 校内を逃走中の猫を捕まえなさい。部活は一時中断。協力したクラブは予算を優遇します―」


 ―そうだったぁぁあああ!! ルルーシュだけじゃなくって全生徒と鬼ごっこするんだった。




気分は正にモンスタ○ハウスの巻物を呼んだときのようだ。

あれほどの絶望感は無いだろう。

いきなり俺の周囲は完全に敵敵敵敵敵敵敵敵となったのだから。




 ―何重要な事忘れてるんだよ、俺! こうなったらすぐに捕まって早々に終了しちゃうか!?

一々あそこにいかなくってもルルーシュとスザクのことだからどうにかなるだろうし。

俺があそこに行く必要なんてそんな―。


「―足が悪いと思います。足音がちょっと変だったから」




この声はナナリーだ! そうだよ今すぐルルーシュに捕まってそのままクラブハウスにお持ち帰りしてもらえればナナリーに撫でてもらえるかもしれない。

そうと決まれば早速ルルーシュに捕まえて―。




「その猫はこんな風に鳴きます」





「にゃああぁぁぁぁぁ――――」






  テ ン シ ョ ン 上 が っ て き た !!!



今の一声で無意味にテンション上がってきたよ!?

それぐらい凄い威力を持ってます。

だって周りからも野太い声で「おおおおおおおお!!」って。

ちょっとまて! 今の一声で男共のやる気がアップしたってことはこっちのピンチ!?

倍速か!? 倍速の○物を読んだのか!!

こうしちゃおれんと逃げ出そうとした時、窓から男子生徒が飛び込んできた。




 ―うおぉぉおおお危ないじゃないか!




その体に押しつぶされそうなのを全力で前に飛ぶことで回避。

そしてさっさと曲がり角を曲がる。

後では「見たな、お前もさっきのことは忘れろ!」とルルーシュがせっせと隠蔽工作をしている。

がんばれルルーシュ。俺には行かねばならないところが…!? 前から何か来る!?




「いたぞ! 全騎突撃ーー!!」




廊下を馬で走るなーーー!! 常識で行動しろよ! アッシュフォードの生徒!











 side ルルーシュ



あの猫の後を追って来たはいいがまさか途中でスザクに会うとは。

おまけにこの階段、くそこれでは先にスザクに仮面をとられる。

目の前に続く階段を見ながら俺の心は焦りを感じられずにいられなかった。

既に足は疲労から重たくなりすぐにでも座り込みたくなる。

だがそんな弱音を言って入られない。

なんとかスザクのあとに追いつき奴が出て行った窓から俺もつづいた。




「スザクよせ!」


「大丈夫任せて」




そう言ってスザクは更に上っていってしまう。

昔とは違うスザクに少し思うところを感じながら同じく進もうとした、が。




「うわぁ!?」




不覚にも足を滑らせてしまった。

滑り落ちる体。駄目だ、このままでは落ちてしまう。

だがスザクがその俺の体を引き止めてくれた。

俺の異変に素早く対応し窓枠を掴むと同時に俺の腕を取り支えてたのだ。

その俺の視界にはあるものが映っていた。

あの猫は頂上で丁寧に仮面を脱ぐとどこか満足気な顔でこちらを見ていたのだ。












 side アーサー(予定)



どうせなら女の子に抱かれたい。

今の俺の率直な気持ちである。

ルルーシュたちに塔の上に追い詰められた俺はあっさり捕まった。

だって必要なイベントこなしてあとはただ眺めてるだけなのだから。

でだ、スザクに抱きかかえられてるんだが……なんか周りの視線が気になる。

別に俺に集まってるわけではない、スザクに集まっているのは解る。

名誉ブリタニア人であるスザクがルルーシュを助けた事で戸惑っているんだろうな。

そんなに警戒しなくっても噛み付きゃしないのに。……俺は噛むけどね!

そんなスザクと俺に近づく人が一人。

その人物は制服の上着に水着という男子生徒なら生唾物の格好をした女生徒―シャーリーだ。

うう、この身体が恨めしい。それにしてもスザク君、君は反応しないのかい?

不能なの?




「有難う、ルルを助けてくれて」




俺の失礼な考えをよそにスザクに礼を言うシャーリー。

やっぱいい子だなシャーリーは。

でもその姿はどうかと思うぞ? どこかのストライクな魔女達みたいですよ。

あとから続くリヴァルもミレイさんも生徒会の人はみんないい人だな、うん。

しみじみ思っていると後からルルーシュが現れた。

勿論手には何も持っていない、中に隠してきたな。

それにしてもこのスザクとルルーシュの二人っていい仲だな、この頃は。

これがあんな事になるなんて……この頃は誰が予想できただろうか。

と、なんか場の雰囲気が悪くなってきたぞ。

おい、ニーナ。空気読んで喋りなさい。「だってイレブンと」ってのは空気読めないにも程

があるだろう。

けれど仕方の無い事なのかこれは……世界がそういう風潮だから。

だけれどもそんな発言に真っ向から、それは真剣な表情で言い返す人物が一人。

ルルーシュだ。




「友達だ」




その一言はとても重いものに思えた。

カッコイイ。素直にそう思えるよルルーシュ。

そしてそのままスザクを生徒会へ加入させて欲しいと頼むルルーシュにミレイさんは快く承

諾した。

その光景を見て今日は頑張ってよかったと、心から思える一時だった。









ただその後のルルーシュとスザクに対してナナリーがした行動は正直苛立ちを覚えた。



 ―そんなやつ等にするぐらいなら俺にもキスしてくれ!



俺の心の叫びはただ空に吸い込まれていくだけだった。

このあと二人の頬に猫パンチを食らわせたのはご愛嬌だ。














 side ルルーシュ




やれやれ、今日は酷い目にあった。

結局あのあと仮面については何とかばれずに済んだからいいものを。

しかし予想外にいい事もあった。あの騒ぎの過程でスザクが皆に受け入れられる切欠もできた。

これで明日からスザクも普通の学園生活を送る事ができるだろう。

そして同時にナナリーの心配事がなくなるのが大きい。

これだけについて見ればあの猫に感謝すべきかな。

今はもういない奴の事を思いながら俺は自室の扉を開けた。




「おかえりルルーシュ」


「にゃあ」


「なっ!?」




なぜあの猫がここにいる!? あのあとすぐに姿をくらましたはず!




「なぜここにこの猫がいるC.C.!」


「私に聞かれても。気がついたらこの部屋に居たのだ。なあ?」


「にゃあ!」




く、なに息のあった会話をしているんだお前達は。




「まぁいい。その猫を追い出せばそれで―」


「ああ、そういえばこの猫だが、随分とナナリーに気に入られたみたいだぞ」


「なっ!?」


「さっきまで愛想を振りまいていたようだぞルルーシュ」




ふふッと笑みを浮かべる一人と一匹。

何なんだこの猫、まるで今の状況がわかっているみたいに。




「ああ、それとルルーシュ」


「今度は何だ!」


「あそこにこの猫からのお前宛のメッセージが」


「?」




猫から俺宛に? 何をバカな事をと思いながら俺はC.C.の指差す方向を見る。

そこには俺の机が、何故かパソコンが起動状態に。

その画面には短い文が一つ。




『今日はいろいろすまなかったな』




……ふざけているのか?

今の俺の心にあるのは怒りと呆れとちょっとした哀れみの心だ。

なんでこんな子供じみた事をするのか、そんな心境で彼女の事を見る。




「おいC.C.」


「なんだ?」


「ふざけるのもいい加減にしろ! 猫がパソコンを使えるわけがないだろう!」


「な、私は本当の―」


「ふざけるにしろ謝るにしろもっと上手いやり方を―」




そこからは激しい口論になった。

勿論ナナリーに聞こえないように声を抑えてだが。

深夜にも及ぶものとなったのは計算外だ。

しかし口論の間中ずっとニヤついた状態の猫がやたらと気になったのは何故だ?












あとがき

感想がもらえなかったので傷ついてそしてちょっと本気だして書いた。

今は後悔している。でもやっぱり公開もする。


いいだろうこうなったら戦争だ。


感想来るまで書く、来ても書く。どっちにしろチマチマ書く。




[4685] 本気になり始めた第三話
Name: 量産化の☆◆30ba27f3 ID:3235ca5e
Date: 2008/11/07 05:04










 side アーサー(決定) 




「にゃ、にゃ~~~(か、かっこいい~)」




通算何回目の台詞だろうか。

目の前にある眩いばかりの雄姿に惚れ惚れしていた。

いま俺は特別派遣嚮導技術部―通称特派の研究室にいる。

そこで見上げていたのがスザクの駆るランスロットだ。

真っ白なボディ、スマートなのにどこか力強さを感じさせるシルエット、武装も近中遠全てに対応できるように出来ていて汎用性の高さも魅力的。




 ―乗りて~、超乗りて~。




所詮この体では無理な願いだが思わずにはいられない。

だって現実(リアル)ではこんな高度なロボット在りえなかったのだから。

猫専用KMF……開発出来ないものか、そんな事を考えていると背後に人の気配を感じた。

この気配は、




「あら~、また来てたんだね君~」

「にゃ!」




やっぱりロイドさんだった。

この人最近よく来る俺の相手をしてくれるのだが仕事大丈夫なのか心配だ。

しかもこの人だけだった、俺がここに来た当初からこの調子なのは。

最初来た時は他の研究員とかは俺の事を見ては外に連れ出していた。

それでも何度も侵入する俺。そして今みたいにじっとランスロットを観察するか研究員の行動をじっと見ていた。

そのやり取りは都合四回ほど行われたが五回目の折「別にいいんじゃない? イタズラするわけでもないし」と発言。

以降はこの場所に入ったとき時々話し相手になってくれている。

その際マイクを持参しているのは何故か問いたい。

何? 猫用のKMFの開発でもしてくれるの? そんな気になってしまいます。




「あ、ちょっとこれ食べてくれない?」

「にゃっ!?」




突然差し出されたものにちょっとおどろく俺。

そして沈黙が続く。

……一秒。

……二秒。

俺は微動だにしない。

ロイドさんも動かない、ニコニコ笑っている。

意を決して口を開きそれを口内に納める。




 ―大丈夫、今の俺は猫だ。味覚もちょっと変わっていてちょっとやそっとじゃ。


「どお?」




結果、俺は俺自身の味覚に裏切られた。




「に゛ゃ~~~!!」

「ざ~んね~ん。セシル君、やっぱ駄目だって」




そんないい笑顔で笑ってないで何か飲み物下さい。

先ほど食べた物に舌をやられて咳き込む俺を無視しないでくれ、そう心の中で叫ぶ。

実に恐ろしきはセシルさんの創作料理。

未だ口の中に広がる甘味と戦いながらまだ皿の上にその存在を自己主張しているブツを見る。

これはもうお寿司ではない、OSUSIだ。

そんなくだらないことが起きた日。

でも充実ある日常の一コマだ。









第三話 ~疑念、調査、敗北~









鬼ごっこの翌日から俺はナナリーに飼われることとなった。

ビバ飼い猫生活! これで食料の調達にも悩まなくて済む事となった訳だが。

あれだ、シスコンって怖いというのがよく解った。

怖いのだルルーシュが。

俺がナナリーと戯れていると睨んでくるのもしばしば。

しかもある時俺がナナリーのほっぺたを舐めた時なんか般若が現れたと思ったほどだ。

直に取り繕ってナナリーと談笑を再開したが。

あれはマジで俺のことを敵と判断した目だ。

いいだろうルルーシュ、俺の安息の日常のため。

ナナリーとのニャンニャンのため。

どちらが上かはっきりさせようじゃないか!




でも正直、対決の方法が見つからないので今までどおりナナリーと遊ぶわけだが。









翌日の昼間のこと。

俺は暢気にアッシュフォード学園の屋上まで来ていた。

ここで昼寝をするのは気持ちがいいのだ。

ここで昼過ぎまで過ごしてそれから特派へ行ったりナナリーのところへ行ったりするのが最

高にいい一日の条件だ。

と、今日決めた。今決めた。だから即実行。

そう思ったのだがそれは叶わない夢だった。

不意に俺の体を影が包み込んだのだ。

なんだろうと見上げるとそこには桃源郷……ではなくてどっかで見たことある女生徒がいた。




「あ、ごめんね~」

「……にゃあ」




いきなり現れたその少女はおもむろに壁に傷をつけていった。

そこで思い出す。彼女は壁子(仮称)だと。

「ギアスで悲惨になったキャラ」とう質問で十人に二、三人は彼女の名を挙げるだろう御人。

彼女はルルーシュの所為で人生が歪められた可哀相な子だ。

かけられたギアスは「定時に特定の場所に傷を残す」という持続効果の実験だったはず。

しかし彼女のギアスは彼女が本国に帰った後も持続。

原因不明の夢遊病を診断されて家に監禁状態だ、というのを何処かで見た記憶がある。

……正直に言おう。救いが無い。

この娘どうなったんだっけ? あんまり重要なキャラじゃないからもしかしてそのまま放置?

あんまりだ、そして酷いぞルルーシュ。

ふと後に気配を感じた。……そこに元凶がいた。

どうやらギアスの効果を確かめに来たのだろうか?

まぁそんなことはどうでもいい、俺が今することそれは。




 ―どうするんだよこの娘。




不信感たっぷりの視線をぶつけてやる。

そして俺は誓った。後々ギアスキャンセラーの能力を得たジェレミアと接点がもてたら必ず彼女のところへ行こう。

そして開放してやるんだ。

この恐ろしくもくだらない呪縛から。










side ルルーシュ




その日、俺はギアスの能力の確認のために屋上まで来ていた。

この能力がどれほどの期間持続するかは重要だ。

それによって何時かけるか、どういう内容の命令を相手に出すか。

ブリタニアを相手にするのに確認する事が必要だ。

だがそれとは別に、ここ数日気になる事がある。

アーサーのことだ。

気付くと奴はこちらを見ている。

まるで観察するかのごとく。

あの視線、なにか引っ掛かる。

いや、視線だけではない。奴の行動の一つ一つが気になる。

まるで…そう、奴が猫ではないような気がするのだ。

そんなことを考えていると何処からか視線を感じた。

気がつくと女生徒の足元にあいつがいた。

アーサーは何かを訴えるかのような視線をこちらに向けている。

な、何だというのだこの視線は。

まるで責められている気になる。

そうこうしている内に奴は何処かに行ってしまった。

やはりどこか気になる。

自然と手が左目へと当てられた。




(この目の例もある。それにC.C.という信じられない存在がいるのも確か)




屋上から移動するために足を進める。

行く先は決まっている。

アーサーと接する機会が多いメンバーが集う場所、生徒会室だ。









 ―調査開始


 case リヴァル



「リヴァルちょっといいか?」


「ん? どうしたルルーシュ?」


「ああ、アーサーのことなんだけど。様子が変に思えたことは無いか?」


「アーサー? そんなこと飼っているルルーシュたちのほうが知ってるんじゃないのか?」


「それは解る。でも俺でも気付かない点があるかもしれないし。他の人の意見も参考にしたい」


「まぁいいけど。……でも気付いた事って言っても大して接してないからな俺。
 多分会長達のほうが知ってるんじゃないか?」


「会長たちが?」


「ああ、俺のとこに来るのはよっぽど暇な時か食事の時ぐらいだし」


「そうか、解った。済まない時間をとらせて」


「別にいいよ」






 case ミレイ



「アーサーの様子?」


「ええ、何でもいいんです。気付いた事があったら教えてください」


「そーねー。結構しっかりものかしら」


「しっかりもの?」


「ええ。何時だったか私が物を落とした時知らせてくれたのよ。それに生徒会室に鍵がかかってるとわかると扉の前にちょこんと座って待ってるのよ」


「ほぅ」


「普通の猫だったら爪を立てて扉を引っ掻きそうなものなのに。あとは~、甘え上手かな?

 私が暇になった時を見計らって遊びをねだるし」


「随分と利口ですね、まるで人間みたいだ」


「あ! それは言えてるわね~。考えてみればかなりお利口ね。もしかしてルルーシュより頭いいかもね」


「それはないでしょう。では会長、色々聞かせてもらってすいません」


「いいっていいって」


「それじゃあ」






 case シャーリー


「アーサーのこと?」


「ああ」


「そうね。時々水泳部の時に顔を出すくらいかな」


「水泳部に? 遊びにでも行ってるのか?」


「ううん違うの。プールの水面を見てるだけ。あとは飛び込み台の上まで来て水面をじ~っと見てるの」


「……」


「それで飛び込むのかな~って見てるとそのまま降りてきちゃうんだ」


「そうか」


「それくらいかな。でもどうしてアーサーのことを?」


「いやなに。ちょっと気になってね。じゃあ、すまない。俺はこれで」


「あ、うん。じゃあねルル」




 case カレン




「え? アーサー?」


「ああ、何でもいいから教えてくれ」


「そうね。よく私の頭の上に乗るくらいかな」

「頭の上に?」


「ええ、じゃれついてるだけなんだろうけどよく乗るのよ。それで会長に『まるでアーサーを被ってるみたいね』って言って」


「(まさか)」


「そしたらアーサーが微笑んだ気がして―」


「……あの猫、うまい事をやったつもりか?」


「え?」


「いやなんでもない。それじゃあ」


「え? あ、ちょっと」





 case スザク


「え? アーサーのこと?」


「そうだ、何か気付いた事はないか?」


「う~ん。特にないけど」


「そうか……」


「あ、でも一つだけ」


「なんだ?」


「時々なんだけどね。とても形容しがたい視線で見てくることがあるんだ」


「……どんな風に?」


「あえて言うなら……そうだね『子供の成長を心配する親の視線』?」


「……何だそれは」


「僕にもわからないよ。そんな感じがしただけだし」


「わかった、ありがとう」







 case ニーナ



「アーサーの事ですか?」


「ああ、何か解る事はないか?」


「ごめんなさい。私のところよりもミレイちゃんたちのほうに行くから」


「……そうか、すまない」


「ううん、大丈夫だから」






 ―調査終了



みんなの話を聞いてよく解った。

やはりあの猫は普通じゃない。

だがこれ以上はたぶん誰に聞いてもわからないだろう。

だとすると残る方法は……。










 side ルルーシュ



調査をした翌日。

俺はアーサーから自身のことを聞き出すための準備をしていた。

まずはテーブルの上にC.C.と一緒にピザを食べていたアーサーを座らせる。

困惑している奴の前にある物を置く。

そうパソコンだ。

俺は着々と準備を進め、起動状態にした。




「そんなものを用意してどうするつもりだルルーシュ」

「猫は喋れないからなこれで会話をするだけだ。そして教えて貰う、コイツ自身のことを」

「ほう、私のいったことを信じるのか?」




確かにC.C.の言っていた事は突拍子のないことだ。

猫がパソコンを使って文を書くなどありえない。

だが俺はここ数日の奴の行動で確信した。

コイツは普通じゃない、と。

そして一筋縄ではいかない。かと思われたが意外にもアーサーは素直にキーボードを叩き始めた。

流石に猫の手なのでたどたどしいがものの数秒で此方に向きかえった。

少々打った回数が気になるが、覗き込んだ。




『('A`)<メンドクサ』




……俺も随分と嘗められたものだ。

アーサーは此方の様子を見てまたもニヤついている。

明らかに調子に乗っているし楽しんでいる。




「ふん、こうなったら力尽くだ。ルルーシュ・ランペルージが命ずる。俺の質問にこたえ―」

 プイッ!




何故か先程まで俺の顔を見てニヤついてたアーサーがそっぽを向いてしまった。

そして一向にこっちを向こうとしない。

俺が移動して奴の正面に立ってもまたそっぽを向く。

それの繰り返し。

もういい、解った。コイツは確かに賢い。

しかも狡賢い奴だ。




「お前と一緒だなルルーシュ」




黙ってろC.C.! そう視線にこめて睨む。

それよりもこの猫だ。どれほどの知能を持っているのか未知数だがこうなったら何が何でも情報を引き出してやる。

なに、相手は猫だ。情報さえ引き出して敵だというならば排除は簡単だ。

俺はギアスをいつでもかけられるように左目に紋様を浮かべたまま相手の正面に立とうと移動する。

しかし奴もそのことを察したのだろう、スルスルと部屋の中を移動して俺を真正面に立たせ

ないようにしている。

後になって気づいたが俺はこのとき部屋の鍵を閉めていなかった。

そのことに気付かなかった時点で俺は奴に負けていたのだろう。

奴の策略にすっかり嵌って俺は言ってしまった。




「ええい『少し待たないか!』」

 クルリ。




な!? しまった!!

それまでずっと俺に視線を向けなかった奴が突然こっちを向いたのだ。

だが気がついたときにはもう手遅れだった。

奴は忠実に俺のギアスに従った。

そう忠実にだ。

少しの間立ち止まって、そしてものの数秒で再始動し部屋から飛び出してしまった。

俺はおのれの愚かさから膝をついて絶望した。

猫如きに出し抜かれた事実とこんな事で冷静さを失ってしまった自分を恥じた。

俺の後ろでは未だC.C.が笑いを抑えて机に突っ伏している。

今の奴はピザを食べるのをやめ必死に落ち着こうとしているようだが俺の失態がよほどツボに嵌ったのだろう落ち着く気配が無い。

く、いつまで笑っているつもりだ! ささっと落ち着かないかってなんだ?

数分してやっと落ち着いたのだろう、荒い呼吸を整えながら少し涙で潤んだ目で顔を上げた。

そしてC.C.はピザの入った箱を持ち上げた。どうかしたのだろうか?

何? このピザいるかだと? ふんっ! 貴様にしては珍しいな、どういうつもりだ?

……「笑いすぎてもう満腹だ」だと!? き、貴様!

その時部屋の外からナナリーの笑い声とアーサーの鳴き声が聞こえてきて俺は気付いた。

俺は敗北したのだ、と。

そしてもう一つ。同類だ、目の前で薄く笑っているこいつとアイツは。

今俺の目にははっきりと見えた、C.C.にネコ耳と尻尾がついている姿が。










後書き


前半アーサー視点。後半はルル視点。

ルルをおちょくるという声があったので、考えたらこんな話が出来た。

ちょっとルルらしくないかな~と思うけどまぁそこは穏便に。

というよりも各キャラに違和感が無いか心配。



OSUSI、ロストカラーズでのあれ。作者はセシルさんの味覚が心配です。



そして最後の文でC.C.の格好を想像してちょっとでも胸がキュンってなった人。

「C.C.の尻を愛でる会」改め「C.C.の全てを愛でる会」に加入する気は無いか?



とりあえず次回からタイトルを「ネコギアス 道楽のアーサー(偽)」にでもしようかと画策。

その次にその他板に移動……はした方がいいのかな? 正直本板に出すほどのものじゃない気がする。
どうでしょう?



[4685] 第四話
Name: 量産化の☆◆30ba27f3 ID:3235ca5e
Date: 2008/11/11 05:34
















 side ルルーシュ





ある日の朝の事。

自室で打倒アー……ブリタニアのプランを考えていると声が聞こえてきた。

俺は考えていた事を頭の片隅に追いやりその声のするほうへ足を運んだ。

何故向かうか? 決まっている、この声の持ち主に関わることは最優先事項だからだ。

玄関から外へ出ると其処に件の声の持ち主がいた。

勿論ナナリーだ。

彼女はある者の名前を呼んでいた。




「アーサー? アーサー?」


「どうしたんだナナリー」


「あ、お兄様」



声を掛けると笑顔でこちらを振り向くナナリー。

やはり可愛い。この笑顔を守るためなら俺は死ぬことも怖くは無い。

だがナナリーの笑顔はすぐに消えてしまった。

かわりに不安そうな顔を見せた。

何事かと聞くと。




「えと、アーサーが何処にいるか知りません?」


「アーサー?」


「ええ、いつもは呼んだらすぐ来るのに今日に限って来ないんです」




どうやらあの猫。この俺に屈辱を味わわせた奴のことを探しているようだ。

く、前回無駄なことにギアスを使ってしまったために奴から情報を得ることは出来ない。

おまけにあの後奴はまるで「ギアスは一人につき一回」という制限を理解しているかのように俺の顔を覗き込んでくる。

勿論満面の笑みで。

何故俺のギアスを知っているのか? C.C.にしつこく聞いても「私は知らん」の一点張り…っと思考が横道にそれてしまった。

それにしても珍しいこともあるものだ。

アーサーは基本ナナリーの呼びかけには答える。

たとえ何処かに行こうとしていてもすぐにナナリーのもとへ行く。

勿論この近辺にいないという事もありえるがこの時間帯はいつもならナナリーと遊んでいたはずだ。

それが来ないとなると……。

何か考えがあって出てこないのか?

もしかしたらまたも俺を弄ぶ算段をしているのだろうか。

……その可能性はありえるな。あいつはことあるごとに何かを仕掛けてくる。

呼びかけに応じないところを見ると、何かの作業中?

もしかして罠か? 罠を仕掛けているのか?

だとすると考えられる手は―。

いや、奴のことだ。その狡賢い頭で俺の行動パターンからもっとも有効な手を考えるだろう。

だとするともっと絞り込めるか?

待て、奴のことだその裏をかいて―。




「お兄様?」




しまった。考えに集中しすぎた。

パッとナナリーの顔を見る。

まだその顔は不安に満たされていた。




「もしかして学園の外に出たのかしら」


「……その可能性もあるな」


「どうしましょうお兄様。もし迷子とか事故にでもあっていたら」


「いや、その心配は無いだろう」


「でも―」


「大丈夫あいつは利口だ」




不安なナナリーを安心させるためにそう言う。

だがその言葉の内には別の意味も含まれている。

アイツは賢いから基本的に事故にあうことは無いだろう。

というより事故にあう、迷子になる程度だったらこちらが困る。

俺はその程度の奴に負けたことになるのだから。













第四話 ~散歩、皇女、萌え要素~













 side アーサー





俺のご機嫌を表すかのように揺れる尻尾。

いや実際にご機嫌なんだが。

まぁそれは置いておくとして俺は今ある場所に来ていた。

政庁。エリア11―日本を支配しているブリタニアが政務を取り扱う官庁だ。

何故ここに来たかというと。




 ―久しぶりにユフィに会いたいな。




まぁそういうことだ。

思い立ったが吉日。その言葉通りに行動し朝早くに出発した俺はやっとその建物の前まで来たのだ。

それに他にも会いたい人物がいる。

ここはブリタニアが治める機関なのだからもしかしたらオレンジやヴィレッタさんにも会えるかもしれない。

会えなくても少なくとも副総督であるユフィはいるだろうから無駄足にはならない。

そういう思惑からここまで来たのだ。

と、いうわけで突入。

辺りに人の気配が無いか確認する。

気分はメタルでギアだ。

BGMは各自脳内補完してくれ。

見つかったら殺される! そう自分に言い聞かせて先に進んでいく。

実際には殺されないだろうが……いや保健所に連れて行かれるか?

見た目飼い猫には見えないし。

不安が頭をよぎるが気にせずに進む。

トットットット、軽い足音が通路に響く。

…………。

この部屋なんかどうだろう?

今俺はちょっと雰囲気が違う扉の前で立ち止まる。




 キュピーン!


 ―ここだ! なんか皇族っぽい雰囲気がする!




NT的な勘が働き俺はその扉に入ることを決める。

……言っておくがNEETではないからな。




「では失礼します」




都合よく扉が開き中から人が出てきた。

俺は扉が急いで閉まらない内に侵入。

……はて? 今の声どっかで聞いたような。

閉じられた扉を振り向いてみていたが気にせずに前を向く。

そこで自分の失敗に気付いた。




「………」




視線の先にはただ黙々と書類を読んでいた女性がいた。

俺は忘れていたのだ。

今エリア11には二人の皇族がいた事。

それは第三皇女ユーフェミアと。




「………」




目の前にいる第二皇女コーネリアがいることを。

そして背後の扉は閉まっている。

開けたら確実に俺がいることがばれるだろう。

どうしようこの状況。











 side コーネリア




ギルフォードが退出し私は手元にあった資料に目を落とした。

最近このエリア11に現れたというゼロなる人物。

そいつが関わった事件の資料だ。

このゼロは私の弟のクロヴィスを殺した。

ゆえに私はなんとしてもこいつを捕まえなければならない。

その為にはまずどうにかして奴を引きずり出さなければ。




(……奴が激情家ならクロヴィスのときの状況を再現すればあるいは―)




其処まで考えて私は自分を見つめる視線を感じた。

おかしい、この部屋には今私しか居ないはず。

ふと視線を横へと向ける。




「猫?」


「にゃあ」




何時の間に忍び込んだのだろうか。

私がつまみ出すべきか迷っているとその猫は姿勢を低くしてうつ伏せになってしまった。




 ―別に害はない……か。




特にうるさく泣くわけでもイタズラをするわけでもなくただ此方を見ているだけ。

実害がないので暫く放っておくことにする。

あとで誰かに外に連れ出させればいい。

そう決めて再び私は手に持っている資料に目を落とす。

…………。

…………。

また視線を横に戻す。

其処にはやはりこちらをじっと見ている猫がいた。




「なんだ? 私に何か用か?」


「にゃあ」




その猫は首を横に振った。




「じゃあただ見ているだけなのか?」


「にゃあ」




今度は縦に。

まるでこちらの言っている事をしっかり理解しているようだ。

不思議と優しい気持ちになってしまう。

私は笑みを浮かべて猫の傍に行くために立ち上がる。




「にゃ?」




私が立ち上がると猫は首をかしげる。

その姿はとても可愛らしいと思えるものだった。

そして私が歩み寄っても決して逃げずに大人しくしている。

私は片膝をつき頭を撫でてやる。




「どうした? 迷い込んでしまったのか?」


「にゃあ」


「あとで外まで連れて行ってやるから大人しくしているんだぞ」


「にゃあ!」




私が撫でると気持ち良さそうに目を瞑る。

その顔を見ていると笑みがこぼれてしまう。




「ふふっ」




だが間が悪かった。

その時執務室の扉が開き、




「失礼します殿下、少しよろしいで……」


「っ!?」


「にゃ…」




ダールトンが入ってきた。

私は微笑んだまま凍りつきダールトンもまた固まってしまった。

私に撫でられていた猫の鳴き声を境に執務室は静寂に包まれた。










 side アーサー







部屋に入った俺はどうしようか迷っていた。

本来の俺の目的はユフィと戯れることだった。

しかし現実に目の前にいるのはコーネリア殿下だ。

正直怖い。

この人ユフィには優しいけど他の人には厳しいイメージがあるからだ。




 ―……でも。



このまま出て行くのも勿体無い気がする。

コーネリア殿下は見目麗しいから見ているだけでも……満足できそうだ。

スススと移動を開始する。

向かう先は……コーネリア殿下の横顔がばっちり見える場所。

そう! 彼女の真横だ!

コーネリア殿下から二メートルほど横に陣取る。




 ―……ふつくしい。




いや、美しい。

殿下の横顔はとても美しく麗人という言葉がぴったりだった。

そのままじっと見ていると視線に気がついたらしくこちらを向いた。




「猫?」

「にゃあ(こんにちわっす)」




挨拶はコミュニケーションの基本だ。

これを疎かにしてしまっては人間関係が壊れてしまう。

挨拶をしたら殿下はまた書類に視線を戻してしまった。

そのまま暫く眺める。

やはり綺麗だ。

美人は三日で飽きるというがそんな事はないと俺は思う。

するとコーネリア殿下はまた此方を振り向いた。




「なんだ? 私に何か用か?」


「にゃあ(いえいえ違いますよ)」


「じゃあただ見ているだけなのか?」


「にゃあ(はい、貴方を見てました)」




コーネリア殿下の質問に答える。

すると彼女の雰囲気が柔らかいものになった気がした。

見ていると殿下は立ち上がりこちらを向く。




「にゃ?」




疑問に思うと殿下は此方に歩み寄って片膝をついた。

殿下の目はとても優しいものだ。

何をするのか見ていると殿下は俺の頭に手を置き優しく撫でてくれた。




「どうした? 迷い込んでしまったのか?」


「にゃあ(いいえ違います、妹さんに会いに来ました)」


「あとで外まで連れて行ってやるから大人しくしているんだぞ」


「にゃあ!(ええぇぇええ!)」




それよりももっとここで殿下の横顔が見たい!

そんな俺の思いをよそに頭を優しく撫でる殿下。

そして、




「ふふっ」

 ―うおおおおぉぉおおおおおおお!!





優しく微笑む殿下。

その笑顔で俺のテンションは一気に上がる。

心の中はお祭り騒ぎだ。

だがその時執務室の扉が開き、




「失礼します殿下、少しよろしいで……」


「っ!?」


「にゃ…(あ…)」



いきなりのダールトン将軍の介入によって空気は一変した。

むしろ死んだ。

辺りに漂うのは先程までとは違い冷たい雰囲気。

コーネリア殿下は俺の頭に手を置いたまま固まりダールトン将軍もまたどう動いていいか迷ってるようだ。

俺自身どうしたらこの空気が緩和されるかわからない。




 ― 一鳴きするべきかな? でも死亡フラグが立ったら嫌だし。




俺が、いやこの場にいる三人が動かなかったがやおらコーネリア殿下がため息をつき、口を開いた。




「ダールトン」


「はっ!」


「用件は後で聞く、まずはこの猫を外に連れ出してくれ」


「了解しました」




なかったことにする気だ!

立ち上がって再び机につくコーネリア殿下。

しかし俺は見逃してはいなかった、殿下の耳が真っ赤になっているのを!

恥ずかしいんだ! 見られて恥ずかしいかったんだ!

俺のことを抱きかかえ退室しようとしたダールトン将軍の背中に声が掛けられた。




「ダールトン」


「……なんでしょう」


「忘れろ」


「イエス・ユア・ハイネス」




将軍の肩越しに見えた耳の赤い殿下に萌えたのは仕方の無いことだと思う。

普段きっちりした人ほどこういうときには可愛く思えるものだ。

ギャップは萌えの重要なファクターだと再認識しました。

部屋を出た俺はそのまま抱きかかえられて政庁の出口へと運ばれる。

だがその道すがらダールトン将軍に頭を撫でられた。

何事かと頭を上げると彼の口元が少し微笑んでいる。




「まさか殿下がユーフェミア様以外にあの笑顔を見せるとはな」


「にゃあ」


「なかなかやるではないか、お前」




どうやら貴重な笑顔が見れて嬉しいらしい。

だがそれはそれ、これはこれ。




「じゃあな。もう迷い込むなよ」




俺は政庁から閉め出されてしまった。

別に迷い込んだわけではないのだが、仕方が無いと思いここは帰るとする。









帰宅した俺を待っていたのは心配させてしまったナナリーとそんな俺に怒っているルルーシュだった。

そして今後また学園外に出た時のために名前入りの首輪の着用を義務付けられてしまうのだった。

これで一歩人間としての尊厳を奪われてしまった気がする。

……今更か。









あとがき


可愛いコーネリア様を書きたかった……んだけど、こうなってしまった。

あるぇ~?

でも今回出たダールトン、コーネリア様は好きなキャラ。

特にロストカラーズでのダールトンのパパっぷりに惚れたんだ。

でもダールトンパパの出番が余り無かったのが残念。

次の機会にはきっと……。

もしイメージを損なってしまったら謝って書き直すなりこの話を削除するなりしますので。



あと時間経過とかは気にしない方向でお願いします。

日常は外伝的な扱いで見てくれれば幸いです。




[4685] 第4.5話 つまり小ネタって事さ
Name: 量産化の☆◆30ba27f3 ID:3235ca5e
Date: 2008/11/11 05:36





第4.5話 つまり外伝(小ネタとも言う) 







 ~○オチ~








 side ルルーシュ?




アーサーが学園外に出てから数日後。

もっと詳しく言えばサイタマゲットーがコーネリアによって落とされて二日後の朝。

俺は異様な寝苦しさを感じていた。




(なんだ? この異様な感覚は)




まるで五感が研ぎ澄まされたような、いやこれは過敏過ぎると言った方がいいかもしれない。

遠くの鳥の声もどこからか漂うキツイチーズの臭いも感じる事ができる。

なんなんだろうかこの感覚は。

俺はゆっくりと目を開け天井を見る。

この異常の所為なのだろうか、天井がやけに遠くに感じられた。

仕方が無い、と目を擦り体を起そうとして、




 プニッ。


(ん?)


 プニプニッ。


(んん!?)




変な触感を感じた、しかも二度も。

恐る恐る瞼を開ける。




「にゃ、にゃにゃ~~~!?(な、なんだこれはーーー!?)」




自分の手には本来ありえないものに驚き、これまたありえない叫び声を上げる。

何故猫の声が!? そう考えていると横から笑い声が聞こえてきた。

振り向くとそこには慣れ親しんだ顔があった。

勿論自分の、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの顔だ。

その自分は腹を抱えて笑っている。




「にゃ!? にゃにゃあ!?(なに!? 俺がいるだと!?)」


「おはようルルーシュ。驚いているようだね」




涙を拭いながら奴は話しかけてきた。

何が起こっているのだろうか。

まるで悪夢のような感覚に囚われた気がする。

きっと今の俺の顔は酷いものになっているに違いない。




「見てみろよC.C.。ルルーシュのあの顔」


「ん、ほうだな。ふふーふ、ふぁふぉのほうへいがふふへへふふぉ。(ん、そうだな。ルルーシュ、顔の造形が崩れているぞ)」




やはりそうか、ってC.C.!? 何故そこの俺と親しげに話しているのだ!?




「それよりもC.C.、口の中に食べ物を入れたまま話をするのは行儀が悪いぞ」


「(ゴクンッ)解っているさアーサー」




ちゅぱっと指を舐めながら従うC.C.。やけに素直だがそれは置いておく。

それよりもアーサーだと!? どういうことだこれは一体!




「お、どうやら説明して欲しいようだな。どれ、まずはこれを」




ニヤリといやらしい笑みを浮かべて奴が取り出したのは一枚の鏡。

そこに映し出されているのは一匹の猫。

まさに予想していた通りの展開であった。

その猫は俺が右手を上げれば右前足を。

左手を上げれば左前足を上げた。

間違いない、俺は猫になっていた。




「どうやら現状が理解できたらしいな。じゃあ何故こうなったかと言うと、これだ」




俺の前に居る俺自身が右手で顔を覆い横にずらすとギアスが現れていた。


右目に。




(ギアスだと!?)


「C.C.と契約してね、おかげで力が手に入ったよ」


「他者と精神を交換する力だそうだ。それにしても美味いなこの新作ピザは」




驚いている俺に大いに満足気に語るアーサーとピザに舌鼓をうつC.C.。

C.C.まさか貴様、俺をピザの為に売ったんじゃないだろうな!?




「違うぞコレ(ピザ)はお前が起きるまでのつなぎだ。契約の報酬はお前の面白い姿だ」




もっと質が悪い!

俺の醜態を見たいが為だけに契約などするな!




「入れ替わりネタはお約束だろ? 今、私は大いに満足している。良かったぞルルーシュ」




ふふふッ、妖美な笑みを浮かべるC.C.。

アーサーも俺とC.C.のやり取りを見て口元に手をやり笑っている。

いいだろう、貴様等がそういう行動を取るなら俺も全力で戦ってやる!

フハハハハ、アーサー貴様は重要な事を忘れているぞ。

それは、




「にゃにゃにゃあにゃーーー!(ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアに従え!)」




その体にはまだギアスを使用してはいないと言う事だ!

素早くギアスを発動させ命令する。

……。

……。

だが一向になんの行動も見せない。

おかしい、そう思っていると奴は口を開いた。




「や、猫語なんて俺ら解らないし。な?」


「ああ、全く解らないな」


 ―しまったぁぁぁぁあああああ!!




猫の鳴き声ではどんな命令か、いや命令かどうかさえも解らないのだろう。

これでは俺のギアスは無力化されたも同然。




「と、じゃあ俺は行くとするかな」


「ああ、いってらっしゃい」




おい待て! 何処に行く気だ! そう視線に混めて奴を睨みつける。

俺の視線に気がついたのだろう。

奴は俺の顔でいつもの笑みを浮かべ言い放つ。




「ああ、この力で遊んでこようかな~って。具体的に言うとカレンの中にスザクを入れたり、スザクの中にニーナを入れたりシャーリーの中に―」




 や め ろ !

大声で叫びたいが如何せん猫の鳴き声しか口からは出てこない。




「ミレイさんをルルーシュの中に入れたら大いに楽しめるとは思わないか?」




その場合は悪乗りする会長が鮮明に浮かんでしまう。

何としても阻止しなければ。

後ろ足に力を込めて奴に飛び掛る。

だがその特攻も軽々と受け止められてしまう。

っておい! 今の身のこなし明らかに俺以上じゃなかったか!?




「お兄様ちょっといいでしょうか?」


「ああ、ナナリーか。構わないよ」



そこへナナリーが入ってきた。

相変わらず可愛い、だが今はそんなに余裕があるときではないのだ。




「どうしたんだい?」


「アーサーが何処にいるか知りません?」


「それならここにいるよ」




そう言って俺を手渡すアーサー。

違うだろ! アーサーはお前だろ!

だが俺のそんな叫びも届くわけがなく。




「じゃあ俺はちょっと出かけてくるけどアーサーのこと頼んだよ」


「ええ、いってらっしゃいお兄様」




俺は自分の後姿を見送るしか出来なかった。

何とかして追いかけたいがナナリーに抱えられてそれもできない。

不用意に力を込めて爪で引っ掻いて傷をつけてしまったら……。




「じゃあアーサー中庭に行きましょう」




ナナリーに抱きしめられて中庭へと連れて行かれてしまう俺。

抵抗するわけにもいかずおとなしく従う。

その途中鋭敏になった感覚でナナリーのやわらかい感触を堪能し。

ナナリーのいい香りを堪能し。

ナナリーの、ナナリーが、ナナリーを。

あああああナナリィィィィイイイイ!!












『と、いう夢を見たんだって』


「いきなり訳のわからない文を見せるな」




俺のパソコンを起動状態にして変な文を残していった奴に吐き捨てるように言った台詞だ。

テロリストと組織を組むに当たって必要なアジトを調達し、帰ってくるなり見たのがこれでは士気が下がる。

それにしても奴はどんな夢を見たというのだ。

今、奴はナナリーと一緒に庭園にいるのだろう。

先程から小さくだが笑い声が聞こえてきている。

とりあえず奴が帰ってきたら夢の内容を聞き出すとしよう。

もし失礼な内容だったら……。

今日一晩は外で寝てもらうことにする。












 ~マスコット~




 side アーサー




俺は強大な敵の出現を固唾を呑んで待っている。

今はまだ目の前の箱に封印されているがそれも時間の問題だろう。




「どうしたアーサー、何をそんなに怯えているんだ」




上機嫌のC.C.が俺に向かって言う。

彼女はとてもいい笑顔をしている。

今の彼女ならファンは激増する、そう確信できるほどの笑顔だ。

やがてC.C.は箱を自分の傍に寄せて封を開け始めてしまった。

ああ、あの箱が完全に開けられてしまったら中から奴が出てくる。

そして奴の頭が、胴が、全身が引きずり出されてしまった。




「どうだアーサー」




どうだと言われても俺にとっては敵でしかない。

そんな奴を抱きしめベットへと移動してしまうC.C.。

既に彼女は奴の虜のようだ。

C.C.はベットの上で抱きしめたり体の下に押し倒したり奴を堪能している。




「可愛いと思わないか?」




可愛いのはアンタだ。

何気にいつもとは違い若干精神年齢が下がったかのような振る舞いを見せるC.C.。

ベットの上でコロンコロン転がったりうつ伏せで足をパタパタ振ったり。

うん、可愛いぞ。

だがそれが奴の手によって引き起こされたのが気に食わない。

これでは奴にあの座が奪われてしまう。

そしてC.C.は奴を上に掲げその名を呼んだ。




「ああ、チーズ君……」




よろしい、では聖戦だ!

マスコットキャラの座は渡さない!

ただの人形に闘志を燃やし威嚇行動をする俺。

なんとも低レベルな争いだ。













あとがき


嘘みたいだろ? この話更新前で平均4000PV近くなんだぜ、このSS。

今回はおふざけの会。本編中、日常の中にさえ組み込めないような話をだらだら晒します。

~○オチ~
作者が夢で見たものをアレンジした小ネタ。入れ替わりネタは定番だよね!

~マスコット~
かなり短めに書きました。これ書いて初めてチーズ君がピザ○ットのマスコットだと知った


視聴中は奴がギアスのマスコットだと信じてたのに。凄いなタイアップって。




感想返しの中でも出しているクイズ。

『リリカル化け猫』

今作者が妄想中のクロス作品、リリカル×○○○○○。
さて○に入る言葉は? ただし当たっても何も無い。この作品が一段落つきそうな頃に書こうかなと思ってるけど。
結局は未定。



[4685] 第五話 ちょっと時計の針を進めようか
Name: 量産化の☆◆30ba27f3 ID:3235ca5e
Date: 2008/11/13 18:23















 side アーサー





ルルーシュもC.C.もいない時間を見計らってこの行動はしなければならない。

この行動を計画したのは些細な切欠だ。

偶然アレを見つけなければ思いつかなかった。

偶然そのことに気がつかなければ思いつかなかった。

だからこそその偶然を生かしたい。

だがこの行動は無謀なものかもしれない。

でも後々を考えれば……プラスにはなってもマイナスにはならない、といいなーなんて。

ああ、でも迷う。この行動が裏目に出るかどうかが。

パソコンの前でカタカタとキーボードを叩き悩みながら行動するネコ。

傍から見ると面白いのだろうが自分自身のことだとこうも辛い事はないだろう。

そしてディスプレイはある画面を映し出す。

これは最終確認だ。

それは今後の展開を大きくでは無いが変化させるもの。

画面に映し出されているものを隅から隅まで見て俺は決心する。




 ―これで失敗したらゴメンなルルーシュ。面白い顔しても笑わないでいるから勘弁して。




この行為が変化を産みこの世界の流れをいい方向にすることになると祈る。

俺は最終確認のなされている画面の一部にカーソルを合わせてクリックした。

これでいい。ここで、この一手で黒の騎士団の戦力が増せば。

いやバタフライ効果で色々変われば。

いい流れにもっていけるはず!




 ―……だといいな本当に。




パソコンの電源を落とし机から飛び降りる。

今更だが怖くなってきた。

今ならまだ間に合うかもしれないさっきのをなしに―。




「アーサー?」




扉が開きナナリーに呼ばれた瞬間どうでもよくなった。

とりあえず気持ちを落ち着かせるためにナナリーに甘えるとしますか。

今、水面に向かって石が投げられた。















第五話 ~暗躍、救出、黒の騎士団~














 side ゼロ



「どうした、早く入れ」




俺の言葉に恐る恐るとだが入ってくる扇たちレジスタンス。

このアジトとして使う車に驚いているようだ。

まぁそれも仕方が無いだろう。

この様なものおいそれと手に入るものではないから。




「今からここが、俺たちのアジトだ」


「それは、アンタが俺たちと組むと考えていいのか?」


「ああ、私達は仲間だ」




扇の言葉に肯定する。

その言葉を聞いてカレンたちは車の内装に目をやって思い思いの言葉を紡ぐ。




「すっげーなぁ」


「なんだこれ」




等々。扇はこの車の出所を気にしているようだがそんな事はどうでもいい。

そこいらにいた貴族から『貰った』物だからな。

勿論足がつかないように対処も済んでいる。

これで後はこいつらから信用を得れば、俺はブリタニアに対する力を―。




「な~う」


「なっ!?」




これからのことを考えていると不意に聞きなれた声が耳に入ってきた。

その声に驚き出所を探すとすぐに見つけられた。

井上という女の腕の中で大人しくしているやつの姿を。




「なんで猫がここに」


「あ、ごめんなさいゼロ」




当然出てしまう疑問の言葉。

その言葉に答えたのはカレンだった。

彼女は申訳なさそうにこの猫がいる事情を話しはじめた。




「今日の朝この猫、アーサーが家に来てそれから私についてきたみたいなの。
 人間の尾行には注意してたんだけどこの子までは気が回らなくて」


「……いや、いい。少し気になっただけだ」




しまった。まさかカレンの後をつけるとは!

今日の行動にあたって俺は細心の注意を払い行動した。

ブリタニアに対しても、コイツに対しても。

コイツは色々と場をかき回す。

予想が出来ないノイズだ。

俺を弄んで喜ぶ悪癖がある。

だから黒の騎士団の事を知らせないためにコイツの前ではそのような素振りも見せなかったというのに。

コイツは何処まで俺の行動を読んでいるんだ!

もしかしたらこの場でも何かやりかねない。

追い出そうかと考え。




(ん?)




申し訳なさそうな奴の視線に気がついた。

いつもと違い覇気が無い?

病気か、いやそんなはずは無い。

ではなんだ? 思考をめぐらせるがこれと言ったものに思い当たらない。

だが奴は相変わらず申し訳なさそうな視線を向けている。




(なんだその視線は。……まさか既に何かをやった後なのか!?)




だが答えはない。

きっと聞いても答えないだろうし、仕方が無い。

このことは一時保留とする。

しかしコイツがまた何かを企んでいるとなると問題があるが。

取れる手は二つ。

追い出すか、監視するか。

こいつが場に居るときっと何か仕出かす。

故に追い出すのがいい、と思えば見えないところにおいておくのも危険かもしれない。

……迷う。




「そんな事よりもさっさとそいつ追い出しちまえよ」




玉城の声が車内に響く。

それには条件付きで賛成したい、……玉城その顔の傷は何だ?




「玉城、あなたまだ根に持ってるの?」


「ケッ、そいつの所為でこんな傷がついたんだぜ。痕が残ったらどーすんだよ」


「それは玉城が悪いんでしょうが。『この前のお礼だ』とか言ってちょっかいだすから」


「そいつにはシンジュクゲットーでやられた借りがあるんだよ!」




ああ、そうか猫に負けたのかお前は。

まぁ仕方が無い。お前では勝てないさ。

この俺が負けたほどの奴だ、落ち込まなくていい。

……というより俺とお前は同レベルと言う事か?

すこし落ち込んだ。




「ねえゼロ。この子帰るまでここに居させてもいいわよね?」


「ん、ああ構わない。ただしちゃんと見張っておけ」




やはり不用意に放り出したら何を仕出かすかわからない。

故に傍において監視する事にする。

奴は相変わらず井上に抱かれてこちらを見ている。

しかし何故ここに来たのだろうか。

考えられる可能性を思い浮かべ―。




『―ホテルジャック犯は日本解放戦線を名乗っており―』




誰かが点けたテレビの音声で現実に引き戻された。

その内容に俺は焦りを感じることとなる。











 side アーサー





「死んだクロヴィスか、生きているユーフェミアか」




只今ゼロは盗んだ車の上でコーネリア殿下と交渉中。

交渉と言ってもユフィの事を持ち出しての脅迫に近い物とも言えるが。

俺は車の後ろでその声を聞いていた。

何故俺がここにいるのか、それは俺も知りたい。

いやきっとこれまでの積み重ねの所為なのだろうけど。

事あるごとに猫らしからぬことをしてルルーシュの事をおちょくっていた俺の成果だ、不本意だが。

恐らくは『目の届かないところにおいておくと危険な存在』として認識されたのだろう。

まぁそう仕向けた節が無いわけでもないからいいのだが。

井上さんに抱かれた俺は大人しくして考えていた。

さてこれからどうなるか。

……ビル爆破の際に置き去りにする気は無い事を祈るばかりだ。













 ヒョイ。フルフル。……クイクイッ。



ホテルの廊下の曲がり角からひょっこり顔を出す。

左右の確認、人影は無し。

尻尾をフリフリ後の扇たちにOKのサインを出す。

今の俺は黒の騎士団の潜入班の隊長『黒猫のアーサー』だ。




 ―『黒猫』って通り名としてかっこよくね?




扇たちと通路を進みながら俺は思った。

何故俺がこんなことをしているのだろう。

うん、ゼロの言ったこと原因だ。




「曲がり角ではそいつを先行させろ。大丈夫そいつは信用できる」




信用してるんだか危険視しているんだか。

しかし実際理にかなってると思えるから性質が悪い。

考えても見てくれもしも君が軍関係者で軍施設内で部外者がウロウロしていたらどうだ?

間違いなく怪しむだろう。

しかしそれが猫だったら。

場違いではあるが人間よりも警戒はしない、それどころか追い出そうとさしたる警戒心も持たずに近づくだろう。

だがもしその猫の背後に伏兵がいたら?

油断もあってあっさりやれると思う。

今はそんな状況を生める布陣だ。

……でも思う。もし動体感知の罠があったらどうするのだろう。

その時はもしかして切り捨てる気かもしれないな。

やっぱり怒ってるなルルーシュ。

そんなことを考えている俺の後ではサクサク作業を進める団員の皆さん。

爆弾設置してるんだけど爆発させないでよ、まだ死にたくないから。




「これでよし。あとは人質だな」




あとは人質。

その言葉で気を引き締める。

だってあそこには生徒会のメンバーが居るのだから。


とにかくその行動が面白く面倒見もいいミレイさん。

ルルーシュに恋していて、とても優しいシャ-リー。

特にどうでもいいニーナ。


うんゴメン。ちょっと調子に乗った。

ニーナファンの人、謝るから葱の準備とかはやめて、下手したら死んじゃうから。

と、とにかく失いたくない人たちばかりなのだ。

だから俄然やる気が出てきた。

勿論アニメ中でニーナに突っかかった兵士が居たら引っ掻く気でいる。

うん正直アレにはカチンときたからな。

ニーナも悪いが器が小さいぞ、日本人。

あ、俺も元日本人だった。

今は……エリア11産の由緒正しき元野良猫、現飼い猫。

役職は黒の騎士団臨時潜入班自称『黒猫のアーサー』。




 ―うん、名前負けしてるね。




少々落ち込みながら通路を進む。

右に曲がり左へ曲がり見えました、扉の前に二人の見張り番が。

恐らく中にも二人いるのだろう。手早く無力化ないし永遠に眠ってもらわなければ。




 ―じゃあ、いきますか。




ヒョコヒョコと通路から飛び出し可愛らしく一鳴き。

勿論相手は気がついて「どうして猫が」的なことを言うが気にしない。

更に一鳴きして此方に誘い込む。

勿論来るのは一人だけだが曲がり角に引き込み各個撃破すればそれでもいい。

俺には見える今此方に歩いてくるのは牛のような家畜に。

そして俺の後ろは出荷をするために鼻歌交じりで用意する農家の人に見えます。

人間誰かを陥れるときって本当にイイカオをするもんだ。

数分後には人質全員の身柄を確保できたことをここに記す。
















「我等の名は黒の騎士団!」




今船上で高らかに宣言された組織の名前。

これからブリタニアへの反逆のための剣、その第一歩がここに記されたのだ。


 し か し こ の 仮 面 ノ リ ノ リ で あ る !!


パフォーマンスが過ぎる気がするのは気のせいとも思えない。

それともこうするのは必要なのだろうか?

きっと必要なのだろうな、正義の味方を自称するためには。

そして再び思う。

それにしても何故俺はこんなところにいるのだろうか、と。

今俺は船内の個室に淹れられている。

船上に出られ無いのはまだ良い。

俺が出て行って黒の騎士団と関わりがあるということが知られる危険性があるからな。

その所為で生徒会やナナリーに迷惑はかけられない。

だがなルルーシュよ。


ペット用の籠に入れていくのはどうかと思うぞ!


自分で言うのもなんだけど結構大人しくしていただろう、ルルーシュ関連以外で。

結構引き際はわきまえていただろう、ルルーシュ関連以外で。

うん、やっぱ俺の責任か。

ルルーシュが言っていた台詞「撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ」。

あれってつまり因果応報って事だよね?

そしてこの状況も因果応報の結果。

こんなところで実践しなくていいから!

別に誰か一人つかせるだけでもいいじゃないか!

井上さんでもこの際文句は言わないから玉城でもいいさ。

狭い籠の中だけは落ち着かない。

まるで囚人になった気がする。

看守さん俺無実っすよ、本当なんです!

……ちくしょう!

ルルーシュへの恨み言を思い浮かべながらふと思った。

そういやテレビ局の車どうなった?

やっぱ瓦礫の下にあるのかな。

そんな取りとめもないことを思いながら今日を言う日が終わりを迎えつつあった。




 side out



















「……これって」




投げられた石は今、水面へと着水した。













あとがき

冒頭のアーサーは正に作者の代弁者です。

ちょっと変化をもたせようとしていらん事をしてしまったと思えなくも無い第五話。

アーサー暗躍す。この事がどうなるか、作者自身もわかりません(ぇ

でもほとんど原作沿いで進めても飽きられることは目に見えてますのでここは博打を打ちます。

当選確率は宝くじ十枚買って一等が当たるくらいに思ってます。

でも気にしない。受け入れられなかったら凹めばいいだけだからガガガガ。




それと前回のクイズの答え。

回答を下さった皆さんどうもです。

で、ですね正解の方は



  学 校 の 怪 談 !



です。

そう、あのツンデレ猫カーヤを なのは にぶち込む気でいました。

というのも最終話とエピローグの電波がですねアガガガガ。

始まり浮かばず終わりだけ浮かんでアレなんですよねー。

でもいい終わり方を妄想できたと思う作者なのです。









物凄いカオス外伝が書きあがりそうなんですけど……みたいですか?

正確にはクロスしていて晒すべきか迷う作品なんですが。

因みにクロス元はメルブラ。あのナマモノを出してます。

スッゴイ変な仕上がり。笑えるかも定かではない。

失笑は貰えるかな、という代物です。



[4685] 第六話  一話当りが短いのが最近の悩み (ちょい微修正)
Name: 量産化の☆◆30ba27f3 ID:3235ca5e
Date: 2008/11/16 20:21


















 side アーサー



今日もまた内職をする俺。

因みに前回とは違い今回は人助け。

前回も前回で人助けに繋がるが今回は重要度が違う。

今回はある人物の命に関わる事である。

でもここのところずっとルルーシュに隠れ続けて作業してるからきっと怪しんでいるだろうな。

だが今は黒の騎士団を旗揚げしたばかりで色々と忙しい時期なので黙殺しているだけで、きっと警戒はしているのだろう。

うん、でも今回の謝る対象は君じゃない。

もっと別の人だ。

善意から来る悪行ほどたちが悪いと思うね。

今正にしていることだから。

ごめんなさい、でも許して下さい。

そんなことを思いながら画面のある一点をクリッククリッククリック!!

フハハハハこれは正義なり、我には大義がある。

故にこの行為は正義の行いだ。




 ―と言うことで許せシャーリー父!!




因みにアドレスはシャーリーの携帯からゲット済み。

そして迷惑メールに謝罪と偽善と申し訳ない気持ちを織り込んで送信。

今の送信でちょうど三百件目。

こんなものだろう、さてお次は。




 ―携帯電話に心霊現象よろしく不気味な猫の鳴き声をプレゼント。




出なかったら出なかったで留守電に残しておく。

これほど嫌な留守電はないだろう。

こう、かすれた声で『にゃ…に´ゃ~~に´ゃ~~~ゴハッ!』って入れてますから。

気の弱い人なら失禁してしまうかもしれない。

俺だったら……するかもしれない。

まぁでも急がなくては、時間が無いから。

俺がこうしている理由。勿論死んで欲しくないからだシャーリー父に。

でも何処にいるか解らない、探せない。

猫の姿じゃ説得も出来ない。

じゃあどうすればいいかと思案し、遠回しに『脅迫』という手段をとった。

ナリタに行かずに家で療養とかさせてやる。

意気込んでやっていたが。

結果、



シャーリー父は血尿を出してしまいストレス性の脱毛から頭部が薄くなり胃潰瘍も併発。

長期の入院を余儀なくされたらしい。



……ちょっと反省した。

その作業を終了して生徒会へと赴く。

そして嬉しいイベントに小躍りしたい気分になった。

そんな俺の歓迎会の日のこと。

今はルルーシュを羽交い絞めにしている猫っぽい姿のリヴァルたちを眺めていた。














第六話 ~日常、活動、想定外~














 side スザク




特派の仕事を終え生徒会に間に合うように到着した僕は扉の前で立ち往生してしまった。

何故こんなことになったかと言うと。




「や、やめてください会長!」


「ふふふ、いいではないか、いいではないか。ほらリヴァルそっち押さえて」


「会長の頼みとあらば」


「!? やめろリヴァル! クッ!」



扉の向こうからはルルーシュの叫び声とミレイ会長とリヴァルの面白がった声が聞こえてくるからだ。

何が起こっているのか予想はできない。

決して如何わしいが行われているなんて思っていない。

いやルルーシュにとって嫌なことが起こっているのはわかるけど。

そして扉を開ける。

そこに居たのは椅子に縛り付けられたルルーシュと猫にコスプレしている他のメンバーだった。

そういえば何かすると言っていたことを今思い出した。

ここであちらも僕が入室したことに気付いたようだ。




「ほらこれでもう動けない。あ、スザクやっと来た」


「遅いぞ~スザク」


「ルルが…ルルが…えへへ」




会長とリヴァルは笑顔で手招きしている。

シャーリーは沈んでいた。

恐らくは息と服を乱したルルーシュが原因なのだろう。

でもその表情は恍惚としていた。

理解はしたくない。

ニーナは部屋の隅で虎だろうか、被り物をしてパソコンに向かっていた。

でもねニーナ。手にそんなものつけていたらキーボードが打てないと思うよ。

アーサーはと言うと、なんだろう衣装を物色しているのだろうか。

なにやら女性が着るような際どいものをしきりに示している。

もしかしてそれをルルーシュに?

アーサーのその行動に頬に汗が流れるのを感じていると会長が話しかけてきた。




「スザクはどれ着る? この着ぐるみなんかどうかな?」


「えっと、着なくちゃ駄目なんだすか?」


「そうだスザク。別に着る必要なんか無いんだ! だからお前も会長を説得……」


「シャラップ! いい加減に覚悟しなさいルルーシュ。これは会長命令です」


「なっ!?」


「はぁ。別にいいですけど」


「おいスザク!」




僕が会長に全面的に従うと案の定抗議の声を出す。

そんなに嫌がることなのだろうか。

確かに会長自身はその、際どい格好をしているけれどルルーシュにそんなに変な格好は。

うん、わからないな。

会長とのすごした時間は余り長くは無いけれどもやるときはやる人だということは解っているから。




「どうしてお前はそんなに諦めがいいんだ!」


「僕は軍属だからね。上の命令には従わなくっちゃ」


「俺は軍属じゃない」


「でも生徒会のメンバーなんだから会長の言うことに従わうべきだろ?」


「スザク!」




まだ抵抗するルルーシュ。

いっそ身をゆだねれば楽になれるのだろうに。

既に拘束されているんだから諦めなって。

だけど僕の言葉でもまだ納得がいかない様子。

ため息をついていると会長が僕にある物を差し出してきた。




「じゃあスザクはこれ着てきちゃいなさい。あ、それと……」


「? なんですか?」



手渡された着ぐるみを見ていると会長が更に言葉をかけてきた。

なんだろうと思い会長の顔を見るとニヤリと笑いそして一度コホンとせきをした。

そして真面目な顔をしたかと思うと、




「枢木スザク一等兵に命ずる。直ちにその衣装に着替えてルルーシュの着替えを手伝いなさい!」




命令された。

どうやら先ほど僕が言った『軍属』に合わせてのことみたいだ。

それが面白くてクスッと笑いが漏れてしまう。

しかし直に姿勢を正し会長に向きかえる。




「イエス・マイロード」


「よろしい」


「待て!」




僕の了解を聞きルルーシュが食いついてきた。

その表情は驚きと少しの怒りが含まれているように見られる。

そして口を開く。




「友達を売るつもりか、スザク!」


「違うよルルーシュ。友達だから引導を渡すんだよ」


「同じことだろ!」




失礼な言い草だ。

僕は友達を裏切ることなんてしない。

ましてやルルーシュをだなんて。

そんな事する僕が居たら言ってやりたいよ。

「何を考えているんだ!」って。




「なっ!? 待てアーサーその衣装は!?」


「おお、これは際どいのをチョイスしたわね。でもこれは女の子用だしね~」


「でも女装とかしたら似合うと思いますよ会長」


「ルルが女装で猫……はぅ」


「にゃぅ~」




後ろを振り向くのが怖い。

一体どんな衣装を選んだというのかアーサーは。

そして同時に感謝した、会長に。

もしも会長が選んでくれなかったらきっとアーサーに衣装を選ばれていただろうから。

アーサーはルルーシュばかり弄るように見えて意外にも僕で遊ぶことも多い。

さっきも会長が僕に今手に持っているものを手渡す時残念そうな顔をしていたのだ。

背中に嫌な汗が流れるのを感じながら僕は着替える準備を始めた。




「!? やめろアーサー! あっ!!」


「今のはちょっとやばいぞルルーシュ」


「おや色っぽい声。ふむふむルルーシュは耳が弱いと」


「ルル……(ゴクリ)」


「………」




ルルーシュの上げた声で僕は振り向いた。

どうやらアーサーがルルーシュの耳に噛み付いたようだ。

噛み付いたと言ってもあま噛み程度だろうが。

そしてそれを見てどう反応していいか困っているリヴァル。

なるほど、と感心している会長。

顔を真っ赤にして食い入るようにみているシャ-リー。

パソコンの前で俯いて動かないニーナ。

そして何事も無かったかのように着替える僕。

ルルーシュを助けるよりさっさと着替えて会長の手伝いをするのを優先した結果である。

















 side アーサー





歓迎会から日にちが経ち、俺は今とある倉庫の中に居た。

そしてある物を見上げている。

真紅に色づけされたその装甲。明らか近接戦闘に特化しているだろう武装とフォルム。

特に目を引くのはその右腕。輻射波動機構を搭載したその形体。

まるで悪魔の右手みたいで禍々しくもカッコイイ。

……いけない、これではKMFオタクと言われそうだ。

KMFを見上げて興奮している猫。

ロイドさん辺りは喜びそうだな。

そんな俺の後ろではカレンとゼロが話をしていた。

内容はというと紅蓮弐式をカレンではなくゼロが使うべきでは、と言うことだ。




「私は指揮官、無頼は使うが戦闘の切り札は君だ」




何気に撃墜率高いんだよねルルーシュって。

ナリタや片瀬救出の時も撃墜されてるし。

第一、というより操縦全てにおいて腕が並だから。

格好はアレな中学生っぽいのに自分に対する評価はまともだよな。

だからこそ指揮官だと言えるんだけど。




「ゼロちょっといいか」




扇が倉庫の奥からゼロに近寄ってきた。

このタイミングで話すことと言ったら一つしかない。

そして俺の確信どおりに週末に展開されるブリタニア軍のナリタ連山への進行のことだった。

だが今の俺には何も恐れるものは無い。

既に打てる手は打ってある、シャーリー父は大丈夫だ!

彼が入院したことは既にシャーリーが生徒会で漏らした言葉で確認済み。

さらに入院先の病院もナリタから距離があっておおよそ土砂崩れが影響する場所には無いことも把握している。

まさに俺の行動が生んだ結果だ。


 計 画 通 り !


これでナリタでの問題は解消された。

あとは思う存分黒の騎士団に暴れてもらうだけ。

さあゼロよ。舞台は整えてやった。

後は好きに振舞うがいい。




「週末はハイキングだな」




そう、週末はハイキングだ。

しかしこれほど誇らしいことは無い。

俺の作戦のおかげでゼロの、ルルーシュの悲しみの一つを回避したんだから。

ああ、ゼロよ。俺に感謝しろ。そして黒の騎士団幹部として相応の地位を。

とりあえずは玉城より上であるならそれで―。




「あ、ゼロ。実は―」


「なんだ?」


「もう一つ情報が」




心の中で高笑いを浮かべていた俺の横で扇が更に報告を進めた。

このような場面は覚えが無い。

ただ忘れているだけだろうか、それともアニメで映さなかった場面か。

だがしかし続く扇の一声が俺を激しく打ちのめした。

俺に電流走る。




 ― ……一瞬あたまがマッチロニナッタヨ?




気がつくと扇からの報告に明らかに動揺しまくってるゼロ。

声が震えちゃってるよどうしたの?

……何故だろうさっきから僕の足も震えて止まりません。

あ、あれ? 一人称も『僕』になってる!?

ど、どどどどうしたんだ俺!? 落ち着け! 冷静に素数を数えるんだ。

2、3、5、7……だがそんな俺の耳にある意味絶望、ある意味希望……いややっぱ絶望一択で。

野性の本能が全力で俺に語りかけてる。

YOU やっちゃったNE☆、と。

そして耳を済ませた俺にゼロの声が聞こえている。




「まさか。この時期に……く、想定外のことだ」




僕自身にとっても想定外。

今の俺の心境は以下の通りである。




 ―♪ \(^o^)人(´・ω・`)人('A`)人('A`)人(´・ω・`)人(^o^)/ ♪




人生オワタ。心の住人が全力でマイムマイム踊ってます。

全力で裏目になった気がする。

ああ、そっかもうちょっと時期を考えた方がよかったか。

うん、黒の騎士団関連で軍がゴタゴタしてたの方が色々都合がいいと思ったけど。

この時期だとアレだよね、きっとアソコに来るよね君も。
















その頃の政庁。




「ナイトオブシックス。アーニャ・アールストレイム。
 只今をもってコーネリア殿下の指揮下に入ります」


「良くぞきてくれたアールストレイム卿。私がエリア11の総督、コーネリアだ」




石の作り出した波紋が今、伝わってきたのだ。

このとき俺は正直にこう思っていた。




 ―あ、黒の騎士団終わったかも。




ナリタでの問題が解決したと思ったらまた頭痛の種が出来てしまった。しかも特大の。

うん正直に言う、ごめんルルーシュ。君はいい奴だった。

そしてアーニャちゃん、もうちょっと後に来てよ。

釣った魚に食われる気分ていいもんじゃないね、ホント。

週末は死のハイキングになるかもしれない。















 お・ま・け



※着替え完了後の会話を音声のみでお楽しみください。




「………」

「………」

「………」

「………」

「………」

「………」

「………」



「何か言ったらどうだ」

「あー綺麗だぞルルーシュ」

「うん、綺麗だよルルーシュ」

「可愛いわよルルーシュ」

「え、えとねルル……その」

「可愛いわね(クス)」

「か、可愛いです……」



「会長もういいですよね」

「え? ああ、うんもう着替えていいわよ」

「まったく」



 パシャッ!



「!?」

「……にゃ」




「………」

「………」




「アーサーーーー!!」

「にゃっ!?」

「あ、逃げた」




「アーサー! 後で私のところに持ってきなさいよ!!」

「会長!!」

(イエス・マイロード)








あとがき


前回張った伏線をサッサと回収。

そして反応が怖い……。

うん出したかったんだアーニャ。可愛いよねアーニャ。

作者が好きだしあと他の絡ませ方も考えて出したんだけど。

石投げられないか本当に怖い。できたら石ではなく☆を投げて、なんでもありません。

さてナリタにアーニャ参戦させるとしてどうするか迷う。

うーん、なるようになるか。



そしてスザク視点の場面。通称スタッ腐に負けないように頑張ってみた。

うん、無理。あの壊れっぷりは再現不可。普通の生徒会にしました。

でもシャーリーはちょっと壊れてしまったよ。



[4685] 第6.5話 ちょっと一休み一休み
Name: 量産化の☆◆30ba27f3 ID:3235ca5e
Date: 2008/11/16 20:22








第6.5話 外伝(時系列は気にしないでくれ、というか気にしたら負け?)








 ~飛び込み台の悲劇~






 side アーサー




 バシャッ!



眼下の水面からいい音が聞こえてくる。

ここはアッシュフォード学園内のプール。

辺りは暗くおおよそ人が利用しているなどとは思えない時間帯だ。

しかし今この場には俺以外に二人の人物がいる。

もちろんC.C.とルルーシュだ。

何故プールなんかに来ているかというと、




「おいルルーシュ。泳ぎたい」




女王様発言が理由だ。

いきなりの事で呆けた顔のルルーシュ。

だが彼の事は笑えない。

実際俺も呆けてしまったから。

その後のルルーシュは必死だった。

やれ水着は無いだろう、とか。

やれ人目についたらどうする、とか。

やれこの時間帯はプールなど開いてない、とか。

どうにかしてC.C.を止めようとしていた。

だが流石C.C.だった、と言うべきか。

水着は既に用意され、人目につかない所・時間帯であれば問題ないと無理矢理押し通してしまった。

哀れルルーシュ。

しかも監視の名目でついて行かざる終えないのだから悲惨すぎる。

いま彼はプールサイドで騎士団に関わる事をノートパソコンで作業中だ。

俺は部屋で待っていてもいいがこの二人が喧嘩でもしないかと思い付き添ってきた。

まあそれも杞憂で終わり、しかもC.C.の水着姿と桃も見れたから目てk、ゲフン!

んん、役得にもありつけた。

そして今はC.C.が飛び込んだプールを見下ろす形。

飛び込み台の上にいる。

さてここで問題が。

飛び込み台の上にいるのはいいがこれからどうすればいいか?

そのまま飛び降りずに階段から降りると言うのもいいだろう。

だがそれではヘタレと言われかねない。

だが以前もシャーリーの部活中に覗き込んだが正直怖い。

別に高さに恐れをなしているわけではない。

泳げるんかが問題なのだ。

人間だった頃は当たり前のように泳げた。

だがこの体になって泳いだ事は一度も無い。

だからもし泳げなかったら、と言う考えが頭をよぎる。




「ふう」




眼下ではまるで人魚、と言っても過言ではないC.C.の姿が。

実に気持ち良さそうに泳いでいる。

……悩む。


 悩む 悩む 悩む 悩む 悩む 悩む。


……決めた。

俺は泳ぐ。

何時だって後先の事は余り考えずに過ごしてきたのだから。

飛び込んだ後泳げないとわかっても、それはそれ。

死ぬ気になればきっと泳げるはずだ。

そうとなれば善は急げ。

決心が揺るがないうちに準備にかかる。

一思いに飛び込むために助走のための距離をとる。

俺は飛べる俺は飛べる、自己暗示に時間をかけいざ出陣。



( I can fly !!!)



合言葉は魔法の言葉。

この言葉だけで体は軽くなり重力の縛りから解き放たれる。

今俺は空中をかける一匹のネコ。

感じるぞ、風を!

眼下に広がるは静かに揺れる水面。

そしてC.C.。




「え?」「にゃ?(え?)」




発した言葉は同じ意味。

そして同時である。




 ―隊長! 落下予想地点に障害物あり!


 ―なに!? 緊急回避!


 ―駄目です制御できません!


 ―総員衝撃に備えろ!




脳内住人は必死に何かにつかまり備えをしている。

俺も備えたいがここは空中。

何も捕まる物もないし重力に逆らう事もできない。

出来るのは覚悟する事だけ。




(オーケー、こんな俺でも覚悟くらいできるさ)




俺の生き様をみな。

脳内住人に背中越しに語る俺。

決め台詞である。

それに考え方を変えればいい。

俺は今C.C.の胸の中に飛び込もうとしている、と。

そう考えれば心に花畑が出来た。




(C.C.俺を受け止めてくれ!)




気分は最愛の人が戦争から帰ってきたヒロインの如き物だ。

性別が逆だが。




「ゲフゥッ!?」「に゛ゃあ゛!?(ゴバッ!?)」




受け止めは失敗、男性が女性を支えきれずにバックドロップしてしまったようだ。

しかしあれだけ助走を取れば当たり前だが、これは痛い。

C.C.も女性にあるまじき声を発していたし。

水中に沈んだ俺は必死になって水面を目指した。

やっとのことで浮上し空気を吸い込む。

だがやはりというか泳ぎにくい。

少しでも気を抜いたら沈んでしまいそうだ。

そこで気がつく。

C.C.が沈んだままだと。

水中に見える紺色とライトグリーンがそこはかとなく怖い。

だがやがてその色もはっきりしてきて水面へと到達した。

ライトグリーンがゆっくりとだが確実に水面から上へと上がっていく。

今、俺の目には綺麗な物など映っていない。

いつもは美しい顔はそこには無く長い髪が顔の全面を覆ってしまっている。




(○子だ! ブリタニア産の貞○がいる!)




某ホラーの名作『輪っか』で例の井戸の底に落とされたかのような気分だ。

今にも逃げ出したい気分なのに体は凍りついたかのように思うように動いてくれなかった。

少しずつほんの少しずつ後ずさるが恐怖は消えない。

一秒、また一秒と時が刻まれていく。

その差が二メートルほどに広がった。




「あーーーーーさーーーーーーーー!!!」


(ふぉぉぉおおおおおおお!?)




カッと二つの光が髪の奥で輝いたかと思うとブリタニア産○子は物凄いスピードで迫ってきた。

余りの恐怖で必死に逃げるがその差は広がらずむしろ狭まってきていた。

ジリジリと迫るC.C.。

物理的におかしい。何がおかしいと言うとC.C.がだ。

別にC.C.は泳いでいるわけではない。

両手を前に突き出しいつでも俺を捕獲できるような体勢で水中を『走って』きているのだ。

水の抵抗などまるで無いかのようなそのスピードがさらに怖さを助長する。

俺は必死に逃げた。

逃げて、逃げて、逃げて、逃げて、やっとプールの縁まで辿り着いた。

やっと水の中から出られる。

陸上ならこっちに分がある。

希望と共にプールから上がろうとする。



 ガシッ!



希望とはかくも絶望に変わり易いものなのか。

尻尾をつかまれた。

何に?

何に?

ナニに!?

ナニに!!

ゆっくりと後ろを向く。




「つぅぅぅぅかぁぁぁぁまぁぁぁぁえぇぇぇぇたぁぁぁぁ」




『ホラーのような物』ではなく『ホラー』そのものがそこに居た。

子供には見せちゃいけないと、誰もが思うその表情。

もし子供が見たら翌日は自作の絵をベランダに干して皆に指をさされるだろう。

そんなレベルだ。

そして次の瞬間には俺の体は力任せに引っ張られた。

それからは記憶があやふやになってしまった。

ただ覚えているのはC.C.に体を抱えられロックされた事。

塩素系の水の臭いと味。

あと二つのやわらかい感触。

ただそれだけだ。










目を覚ましたのが翌日。

辺りを見回すとどうやらルルーシュの部屋のようだ。

もちろんC.C.もいる。

今はベットの上でチーズ君を抱いている。




「おはようアーサー」




笑顔で挨拶してくれるC.C.。

おはようございますC.C.様。

心の中で片膝をつきまるで女王様にでも挨拶するように答える。

この時俺は思った。

笑っていない笑顔ほど怖い物はない、と。











 あとがき

C.C.で遊んでみたかった。理由はそれだけ。

もしネコ○ルクの外伝を期待した方がいたらここで謝罪を。

思った以上にカオスになりそうなのでもう少し時間がかかりそう。

書く事は書いてます、ネコア○クすきなので。

そしてその他板に進出。受け入れられるか心配だ。

あとちょっと嬉しい事が。捜索板で紹介されたんです。

ちょっと踊りました、嬉しさで。

これからも頑張りますのでアーサーのこれからを見守ってください。



[4685] 第6.75話 今回の更新分だぞ!間違えて一番下に行かないでくれ(11/23)
Name: 量産化の☆◆30ba27f3 ID:8da1c8cf
Date: 2008/11/23 14:46












第6.75話 ~時間的には六話の途中に入れても良かった話~








 小ネタ

― 移動手段の確保、黒の騎士団行き ―











 side カレン




本日の授業が終了して私はそそくさと学園を出ようとしていた。

今日は黒の騎士団での集まりがあるのだ。

なんでもキョウトからの支援の品、ナイトメアが届くらしい。

だが今私の前には一寸した問題があった。

いや、正しく言うと問題、と言う程のものではないが戸惑わせるには十分すぎるものだ。

今私の目の前には、




「にゃ?」




アーサーがいる。

それも何かを期待したような目で。

オマケに自分がすっぽり入りそうなリュックまで持参している。

私は戸惑いながらもアーサーの傍まで歩み寄る。

しゃがんで彼の頭を撫でながら問いかけた。




「私に何か用かしら?」


「にゃ!」




前足を上げて答えるアーサー。

まるで理解しているかのような反応だ。

この子は見掛けに寄らず頭がいい。

いつもルルーシュをおちょくって遊ぶくらいだ。

彼にしたらいい迷惑なのだろうが見ていて微笑ましい感じもする。

そんなアーサーが私に何のようなのか。

頭を撫でて考えていると。




「あ」




するりと私の手から逃れてしまった。

ただ頭を撫でて欲しかっただけなのかと思っていると。




「にゃあ!」




リュックを銜えて私の前に差し出した。

何かを出して欲しいのだろうか。

私が受け取って中身を確認したが。




「……? 空っぽよ」




パッと見で中には何も入っていなかった。

疑問に思ってアーサーを見るが、




「♪」




機嫌良さそうに尻尾を振っていた。

意味が解らずにもっと中がよく見えるようにリュックの口を大きく開く。




「あっ!?」




一瞬の犯行だ。

リュックの口を大きく開いたと同時にアーサーが中に入ってしまった。

呆気にとられているとアーサーは中から頭だけを出して、




「にゃ~」




何かをせがむように一鳴き。

これはどういうことか。

もしかしたら。




「…つれていけ、と?」


「にゃ!」




どおうやらそういう事らしい。

いやいや、無理があると思う。

幾らなんでもこれはちょっと。

第一何処に行くか解っているのだろうか。

もう一度確かめるようにアーサーを見ると。




「……うにゃぁ」


「うっ」




何かを懇願するような鳴き声と視線を貰ってしまった。

……どうやら理解してしまっているらしい。

そんなキラキラした目で見られても困る。

誰も連れて行くなんていっていないのだから。




「あのねアーサーこれから行くところにはね」


「にゃぁ」




そんな寂しそうな眼をされても困る。

第一ゼロに「あの猫は連れてくるな」と言われているし。

どうもゼロとアーサーは相性が悪いらしい。まるでルルーシュみたいだ。

いけない脱線してしまった。




「あのね、アーサー今日はね……」


「(じー)」


「連れて行くわけには……」


「(じーーー)」


「いや、だから」


「(じーーーーーー)」




駄目だ。小動物の真っ直ぐな眼で見られたら何故か罪悪感が。

このままでは連れて行ってしまいそうになる。

ここははっきりと告げ




「?」




ようとしてアーサーの小首を傾げる動作を見てしまった。

正直言って可愛いと思う。反則だ、と叫びたい。

精神的に特殊な攻撃を受けている私を尻目にアーサーはリュックの中に顔を埋めて何かを探している。

先ほどパッと見た限りでは何も無かったが。




「にゃ♪」




再び顔を出したアーサーの口にはナナリーに貰ったであろう猫じゃらしが。

何と準備のいいことか。

きっと暇になったらこれで遊ぶまたは遊んでくれとの意思表示なのだろう。

まるで『その気も無いのに日曜日に遊ぼうと言ってしまった父親と全力で準備した子供』の図だ。

一つ違う点は私は約束などしていないと言う事だが。




「(じーーーーーーーーー)」


「……はぁ~」




私の口から深い深いため息が出てしまった。

















「いい、絶対に悪さしちゃ駄目だからね」


「にゃあ!」




私の背負ったリュックの中から猫の鳴き声が発せられる。

結局のところ私が折れる形で決着がついてしまった。

今日の黒の騎士団の集まりにはいつもより猫一匹分荷物を多く持って行くことになってしまった。











 side アーサー





「いい絶対に悪さしちゃ駄目だからね」


「にゃあ!」



了解です、姉さん!

窮屈だがなんとか敬礼をする。

リュックの中なのでカレンに見えないのが残念だが仕方が無い。

今俺はやっとのことで折れてくれたカレンに運ばれて黒の騎士団の集まりに参加しようとしていた。

なぜこんな事をしているかというと。

場所がわからないからだ。

最近のルルーシュは微妙にガードが固い。

その所為で黒の騎士団の活動場所も余り解っていないのだ、これが。

今回もなんとかキョウトからのナイトメアの受取日が判明できたのだ。

因みにその情報源はC.C.だ。

彼女とは馬が合う。主にルルーシュをからかう事に関しては。

そういう経緯で日にちは判ったが場所がわからない。

そういうわけでゼロの腹心カレンを落とそうと画策したわけだが。

見事に成功!

この一回を成功させればあとはガードが緩むはず。

何回でも同じ手を使用してやる。

これからはカレンはもしもの時の移動手段(黒の騎士団行き)だ。

そしてカレンに運ばれながら俺はまだ見ぬ紅蓮弐式の事ばかり考えていた。












倉庫に着いて早々玉城に見つかって連鎖的にゼロにも見つかったのはご愛嬌。

大人しくしていると言う条件の下なんとかナイトメアの観賞を許されたのだった。

















 あとがき

カレンの話がみたいとリクがあったので頑張ってみたじぇ。

二時間ぐらいで書いたからクォリティに難ありだからそこらへんは突っ込み禁止…にはしない。

でもやっつけで書いたわけではない。いつも全力全開で書いてますので、そこのところよろしくです。


ナリタ戦ばかり書いてるから休憩休憩。

しかも謎なことに気付いたらナリタ戦後の話を書いている事実。

いけないと思いつつこんなものも書いてしまったよ。

でも満足。

出来ればこの話でマッタリして言ってね!



[4685] 第七話 まったりしたい時にこの一本…読んでくれたらいいな
Name: 量産化の☆◆30ba27f3 ID:8da1c8cf
Date: 2008/11/17 21:00












 side アーサー




(おかーをこーえゆこーおよー)




口ー笛ーふきつぅーつぅー!

やってまいりました死のハイキング。

前回立ったっぽい死亡フラグ、でも今回の計画は此方にとっても好都合なものだからおいそれと引くわけに行かない。

今回のこの機を逃したらキョウトからの支援は余り得られずに黒の騎士団の活動も遅れが生じる物となるだろう。

さらにブリタニアに奇襲による打撃も与えられず相手に有利すぎる展開になる。

まぁもしゼロが出撃を見送ろうとしたら藤堂と四聖剣の事を切り出して出撃させたが。

この戦いでゼロの介入がなければ藤堂も危なかったかもしれないのだから。

彼等のことだから片瀬少将の脱出の時間稼ぎを買って出て四聖剣もろとも捕縛なんて事もありえた訳で。

もしそうなったら此方が不利過ぎる。

今後の行動に支障が出てしまう。

しかしゼロが無事?ナリタへのハイキングを決行、こうして山小屋にいると相成ったのだが。




(アーニャ、どうなるだろうか)




おそらくモルドレッドは出来上がってないだろう。

来てもグロースターかサザーランドのカスタム機。

そして重火力化していると思うわれる。

……アーニャ自身が遠距離が得意で近接が並だと仮定してだが。

しかし相手側にラウンズクラスが一人追加と言うのが大きな痛手である。

ゼロの策略で上手く切り抜けられるといいが。




「お前達は無視するだけでいい。全ての異常を」




今俺の後ろでは新しい犠牲者が生まれた。

これで彼等は生きている限りあそこで生活する事となる。

これから起こる戦闘と言う『異常』を。

誰も交替に来ないという『異常』を無視し続けて。

もうちょっと後先考えてギアスを掛けてあげてください。




「凄いと思わないか?」




俺の横にいるC.C.が声を掛けてきた。

目の前に広がる雄大な山々、これだけのものはめったに見られないかもしれない。

だがこの景色もあと少ししたら戦火に見舞われるのだろう。

そしてその時俺はその戦場にいるはずだ。




(……俺、この戦闘が終わったら彼女に告白するんだ)




真面目にそのつもりである。因みに彼女とはC.C.ではなく別の女性。

でもこれだけみたら死亡フラグが立ってしまってる事実が悲しい。

もしかしたら『道楽のアーサー』はナリタ山でその幕を下ろすかもしれない。

出来れば最後に一目ナナリーに会いたかったが。




「しかしこの景色を見ながら食べるピザはまた格別だな」




……ピザを持ってきていた彼女にビックリ。

どこまでもピザが好きなんですね。

脇においてあったカバンから取り出したお弁当には似つかわしくないピザを頬張る彼女を見ながら呆れてしまう。

ここに来る途中も思ったが彼女は戦闘に来た気などさらさら無いだろう。

拘束着こそ着ているが気分は正しくハイキングのつもりだ。




「お前も食べるか? 一切れならやろう」




とりあえずご相伴に預かる事にした。

これからのことを思うと少し憂鬱になるが。

ま、なるようになるだろう。











第七話 ~戦闘準備~












只今俺は高見の見物を決め込んで……すらいない。

眼下ではC.C.とルルーシュがなにやら会話をしている模様。

でも今はもっと夢中になる物を見ているので無視している。

なにを隠そうここはゼロ専用無頼のコックピット内。

そこかしこによく解らない物が配置されている。

かろうじて解る物は操縦桿、脱出装置のレバーぐらいのもの。

……この計器はなにを表しているのだろうか?

あと自爆装置はどこ?

俺は科学の浪漫を捜索する。

ふとその時俺の耳があの会話をキャッチ。




「ルルーシュ、お前は何でルルーシュなんだ?」


「哲学を語っている余裕は無い」


「家の名はランペルージに変えた。だがルルーシュと言う個人は残した。甘さだな。過去を捨てきれない」




では姓も名前も捨てた俺はルルーシュより上だと。

……捨てたと言うより落としたという表現のほうがいいかもしれないが。

だって気がついたら猫だったんだから。

第一今は人間の尊厳を捨ててしまっている気がする。

無いと落ち着かなくなったんだ、首輪がさ。

このまま雌猫にピーーーな感情を抱いたらどうしよう。




「ではC.C.、俺は扇たちのところに行ってくる」


「ああ」




どうやら出発のようだ。

ルルーシュが無頼に近づくのを確認した俺はコックピットの陰に体を押し込む。

はっきり言ってこの行為自体余計な事だ。

俺が無頼に乗って行ったとしても役には立たない。

邪魔しないようにしているしかない。

では何故こんな無駄な行為をしているかというと。

これでも責任を感じているからだ。

だってアーニャの事は俺の責任だし。

死ぬ時は一緒だよ、ルルーシュ。

……あ、尻尾が挟まる! ちょっと、このままじゃ潰れ……あっ!




















 尻尾は無事でした!!

かろうじて尻尾を潰されずにすんだ俺は暫く身を潜めて姿を現す機会を窺っていた、が。

途中でクシャミをして見つかってしまった。

お約束って時々酷いと思う。

まぁそんな訳で今は無頼の中でルルーシュと顔を突き合わせているわけだが。




「で、何故貴様がここにいる?」


「……にゃあ?(……付き添い?)」




本音を言うと帰りたいです。

帰るまでいかなくても出来れば紅蓮に乗りたい。

この機体に乗っているだけで死亡フラグ立ちそうだし。

でも降りられない現実と責任が恨めしい。




「ふぅ。まあいい、いいか無頼から出るなよ扇たちに知られると厄介だ」


「にゃあ(了解)」




そう言ってルルーシュは仮面を被りゼロとなる。

そして扇たちに掘削機の配置を指示すると無頼のコックピットを空けて外に出て行ってしまう。

そしてやる事のない俺は再びあの作業に戻った。

さて、自爆装置のスイッチはと……。






















「始まったな」




無頼の中で外の様子を窺っているとそんな言葉が聞こえてきた。

誰にも気付かれないようにそっと顔を出す。

見えた、遠くにいる軍勢が。




「じょ、冗談……冗談じゃねーぞゼロ! あんなのが来たんじゃ完全に包囲されちまう」




焦った声で玉城が言う。

そう言いたくなるのも仕方が無いだろう。

此方の人数は精々三十人強。

ナイトメアにいたっては十機ほどしかない。

それに比べてあちらは数えるのも億劫になりそうな軍を率いている。

これでは焦らない方がおかしい。




「生き残るには此処で戦争するしかない」




だがゼロはそれでも現実を突きつける。

その声で辺りに動揺が走った。

ブリタニアとの戦争。

正直猫の俺でも、いやだからこそ逃げたいです本当。




「ああ、これで勝ったら奇跡だな」


「ゼロいまさら」


「メシアでさえ奇跡を起さなかったら認めてもらえなかった」




奇跡は起きる物じゃなくて起す物って誰かが言っていた気がするけれども。

この戦局をひっくり返し、コーネリア殿下を捕まえられたら確かに奇跡だと思う。

その奇跡……うん、きっと起きないな。

白兜とか白兜とかアーニャとかアーニャとか反則クラスの人間がいるから。

と、ここで玉城がゼロに反発しだした。




「やっぱりお前にリーダーは無理だ! 俺こそが―」




とりあえず皆が思っている事を代弁しよう。

それはありえない、と。

何気にリーダーの座を狙っている玉城を黙殺し話は進んでいく。

いまゼロは団員に銃を突きつけ。

次の瞬間には銃を反転、相手に差し出す形をとる。




「既に退路は立たれた。この私抜きで勝てるというのなら誰でもいい、私を撃て」




いまゼロは団員に銃を差し出している。

辺りにどよめきが生まれた。

それでもなおゼロは言葉を紡ぐ。




「黒の騎士団に参加したからには選択肢は二つしかない」




今ゼロは団員に問いかけているのだ。

己にその身を捧げる覚悟があるか、と。

未だ戸惑い雰囲気が漂うこの場で。




「私と生きるか。私と死ぬかだ!」




戦士になる試練を与えた。

その時遠くから爆発の音が聞こえてきた。

ブリタニア軍と日本最大の組織『日本解放戦線』との戦争が始まったのだ。

そして胃が痛くなり始めた俺。

ストレスで禿げなきゃいいのだが。

あれかやっぱ因果応報なのかこれは。

いまなら解る。

シャーリー父よ、ストレスとはこんなに苦しい物なのだな。
















 あとがき

ずっとアーサーのターン!

今回は短めに、戦闘開始までだから許してね。

ぶつ切りにしないとスッゴイ量になりそうだったから。

それと黒の騎士団の戦闘フェイズはまだ先なんだぜ?

とりあえず今回は騎士団側の視点で次はブリタニア側の視点を予定。

さてさてどうなるかな~っと。

次回に続く。

それと本板は凄いですね一日でPVが約一万増えるなんて……このSSそんなに面白いですか?

作者本人はニヤニヤ妄想しながら書いてますけど……う~む。



[4685] 第八話
Name: 量産化の☆◆30ba27f3 ID:8da1c8cf
Date: 2008/11/23 14:43

















 side コーネリア








爆音が響く戦場。

この日ナリタ連山は争いの渦に飲まれた。

そして今私の目の前に新たな標的が三つ現れ、




「邪魔だァ!」




私の駆るグロースターが目の前に現れたナイトメアの内最も傍いる奴に襲い掛かる。

相手も私の猛攻を防ごうとライフルを撃ち続けるが当たらず。

当たり前だ敵は動揺した状態なのだろう。

照準が合っていない状態から引き金を引いても当たるはずが無い。

そして機体性能、技量、経験、どれをとっても私より劣っていのは明らか。

故に結果など知れたもの。




「遅い!」




持っているランスを横になぎ払い吹き飛ばす。

ただその一振りで相手は陣形を崩してしまう。

吹き飛ばしたうち一番隙を見せた者にハーケンを打ち込み止めをさし。

さらに背後から接近してきた一機を振り向きざまにランスで突き刺す。

その一撃はコックピット部を貫き相手パイロットを死に至らしめていた。

なんとも脆いものだ。




「脆弱者が」




まるでその言葉を冥土への土産にしたかのように相手は爆発する。

そして最後の一機を屠ろうとして振り向き。

爆発するそれを見届ける。

どうやらギルフォードが仕留めたようだ。




『大丈夫ですか姫様』


「ああ」




ギルフォードが駆け寄り私の様子を窺う。

全く、信じていても心配な様子だな我が騎士は。

その時、右方向に展開していた部隊から信号弾が上げられたのが確認できた。




「あれは……ダールトンか」


『敵本拠地はあちらでしたか』




どうやらそのようだ。

ここでどうしようかと考える。

今から行ったとしても奴の事だ、その頃には制圧しているだろう。

それよりも備えとして挟撃、逃走に対応できるようにしたほうがいいだろう。




「よし、我等はここで備える」


『よろしいのですか?』


「部下の手柄を横取りする趣味は無いさ」




口元に笑みを浮かべる。

だが直に引き締め通信を開く。

通信先は本陣としているG-1ベースだ。




「G-1ベースこちらはコーネリアだ。戦況はどうなっている」


『ハッ! 現在我が軍はナリタ連山を囲むような布陣で順調に進攻しています。
 またダールトン将軍が敵本拠地入り口を発見した模様。制圧完了も時間の問題かと』


「そうか。……アールストレイム卿の方はどうだ?」


『そちらも問題はありません。部隊の方も損害は軽微です』


「そうか。状況に変化が見られたら随時報告を怠るな」


『イエス・ユア・ハイネス』




通信を切る。

どうやら思っていたほど敵の戦力は大きくなかったようだ。

日本最大の組織と言ってもこの程度のものか。

こちらの被害もそれほど大きくならずに済みそうだ。

だがそれも当たり前か。

此方には最強の剣の内の一振りがいるのだから。




「ふ、流石父上の騎士といったところか」




戦局はほぼ決したと見ていいだろう。

このまま攻め続ければいずれ親玉も穴から這い出る。

出てこなかった場合は引きずり出せばよい。

もはや我等の勝ちは揺るがない、日本解放戦線は今日で幕引きだ。

想定外の事態が起こらなければ、な。















第八話 ~強襲~















 side アーサー






「ぃよっし! 全ての準備は整った!」




爆音が近づき敵の進攻が予測地点に達したと判断したゼロは作戦開始の声を上げる。

ゼロの掛け声と共に一斉に武器を手に取る騎士団メンバー。




「これより我が黒の騎士団は山頂よりブリタニア軍に対して奇襲を敢行する」




慌しく準備が進められていく。

ある者は武器を携え、ある者はナイトメアを起動させる。




「作戦目的はブリタニアの第二皇女コーネリアの確保にある。突入ルートを切り開くのは紅蓮弐式だ」




ゼロの言葉に答えるように前へと進む紅蓮弐式。

そして三番の掘削機に輻射波動を打ち込む。

一秒、二秒と時間が過ぎやがて大きな地鳴りがし始める。

堰を切ったように始まる土砂崩れ。

その勢いは物凄く麓の町を軽く飲み込んでいった。

正直やりすぎな気がする。今もこの光景を見て悦に入っているルルーシュを痛い子を見る視線で睨む。

だが気がつかない、というか無視してやがる。

俺の視線を意に介さずに作戦を進めるゼロ。

紅蓮弐式の作り出した土砂崩れで混乱しきったブリタニア軍に奇襲をかける。

黒の騎士団の雰囲気は鬼気迫るもの、正に必死なものだった。

だがそんな様子を見ていてもルルーシュの横でグデッとたれている俺。




(あー憂鬱だ)




ルルーシュの計らいで機体の一部にベルトで固定されて身動きが取れない状況なのだ。

今も山頂から滑り降りてブリタニアのナイトメアを蹴散らしても何の感動もわいて来ない。

別に動けないからこのような態度と言うわけではない。

ただやはりストレスが溜まって胃痛だけではなく憂鬱と言う精神的も病んできた。

そのようなわけで士気の上がる(やけくそともいえる)黒の騎士団に対してテンションガタガタの俺。

これから起こるかもしれない事で非常に頭が痛い。

何か面白い事でも考えようと思ってもこれといった事が浮かばない。

それよりも白兜ことランスロットに大破させられるのが確定の機体に乗ってる時点でもう精神がヤバイ。

第一あそこでスザクがこなかったらこの作戦も完勝出来たはずである。

そしてゼロはコーネリアを確保。

その後は恐らくアジトで監禁、キョウトあたりの指示を仰ぐことになったか?

暗い部屋に閉じ込められるコーネリア殿下。

満足に日の光も見れずに強靭な精神も少しずつ磨耗していき。

そこで優しく甘える俺、優しく抱きしめてくれる殿下。

頬を舐める俺にくすぐったそうに微笑み頭を撫でてくれたりして。




(……あれ? なんか凄く惜しいことした?)




一つのフラグを圧し折った気がする。

……もしスザクを今回の作戦に参加できなくすればこのような展開もありえたかもしれない。

いやいやそうしたら先が読めなくなる。

スザクに毒盛って行動不能にするのは簡単だがそうなったら今後が…ゼロが何とかしたか?

………。




(なんで思いつかなかったんだよ、俺!)




今更ながらに見通しの甘い俺自身に呆れてしまう。

そんな事を考えていると目の前にサザーランドが割り込んできた。

ゼロゼロとやけに五月蝿い。

オレンジである。




『し、死ねぇぇえええ!!!』




どうやら思考の波に飲まれているうちのオレンジ君云々のやりとりは済んでしまった模様。

今は俺のゼロの乗っている無頼に突進してくる。

しかしなんで小刻みに揺れてあの怒ったような動作はナイトメアのプログラムに搭載されているんだ。

誰だ、あんな遊び心が生んだようなモノ(モーション)をいれたのは。

……一人心当たりがいるけど、違うよね?

なんでだろう笑顔で「あ、それ? うん、僕が作ったの~」と肯定してくれそうな気がするのは。




『間合いさえ取れば!』




……またも余計な事を考えている間に色々と見逃してしまった。

ランドスピナーをフルに稼動させて後へと間合いを取るサザーランド。

しかしその行為を紅蓮は許さなかった。

右腕の間接部分を伸ばし大きくリーチを広げる。

ジェレミアも流石にこれは読めなかったらしくサザーランドは頭部をつかまれてしまう。

そして紅蓮の右腕が輝き輻射波動が発動。

ボコボコと不気味に変形していくサザーランド。

なんだか可哀相に見える。




『ゼローーーー!!』




こちらへと手を伸ばし最後の叫びをあげるジェレミア。

しかし無情にもコックピットは脱出機能が作動。

遠くへと離脱していった。

レンジでチンされてしまった彼に敬礼を送る。

上手く生き残れオレンジ。



















 side ギルフォード







気付いた時、既に我等は背後を取られていた。

振り向いた時には飛び出してきた白い無頼―細部の違いから改造機だと判断できる―が最後尾にいた一機に襲い掛かる瞬間だった。

狙われた機体はなす術もなく切り裂かれさらに傍にいた一機も撃破されてしまう。




『日本解放戦線か!?』




更に対応が遅れ敵の、こういうのは癪だが見事と言えるフォーメーションによってまた一機が落とされた。

このままでは不味い。

即座に判断した私は殿下に引く事を進言する。




「殿下、ここは私たちの任せて一旦お引きください!」


『……よし、では逆手に取ってやる。ギルフォード』


「はっ!」


『刃を交えた後ポイント9まで来い』

「9? …解りました」




だが殿下は引くのではなく攻めに出るようだ。

言われたポイントになにがあったかを思い出し、殿下の狙いを察知する。

殿下が指定した場所は両方向が高くなっており誘い込めば挟撃で切る場所である。

そして殿下は私の言葉を聞くと向かってきた敵に擦れ違う形で一撃を入れてそのまま振り返らずに目的の場所へと向かっていった。

私の役目は簡単だ。

ここで暫く敵の足止めをし然る後に態勢を立て直した友軍と合流した殿下の待つ場所へと誘い込む。

そういうわけであるから悪いが暫く私と此処で刃を交わっていてもらうぞ。

殿下に会いたければあわせてやる。

だがそこがそちらの死に場所となるだろうが、な。

目の前の無頼と鍔迫り合いを演じながら私は勝利を勝利を信じていた、まだこの時は。



















「ゼロが転進した?」




純血派の一人から伝えられた情報に眉をひそめる。

この場で転進する意味があるのか、と。

こちらに向かっている純血派にさらに詳しい情報を求める。

するとどうだろう、最悪な事に黒の騎士団の予測進路は殿下の向かった場所ではないか。




「まずい藤堂たちを追い込むはずの場所に黒の騎士団が」




今私の脳裏には最悪の展開が見えてしまっていた。

今ならまだ間に合うかもしれない。

そう天に祈り殿下に通信を開く。




「コーネリア殿下!」


『聞こえているよギルフォード』




コーネリア殿下の声に緊張の色が見えた。

既に敵と接触していると思ったいいだろう。

すぐさま殿下の下に向かおうと転進しようとする。

だがその進行方向に滑り込むように敵の無頼が邪魔をしてきたではないか。

どうやら足止めをされていたのはやつ等ではなく我等の方だったようだ。




「くそっ!?」




どうにかして殿下の下に辿り着きたいが目の前のナイトメアたちがそれを許さない。

上手くフォーメーションをとり我等を釘付けにする。

どうやらゼロの作戦を読んで殿下を孤立させるつもりらしい。

相手の狙いがわかっているのにどうしようもない。

焦りから攻撃が単調なものになってしまう。

他の親衛隊のメンバーも殿下の安否が気になって動きが悪い。

だが相手はその隙を見過ごすほど愚かではないようだ。




「っ!?」




味方被弾した一瞬、ほんの刹那の間そちらに気をやってしまったために横合いからの攻撃に反応が遅れてしまった。

私の隙を見逃さなかったのは相手の無頼の改造機。

五機の中で色の違いから恐らくはリーダー格。

そして日本解放戦線で改造機があたえらるほどの人物。

そこから推察するに『奇跡の藤堂』が乗る機体だろう。

白い無頼が私へと襲い掛かってきた。

私はその背後に死神が鎌を振り上げる姿を見た気がした。

このタイミング、到底避けられるものではない。




「くっ!?」




最早これまでか。

あと数瞬のうちに相手の無頼の持つ剣の切っ先がグロースターを貫くだろう。

私は死を覚悟した。

だがどうやらそれはまだ早計であったようだ。

私に襲い掛かろうとしていた無頼は咄嗟に横に大きく跳び間合いを取った。

その藤堂のいた空間を薙ぎ払うかのように銃弾が横切る。

何が起こったか、と思っていると。




『援護する』




モニターにアールストレイム卿の姿が。

さらに専用に誂えられたガトリング砲を無頼に向けているグロースターのカスタム機の姿が映し出される。

どうやら死神は私を連れに来たのではなかった様だ。

連れに来たのは、藤堂お前だ。

ラウンズという最強の味方を得た私は藤堂と四聖剣に向けて踊りかかった。

一刻も早く此処を脱して姫様の下に!















あとがき

ナリタ戦、アーニャをどうしようか考えた結果こうなりました。

次回は藤堂視点で 奇跡VS騎士 を予定。

さてこの後ですが。うん、どうなるかな? 作者にもわからない。

後二、三話でナリタが終わるかな、と思います。

その後ですが……アーニャを……アッシュフォードに入れようか悩んでます。

入れればイベント増加。でもラウンズを入れる理由が皆無!

スザクと同じ理由だと弱く思えるんですよね……いいかなそれでも?

別段入れる必要はないけれど入れたほうが面白くなりそう、外伝やら小ネタが。

さてどうしたらいいですかね皆さん? スザクと同じ理由で大丈夫か!?

それとももっとそれらしい理由付けが出来るか? まあ無い知恵絞って考えてみます。

読者様にアーニャが好きな人がいたら入れたほうがいいのだろうな。

入れて欲しい人は「俺はこんなにアーニャが好きなんだ!!」という気持ちを作者にぶつけてください。

最悪、スザクと同じ理由で捻じ込む。捻じ込むったら捻じ込む。



[4685] 第九話
Name: 量産化の☆◆30ba27f3 ID:8da1c8cf
Date: 2008/11/27 11:13














 side 藤堂






「貰った!」




味方機がやられて一瞬の隙を見せたグロースターに狙いをつけ突きを放つ。

だがあと少しそれもあと少しといったところで中止せざるを得なくなった。

背筋に感じた悪寒。

その閃きに従い咄嗟に攻撃を中断し横へと跳躍したのが功を奏した。

先ほどまで私がいた空間を銃弾の豪雨が降り注いだ。

その発生源を見るとそこには一機のグロースターがガトリング砲をこちらに向けていた。




『あのナイトメアは!?』


『藤堂中佐! あの機体は―』


「ああ、おそらくは」




エリア11に配属された皇帝最強の騎士の一人、ナイトオブシックスだろう。

他の者もその事に気付いたようで声に緊張が感じられる。

この場は退くべきか?

弱気な考えも浮かぶ。

だが、




『どうします中佐?』


「お前達は引き続き親衛隊を相手してくれ。あの機体は私が相手をする」


『行けますか?』


「見方によってはこれは好機だ! ブリタニア最強の騎士を討ち取れば流れは此方に傾く」


『了解!』




卜部の通信にはっきりと答える。

戦闘の続行の意を。

そして無頼改をグロースターへと奔らせる。




『中佐!』


「千葉か」


『ラウンズを一人でだなんて』


「大丈夫だ。そう思うならそちらを早く片付けるんだ」


『……了解』




通信をつないできた千葉に答え更に加速する。

だが相手も近づかせまいと弾幕を張り妨害してくる。




「ナイトオブラウンズ、悪いがここで沈んでもらう!」




ここで最強を降し再び『厳島の奇跡』と同様のことを起こせば日本にも希望が見えてくる。

故に必死の覚悟で望ませてもらうぞ、ラウンズ!















第九話 ~戦闘終了~















「くっ! やはり強い」




戦闘を開始して既に数分。

だが一向に攻め手が見つからなかった。

此方は近接に特化した機体で向こうは明らかに中遠距離に特化させている。

間合いに入れれば一気に優勢に出来るはずであるがその間合いが実に遠い。

これまでも緩急をつけて接近しようとしたりスラッシュハーケンを打ち込んで隙を作ろうとしたりもした。

更には周囲の障害物を利用して活路を見出そうとしたがどれも結果を生み出せなかった。

さらに段々と此方の機体にもダメージが蓄積されてきている。

銃弾が掠り装甲が少しずつ削られ。

直撃を防ぐために無茶な回避を行い続け駆動系が悲鳴を上げつつある。

前者は無視してもいいが後者は不味い。

このままでは遠からず駆動系に支障が生じ機動力が落ちるだろう。

そうなったら一瞬で蜂の巣にされてしまう。

起こりうる最悪の未来を脳裏で再現し、覚悟を決めた。

機体を操作し速度を上げ一先ず開けたところに出て間合いを取る。

辺りには相手のグロースターが薙ぎ払った木々が落ちている。

そして相手の出方を窺うように旋回しながら接近。

相手もこちらの出方を窺うためにガトリング砲を構えたままで撃たないでいる。

ここで藤堂は無頼改を一気に相手に相手に向かわせる。

さらに相手がガトリング砲を撃つ前にスラッシュハーケンを打ち攻撃をする。




「むっ!?」




だがこれも見抜かれた。

寸でのところで機体を横に滑らせてかわされてしまう。



 予想通りに。



かわされたスラッシュハーケンはグロースターの更に奥、薙ぎ倒されていた木を貫く。

貫かれたそれごとスラッシュハーケンを巻き戻しながら相手に打ち付けるように攻撃を加える。




「これならどうだ!」




その攻撃は見事にグロースターにヒットした。

だがその攻撃も相手の体制を崩す程度で致命傷足り得ない。

しかし態勢を崩しただけでも、いや態勢を崩す事が本来の目的である。

相手が反撃に出る前に接近。

そして、




「貰った!」




敵の左側面から接近。

相手は態勢を立て直すのに必死で迎撃の準備すら出来ていない。

これが最大にして最後の好機だろう。

私はファクトスフィアのある頭部、左肩そしてコックピットを狙い平突きを放つ。

だが、




「なっ、三段突きを防いだだと!?」



頭部、左肩に向けて放たれた平突きは見事としか言いようの無い操縦でかわされてしまう。

最後のコックピットを狙った一撃でさえ左腕で受け止められた。

火花を散らし左腕に食い込んでいく廻転刃刀。




「だが左腕はもらっ!?」




そこで機体に衝撃が奔る。

すぐさま相手との距離をとる。

モニターに表示される機体の状態。

そこには左腕のロストという情報が。




「なんて奴だ」




目の前には右腕に剣を装備した敵機の姿がある。

己の機体の左腕を諦め咄嗟に此方に攻撃してきたらしい。




『中佐!』


「大丈夫だ」




通信を開いてきた朝日奈に答えながらスラッシュハーケンで牽制し距離をとる。

こちらも戦闘力を削がれはしたがあちらの方がその大きさは顕著だ。

廻転刃刀が主武装の私と違い向こうは重火器。

片腕で抱えるのは無理だろう。

此方が構えを取ると向こうも重火器ではなく剣を構え、接近戦を選択したらしい。

そして私は油断無く構える相手に機体を走らせ、




「っ!? 何だこの揺れは!」




地面を揺るがすほどの衝撃が奔った。

辺りに響く揺れに敵への警戒は解かずに最低限の意識を割いて情報を得る。

どうやら土砂崩れのあった方角から何かがとある地点に向け突き抜けたようだ。




「あの方向は」




直に理解できた。

あれはコーネリアが向かった先である、と。

次に湧き上がってくるのは『何』がコーネリアいる地点に向かったと言う事だが。




「敵の援軍か……」




即座に思いつく事がそれだった。

黒の騎士団、日本解放戦線に比べブリタニアのほうが力がある。

あれがブリタニアの仕業だとしてそれほどの攻撃力、突破力を持ったものはそうはない。

確かに日本解放戦線には雷光という機体がある。

だがその機体は余り野戦向きではない。

どちらかと言うと移動式の固定砲台といっていいだろう。

更に言うと衝撃は液状化した斜面から走って行っていた。

日本解放戦線にあのような重火力のものが未だ温存されているとは考えられない。

このことから考えると恐らくはブリタニアの機動兵器だろう。

……もしかしたらカワグチ湖の時のあの新兵器かもしれない。

最早潮時か。

即座に通信を開く。




「少将閣下」


『おお、藤堂。どうした』


「すぐに撤退の準備を」


『な、何故!? 作戦はどうなった!』


「敵の新型兵器と思われるものが現れました。恐らくはカワグチ湖の時の物かと」


『それほどのものなのか!?』


「火力だけで言えば雷光に匹敵するものがあるかと」




グロースターと切り結びながら少将に感じたままを伝える。

少将も私の雰囲気を察したのだろう、重くだが口を開く。




『解った、直に脱出する』


「私達が活路を開きます」


『頼んだぞ』




通信を切り四聖剣に命令を出す。




「聞いたとおりだ。我々はこれより片瀬少将の脱出経路を確保する!」


『『『『了解』』』』


「行くぞ!」




グロースターを牽制しながら後退を開始する。

相手も此方の意図を察したのだろう、戦闘状態を維持しながらも追撃する様子が見られない。

戦闘領域から抜けるとすぐに反転。

脱出経路の確保を急ぐために更に加速を開始。

あとは黒の騎士団がコーネリアを仕留められるか否か。

此度の戦闘の勝敗は新進気鋭の彼等に任せるしかなかった。











 side アーサー







「こいつさえ。こいつさえ倒せば活路は開く!」




出来れば負けてください!

そして一緒に駆け落ちしましょうコーネリア殿下!

モニターに映るグロースターに呼びかける俺。

おっと「猫の癖に駆け落ち?」という野暮な事は言いっこ無しだぜ。

殿下の駆るグロースターが紅蓮弐式に突進し攻撃を加える。

だが紅蓮はピョンピョンまるで猫みたいに避ける避ける。

存外にあの機体もチートって感じます本当に。

ネリ様もランスで接近戦を挑んでいますが機体性能の差で圧倒されてます。

防御不可のゴッ○フィ○ガーも酷すぎる。

ランスから迸る脅威に反応し右腕をパージする殿下。

だが、




「卑怯者! 後ろから撃つなどと」


「ほう、ではお前たちの作戦は卑怯ではないと?」




ランスと右腕を失った直後に背後から左腕を撃ち落したルルーシュに向けられた御言葉にいい表情で答えるルルーシュ。

戦争に汚いもクソも無いんだ、その理論はわかります。

でも悪人面が似合いすぎるのはどうかと思う。

見下ろすその目は何処までも冷たい。




「ふん、詰まらん選択を」




紅蓮へと向けての玉砕覚悟の攻撃。

その行動に対するルルーシュの言葉は実に冷ややかなものだ。

きっと「貴族の誇りなど無意味に等しい」という考えなのだろう。

既に勝利を確信しているルルーシュ、けどそうは問屋がおろさない。

ここで不測の事態が。

まぁ、俺にとっては予想通りの事態が起こるわけだ。




「っ!?」




突如として機体を襲う揺れと辺りに響く爆音。

突如として吹き飛ぶ岩壁。

土煙が映し出すナニかのシルエット。

土砂崩れが起こった方向からやって来たそのナニかにその場にいる全員が身を強張らせる。




『おい、まさかあのナイトメア』


『ああ、シンジュクやカワグチ湖にいた奴だ』


「またか…またあいつが」




現れたのは白亜の騎士。

どこぞのヒーローのように現れて殿下のグロースターに駆け寄る。

……あれ? そうするとこっちが悪者?

と、つまらないことを思う俺。

他の皆もかつて自分達を追い込んだ相手に思うところがあるのだろう。

扇と玉城は戸惑いを感じているに違いない。

ルルーシュはシンジュクの時に感じた屈辱からだろうか身体が震え表情が歪んでいる。




「紅蓮弐式は白兜を破壊しろ! コイツの突破力は邪魔だ!」




紅蓮に命令を出し自分たちはグロースターに向け銃を乱射する。

この戦力差だ通常ならば楽に討ち取れるはずだ。

だがしかし、




「このっ!?」


『こ、こいつ!?』


『ゼロ! こいつは!』





  ― ヤックデカルチャー。



あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!

『「三対一で楽勝楽勝」と思っていたらほぼ互角の戦闘になっていた!』

機体性能だとか経験の差だとかそんなチャチなものでは断じてない。

もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……。




つまりどういう事態かと言うと、倒せないのだ。殿下の乗るグロースターが。

三機によるライフルの銃撃もスラッシュハーケンと両脇の壁を使いスルスルと避け。

さらには此方に蹴りで攻撃までしてきています。

ほぼ互角の攻防です。

通常こんな事ありえない。だってそうだろ?

此方は三人あっちは一人。

オマケにグロースターは両腕を失い武器はスラッシュハーケンのみ。

この状況でほぼ互角?

どれだけ凄いのですか殿下は。

それとも此方の戦力が弱すぎるのですか?

……まぁルルーシュを筆頭に扇と玉城だし仕方が無いか?

恐らく向こうで戦っているカレンなら今のコーネリア殿下なら秒殺に。

あ、崖が崩れて落ちてしまった。

もう潮時かそう思っていると、




『カレン!』


『大丈夫か!?』




玉城と扇がカレンの下に行ってしまった。

勿論、ルルーシュと俺を置いて。




(ちょっ!? まてえええええええええええええええええ)




俺の叫びは届かず。

玉城たちは視界から消えてしまった。

それがどういうことを示すかと言うと。




「なっ!? ぐあぁあ」




俺たちの乗る無頼がグロースターと一騎打ちをするということである。

無理無理無理無理無理。

さっきまで三機で互角だったのにルルーシュ一人でどうにかできるはずが無い。

案の定、今スラッシュハーケンの一撃で左腕が吹き飛んだし。

ああそうか、撤退を指示した時左腕なかったのはこういう理由か。




「退くぞ! 全軍脱出地点に移動させろ」




スラッシュハーケンを壁に打ち込み上へと逃げる。

急げ急げと鳴きながらせかす俺。

出来ればこのまま逃げ切れればいいのだけれど。







無理でした。


スタートが遅れていたくせに難なく追いついてきたランスロット。

これだから高性能機は!

悪態をついたのがばれた訳でもないが容赦なく攻撃してくる白いの。

スラッシュハーケンでまず腕とライフルが吹き飛びヴァリスで右足が。




(って無茶苦茶揺れて頭がぁぁぁあああ!!)




無頼がバランスを失って地面を滑る所為でコックピット内部が激しく揺れる。

揺れるもんだから俺の頭まで激しく揺れる。

するとどうだろう、ベルトで固定された俺は頭をガンガン打ち付けるわけで、



 ―やめて! アーサーのライフはもうゼロよ!



ああ、幻覚が見える。

オマケに脱出装置まで作動させてさらに揺れを強化してくれる始末。

やっぱり乗るんじゃなかったと今更ながらに後悔した。

頭をしこたま打ち付けて意識が朦朧としている俺。

ふとその時今まで感じていた窮屈なものが無くなった。

どうしたのだろうと眼を開ける。

ぼやけた視界の中に黒い何かが見えてきた。

仮面の変態だった。




「いいか、この中で大人しくしているんだぞ」




変態―ルルーシュが俺を固定していたベルトを外してくれたらしい。

大人しくしていろも何も直には動けません。

思考が上手く働かない俺は弱弱しく一鳴きだけして体から力を抜いた。

意識がやみに飲まれ。






かけたところでのいきなりの爆音。




(敵襲!?)




一気に意識が浮上し鈍く痛みの走る頭を無視してコックピットから顔を出す。

見えたのはヴァリスを乱射し続けているランスロットの姿。

どうやら数分意識を失っていたらしい。

ルルーシュはどこかともっと身を乗り出して辺りを窺う。


いない。


つまり置いていかれたらしい。




(ルルーシュゥゥゥゥウウウウ!)




置いていった奴に精一杯の恨みを込めて叫ぶ。

この爆風の吹き荒れる中置いていくという非道な行為に怒りを禁じえない。

ここから生きて帰ったらどうしてやろうか。

とりあえず今はコックピット内部に入ってやり過ごすしか。

そこで見てしまった。

銃口をこちらに向けているランスロットの姿を。

ちょ、おま!

思ったときには銃口から光が溢れて此方へと弾丸が向かってきていた。




(スザクおまえもかぁぁぁああああああ!)




そして爆音。

幸い銃弾はコックピットの直前に着弾。

爆散はしなかったけれども空中を二度三度と回転する。

覚えていろよルルーシュとスザク。

着地と同時に意識を失った俺は復讐を誓った。


















「一度しか言わないぞ。……ありがとう」


「感謝されたのは初めてだよ。ではお礼を返してもらおうか」


「ん?」


「もう一度呼べ、先ほどのように」


「っ。ああ、あの名前か?」


「一度だけだ。大切に、優しく心を込めてな」


「仕方ないな」




ルルーシュの口から発せられ暗い洞窟の中に消えていく真実の名前。




「これでいいのか?」


「駄目だな全然駄目だ。優しさが足りない。素直さといたわりの心も。発音も怪しいし、何より温かみに欠ける」


「我侭な女だ」


「そうとも、私はC.C.だからな」




そう言って甘い雰囲気を醸し出す二人。

傍から見るとバカップルだ。

駅のホームとかで見たら突き飛ばしたくなるほどのバカップルだ。

なおも見詰め合って微笑んでいる二人。

そして今の俺の感情を爆発させるには十分すぎる威力を持っている。

駄目だ我慢できない。

俺は今の思いのたけをぶつける為にルルーシュへと駆けだし、



 ―人が死に掛けてる時になにイチャつてんだゴラァ!!



タックルは腰から下!

渾身のロケット頭突きをルルーシュの尾骶骨の辺りにぶちかます。

不意打ちだったため地面に倒れ伏して体を打ち付けるルルーシュ。

流石体力無し、重心も不安定だと感心しつつマウントポジションを取る。

俺の眼下には微妙に顔を引き攣らせていらっしゃるルルーシュ様。

どうやら俺を置き去りにした事を思い出したらしい。

言い訳を考えているのだろうか口元が微妙に動いている。

だが残念ながら俺は申し開きを聞く気は毛頭ない。

ニマーと笑みを浮かべ少しずつ体を左右に振り出す。

その状態からくりだされる左右の連打。

その攻撃は着実のルルーシュの頬っぺたに跡を残していく。

だが違う。まだ足りない。

本来の威力には遠く及ばないだろう。




(違う! もっと速く!)




少しずつ完成形に近づき、肉球に感じる衝撃が心地いい。




(頭を振って!)




段々と赤くなっていくルルーシュの頬に笑いを誘われつつ、




(高速のシフトウエイト、体を振った反動で!)




左右を叩きつける!

脳内の効果音は飛行機音でお願いします。

ベチンッ! ベチンッ! と連続で洞窟内に木霊する乾いた音。

その光景を見て微笑みでは無く忍び笑いをするC.C.。

その状態はルルーシュに振りほどかれるまで約一分程続いた。




必殺・ニャ○プシーロール、結構使える技だったとここに記す。











あとがき

風邪ひいた。頭痛いからこれにて挨拶終了。

さて今回の見つけた反省点と今後の方針。

うん、俺には戦闘は無理だw

どう書いたら熱い勝負になるか全くわからないw

ということでナイトメア戦は今後出さないようにしようかと思います。

どちらかというと馬鹿騒ぎ書いて他方が楽しいしねw

次回はアーニャでも書くかなw

うん、可愛い子を書きたいからきっとアーニャだ、もしくは咲世子とナナリー。



【どうでもいい事】

最近になって一年ほど前に書いた黒歴史をUSBの中から発掘。

恐らく続きもののつもりだったのだろうが一話のみ書いて終わってら。

きっと、たぶん、ぎりぎりオリジナル。ちょっと手直ししたが、さて晒すかどうか考え中。



[4685] 第9.5話 ~風邪をひいても関係ない。俺の執筆は止まらないぜ?~
Name: 量産化の☆◆30ba27f3 ID:8da1c8cf
Date: 2008/11/30 09:35


※11/30 微修正




外伝という名の小ネタをお届けします。代金は感想でお願いします。(無銭飲食可)







 ~チェスで勝負。ルルーシュと負け犬とアーサーと~



 side ミレイ



それはある日の事。




「アーサーって結構頭いいわよね」




ふとした一言。

恐らくが生徒会のメンバー全員が思っていた事だろう。

スザクと共にアーサーと遊んでいるカレンの一言があることを思いつかせてくれた。




「そだ! いい事考えた」


「どうしました会長。また変なことでも」




これは面白そうだ。

私はその案を即実行することにする。




「ルルーシュ、あなたアーサーとチェスをしてみなさい」




五本勝負で。

そう告げたときのみんなの顔はとても面白いものだった。

皆いい表情ね、その呆然とした顔。














結果だけを見るとルルーシュの全勝。

でも途中経過を見ていて解ったこともある。

やはりアーサーは賢いと言う事だ。

しっかりと考えて駒を動かしていたし勝負にもなっていた。

その際「此処から此処に移動して」という駒をポンポン叩く仕草はとても可愛いものだった。




「あら~やっぱりルルーシュには勝てないか」


「当たり前ですよ会長ー。ルルーシュにチェスで勝てる奴なんかそうそういませんよ」




自分の親友を誇るリヴァル。

確かにルルーシュに勝てる人はそうそういないわね。

以前は貴族相手に賭けチェスをしていたらしいから。

だけどアーサーの腕の方はどうなのだろうか?




「ねえルルーシュ。どうだったアーサーの腕は」


「そうですね、中々でしたよ。面白い手も打ってきましたし。そうだなリヴァルにだったら勝てるんじゃないですか」




本心か冗談か。

それは解らないがアーサーの実力を認めているのだろう。

未だ盤上を見つめて悔しそうな表情のアーサーに手順を並べながらなにやら指導している。

それにしてもさっきの言葉。




「へ~リヴァルにだったらね……」


「ちょっと待てよルルーシュ! それ言いすぎだぜ!」




やはり不服なのだろう。

私の一言でルルーシュに詰め寄ったリヴァル。

だがルルーシュは「本当の事さ」と言ってしまった。

それがリヴァルの暴走の引き金となってしまう。




「幾らなんでも猫になんて負けませんよ」




リヴァルのこの発言は後々まで語られる苦い思い出となった。














数時間後。

部屋の隅には暗いオーラを背負った何かが。

その何かに向かってスザクが一歩近づき。




「……リヴァル。あ、あのさ」


「止めろスザク!」


「今はそっとして置いてあげて」




声を掛けようとするもルルーシュとカレンに止められてしまう。

そう部屋の隅にいる何かとはリヴァルのことだ。

今の彼はすっかり意気消沈してしまっている。

原因は言わずもがな、チェスである。

結果は一勝三敗。

ギリギリだがリヴァルが負けてしまったのだ。



「で、でも」


「スザク、時には優しさが人を傷つけることもあるのよ」




スザクの肩を掴み制止する。

スザクも私のいうことを受け入れてくれたようだ、リヴァルのほうに視線を向けているが口は開かない。

だが正直どうしよう。




「あははは、猫に負けてちまった……猫に……アーサーに」




段々と酷くなってきているようだ。

でもそんな自暴自棄になりつつあるリヴァルに近寄る影が一つ。

その影はリヴァルの肩を軽く叩いた。



 ポンッ!



「かいちょ―」


「にゃっ!」




勿論私ではない。アーサーだ。

アーサーは「気にするな、俺は気にしない」、そういっている気がした。

態々二本足で立って片手をリヴァルの肩に置いている。

さらにもう一方の手はガッツポーズをとっているのだから。

あ、頷いている。




「うわぁぁあああああああ」




耐え切れなくなったのだろう。

リヴァルが叫びながら出て行ってしまう。

これから二日間、リヴァルは酷く落ち込んでしまっていた。

何とか励ましたが傷は深かった。

なんとか「アーサーは普通の猫ではない」「実はルルーシュもやり込められたことがある」と励ましたらなんとか持ち直してくれた。

その時ルルーシュの一寸した恥を聞き、その際の恥らう顔を見れたのは役得だ。


















 ~まあ、アーサーだし~



 side ルルーシュ



落ち込んだリヴァルを何とか復活させてから数日後。

俺は会長に頼まれた書類に目を通すために生徒会室へと足を進めていた。

それにしても前回のアレは面倒だった。

流石のリヴァルも復帰するまでに二日を要したしな。

オマケに俺のアーサーに関するちょっとした恥を喋ることになってしまったし。

やれやれ会長の考える事はいつもいつも。

と、生徒会室に入るとスザクがテーブルにある物を置いて真剣に何かをしていた。



 パチッ!

 …パチッ!


「う~ん」


「何をしているんだスザク」


「あ、ルルーシュ。ちょっと将棋をね」




よく見るとそれは確かにエリア11―日本にあったボードゲームだ。




「ほう、昔は打てないと言っていたが打てるようになったのか」


「まあね。流石に今だったら理解できるし」


 パチッ!


 パチッ!



恐らくは前回のチェスの所為だろう。

会長がスザクに気を利かせて用意したか、またはスザク自身の私物を持って来た、というところか。

まあ、普通なら生徒会室で遊ぶべきものではないが会長自身がああだし構わないだろう。

ただ、




「……アーサーと打っていることに意味はあるのか」


「あるよ。結構いろいろな事教えてもらったし」


「…………なんだと?」




今聞き捨てなら無い言葉を言われた気がする。

最近、黒の騎士団の作戦や交渉で疲れている所為だろう。

聞き間違いをしてしまうなんて、休息が必要か。

もう一度、今度は聞き間違えないように再度尋ねる。




「おいスザク」


「何ルルーシュ?」


「お前……そいつに教えてもらってるといったか?」


「うん、定石とかをちょっとね」




どうやら聞き違いではないようだ。

しかし猫に……定石を?

何故、猫が定石を知っている。

何故、猫に定石を習う。

今更だがアーサーは本当に猫なのか。

疑問は尽きない。




「技術部に移る前に同じイレブンの人たちに駒の動かし方程度は教わったけど定石までは…」


「だからと言って猫に教わるのはどうなんだ?」


「……まあ、アーサーだし?」




その一言で終わらせられるレベルではないはず。

だが何故かその一言は説得力を持ったものに感じられてしまう。

と、ここで俺の背後の扉が開く。

入ってきたのは会長だ。

どこか機嫌が良さそうに手に書類を持っている。

もしかしたら追加の物か。

そう思って受け取ろうとしたところ。




「アーサーこの仕事って頼めるかな~?」


「にゃ?」




俺を素通りしてスザクと将棋を打っているアーサーに差し出してしまった。

いや何かおかしい。

俺を素通りするのはまだわかる。

それをスザクに渡すならそうしなければならないからな。

だがスザクさえも素通りしてアーサーに渡すのはどう考えてもおかしいだろう。




「……会長」


「なに? ルルーシュ?」


「猫に書類を頼むなんて正気ですか?」




俺の真面目で真っ当な疑問を「え? 私何か変なこと言った?」的な顔で返される。

絶対におかしいです。百歩譲ってもスザクに渡すべきでしょう。

スザクも呆れて黙ってい……真剣に将棋板に向かっていた。

どうやら集中していて此方に気づいていないらしい。

ため息をつき会長に視線を戻す。




「でもリヴァルにチェスで勝てたし結構頭がいいから」


「結構頭がいいからでそんなこと」


「それに今だってスザクに将棋教えてたじゃない」




真剣に将棋板に臨んでいるスザクを指差して言ってのける。

確かに人間に将棋を教えている、だが。




「だからって猫に頼むなんて」


「そこいらにいる猫だったら頼みません。そこまでおかしくなってないわよ私の頭は」


「じゃあどうして」




会長は胸を張り人差し指を一本だけ立てて、




「まあ、アーサーだし」




できそうな気がするのよね~、と会長。

確かに出来そうだから怖いが。

この認識が学園内、果てはこのエリア全体に広がらないだろうか。

その事を考えるとなんだか頭が痛くなってきた。














あとがき

今回は日常を二本。

アーサーと生徒会メンバーとの絡み。

リヴァルを虐めてしまいましたw

こういうキャラだよね彼は?



それと前回アーニャとかナナリーとか咲世子さんを書くと言っていましたが嘘でした、すみません。

……本当のことを言うと咲世子さんで一本かけたんですが。

そのネタは感想板で貰ったアイディアなので投稿するのは許可が必要かなって思ったので。

今は引っ込めております、はい。

すみませーん埋まっているところ悪いのですが、感想番号[87]のtake様。

そのネタ使用させてもいいでしょうか?

ちょっと内容が変化してますが一本かけてますので許可が下りたら掲載しようと思うのですが。

take様の感想で生まれた作品ですので許可を貰いたい次第でして。

どうか感想のほうで返答をください。

一度見直しもしたいのでもし許可が下りたらその翌日辺りにでも掲載します。



[4685] 第9.7話 出かける前に投下していきますね (微修正 12/6
Name: 量産化の☆◆30ba27f3 ID:8da1c8cf
Date: 2008/12/06 22:15





 ※今回の話は感想番号[87]でのtake様のアイディアを少し形を変えて使用しました。
  ネタを提供してくださったtake様への感謝の意をココに記します。
ありがとう……そして楽しんでいってください。











外伝 ~逃げるアーサー、追う咲世子~






 side 咲世子




本日の天気は晴れ。

そして私の心の天気も晴れ。

今日はなんといい日なのでしょうか。

気分がいいと何事も上手く運べます。

さらにナナリー様にお出しするこのお茶菓子のクッキー。

今日は会心の出来です。

これならばナナリー様もお喜びになられ花が咲いたような笑顔を見せてくれるでしょう。




「ふふ♪」




自然と私も笑みを浮かべてしまいます。

さて次は紅茶の用意を、とポットにヤカンで沸かしたお湯を入れま―。




「コラ待てアーサー!! 今日という今日は!」




どうやら今日もルルーシュ様とアーサーはお戯れのようです。

最近このクラブハウスで飼われる様になった黒猫のアーサー。

とても賢い猫なのですがどうにもルルーシュ様との相性がよろしくないようで。

懐いているのでしょうけれどその行為がルルーシュ様の気分を害してしまっている御様子。

傍から見ている分には仲がよろしいのですが。

そう思っていると足音がこちらに向かってきている事に気がつきました。




「おい! 待たないか―ドンッ―あ、すいません咲世子さん」




と、他所事を考えていた所為でしょうかルルーシュ様にぶつかられて上体がぶれてしまいました。

いえいえ大丈夫ですよルルーシュ様。

ですから頑張ってアーサーを捕まえてください。

軽く会釈をしてキッチンから出て行くルルーシュ様の背中を見送る。

しかしこの篠崎咲世子、一生の不覚です。

ルルーシュ様のような、その、文科系の方にぶつかられてしまっただけでふらついてしまうなど。

今起こった事を反省しつつ作業の続きをっ!?

………。

………。

何故でしょう……クッキーが、濡れてしまっています……。

先程までは出来たてほやほやの温かそうでサクサクのクッキーが。

お湯に……お湯にまみれてしまいフニャフニャになって……。

と、今私は右手に持っているヤカンを見る。

心なしか先程よりも軽く感じます。

………。

………。

ああ、先程までサクサクだったのにルルーシュ様にぶつけられてしまったがためにクッキーがフニャフニャに。

サクサクがフニャフニャに……。

サクサク……フニャフニャ……。

サク…フニャ……。

さく……ふにゃ…。

………。

………。





 轟ッッ!!!





その瞬間私の中に何かが降り立った。









 side ルルーシュ





「待てと言っているだろ! アーサー!」




何度目の発言だろうか、待たないと解っていても言わずにはいられないこの台詞は。

案の定アーサーはその台詞を聞いても尻尾を左右に振るだけで止まる気配は無い。

スルスルとクラブハウス内を滑るように進む。

そしてある程度俺との距離をあけると振り返りこちらの様子を窺う。

忌々しい猫だ。

それにC.C.もだ!

最近はなにかとアーサーと一緒に俺のことを―。




「ん?」




アーサーがとある個室には言っていく。

どういうつもりだろうか。

いや考える事もないここは入るしかないのだから。

アーサーに遅れること数秒、部屋に進入する。

まず目に入ったのは床でニヤニヤと笑みを浮かべるアーサー。

そして、




「なるほど脱出口は確保済み、ということか」




開けられている窓だった。

これは絶好の逃げ口だ。

この部屋は二階に位置するために窓から飛び降りるのは危険だ。

少なくとも俺にとっては。

その事をよく理解しているのだろう。

アーサーは俺が部屋には言っても直には逃げ出そうとはしない。

一歩また一歩と近づく。

まだ奴は動かない。

しかしこの部屋の窓を開けたのは誰だ。

アーサーでは開けられないだろう。

では咲世子か? 部屋の換気のために開けたとか。

いやありえないか。下手をしたら防犯的に危うい。

ならば……やはりC.C.か。

あの魔女め一週間ピザを抜きしてやるか。

と、此処で。




「ルルーシュ様」




咲世子に呼ばれて振り返る。

だがこの瞬間、俺は後悔した。

な、なんだ? 咲世子の様子がおかしい。

俯いて表情は見えないが何故か眼だけがギラギラ輝いているようにも見える。

おまけにこう、なんだか異様なプレッシャーを感じるんだが。

それになんだかゴゴゴゴゴゴ! という幻聴まで。

……はっ!? 咲世子そのお前の傍にいる幽霊みたいなビジョンはなんだ!?

い、いや。俺の見間違いか。

だが咲世子の雰囲気がおかしいのは間違いないようだ。

その証拠に先程までとは違いアーサーも全身の毛を逆立てて警戒している。

……何処かに逃げ道は無いか。

部屋の中を探るが出口は咲世子の後ろにある扉。

あと出られるところはと言うと俺の後ろにある窓のみ。

ここは二階だ。

俺の運動神経では飛び降りた場合高確率で怪我をするかもしれない。




「……ルルーシュ様」




だが目の前いにいる今の咲世子に捕まればどうなるか……想像がつかない。

口の中が乾き心拍数が上がる。

覚悟を、決めるしかなかった。

俺は即座に振り向き窓から身を投げ出した。

見る見るうちに近づく地面、だが。

その間ずっと俺の横にいる咲世子。

どうやら俺が飛び出したとはぼ同時に彼女も飛び出したようだ。

何時の間に!?

さらに注目する点は彼女の手には荒縄が。

だが次の瞬間には彼女の手からそれは消え俺の体を這っていた。

そして二階から地面に着地するまでの間に俺は完全に縛れてって、おい!

な、なんだこの縛り方は!




「亀甲縛りです」




そういうことを聞いているのではない!

何故こんな縛り方を…。

それに空中に吊るされていては息が苦しい―。




「お話は後で。次はアーサーを捕まえますから」




上手い具合にクラブハウスの近くにあった木に吊るされ蓑虫状態の俺を置いてアーサーの後を追いかけて行ってしまう。




「あ、おい咲世子! せめて縄を解いて―」




だが俺の声は風に流され、いや風になってしまった咲世子には届かなかった。

今の俺に出来るのは咲世子が帰ってくるまで誰にも見られないことを祈るだけだ。









 side アーサー






今俺の目の前に一匹の蓑虫が爆誕した。

絶景かな絶景かな。

十数メートル先で揺れているルルーシュを眺めながら悦に入る。

しかもあの縛り方。




「亀甲縛りです」




そうその亀甲縛りがなんとも。

さぞ屈辱的だろう。

カメラでも持って来ようか、嬉々として取りに行こうとして。




「お話は後で。次はアーサーを捕まえますから」




足が止まってしまった。

はて今何か不穏な事を言われたような。

嘘だよね、そう咲世子さんに視線を向けるが。

視線の先には鬼がいた。

な、何をそんなに怒ってらっしゃるのですか咲世子さん。

いやぁぁぁぁあああああああ!!




「あ、おい咲世子! せめて縄を解いて―」




ルルーシュの声を皮切りに走り出す俺と咲世子さん。

壮絶な鬼ごっこが今始まった。







それからはもう凄い追いかけっこになった。

それを語ったらきっと原稿用紙3枚分にはなるかもしれない。

だが面倒だから多くは語らないでおこう。







二階の窓に逃げ込んだ時は凄かった。

何時までも追尾機能を持ったミサイルのように追跡してくる咲世子さん。

必死になって逃げる俺は丁度校舎の二階の窓が開いているのを発見。

勢いよく助走をつけてジャンプ。

壁を二度三度蹴り何とか到達し校舎内に進入することが出来た。

逃げ延びる事が出来た、その時ばかりはそう思えた。

安心して息を吐く俺、だが。



 シュタッ!



背後で何かが着地する音。

振り向くと其処には咲世子さんが。

もしかして二階の高さまで跳躍しました?

その俺の視線に気付いたのかニコッと微笑む。




(こわっ!)




逃げました。

当たり前です。あの笑顔は笑っているけど笑っていない笑顔なんですから。











何回も隠れた。

けれどもすぐに見つかる。

曲がり角に身を潜めれも一直線に向かって来た。

プールの中に潜っても同じく潜水で向かってくる。

木の上に逃げて息を潜めていた時も、



 カッ!



クナイが鼻先三センチのところを通り過ぎて木の幹に刺さりました。

次は当てますよって眼の咲世子さんがとても印象的です。

なんなんだこの気配まで読んで超人的な身体能力を有するハイパーメイドは!

その時だ。逃げている理由が『ちょっと怖いから逃げている』から『命の危険を感じるから逃げている』となったのは。















学園内だけでは逃げ切れない。

そう判断した俺は学園外まで逃げてきた。

……。

どうやら逃げ延びる事ができたようだ。

周囲に咲世子さんの気配は無い。

安心して深い深いため息が漏れる。

帰った時が怖くもあるが。

その時は仕方が無い諦めよう。

ただ時間をおいて咲世子さんの怒りが静まるかもしれない。

時間を潰すために通りの向こうにある公園で昼寝をする事にする。

公園の入り口には子供がキャッチボールをしていた。

なんとも微笑ましい。

いやな事を忘れさせてくれる光景に頬が緩む。

その時ボールを取り損ねてしまう男の子。

ボールはそのまま公園の外へ転がり出てしまう。

そのボールを追いかる子供。

そして車。




(危ない!)




その時俺は咄嗟に子供を助けようと道路に飛び出していた。

所詮この体は猫だ。きっと突き飛ばしたとしても助からない可能性のほうが大きいだろう。

だが何もせずにいるなんて出来なかった。

正義感なんて別に持っていない。

何時もだったらきっと見ているだけだっただろう。

きっとこの世界に来たせいで変な行動力がついたのだ。

間違いない。

だってほら子供に体当たりして歩道に戻そうとしてもそれほどの距離は稼げなかった。

このままじゃ二人ともペシャンコだ。

こんな無駄な事以前だったら絶対にしない。

自分第一で満足できる事をするのが信条なんだから。

目前まで迫った車。

覚悟を決めて目を閉じその時を待つ。

だが次の瞬間俺が感じたのは衝撃ではなく温もりだった。




(?)




疑問に思って目を開ける。

目の前には傷一つ無い子供の顔。

何が起こったのか解らないらしくポカンとしている。

俺も何が起こったのかわからない。

と、その時「ふう」と漏れたため息が額にかかった。

俺は顔を上げる。




「大丈夫ですか?」




そこには安心した咲世子さんの顔があった。













「今日は本当に大変な一日でしたね」




俺の隣に立つ咲世子さんはいつもの冷静な表情でそう言った。

だがその顔が微笑んでいるように見えるのは気のせいではないはず。

助けた少年が手を振って母親と去っていく姿を見送る。

なんだか誇らしく思える。




「折角のナナリー様にお出しするお茶菓子を台無しにされて」




……忘れていた。

俺は咲世子さんから逃げている途中だったんだ。

恐る恐ると咲世子さんを見上げる。

そこには呆れた表情を張り付かせた彼女がいた。




「そのあとも学園内での追いかけっこが街中にまで発展」




はあ、とため息を一つ。

今の俺の内心ビクビクです。

最初からあんなに怒っていたのだ、今捕まったらどんなお仕置きが待っていることか。

全身の毛が逆立っているのがわかる。




「でも」




しかし彼女の雰囲気がいきなり軟化した。

どうして?そう思い彼女の顔を驚きの表情でみる。




「そのおかげであの子供の命が救われました。それに免じて今回のお説教は特別に無しにします」




そう言った彼女は男の子の背が見えなくなるまで去っていった方向を見続けた。




「さて帰りましょう」




彼等の姿が見えなくなって踵を返して歩き出す咲世子さん。

俺もそれに倣い歩き出す。




「ついでに買出しもしていきましょうか」




付き合いますよ咲世子さん。























……あれ? 何か忘れているような?

















「おいC.C.頼むから俺を助けろ! 何? 写真を撮って良いか、だと? ダメに決まっているだろう!
 なにシャーリーに見せる? やめろ! それは公式でやったとしても危ないネタに……。会長? もっとやめろ!」










あとがき

咲世子さんで遊んでみた。意外に動かし易いキャラでびっくり。

これは作者的に咲世子さんフラグがたった!


それと途中グダグダになった気もするけどそんなの関係ない!



さてこの次の予定はっと……そろそろキャラも固定してきたし過去に戻ってみますか。

いわゆる扱いづらい憑依直後っていう……え? 必要ない?

それよりも萌をよこせ? ネリ様だせ? C.C.をもっと?

……イエス・マイ・ロード。(でも書いておこう過去話)



[4685] 第9.9話 寝る前にコレを読んでいい夢は……見れなくなるかも?
Name: 量産化の☆◆30ba27f3 ID:8da1c8cf
Date: 2008/12/06 22:11









   ~台風前夜(ドキドキしますよね普通)~















 side ルルーシュ







昼を告げる合図を聞いたのは数分前。

今は生徒会室で思い思いの過ごし方をしている。




「あら? そういえばアーサーは?」




会長が室内を見るが猫の姿など何処にもない。

異常に静かだと思ったのはこの所為か。




「アーサーなら今朝登校するとき一緒に出ましたけど」


「ふーん…でも今日は見ていないわね」




確かにいつもならみんなの仕事を横から見ているかシャーリーの膝の上でうたた寝をしているか。

またはカレンの頭の上を狙っている時間帯であるが。

その姿は何処を見ても見えない。

他の皆もアーサーの行方は知らないらしく首を振っている。

どうやら今日は一緒にクラブハウスを出たが学園にはきていないらしい。




「きっと学園外にいっているんでしょう。あいつも一応猫ですから」




あれでも一応が猫だ、きっと好奇心は大きいはず。

会長にそう告げる。




「でも事故にあって……るわけないか、アーサーだもんね」


「大丈夫ですよ、今までだって何度か抜け出してるみたいですし」


「そうそう、なんたって俺に……勝った……おれに……ね」


「ああ!? リヴァルが沈み始めた!」




自分で自分の墓を掘ったか……。

アーサーの賢さを語ろうとして以前負けたことを思い出して勝手に落ち込むリヴァル。

そのリヴァルを励まそうとスザクたちがあれこれと言葉をかけている。

それを横目に見ながら、




「はぁ……まぁ今日ぐらいは静かでいいかな」




いつも振り回されている猫のことを思いながら書類に目を落とす。

さてこの平穏は何時まで続くのだろうか。













 side コーネリア







「殿下、失礼します」




扉がノックされる。

私は入室を許可しダールトンを部屋へと招きいれた。

ダールトンは手に書類を持っていた。

恐らくは黒の騎士団関係……いやもしかしたら日本解放戦線の取り逃がした片瀬という奴に関しての物か。




「なんだダールトン」


「はっ! これを見ていただきたいのです……が」


「ん? どうした?」




ダールトンの声が尻すぼみになっていく。

どうしたのかと書類から目を離し彼の顔を見るとその視線は私から外れていた。

ふう、とため息をつく。

普段なら話の途中で他所を向くなど失礼極まりない事だが今回だけは目を瞑るしかない。

なぜならこの部屋には私とダールトンの他にも珍しい客がいるのだから。




「この猫は……」


「いい、放っておけ」


「しかし」




ダールトンの視線の先、部屋の隅で蹲って―おそらくうたた寝をしていたであろう―黒猫が起き上がって挨拶をする。

その黒猫は以前にもこの部屋にきた事のある奴だった。

そのことに気付いたのだろう不服そうではあるだろう私の言葉にはっきりとした言葉を返せていない。




「別段悪さをするわけでもない」


「はぁ…」


「それに迷ったわけではないようだ」




なあ、と私が見ると一鳴きして返事をする猫。

まるで肯定の意を示しているようだ。

その様子に戸惑っている様子のダールトン。

だが私は更に言葉を続けた。




「部屋に入るときもノックをしていた」


「猫が……ですか?」


「不思議なものだろう。だが礼儀を弁えているゆえ、客人として扱う」




このような話、普通なら信じないだろう。

だが私がこのようなことで冗談を言わないのはダールトン自身よく知っていることだ。

だからただ沈黙だけを返してくれている。




「おかしいと思うかダールトン?」


「いえ、姫様がそうおっしゃるのなら」




そういって私に持ってきた書類に関しての報告を始める。

その横では件の猫が興味ありげに聞き耳を立てているのが見えた。















立ち上がり傍まで寄って屈みこみ頭をなでる私。

そしてただされるがままに、そして気持ち良さそうになでられる猫。

本当によく解らないやつだ。

こんなところまで二度もやってきて大人しくしているなんて。




「さて政務も終わった。…お前の用事はなんだろうな?」


「にゃあ」


「ここでは落ち着かないだろう。ついて来い」




それだけ言うと部屋の外まで促す。

猫はただ大人しく私の言葉に従いあとをついてきている。

その姿を確認すると目的地に向かって足を進める。

だが、




「……もう少し早く歩けるか?」




やはり猫だなと思わせる行動。

政庁の中がそれほどに珍しいのかあちこちを見ていてついてくるスピードが遅い。

少し笑いが漏れてしまう。

そんな私の様子に気付いたのか少し横を見てしまう。

照れ隠しだろうか。




「やれやれ……」


「にゃ?」




傍によると首を傾げている。

気にせずにしゃがみ込み。




「にゃにゃ!?」


「嫌かもしれないがすぐにつく」




抱きかかえる。

だがやはり大人しくしている。

それどころか気持ち良さそうな顔をしてされるがまま。

その様子にまた笑みが漏れてしまう。


















庭園に着くと先客がいた。

私が言うのもなんだがピンクの髪を風が撫でていってとても美しく見える。

その人物に声を掛ける。




「ユフィ、お前も来ていたのか」




私の声に反応し振り向くユフィ。

彼女は私の顔を確認すると笑顔を見せてくれた。




「あっ! お姉さま……あら?」


「どうした? ユフィ」




どうしたのだろうか、私の腕の中にいる猫を見ると少し驚いた顔をしている。

ふと腕の中の猫と見るとこちらはニコニコ笑っている。

と、そこでユフィが口を開いた。




「なんでアーサーがこんな所にいるのですか?」


「アーサー?」


「はい」




出てきたのは名前らしきものと何故此処にいるかという問い。

私にはアーサーという名前に聞き覚えはない。

するとやはり、




「そうか、アーサーというのかお前は」


「にゃあ」




腕の中にいる『アーサー』に問いかける。

私の言葉に肯定しているのだろうか、答えてくれた。

その様子に和みアーサーの頭をなでてやる。

とても気持ち良さそうだ。




「でも何故こんな所に」


「もしかしたらユフィに会いに来たのかもしれないな」




アーサーを地面に降ろしてやるとすぐにユフィの下に駆け寄っていく。

私もユフィのすぐ傍に腰を下ろす。

それからは他愛ない事ばかりを話していた。

昨日あった事。

今日あった事。

明日はどうなるかなど。

そのあいだずっとアーサーは私達の会話を聞いていた。

時々ユフィが「そう思わない」など同意を求めるとその都度鳴き声をあげている。

なかなか聞き上手な男だ。

人間なら好感が持てていたかもしれないな。




「ねえお姉さま」


「なんだユフィ」




声を掛けてきたユフィに向きかえる。

だが其処にはいつもの明るい彼女の顔は無く、少し寂しそうな表情があった。

私は黙って続きを待った。




「もしルルーシュたちが生きていたら……」




彼女の口から出た名前はとても懐かしくそして悲しいものだった。

ルルーシュとナナリー、このエリア11がまだ日本と呼ばれていた頃に預けられてしまった皇子と皇女。

そして私の憧れだった、今も憧れているマリアンヌ様の遺児だった子供。

クロヴィスと同じくこの地に眠っている二人。




「もしもあの事件がなかったら今こうして私達と同じように笑いあえていたでしょうか」




それはもしもの話。

意味の無い仮定の話だが私も考えてしまう。

もしもあの子達がいたら……今どういう風に過ごしていただろうか、と。




「そうだな……ありえたかも、な」



ありえたかもしれない今に想いを馳せる。

ふと気がつくとアーサーが私の手に手を置いていた。

私のことを気にしているような表情だ。

その頭をなでてやると素直に受け入れて気持ち良さそうな泣き声を上げた。














 side アーサー





政庁の庭園で殿下とユフィとと戯れたのは一時間ほどだけ。

そのあとダールトン将軍がやってきて二人と検討したい事があると呼びに来たのだ。

いきなりのアポなし謁見であったのにも拘らず会えたのだから不満はない、が。

コーネリア殿下は猫だと思った。属性的に。

こう、普段は気高い態度で接しているけど例外的に気を許した相手には優しいと言う。

だって帰ろうとした時「送っていくものを呼ぼうか」とか「お前に何かあるとユフィが悲しむ」とか。

ここまで人間扱いされたのはスザク以外にはありえなかった快挙だよ!

でも基本天然が入ってる人なんだよね、そういうのって。

殿下の優しい提案を丁寧に辞退して帰路についた俺を出迎えてくれたのは生徒会メンバーだった。

まあ生徒会室に帰ってきたのだから当たり前と言ったら当たり前なのだが。




「あ、おかえり~アーサー。夕方前に帰ってくるなんてエライエライ」




ミレイさんは喉を撫でて褒めてくれる。

子ども扱いは正直どうかとおもうけれども気持ちいいので素直にその行為を受ける。

自然喉がなってしまう。

ところでリヴァル君が黒い影を背負っていますが何かあったんですか?

視線をリヴァルにやり、問いかけるような視線を投げかける。

だが




「今日はアーサーがいなかったから静かだったわよ~。ルルーシュなんて寂しがってたんだから」


「なっ!? 変な事を捏造しないで下さい!」




そうですか無視ですか。

ああ、弱弱しく笑いかけてくるリヴァル君が御労しい。

それにしてもまた変な事を言う。

そんな事ルルーシュに限ってありえない……だが!




「……何を笑っている」




ここはあえて会長の言葉に乗っかりルルーシュを挑発する事を選ぶ。

ニヤニヤと笑顔を見せるとルルーシュは不満を隠さずにこちらに視線を向けてくる。

流石に手は出して来ないがそれでも悔しいのだろう。

そんな俺たちを見てシャーリーは呆れた風に諌めようとする。




「まったくも~ルルもアーサーももう少し仲良くしなさいよ」




いえいえこれでも仲はいいんですよ。

暇な時はチェスをするようにもなったし……毎回負けているが。

だからルルーシュとの仲は極めて良好なのである。

色々と腹の探りあいはしているけど。




「でも近いうちにもっと賑やかになるかもね?」


「え? どういうことミレイちゃん?」




ルルーシュと俺はにらみ合いに夢中でだったが何事かと会長のほうを向く。

会長は視線が集まったのを確認するとコホンと咳払いを一つ。

そして微かに笑みを浮かべて言ってくれた。




「転校生が来るのよ、中等部にだけど」




はて何故だろう……以前と同じように嫌な予感がひしひしとしてくるのは。

こう、『転校生』と『中等部』ってところから特に。




「本当はまだ秘密なんだけれどもね。お爺様が言うにはナイトオブラウンズってことらしいんだけど」




それを聞いた途端ルルーシュは信じられないと言う顔でミレイ会長を見る。

だけれども会長は「してやったり」といった顔で頷いているだけだ。

どうやらドッキリが成功したのが嬉しいらしい。




「!? ………っ!」




次に驚いた顔でこちらを見てくるルルーシュ。

だが驚いているのは此方も同じなので驚いた顔で返すしかない。

双方驚いた顔で見詰め合う。

ルルーシュも今回ばかりは俺が何かしたのではと解ると頭を抱えて考え始めた。

恐らくこれからのことに関して考えをめぐらせ始めたのだろう。

俺はというと、




(どうしたものか……やれやれだぜ)




学生帽を被ったどこかの不良の如くため息をつく。

最年少ラウンズとおまけで天然お母様がやってくる。

波乱の学園生活が……始まる?













あとがき

マオ編の間にあったユフィとネリ様の絡みにアーサーを加えてちょっと改変してみた。

まあアーサー視点はなかったけれどw



最近萌えというものが解らなくなってきた。

どうしたら萌えてもらえるのか、こうしたら?

でもこれだとなんか変だし、といった感じで。

軽くスランプにも陥っているし……とりあえず四聖剣とラクシャータさん書きたくなってきたから少しずつ時計の針を進めていきますわ。

しかし日常ネタが無くなりつつある……。

何かいいネタありますかね?(本筋の流れはしっかり浮かんでいるんですけど)



[4685] 第十話 今回は割りとすぐに書けたんだZE!
Name: 量産化の☆◆30ba27f3 ID:8da1c8cf
Date: 2008/12/09 18:52






 side アーニャ




今私はとある場所に来ている。

そこは今にも爆発しそうな雰囲気に包まれていた。

言っておくが戦場ではない。

戦場ではないが異様なものがあるけど。



「それでは只今からナイトオブシックス歓迎会を始めまーす!!」



そう、ここはエリア11に存在するアッシュフォード学園であり、その放送室だ。

マイクを手に持った人物―アッシュフォード学園会長ミレイ・アッシュフォードが高々に宣言すると外の雰囲気はますます加熱していっている。

私のいる放送室の外からは今か今かと始まりを待っているのが解る。



「では始まりの合図を勿論この人に行ってもらいます~!」



マイクが私の前に差し出された。

やはり言わなければいけないのだろうか。

差し出したミレイ会長をみる。

ニコニコした顔で頷いて促してくる。

彼女の足元にはこれまた目を輝かせている黒猫が。

どうやら期待しているようだ。



「……にゃ~」



私の一声で地面を揺るがすほどの雄たけびがあがった。

……これが普通の学校なのかな?

今一自分の感覚に自信が持てなくなってしまう。

それはともかく私の判断は間違っていないだろうか。

此処に至るまでのことを黒猫を写真に写しながら自分自身に問いかけた。














第十話 ~ラウンズ、学園へ そしてお祭り開始~















ナリタ連山で黒の騎士団に敗北してしまってから数日後。

私は軍の再編成が済むまでのゆったりとした時間―それでも色々とする事はあったが―を過ごしていた。

だがそれも副総督に呼び出された事によって終わりを告げてしまう。

何かしらの軍務を言い渡されるのか、そう思って出頭したのだが待っていたのは彼女曰く『お話』であり『お願い』であった。



「アールストレイム卿、学校に行ってみませんか?」



開口一番にいわれた言葉がこれだった。

私の歳では学校に通っているのが普通だ、とか。

私の知り合いの手助けをして欲しい、とか。

色々と話をしてくれた。

興味は……ある。

私はこの歳で既に軍に入りラウンズの地位に就いている。

それと引き換えに一般的な日常を犠牲にしてきたのは言うまでもない。

だから普通の学校と言うものに通ってみたい。

そして記録をしていきたい。私に欠けているもののために。

ただ軍務に支障が出るだろうし皇帝の騎士である私が命令なく勝手な行為をするのは

その場は謹んで辞退した。

だけど更に数日後。



「これは……なに?」



私の手元にある書類が廻されてきた。

始めは軍関係のものだと思っていたが目を通して数秒後。

私は硬直した。

その内容とは、


 ―アッシュフォード学園の入学に関して。


だった。

書類の上から下まで熟読した。

間違いない先ほどと同じ内容の文章が踊っている。

今度は裏返してみる。

裏は真っ白な普通の紙だ。

何も書かれてはいない。

もしかして焙り出しかとも思った。

だがこれが正規の書類であった場合燃やしてしまうのは何かと都合が悪い。

残念ながら焙り出しは実行できない。

ではなんなのだろうかこの書類は。

もしかしてユーフェミア副総督が行われたものだろうか。

ありえなくもない。彼女は私に勧めてきた張本人なのだから。

すぐに会いに行った。思い立ったが吉日、である。

丁度タイミングがよくて会うことが出来た、が。



「あら、アッシュフォード学園に行ってくださるの?」



書類を見せた途端輝いた笑顔が返ってきてしまった。

これはきっと何も知らない顔だ。

恐らく私が学園に通う事を純粋に喜んでくれているのだろう。

これで副総督の線は消えてしまった。

……では総督?

可能性は低いがありえなくもない。

総督が副総督に甘いと言うのは彼女達が接している所を見ていれば解るものだ。

彼女ならば妹の頼みを聞いてしまう可能性も。



(ありえなくは、ない)



私は早速総督に会いに行った。

だがここでも予想外の事実が待っていたのだ。



「そうかもう書類が届いたのか」



……あれ? 何故か既にこのことを知っていらっしゃる様子。

疑問に思い何時その事を知ったのかと問いかけると。



「何を言っているのだアールストレイム卿。先日、卿が私に許可を求めてきたのだろう」



先日? ここ最近で総督に謁見した覚えはない。

覚えはない……が!

記憶がなかった時間帯が多々あった気が……する。

もしかしてその間に私は何かをしたのだろうか。



「しかし驚いたぞ、まさか父上の、皇帝の許可まで取っていたのだからな」



皇帝の許可まで出ている?

まさかこのような事で皇帝がお許しになったのか?

これはどういうことなのだろうか。

私は混乱している頭で本国にいる皇帝に通信をつないだ。



「なに用だ、ナイトオブシックスよ」

「皇帝陛下、実は―」



今に至るまでの出来事を全て包み隠さずに報告した。

これで今回の話にも決着がつくはず。



「構わん。許可するぞナイトオブシックス、アッシュフォード学園に通え」

「……ぇ?」

「軍関係を優先すれば問題ない、解ったな」

「…イエス・ユア・マジェスティ」



考える素振りも見せずに即答が返ってきた。

まるで始めから決まっていた事のように。

モニターが消える直前「マリアンヌには逆らえん」と小声が聞こえた気がするけれどもマリアンヌって誰?

一番に思い浮かぶのは有名な『閃光のマリアンヌ』だけど……ここでは意味が繋がらない。

よく解らない事ばかりだ。

だがそんな中、たった一つ確かな事は。



「アッシュフォードに通う」



これは確実。

外堀は完全に埋められている。

しかも行かなければならない日はすぐ其処まで迫っているのだ。

更に言えば行かなければ皇帝の命に逆らう事になる。



「……まあ、いいかな」



普通の学園生活と言うのも悪くはないだろう。

それに軍関係で殺伐とした『記憶』ばかりでは寂しいものがある。

今は敢えてこの状況に流されよう。

聞けば何かと面白い学園らしい。

そうして私は自己完結し学園に通う準備を開始した。














そういう訳で今私は此処にいる。

しかし出迎えと共に放送室に引っ張り込みお祭りになるのは予想外だった。



「よっし、お祭りも始まった事だし、じゃあまず自己紹介からしますか」



そうだ私は目の前にいる人たちの名前すらまだ知らない。

私が彼等のほうを向くと一様に笑顔でこちらを見ていた。

そしてミレイ会長が一歩前にでて。



「じゃあ一度やっているけどまず私からね。私はミレイ・アッシュフォード。この学園の生徒会の会長をやってるわ」



手を前に出し握手を求めてきた。

私はその手をとり、



「アーニャ・アールストレイム。よろしく」

「ええ、よろしくね」



握手をしながら自己紹介した。

それから他のメンバーの自己紹介が続き最後にある人物の番になった。

その人物は酷く緊張しているようであった。



「じ、自分は枢木スザクであります!」



なんとまあ固い自己紹介だろうか。

しかし彼の事なら少なからず知っている。

ユーフェミア副総督に頼まれている人物だ。



「スーザークー、なーに畏まっているのよ」

「だってミレイ会長」



どうやら副総督の話していたとおり生真面目な正確のようだ。

だがそれも好感の持てる人物といえる。



「貴方の言い分もわかるわ。でもここは学園よ、だから軍属とかそういうのは一切なし!
 二人は唯の先輩後輩よ」



わかった? とスザクに言い聞かせている。

しかし未だ戸惑っている。



「え、でも」

「私は構わない」



私はそういう細かい事は気にしない。

手を差し出しながら彼に言う。

すると彼も観念した様子でその手をとり、



「う、うん。じゃあ改めて僕は枢木スザク。よろしくアーニャ」

「よろしく」



まだ多少思うところがあるのだろう。

少し硬さが残っている。

だがそれもそのうち取れるレベルだ。

こうして部屋の中に居るメンバーとはお互いに自己紹介が出来た。

その時会長が言った。



「さてと、あとはあの二人だけね」



何処ほっつき歩いてるのかしら、とぼやく会長。

その時放送室の扉がゆっくりと開かれた。

そちらを向くと其処には車椅子に座っている私と同じ年頃の少女と男子生徒がいた。

二人が部屋に入ってくる。



「すみません会長、遅れま「おっそーい!」だから謝っているじゃないですか」



開口一番に怒られてしまいバツが悪そうにしている。

しかしミレイ会長も本気で怒っているわけではないのでそれ以上は何も言わないで此方を向いて私を手招きして呼び寄せた。

そして私の肩に手を置きズイッと彼等の前に押し出した。



「まあいいわ。私達はもう自己紹介しちゃったからルルーシュとナナリーも、ほら」



会長が言うとルルーシュと呼ばれた男子生徒が手を差し出してきた。



「ルルーシュ・ランペルージだ。ルルーシュで構わない」

「ナナリー・ランペルージです」

「アーニャ・アールストレイム。アーニャでいい」



私も彼の手を握りそれ応える。












 side アーサー




新発見、アーニャの猫の鳴きまねには凄く萌え力があった。

と、馬鹿なことを思っている馬鹿な俺。

先ほどの鳴きまねが頭の中でリフレイン!

直前の事だから綺麗なままで脳内再生(リピート機能ON)され続けています。

可愛い娘の可愛い仕草はそれだけで麻薬です。

人を狂わせるに値すると言う事がよく解った。

そうして俺が悶えに悶えている間にドンドン進む自己紹介。

と、ナナリーたちが部屋に入ってきた。

そしてルルーシュとアーニャが手を取り合い握手。

アーニャは実に普通だがルルーシュの心中は傍目からは予測できない。

大荒れなのか、それとも冷静にこれからどうするかを考えているのか。

笑顔に隠された真意が見えない。

と、そこで気がつく。

自分がまだ自己紹介をしていない事を。

俺はスススとミレイさんの足元まできてポンと片手で靴を叩き合図をする。

すぐさま気付いてくれるミレイさん。



「おっと忘れてないから大丈夫よ」



そして俺を抱き上げてアーニャに近づく。

別に抱き上げてもらう必要は無かったが大人しく従う。

アーニャの眼前に持っていかれ。



「そしてとりを務めるのがこの子、我が生徒会のメンバー」


 ―基本的な任務は雑用、書類の不備が無いかの確認。

 ―猫にして人間に負けない知能を有するスーパー君。


「名前はアーサー! ほら挨拶、挨拶」

「にゃ!」

「……よろしく」



敬礼をする俺の姿をパシャッと写真を撮りながら挨拶を返してくれるアーニャ。

しかしフラッシュをたかれて目がくらんでしまった。

閃光を直視してしまってさっきと違った意味で悶えている俺。

そんな俺を優しく降ろしてくれるミレイさん。

いまだ光にやられた目を擦っていると頭の上から声が。



「じゃあアーニャは学園内を散策しましょうか。で、案内役だけど」



パンと手を叩きみんなの視線を集めた。

やっとこさ光のダメージが和らいだ視界で彼女を見上げる。

すると彼女は、



「ルルーシュとアーサー、よろしくね」

「なっ!?」

「あれ、どうしたのルルーシュ?」



と言った。

俺は頭をあげ彼女の目を見る。

彼女もまた俺を見ている。

……。

暫く見続けた俺はやおら右手を上げ。


 ビシィッ!!


見事な敬礼を披露する。

先ほどアーニャにしたのとは段違いの美しさだ。

その敬礼に対して「よろしい」と頷いてくれる会長。

やはりノリのよさは天下一品だ。

そんなやり取りをしている俺達の横から反対意見が。

勿論ルルーシュだ。



「会長、別に案内役が必要というのは解りますがなんで俺とアーサーなんですか。別に他の人でも」



なにやらメンバーに不満があるようだ。

失礼な、と思う。

俺だって時と場を弁えて弄くります。

そして今はお祭り時だから……凄い事になりそうである。



「シャーリーは水泳部のほうにも顔を出さなきゃ駄目だし私は私で忙しい。
 リヴァルにはやってもらう事があるし病弱なカレンに頼むのはどうかなと思うわよ」



これからどうしようかと、どうしてくれようかと色々と思案している俺の横でルルーシュを丸め込もうとしてくれているミレイさん。

頑張れ、ミレイさん!

俺のエールの篭った視線を浴びてさらに追撃を開始する。



「ニーナにはナナリーの事を任せちゃうしスザクは警備のほうを頼むしね。さて残りの人で手が空いている人は?」



ほら、ルルーシュしかいない。

そう結論を出してしまうミレイさん。



「俺も一応見回りが―」

「それはついででいいから」

「……はぁ、解りました」



最後の抵抗もむなしく屈服してしまう。

めでたくアーニャの案内役に任命された。



「では生徒会副会長ルルーシュ・ランペルージと裏の副会長アーサーには新生徒会役員アーニャ・アームストレイムの案内を命じます!」



謹んでお受けします、マイ・ロード。

さて何処から見て回ろうか、カレンに床においてもらった地図で行き先を決める。



「っていつのまにアーサーが裏の副会長になったんですか」



それにはカレンと同じく俺も吃驚してます。

でもあの会長ですし。

そう思いながらどういう順序でまわろうか決定したのであった。














あとがき

ママさんがなにやら動いてくれたらしいです、という今回の話。

裏で動くキャラがここにも!?

まあそのうちママさんには退場してもらおうかな、なんて。

最近ルル×アニャもありかなと思い始めたのだが……ありかな?



お祭りはさらっと終わらせるつもり。

たぶん一話のみ、ルル視点かアーサー視点で行こうかなと。



[4685] 第十一話
Name: 量産化の☆◆30ba27f3 ID:8da1c8cf
Date: 2008/12/18 23:38
















 side ルルーシュ






会長に今回の主役の案内を任されてしまった。

今は賑わいを見せる校内を歩いているわけだが。

やはりあの生徒会長にしてこの学園あり。

生徒自体もお祭り好きなんだろう、今この一瞬を全力で楽しんでいる。

ただそんな楽しんでいる人たちの中にも、



「さて何処から回るかが問題だが」



困っている奴はいるわけだが。

手に持っていた案内図をめくりながら考える。

やはりこの学園は異常だと。

今、横で写真を撮っている彼女が来ると判ったのがおおよそ一週間ほど前らしい。

それなのに案内図に踊る出店やイベントの数々、どこに行こうか迷ってしまうほどある。

時々思う、黒の騎士団をこれほどの行動力と団結力のある組織にしたい、と。

そんなことを思いながら横にいる少女に話しかける。



「アーニャ、君はどこか見たいところはあるか」

「……任せる」



任されてしまった。

だが困った。一見モテそうで(実際そうだが)女性の扱いに慣れているように見える俺だが実際そのような事実はない。

これまでナナリーの世話ばかり焼いていたので逆に女性との接点など少ないほうだ。

女性との接点など挙げるとしても生徒会メンバーで会長、シャーリー、ニーナ、カレン……。

それ以外だと咲世子にC.C.。

C.C.は女として数えるには慎みがない気が……まあいいか。

たったこれだけだ。これだけの経験値で女性の喜びそうな判るはずがない。

今だって必死に彼女たちから得たデータからこの物静かな少女の気に入りそうなところを探しているところだ。

だがふと思う。



(いや待てよ)



ここで下手に深入りするのは危険か?

彼女は幼い外見とは裏腹に皇帝最強の騎士の第六席に座る身。

万が一のことを考えて。

いや考えすぎか、逆にここで変に距離をとって接して下手に疑念を持たせるほうが危険だ。

ならばやはり上手くエスコートしなおかつあまり関心をもたれない程度の距離をとる。

普通に接すれば何のことはない『生徒会の仲間』レベルに収まる、か。

だとするとどこから案内するべきか?

シャーリーたちの普段している話からやはり甘味処か?

女性は総じて甘いところが好きだから。

いや今の時間から甘味どころはまずいか。

下手をしたら昼に何も入らなくなる。

ならば展示とか部活単位の出し物を見に行くか?

だが彼女の趣向が問題だ。

ここは例として身近な女性の楽しみそうなところから候補を割り出すとするか。

ニーナだと……物理関係の出し物だと関心を惹きそうだが彼女は特殊だから除外。

会長は……面白いアトラクション系だろう。これは候補として入れられる。

シャーリーも会長と同系、少し穏やかなのがいいだろう。

カレンは……猫を被っていない状態を考えて体を動かせるアトラクション系だろうな。

咲世子は……わからない。

C.C.……ピザ。

ふむ身近にいる女性だとこんな感じか。

ここで彼女の楽しめそうなところの候補は……20弱。

どれを選択しどのように回るか……700以上のルートが。

この内さらに彼女に合いそうなものを選ぶとして。

……いや元々の目的は学園案内だ。

それを考慮するとなると一番良いルートはもう少し複雑になるか。

だが……く、女性のエスコートがこれほどまでに難しいものだとは!(だが困ったからここまで約四秒)



「……仕方が無い。とりあえず教室の位置関係から見ていくとする…ん?」



結局結論は出ず。

学園内の地理を説明しようと足を踏み出し。

ふと足を引っ張る何かに気づく。

下を向くとそこにはもちろん、



「なんだその『俺に任せろ』と言いたげな目は」



目をキラキラさせている性悪猫の姿が。

そしてしきりにどこかへと案内するようなしぐさを見せる。

これで行動の意味はすぐにわかった。



「お前の案内だと嫌な予感しかしないが、別段目的地があるわけでもない」



大方自分の行きたい所に行き、思いっきり楽しむに違いない。

それに加えて俺をおちょくり更なる愉悦を狙っている、断言できる。



(だが待てよ?)



これは渡りに船かもしれない。

こいつの異常性は火を見るより明らかだ。

そのことを印象付ければ自ずと俺の印象は薄れるはず。

上手くすればリヴァルレベルに「良いお友達」程度に納まるかも知れない。

結論、アーサーに目で「好きにしても構わない」と合図を送る。

合図を受け取ると輝いていた目が三割り増しに輝き歩を進め始めた。



「あれでいいの?」

「あれでも結構頭はいいからな」



許しを得て前方を意気揚々と歩く黒猫に送られた言葉。

その言葉に対して「大丈夫だろう」と答えた。

一応あれでも常識はあるはず。

俺をおちょくるときはそのタガが外れやすくなる傾向があるが。












第十一話 ~お祭り(ルルーシュ×アーニャ風味)~












 side アーサー




ズンズン進んでいった結果、俺たちはとある教室の前まで来た。

その教室は中が見えないように窓には黒いカーテンがされ、さらには入り口のおどろおどろしい看板が。

そして時折聞こえてくる悲鳴。

出口と書かれている扉からは仲睦まじく腕を絡めた男女の姿が。

そう何を隠そうここは!



「それで、ココがお前の来たかった所か?」

「ホラーハウス」



アーニャの言うとおりホラーハウス。

日本語でお化け屋敷というアトラクション。

ここでルルーシュの「ホワァッ!?」という情けない声やアーニャの「きゃぁぁ」という声が聞ければ!

そういう心算で来たのだが。

何故かルルーシュが警戒している。

これはどういうことか?

俺は純粋に。そう! 純粋にお祭りを楽しもうとここに来たのに。

それなのにこの男は異常なまでに警戒して俺をにらみつけてくる。

しきりに入ろうと鳴き声をあげても後ろから足を体全体で押しても動こうとしない。

ただただ俺を不信な目で見ているだけだ。



「どういう魂胆か見え見えだが…ってアーニャ!?」

「はやく」



その横を通り抜け扉をくぐるアーニャ。

そしてルルーシュを促す。

渋々と歩き出すルルーシュを見ながらその結果を導き出した女神(幼)に敬礼して後についていていく。



















「そんなに怖くない」



そんなご無体な。

ホラーハウスに入って暫くして漏らされた感想がこれだ。

確かにお化けの衣装とかも失礼かもしれないが怖くないと言える。

それに無駄に音でビビらせようとあちこちに配置されたスピーカーもいただけない。

怖がらせるというよりも吃驚させようとしているのがみえみえだ。



「それは仕方ない、このお祭り自体いきなりで仕込む時間が異常に少なかったからな。
 準備期間から考えてもこれでも頑張っている方だと思うぞ」



ルルーシュがフォローを入れる。

確かに準備期間が少なかったことを考えるとこれでも頑張っている方かもしれない。

でも全然怖くないのはホラーハウスとしてどうかと思う。

それに怖くない要因はまだある。

その要因とは、



「ルルーシュ、アレは?」

「井戸? ということはアレだな。『お菊の幽霊』、その昔お菊と言う―」



『物知りルルーシュの知恵袋』という代物。

それが出てくる妖怪、怪異の解説を懇切丁寧に説明してくれるからだ。

それはもう妖怪図鑑といってもいいくらいに。



「ルルーシュは物知り」

「まあな、昔スザクからこのエリアの怪談話を聞かされたからな」



昔のことを思い出しているのだろう、顔がかすかに綻んでいる。

それにしてもここまで詳しいのは……調べたのだろうか。

幼き日のナナリーあたりに「もっとよく知りたいです」とでも言われて図書館で伝承の乗っている本を必死に探している姿が浮かぶ。

たぶんこの想像は間違っていないだろう、なにせルルーシュの顔が優しいものだから。

この表情は基本的にナナリー関係でしか見せないレアなものだから。



「スザクに? 幼馴染?」

「まあ、そうだな。小さい頃一緒で最近になって再会して「――メ?」なんだ?」

「それなんてラブコメ?」

「………どういう意味だ」



いい話だったはずがいきなり変な方向に脱線しようとしている。

わかる、この流れはあれに違いない。

よく言われた「ス○ッ腐」という物が頑張って作ったCDの流れに違いない。



「昔よく遊んだ幼馴染、けれどいつしか二人は別れそして成長していく。
 運命の悪戯か二人は再会、互いの成長に戸惑いながらも惹かれあい―」

「おい」

「惜しいのは二人が同性……実は―」

「実は女でした、とかそういう設定はないからな!」



婦女子、いや腐女子的な発言が飛び出してきた。

やはりというかなんというか。

きっと今は「スザクは俺、女だったんだ!」「ルルーシュ!? じゃあ僕たち!」的な映像が流れているに違いない。

不穏な思考に流されながらもルルーシュは全力で否定する。

暗闇でも判るほど顔色が悪い。

間違いなく想像したはずだ、ルル×スザク(逆も可)というものを。



「冗談、冗談」

「あのなアーニャ「ひゃっ!?」「み゛ゃっ!?」どうした」



ほぼ同時に声が上げる。

一方は驚きから。

もう一方は激痛から。

可愛い悲鳴を上げた少女は二歩ほど後ずさり。

彼女の足元にいた俺は激痛から逃れようと転がりまわる。

床を転げ回る俺に気付かずにアーニャを覗き込むルルーシュ。

痛みも少し引き、同じようにアーニャの顔を見上げる。涙目で。

すると彼女の顔の前方10cm位のところに何かが吊るされているのが見えた。



「………こんにゃく。ぬるぬるしてる」

「はぁまったく、大丈夫か? ほらハンカチ」



なんとまあ古典的な。

しかし痛い。

後ろ足だけで立ち上がり痛みを発している場所をさする俺。

そしてアーニャは顔のぬるぬる―きっとこんにゃくに塗られた何かだろう―を手で軽く拭いている。

明かりをつけたら15禁レベルの表現になるかもしれない。

そんなアーニャにルルーシュは近寄り、



「これで大丈夫だろう」

「ありがとう」



優しくぬるぬるに塗れている顔を拭いてあげていた。

その様子はまるで兄と妹、似てないけど。

それにしてもこの男、お兄ちゃん全開である。

拭い取った後は頭までなでて、お前ら敵だろと突っ込みを入れたくなった。

簡潔にお礼を言うアーニャに満足したのか表情を笑みで崩し先へと足を進める。



「に゛ゃ~~!!」

「ルルーシュこれは?」

「猫股だな。これの由来は―」



飛び出してきた女生徒(猫のコスプレ)に解説を開始する。

どうでもいいけど床に転がっている俺に気付いて欲しい。

さびしくて涙が出てきたのは言うまでもない。
















校内の構造を把握するために随分と歩き回った。

色々と教室の位置を把握したころになるとお腹も空腹を訴え始めた頃。

ちょうど出店のある中庭に面した出入り口に来ていた。



「そろそろ昼か、何か買って―」

「ルルーシュ、フェイバリット焼きは?」

「フェイバリット? ああ、もしかしてお好み焼きの事か」

「それ」



出店を写真に撮りながらの会話。

空腹を訴えるお腹に従い食事関係の出店がある中庭へと移動した俺たち。

辺りに漂うおいしそうな匂いに更に空腹が刺激されたのか、それとももともと楽しみだったのか。

すでに狙いどころは決まっているみたいだ。

アーニャの問いにルルーシュはある方向を指差し答える。



「だったらあっちの一画にこのエリアの屋台が」



アーニャはその言葉を聞いた瞬間に早歩きで行ってしまった。

彼女の背中をあっけにとられて見送ること十数秒後。

急いで追いかけた俺とルルーシュが追いついたときには、



「お好み焼き、焼きそば、たこ焼き、磯辺焼き……食べ切れるのか?」

「うん」

「……そうか」



ホクホク顔のアーニャ待っていた。

その手には出店で買った食べ物の山が。

呆れたけれどもその顔を見ていると癒されてしまう。

無表情に見えて微かに赤みがさした笑み、なんかいい。

それは中庭の一角に腰を下ろしてもっきゅもっきゅと口に運んでいるときも変わらない。

むしろもっと幸せオーラが発せられている気がする。

おすそ分けでもらったたこ焼きを食べながらそれを眺める。

そして数分後、



「ケプッ」



あら可愛らしい。

なんとも萌えれそうな擬音を発するアーニャに顔が緩む俺と彼女の戦果を見て呆れた視線を向けているルルーシュ。

確かにあの量の食事を平らげるのは脅威に値するが。

ルルーシュはやれやれといった感じで席を立とうとする。



「満足し「デザート」まだ食う気かっ!?」



だがそれよりも先に再び立ち上がり次の獲物(甘味)を探す狩人に驚きの声を上げてしまう。

かくいう俺も目を見開いて彼女を見てしまった。

それも仕方が無い、目の前の少女はついさっき明らかにこの体型の許容量を大きく上回る量を食べたはずだ。

それにもかかわらず「え? なんで?」と言いたげな顔でこちらを見ているのだ。

驚くのも無理も無い。

そして結局、チョコバナナと綿飴が彼女のエネルギー源となった。



「食後の運動ができる場所はある?」

「食べたすぐ後に動くつもりか?」

「当然」



言い切られた。

女の子は体型を気にする世界の理らしい。

















それからは過激なスケジュールとなった。

乗馬部の一日体験教室に始まり。

陸上部の短距離競争に二人で参加。

アーニャは規定タイム内に走りぬき景品をゲット。

景品を手に取り写真を撮られていた。

既に獲得した生徒の写真を貼ることにしているらしい。

その中に生徒会のメンバーの男子が写っていたとかいないとか。

そして、言わずもがなルルーシュはダントツのビリだった。

他にもルルーシュは色々な場所を引き回された。

まあそれを指示したのは主に俺だったのだが。

アーニャに興味の惹きそうな場所を率先して教えた。

彼女の行く場所にはもちろんルルーシュもついていくわけで。

彼の体力をガリガリ削る結果になった。

そして学園の屋上。

アーニャの食後の運動に付き合わされていろいろと学園内を探索した結果。

ルルーシュがへばった。

今は床にテディベア(手芸部作の景品)と共に座り込んでいる。

そんな相変わらずの体力の無さに感心しつつ、夕暮れ時となったのを機に屋上へとあがってきた。

そして今は目の前に咲き乱れている大輪の花を見ているところだ。



「花火」

「やることが派手だからなウチの学園は」



復活したルルーシュが横に並び答える。

学園のお祭りで花火をあげるくらいだしそのことには肯定せざるおえないだろう。

眼下には宴のラストを飾っている花火を見上げている人影がちらほら。

半分以上が二人組みでその他は仲間内で集っている。

とある一角など暑苦しいぐらいの筋肉系の人たちが……ラグビーかアメフト部の人たちだろう。

しかし何故か全員が涙を流している。

体育座りで今日の戦果を涙を流して仲間内で語っているのだろう。

だからその様子を撮らないであげてくださいアーニャさん。

居た堪れないから。



「失礼」



ルルーシュの携帯が鳴り一言断りを入れて少し距離を置く。

そして電話に出ているが、相手は。

内容から察するにおそらくはミレイさんだろう。

ルルーシュが「手なんか出してませんよ!」なんて言っていることからも間違いない。

あいつをからかうのは俺を含めて三人だけだし。

電話を終わらせてため息をついて戻ってくる。



「どうだ、学園内の構造は大体わかったか?」

「うん、それに楽しかった」

「そうか」



アーニャは今まで撮った写真を確認しながら答える。

その姿を妹を見るかのような視線で見ている……と思われるルルーシュ。

もしかしてナナリーを重ねてみていないか?

そんな疑問が頭をよぎる。



「またこんなお祭りはある?」

「会長の行動力が異常だからな。たぶんあるだろうな」



やれやれとルルーシュ。

おそらくは今までのイベントを思い出しているのだろう。

男女逆転祭りとか、色々あったのだろう。

そして段々と苦々しく……涙まで浮かべそうな雰囲気だ。



「その時は」

「ん?」



目頭を押さえていたルルーシュに声が。

横をを向くとルルーシュを見上げているアーニャ。



「また一緒に学園内を回ってくれる?」



控えめなお願い、いやお誘いか。

おそらく今日のことで味をしめたのかもしれない。

『ルルーシュの知恵袋』を。

本日ホラーハウスのみならず色々な場面で発揮されたのが効いているのだ。

歩く辞典ルルーシュはアーニャのお気に入り。

甘酸っぱい気持ちは……たぶんない。

そんな彼女のお気に入りは、



「ああ、その時暇だったらな」



快く了承。

そのまま佇む二人。

なんぞこの甘い雰囲気は。

散っては咲いてを繰り返す花火を背景に並んでいる。

その光景からはラブコメの匂いが仄かに。

そんなありえないものを夢想しながら此度のお祭りは幕を閉じていくのだった。

















その後、今日の行動をミレイさんにレポートで提出。

特にホラーハウス、屋上でのイベントは特に力を入れて詳細に報告。

それにより暫くの間『ルルーシュに恋の予感!?』という疑惑が生徒会の中でだけ巻き起こった。

裏の副会長の仕事、それは「ルルーシュの面白ネタを報告する」という物だという事はミレイさんと俺だけの秘密である。

おそらくこの学園内で一番彼女との仲がいいのは俺だと思うそんな今日この頃。






















「なんだ? どうしたマリアンヌ。……はぁ? 息子がプレイボーイになった、だと。
 いきなり何をいいだす。年下? ロリコン? だから話が見えない。あんな子に育てた覚えはない?
 それは育てた親がいう言葉であって―」



C.C.の育児論争約二時間。















あとがき

なんだかナナリー以上に兄と妹って雰囲気の今回……あれ~って感じです。

書いてて和んじゃったのは当然の現象。アーニャ可愛いよアーニャ。

そして何故か「腹ペコ」属性がくっついた…かな?



[4685] 第?話 今回はシリアス風味に仕上がった……はず。
Name: 量産化の☆◆30ba27f3 ID:8da1c8cf
Date: 2008/12/20 17:26



※今回の話を読むに当たっての諸注意!


・最後まで読みましょう。

・途中で「ん?」って思っても最後まで、これ約束。



























   ―ン















   ―クン
















   ―ックン

















   ―ドックン














   ―ドックン!

















皇暦2010年8月10日。

神聖ブリタニア帝国は日本へと宣戦布告をした。

極東で中立を謳う島国と世界唯一の超大国ブリタニア。

両者の間には日本の地下資源をめぐる深い根深い外交上の対立があった。

本土決戦においてブリタニア軍は人型自在装甲機、ナイトメアフレームを実践で初めて投入。

その威力は予想をはるかに超え日本の本土防衛線はナイトメアによって悉く突破された。

日本は帝国の属領となり自由と権利と、そして名前を奪われた。

エリア11。

その数字が敗戦国日本の新しい名前だった。

戦禍に見舞われ荒れ果てた大地の上。

戦争によって引き裂かれた人々を弔う軍人の傍に二つの小さな影があった。

子供だ。

理不尽な戦争に巻き込まれながらも辛くも生き残ったのだろう。

蹲り暗い顔をしている少年―スザクはただただ下を向いていた。

だが彼の友達であるもう一人の少年は違った。

決心したように立ち上がり。



「スザク、僕は。ブリタニアをぶっ壊す!」



少年―ルルーシュは目の前の友達と。

そして己自身へと言い聞かせるように言葉を吐き出した。

その目には暗い復讐を誓う炎が燃えてる。





そして物語はその七年後から始まる。




















皇暦2017年。

戦争の爪あとを感じさせない町並み。

日本という名を奪われた彼の地は一部の区画を除いて復興したといえよう。

だがそれは安息の地ではなかった、敗者である日本にとっては。

租界とゲットー。勝者と敗者を分ける場所。

服従するものは理不尽を押し付け、抵抗するものは廃墟へと押し込む。

ここに住まうのは敗者の上に立つ勝者とその下とに縋る者のみ。

ブリタニア人と名誉ブリタニア人という者だけだった。

そのブリタニア人が住まう租界のに立つビルの中。

とある一室で小さな戦争が行われていた。



「持ち時間が切れました」

「っ!?」



傍らに置かれた時計がリミットを知らせる。

眼鏡をかけた初老の男は身を震わせ立会人に目をやる。

老人の顔には幾つもの汗が張り付き明らかに劣勢を強いられていた。



「ここからは一手二十秒以内でお願いします」

「だ、そうだよ」



片や優勢に立っている貴族の男は、自身の勝利を疑わずただただ相手を見下ろしている。

その時、扉が開かれ二つの影が静かに部屋の中へと入ってきた。



「代理人のご到着かな?」

「おお、助かったよ」



入ってきたのは少年だった。

学生服を着込み人懐っこそうな雰囲気を見せている。



「なんだ、学生か?」

「あはは」



貴族の男の言葉に学生服の少年―リヴァルは愛想笑いを浮かべていた。

そして駆け寄ってきた初老の男に笑顔を見せて安心させる。



「では頼んだよ」

「マスター、例の件頼みますよ」

「ああ、判っている」



リヴァルはマスターと呼んだ男の肩をたたき商談をしている。

この賭けチェスに勝てば何かの便宜を図ってもらうのだろう。

マスターも代理人の到着で安心したのだろう、快く答えている。

その様子を刺すような視線で見るものが一人。



「どうした? 早く座らないか、時間が惜しい」

「へっ?」



貴族の男はいつまでも勝負の席に付かないリヴァルに急かすように声をかける。

しかし声をかけられたほうは呆けた様な顔になりまるで今気付いたという風だった。

しかも一向に席につく気配を見せない。

だがそれは当たり前のことだった。



「どこを見ている?」

「なに?」



その声に気が付き貴族は視線を対面の席へと戻す。



「勝負は既に再開しているぞ」



視線の先にはいつの間にか対戦を引き継いだ者が座っていた。

不敵な笑みを張り付かせ盤上へと手を伸ばす。

そして駒を一手動かす。

動かされた駒は。


キング。












数十分後。

既に学生服の男の姿はそこにはない。

居るのは己の自信を打ち崩された哀れな男の姿がひとつ。



「う、ああ、うあぁ!?」



ただ呆然と己のキングが討ち取られた盤面を見ている。

その目は虚ろで呂律も回っていない。

彼はこのときを境に勝負の世界から降りた。

己の自信を打ち崩されたからではない。

自信だけなら、まだ良かったのだろう。

だが彼は感じてしまったのだ。

自信ではなく己という個を壊されたのを。











一方、勝ったリヴァルたちはエレベーターを降りて出口へと足を進めているところだった。

その顔はすこぶるいいものだ。



「いや~勝った勝った。貴族サイコー! プライドあるから支払いも確実だしねぇ。それに八分三十二秒の新記録」

「馬鹿な貴族だったからな。相手が格下だと見ると油断する」

「いやまあ、そりゃしょうがないかと。俺は学生だしお前も―」



しかしリヴァルの言葉はそれ以上続かなかった。

彼の言葉をさえぎったのは出口の直ぐ正面に位置した建物に設置された大画面のモニターのせいである。

黒煙が立ち昇るビルが映し出された画面を見て通りを行く人々も足を止めてその様子を眺めている。

思い思いの言葉が聞こえる中、画面が切り替わった。

映し出されたのは一人の男性。

このエリア11の総督を務める皇族、クロヴィス・ラ・ブリタニアである。

彼は先ほど映し出されたテロの映像について語った。

出された犠牲者に対する想い。

その加害者たるテロリストへの怒り。

そしてその行為に屈せずに己の正義を貫くことを。



「正義に殉じた八名に哀悼の意を共に捧げようではありませんか」



最後にそう締めくくり目を閉じて黙祷をし始めた。

足を止め画面を見ていたものは一様にクロヴィスと同じように黙祷している。

その様子を見ながらも淡々と出発の準備をするものが居た。



「やらなくていいのかな~、あれ」

「あんなものやったって所詮は自己満足だろ」



リヴァルは己のバイクのサイドカーへ軽い口調で話しかける。

かけられた方は画面に映し出されているクロヴィスを気にもせず出発のときを待つばかり。

その様子にリヴァルも流石に苦笑いを浮かべてしまう。



「あらら~、刹那的発言」

「こんな俺みたいなちっぽけな存在が世界を変えられると思うか?」

「お前だったら十分変えられそうだけどな」



リヴァルは若干茶化した風に言うとエンジンを始動させて車道へと躍り出た。

目指すはアッシュフォード学園。

今の時間なら十分に午後の授業に間に合う。















出発してから数分後。

高速へと乗った彼らは昼時ということもあって殆ど車の居ない車道を快適に走っていた。

リヴァルは横に居る相棒の姿を盗み見る。

件の相棒はサイドカーの中にあったおやつを袋から出して口に運んでいたところだ。

それは彼曰く「対戦で使ったエネルギーが補給でき、尚且つ美味い」といつも帰り道で食べているの物。

その幸せそうな顔を見て少しイタズラ心がくすぐられた。



「しっかしまぁ、お手軽だねお前も」

「……馬鹿にしているのか?」

「いや~」



ちょっとしたおちょくり。

それは彼が相棒に対して行ういつもの行為だ。

仲のいい猫がじゃれ合う様に自然と行う。

ただ今回は時と場所がいけなかった。



「そうか、買ったぞ! その喧嘩!」

「おいおい、今俺は運転中だぜ。その俺に何かしたら―」

「なんだか気分が悪くなったな……酔ったか?」

「あああああああああマジやめろ! それだけは勘弁!」



幸せな気分に浸っていたところを邪魔された腹いせか口元を押さえたのだ。

そのポーズはまさに「これからリバースします」と言っているものだった。

リヴァルは知っている、横に居る奴は「やるときは、やる!」と言う精神の持ち主だと言うことを。

故にサイドカーで吐かれては敵わないと慌てて謝罪の言葉を言おうとするリヴァル。

しかし、



 パッパァアッ!



突然後ろを走っていたトレーラーにクラクションを鳴らされてハンドルの操作が危なくなる。

先ほどの「吐きます」宣言に加えてこれだ、動揺しないほうが無理がある。

右へ左へとバイクは泳ぎ思いっきり体を揺さぶる。

何とか立て直した彼が後ろを向くと既にトレーラの姿はなく。

辺りを見回すと今まさに脇へとよけたトレーラーが建物へと突っ込む姿だった。

その様子を冷や汗を流しながら見ているしかできなかったリヴァル。



「今の俺たちのせいじゃないよな?」

「………」



横に居る相棒に自分に非はあるかと問いかける。

しかし答えは返ってこなかった。

おかしいと思い横を見ると蹲っている親友の姿が。

どうかしたのかと疑問に思い問いかける。



「ん? どうした?」

「すまんリヴァル」

「へ?」

「……少し漏れた」

「え゜っ!?」



見ると彼の口元からは少し濡れている。

さらに座席には僅かに何かがしみこんだ跡が。



「ああああああああ! オマエって奴はぁぁああああああ!」

「だから謝っているだろう! こんなもの少し拭けば―」



理不尽な謝罪をして座席にまだ浸透しきっていない部分を拭こうとする。

が、結果は更なるリヴァルの叫び声しか生まなかった。
















今日は人生において最低の日だ、彼はそう吐き捨てる。

トレーラーの運転手の安否を気遣い中の様子を伺ったところにいきなり急発進されてしまい。

中へと転がり込んでしまった。

それから軍とテロリストのいざこざに巻き込まれ、何故か装置の中に居た少女と逃げる事に。

しかも逃げた先には既に先ほどの軍人達がそこに居たイレブンの人たちを銃殺していた。

その光景が余りに衝撃的過ぎて。

不注意から物音を立ててしまい見つかってしまった。

そして今まさに、



「まったく、いったい何なんだろうな貴様は」

「くそっ!」



目の前の軍人は銃を構えて彼に狙いを定めていた。

どうすることもできない、既に諦めかけてしまっている。

連れていた少女も他の軍人に囲まれて身動きを取れそうにない。

つまり彼がこの窮地を脱する手立ては殆ど無きに等しいかった。

奇跡でも起きない限りは。



「だがこういう最後がお似合いだな。お前の様な奴には」



軍人は嫌な笑いを浮かべて引き金に力をこめていく。

ここが自分の死に場所かと諦めかけたその時。



「くっ!」

「殺すなっ!」



奇跡は起こった。

……いや起ころうとしている。

取り囲んでいた軍人を振り切り彼の前に少女が庇うように躍り出たのだ。



「おい! しっかりしろ!」



銃弾を喰らい腹部から血を流し倒れ伏す少女。

駆け寄り安否を確認しようと触れた直後。



「っ!?」



瞬間、世界が変わった。

視覚からではなく頭に直接映像が流れてきた。

光の奔流、そして。



 ―終わりたくないのだなお前は



声だ。

あの少女の声が聞こえる。



 ―お前には生きるための理由があるらしい



その声は上から下から。

すべての方向から聞こえて捕らえどころがない。

なおも映像は流れ少女は語りかけてくる。



 ―力があれば生きられるか?

 ―これは契約、力をあげる代わりに私の願いを一つだけ叶えてもらう

 ―契約すればお前はこの世に行きながら普通とは違う理で生きることになる

 ―異なる摂理

 ―異なる時間

 ―異なる命

 ―王の力はお前を孤独にする

 ―その覚悟があるのなら



答えなど決まっている。

今この場所を切り抜けられる力がもらえるのならば尚の事。



「いいだろう、結ぶぞ! その契約!」



彼は力を求めた。












少女に駆け寄ってから過ぎ去った時間はほんの数秒だろう。

だがその数秒から帰ってきた時既に彼は己に起こった変化を理解していた。



「なあ、この俺のような。世界から除け者にされるような存在はどう生きればいい?」



静かに、それでいて穏やかに目の前に立つ軍人に問う。

その顔は下に向けられて判断できないが先ほど迄あった怯えている雰囲気が全くなかった。



「貴様何を言って……ん?」



その変化に気付いたのだろう。

軍人は引き金を引くことができなかった。



「どうした? 撃たないのか? 相手は非力な存在だぞ。それとも気付いたのか?」



彼は言葉を紡ぐ。

さっきまでとは違い力ある言葉を。



「撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだと」

「な、なんだァ?」



軍人は戸惑いを見せた。

違うのだ、先ほどとは。

纏う空気が。

まるで自分達が狩る側から狩られる側に廻ったような。

そんな圧倒的絶望を感じさせ始めていた。

目の前のその存在はゆっくりと顔を上げる。

不敵。

この圧倒的不利な状況でなお笑みを保っている。

漆黒の体はさらにドス黒いもの感じられ、その尻尾は鞭のようだ。

そして目の前の存在が片目を閉じ、開いた次の瞬間。

そこには紅き翼が垣間見えた。

それはいとも簡単に目から視神経を通り脳の中にまで達し。

意識がゆがみ霞みだす。

しかしそんな彼らの意識の中ではっきりと聞こえる声。



『我、アーサーが命ずる。貴様たちは―』



今ここに伝説が産声を上げた。







 外伝IF 第一話 ~ 猫魔神 が 生まれた 日 ~

                          終




























「うぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおお!?」



突然叫び声をあげてルルーシュは勢いよく立ち上がった。

彼が見たもの。それは悪夢だった。

自分の居場所をすべて奪い取られた気分になるほどの。

とても恐ろしく今も背中に汗をかき、制服が張り付き気持ち悪さを感じる。

ルルーシュは乱れた呼吸を整え冷静になるよう努める。



「え? なに!?」

「おいおい」

「ど、どうしたんだルルーシュ?」



周囲は未だ彼の奇行に戸惑いを見せている。

だがその並々ならぬ様子に友人であるリヴァルどころか本来なら居眠りを注意するべき教師までその様子を見守っている。

その中心たるルルーシュは。



「……違う、間違っているぞ」



それは誰に呟いたか分からない。

あえて言うなら世界に対して言った言葉だろう。






















※『猫魔神』

C.C.からギアスと言うアイテムをもらってワープ進化した結果。

おそらくは某ナマモノの遠い親戚か何か…かも。

本人曰く母方の祖父の妹の親戚の姪の友人がナマモノだったとか。

要は赤の他人。やっぱり無関係。

好物は煮干。666の御方とは酒飲み友達とか。

因みに進化前は『猫妖精』といい、この時点で既に喋るという奇怪ぶりを発揮。







あとがき

燻製肉って最初の一口はそんなに味はしない。

でも口に中で噛み続ければいつしか…ってなに言ってんだろ。

とりあえずルルーシュ?って思わせて実は冒頭と最後以外全部アーサー。

そして夢オチ。

シリアスと見せかけて全編通してギャグだった言う。

ハハハハ、でもバレバレだっただろうなきっと。

上手く書けた気はぜんぜんしない。

それと夢だから細かい点はスルーしてください。

アーサーと分かって読むとまた別の楽しみが生まれる……と微かに信じています。



言って置くけど嘘は書いてないからね!

物語が冒頭の七年後から始まるのは本当のことだし。

リヴァルの相方をルルーシュとも明確に書いてないし。

ルルーシュでしか書けないところは全力でスルーしたし。

ね、嘘は書いてない。自然自然。



あ、今回がクロヴィスさんの初出演だ!(名前だけは出てたけど)

本編と無関係のところで出てくるなんて。



[4685] 季節限定話 賞味期限は12/25 am 02:00頃 お召し上がりはお早めに。
Name: 量産化の☆◆30ba27f3 ID:8da1c8cf
Date: 2008/12/24 16:30









 ※季節が季節なので書いてみました。

  唯のネタなので本編とは切り離して読んでください。

  














 side ルルーシュ







十二月も後半に入ったこの時期。

このエリア11もすっかりとその雰囲気を変えていた。

街にはイルミネーションが施され町中がささやかな祝いのムードを湛えている。

そしてここアッシュフォード学園のクラブハウスも例外ではない。



「メリークリスマスー!」



会長の叫び声と共に鳴らされるクラッカー。

今、この場に居るのは生徒会メンバーだけ。

一週間ほどいきなり会長に言われたことから端を発した。



「クリスマスイブはクラブハウスに集合! パーッとパーティーやるわよ!」



そう連絡が入ったのだ。

まあ会長のいきなりのお祭りはいつものことだし、今回は一週間も前に告知があっただけマシな方だろう。

目の前に広がるクリスマス特有の装飾。

お祭りムード全開なのだがここでシャーリーが手を上げた。

多分言いたいことがあるのだろう。

その顔は少し赤い。なぜなら、



「って会長、なんで私たちパジャマなんですか?」

「ふふ、それはね~。聖夜っていったら『寝ている子供とサンタクロース!』だからよ」



全員がパジャマ姿だからだ、若干一名を除いて。

会長のお達し「なお、全員パジャマ持参のこと」という言葉に従った結果が今の状態だ。

他人にパジャマ姿を見られるのは恥ずかしいのだろうシャーリーは先ほどから三人で固まっている俺たちのほうをちらちら見ている。



「それにしてもパジャマ姿の女子って…・・・ドキドキするな」

「リヴァル、顔赤いよ」

「そういうスザク、お前もしっかり赤くなっているぞ」

「うぅ……」



ナイトキャップを被り女子のほうを見て感想を漏らすリヴァル。

みんな普通のパジャマだが似合っていると思う。

因みにリヴァルの視線はずっと会長に釘付けになっている。

そのリヴァルに注意するスザクだったが俺に指摘されたとおり顔が真っ赤だ。

意外とスケベなのかもしれない。

まあいい、女子のパジャマ姿に便乗する形になるがここは早急に切り出したほうが良いだろう。

一歩前に出て現状の元たる人物に進言する。



「一ついいですか、会長」

「なに、ルルーシュ?」

「なんで俺がこんな格好をしなければならないんですか」



問われた会長はというと「なんだ、そんなことか」と涼しい顔でいる。

ここで今の俺の格好について言おう。

今の格好は、上も下も赤に施され帽子まで赤い。

更には付け髭まで強要されている。

その姿はまさに「サンタクロース」だ。

パジャマ姿の中に一人だけ真っ赤な格好は浮きまくりで居心地が悪すぎる。

例えそれがクリスマスの主役であったとしてもだ。



「いいじゃない。それに相方もいるんだし」

「相方?」

「出来たよ、ミレイちゃん」

「完璧ね」



笑いながら言う会長の影から先ほどから何か作業をしていたニーナとカレンが姿を現した。

ニーナの手には箱―形から察するに小型のソリだろうか―が。

そしてカレンの手の中には、



「ほら、アーサー」

「……なう」

「……お前か」



アーサーが居た。

黒い鼻は赤に染められ頭からは角を生やしている。

必要ないとは思うが説明するとアーサーは今付け鼻、被り物の角を装備している。

クリスマスVerに施されているだけである。

恐らく付け心地が悪いのだろう。

微妙に眉間に皺がよって不機嫌だと訴えている。



「嫌そうにしているな」

「えっと」

「アーサー、嫌がらなかったし。それにお願いしたらちゃんと許してくれたし」



人―この場合は猫か?―が良いなアーサー。

だが嫌なものは嫌といったほうがいいぞ。

今後のことを考えると。



「ほら、生徒会の影の副会長が体張ってるんだし」

「いつアーサーが副会長になったかは知りませんが俺まで巻き込まないでください」



無駄だと分かっている。

アーサーも小さく鳴いて抗議している。

横に並んだ俺たち被害者二人の姿はみんなにはどう見えているのだろうか。

多分「サンタとトナカイ」で確定だろう。

アーニャは黙々と写真を撮っているし。



「すいません、遅くなりました」

「おーっとナナリーも来た来た」



扉が開きナナリーと咲世子が入ってきた。

やはりナナリーの格好はパジャマではあったが。



「って咲世子」

「なんでしょうルルーシュ様」

「なぜ……パジャマなんだ?」



何故か咲世子までパジャマ姿だった。

俺に質問された咲世子は、



「これはミレイ様に」

「な~に~ルルーシュ。彼女だけ除け者にする気?」

「い、いやそんなつもりは」



別に咲世子を除け者にしようとしたわけではない。

ただ彼女の着ているパジャマの柄が気になったのだ。

黒猫柄、しかも片目にブチがついている。

普通にアーサーに見える。

もしかして探し出したのだろうか。



「差し出がましいまね、申し訳ありません」

「いいんだ、咲世子。ただ気になっただけだから」

「そうですよ咲世子さん。みんなで楽しくやりましょう」



スザクがフォローを入れてくれた。

咲世子はその言葉で納得してくれたようだ。

だが「ああスーさん、貴方にはルルーシュ様が…」というのはどういう意味だ?

体をよじって何を想像している?

ん? 「アッー!」ってなんだ、いい気分がしないぞ!

スザクも微妙に困っているではないか。

だがその雰囲気も会長によって吹き飛ばされた。

軽く手を鳴らし、みんなの視線を集めたのだ。



「じゃあみんな集まったところで、何やろうか?」

「え゛? まずは食事じゃ……ないの?」

「食事の前にまずパーッとやってテンションあげましょう」

「あはははは……そうっすか」



余程空腹なのだろうか、リヴァルは会長の言葉に少し残念そうにしている。

まあ確かに空腹感を覚える時間帯ではあるが。

空腹を訴えたリヴァルを放って置いて何をするかを相談し出す会長たち。



「じゃあ何からやろうかな~」

「ビンゴは食後として、カラオケ……とか?」

「シャーリーとルルーシュのツイスターゲーム」

「お、いいわね~。アーニャ、ナイスアイディア!」

「ちょ!? 会長!?」



アーニャの案に会長が食いついた。

何故か俺とシャーリーがツイスターゲームをするという変な案に。

それは誰が得をするのだろう、甚だ疑問だ。

シャーリーが慌てて会長に詰め寄る。

「なんでですか」とか「チャンスよ」とか色々聞こえてくる。

だがそれよりもその輪から離れていくアーニャが気になった。

アーニャは窓辺まで行くと外を見上げている。



「どうした、アーニャ?」

「雪」

「ん?」



窓の外を指差すアーニャ。

指差す先には静かに降っている雪が。

生徒会メンバーも気付いたらしくみんな窓の外を見ていた。



「わあ、珍しいな~。この地域はあまり雪が降らないのに」

「ああ」



今俺の横にはスザクとナナリーが居る。

今この時だけは、あの頃に戻れた気がした。

ふと、ナナリーが手を重ねてきた。



「ん? どうした、ナナリー」

「楽しいですねお兄様」

「…ああ、そうだな」



笑顔のナナリー。

今年のクリスマスはスザクと再会でき、アーサーという家族も増えた。

ラウンズだがアーニャとも仲がいいようだ。

大勢に囲まれて、本当に嬉しいのだろう。



「こういう日は大勢で笑いあうのが一番幸せです」

「うん……ん?」



足を引っ張られる感覚に目線を足元にやる。

そこにはやはりアーサーが居た。

アーサーはしきりにシャンパンとソリを交互に見ている。

なにが言いたいのだろうか。

シャンパンを一人で飲む訳でも……。

何か意図でもあるのだろうか。



「……まったく、仕方がないな」



一つだけ思い当たる点があった。

俺はシャンパンをソリに乗せてやる。

アーサーはシャンパンが乗せられたのを確認するとソリを引っ張って扉から出て行ってしまった。

やはりあそこに行ったか。



「丁度いい具合にホワイトクリスマスになったことだし、パーッといきますか!」

「は~い! 会長俺シャンパン開けますよ~!」

「あ、またお酒―」

「いいじゃん無礼講無礼講…って、あれ? 一本少ない?」



雪を見ていたみんなが戻ってきた。

リヴァルがシャンパンを開けようとするのを諌めるシャーリー。

以前にも見たことのある光景だが。



「あら、アーサーは?」



それはカレンも同じらしく少し距離をとってその様子を見ている。

その為だろう、アーサーが居ないことに気付いたようだ。

とりあえずみんなが探し出す前にあいつが居なくなったことにフォローを入れることにする。



















 side C.C.



「やれやれ、賑やかなものだな」



近くなのに遠くに感じるパーティーの音と笑い声。

人目につくわけにはいかない私はルルーシュの部屋でその音を聞いていた。

先ほどから好物のピザを食べているはずなのだが、どうしてだろう普段通り美味しく感じられない。

場の雰囲気の所為か。

賑やかな音を聞きながらそんなつまらない事を考えていると。



「ん?」



コンコンとドアをたたく音。

普段なら、そう珍しくもないが肝心の部屋の主が居ない今これほど不自然なことはない。

ここに訪ねてくるような者は部屋の主と共に全員がパーティーに出ているはずだからだ。

それにも関わらずノックをするということは部屋の中に誰かが居ると確信している誰かなのだろうが。



「お前……何の用だ、いったい?」

「にゃあ」



ドアを開けた私が目にしたのはいつも見る顔。

赤鼻の黒猫が頭に角を生やしたアーサーがおとなしく座っていた。

私が存在に気付いたのを確認するとするりと部屋の中に入ってくる。

その後ろにはソリを牽かれていた。

シャンパンを乗せて。



「ほう、手土産持参とは。いい気配りだな」



私はシャンパンを手に取りながらアーサーを褒めたが肝心の奴は赤鼻と角を取るのに四苦八苦していた。

赤鼻は割りと早く取れていたが被り物に手古摺っている様子。

コロンコロン転がりつづけている。

一分ほど転がっていたがやっと取れたようだ、頭を振ってこちらを見上げた。

そこでパチッと視線が合った。

そのまま見つめ合うこと数秒。

先に耐え切れずに視線をはずしたのは向こうだ。

どうやら見られていたのが気恥ずかしいらしい。

微妙に顔が赤い気がする。



「ふふっ」



笑いを漏らすとアーサーはブスーッと眉間に皺を寄せてこちらを見ている。

どうやら機嫌を損ねてしまったようだ。

テーブルの上に飛び乗ると私の食べていたピザに近寄る。

どうやら腹いせに食べてしまうつもりらしい。



「待っていろ」



私はアーサーの頭を軽くたたくとグラスを用意する。

シャンパンには合わないがこの際仕方ないだろう。

それをテーブルの上に置き既に用意してあった私のグラス共々シャンパンを注ぐ。

そしてアーサーの前においてやる。



「乾杯」

「にゃ」



カチンと軽い音。

遠くに聞こえていた賑やかな音が今は近くに感じられたのは気のせいだろうか。



「メリークリスマス」

「にゃあ」



魔女である私にも穏やかな聖夜は訪れてくれたようだ。

















おまけ


それぞれのクリスマスイブ




ロイドさんのイブ





「はい、ロイドさん」

「………」

「? どうしました?」

「セシル君」

「はい」

「このケーキ」

「はい」

「なんで微妙な茶色なの?」

「あ、それですか? 実は漢方を混ぜてみたんです」

「………」

「食べてみてください」

「………」






ロイドさんな~む~。









ネリ様のイブ


「お姉さま、メリークリスマスです」

「ああユフィ、メリークリスマス。っ……」

「どうかしました?」

「いや、総督と副総督が揃って政務から抜けるなど「なに固いことをいっているんだ」エニアグラム卿」

「今日は聖なる夜だ。こんな日ぐらい羽目をはずしても罰は当たらんさ」

「だが」

「そうですよお姉さま。それにギルフォード卿やダールトン将軍が変わりに詰めていてくれています」

「そうだぞ。彼らの行為を無下にすることになる」

「うぅ」

「あとで彼らには差し入れを入れておく。それにまたの機会で労うことにすればいい」

「……分かった」

「お姉さま!」

「よしよし、ではまず一杯いくか」

「なっ!? アルコールの類など「いいじゃないか」っう!?」

「お姉さまがラッパ飲み……そんなに飲まれて大丈夫なんでしょうか?」







ネリ様、翌日二日酔いに。

ノネットさんとユフィはザルな気がする。

















ぶるぁぁああああさんのイブ




「………」

「………」

「………」

「………」

「ビスマルクよ」

「何でしょう、皇帝陛下」

「寂しい……な」

「世は聖夜を祝っていますおりますから」

「………」

「………」

「………」

「………」

「華が……ないな」

「男二人では……確かにそうですな」

「………」

「………」

「他のラウンズは、今どうしている?」

「アームストレイム卿はエリア11に、エルンスト卿クルシェフスキー卿も他のエリアに派遣されています」

「エニアグラム卿はどうした?」

「……コーネリア様の下に」

「そうか」

「………」

「………」

「今年も寂しい聖夜となる……か」

「ケーキを用意してまいります」

「うむ、ワインも頼む。今日は飲み明かそうぞ」

「イエス・ユア・マジェスティ」





おっちゃん二人の夜。

こういう人が必ずどこかにいるはず!








3さんのイブ




「………本編の出番いつ?」

予定なし。

「チクショー!」




さてどうしますかな、彼は。







あとがき

メリークリスマス!

やあ、楽しいはずのクリスマスイブなのに何の予定もなく家で過ごすよ!

だから楽しい事を書きたくなったんだ。

でも実は22日に「あ、クリスマスネタ考えてないや」って焦ったんだよ。

十二月の頭からやろうやろうと思ってたのに。計画性なさ過ぎるね、作者は。

焦って書いたから短いけどこれで勘弁してください。

で、今回の内容は。

馬鹿騒ぎと見せかけてアサ×C.C.風に仕上げたつもり。

一人でのクリスマスほど寂しいものはないだろうからね、C.C.を悲しませてはいけない。

うん、満足。じゃあみんないい夜を!

ただ正直に思うこと……クリスマス越えたらこの話賞味期限切れるんだよね。

消したほうがいいかな?




[4685] 第11.3話 目指す領域はドラマCDのような遊びの限界点
Name: 量産化の☆◆30ba27f3 ID:8da1c8cf
Date: 2008/12/30 13:45
※今回はドラマCDのノリです。(『おでん屋』『ギアス先生』辺りの)

 一部R2の設定を使用しております。
















その日ルルーシュが生徒会室を訪れるとそこにはミレイ会長とアーサーの姿しかなかった。

どうやら他のメンバーは各々のやるべき事をやっているらしい。

そのことはルルーシュにとって余り関係ないので気にならない。

だがミレイとアーサー。

この取り合わせはルルーシュにとって余り喜ばしいことでないのは周知の事実。

今、ミレイ会長が持っている紙の束も危険物に見えてしまう。



「あ~面白そうなんだけどね~」

「にゃう~」

「どうしたんですか会長」



ミレイが紙の束を読み終わりアーサーになにやら評価らしきことを言っている。

ルルーシュはその内容を聞くことにした。



「えっとね、アーサーが生徒会の皆が出てくる演劇の話を持ってきてね」

「演劇?」

「そ、配役も決めてあるんだけどちょっと問題がね~」



演劇。

ルルーシュにとってこれほど脅威となるものは無いだろう。

お祭り好きの彼女は面白そうなことなら即実行に移す。

過去にそれで嫌な思い出を刻んだことは少なくない。

しかも今回の企画はアーサーの持込らしい。

もし実行されれば空恐ろしい事になるだろう。

だがミレイの様子から余り芳しいものではないらしい。

そして彼女は紙束をルルーシュに差し出し、



「まあいいわ。とりあえず読んでみる?」



読むことを勧めてきた。

若干嫌な予感に駆られつつも手渡されたそれに目を通す。

特にタイトルの無いその内容とは。












第11.3話 ~ 間違った世界 歪んだ物語 ~














昔々とある領地のお城に綺麗なナナリー王妃ととても綺麗なルルーシュ王女が居ました。

王妃は常々思っていました。自分と王女どちらがより美しいかと。

ある日、王妃は城の宝物庫で見つけた魔法の鏡に問いかけます。



「鏡よ鏡よ鏡さん。私は美しいのでしょうか?」

『はい王妃様はとてもお美しくございます』

「まあ、ありがとうございます!」



魔法の鏡は王妃の美しさを称えました。

鏡の言葉に王妃は花が咲いたような笑顔を鏡に見せます。

さて次の質問。この質問こそが重要です。

彼女は鏡に問います。



「では鏡さん」

『はい、なんでしょうか?』

「この世で一番美しいのは誰ですか?」



魔法の鏡は暫く考えるように明暗すると静かに言葉をつむぎます。

この世で最も美しいものの名を。



『それはルルーシュ王女でございます』

「まあ!? お兄、コホン。王女がですか!?」

『はい』



その言葉に王妃は驚きを隠せませんでした。

彼女の目から見ても確かに王女は美しい人物です。

しかし鏡の言った事実が彼女にあらぬ考えを引き起こしてしまいます。



「そんな、まさか。……でもお兄様でしたら確かに色々と似合いそうですし。チャイナドレスとかも―」

『あ、あの王妃様?』

「はっ!? いえ、それよりも私より王女が美しいというのは本当のことなのですか!?」

『はい』



身をくねらせるほどのあらぬ妄想から帰還したナナリー王妃は直ちに別の考えを抱きました。

それはつまり、



「こうしてはいられません。この世で最も美しいのは私でなくては! 直ぐに王女の暗殺計画を―」



ルルーシュ王女の暗殺だったのです。

その彼女を映し出しながら魔法の鏡は静かに光り輝いていた。






















ルルーシュ王女の暗殺を企てたナナリー王妃は城のお抱え猟師に命令を出しました。

その命は王女を森へと連れ出し誰の目にもつかない場所で殺しその臓器を持って帰れというものだ。

それから数日後、王女と猟師は森へと連れ立った。

もちろん王女の暗殺のためだ。

猟師の目の前で森の緑を楽しむ王女。

彼女を見ながら猟師はその手に凶器を取った。

少し離れたところで無防備に背を向けている王女、その背に矢を向ける。

この矢を引き絞り射るだけ、それだけで目の前の命は散ってしまう。

しかし矢が放たれることはなかった。

確かに猟師は城のお抱えで王妃にも恩義を感じていた。

だがそれ以上に猟師は王女に忠誠を誓っていたのだ。

その王女に矢を射るなど出来ようはずがない。

森の中へと連れてきたが最後の一歩が踏み出せず、膝を突いてしまう。

その様子に王女が気付いた。



「? どうしたジェレミア、気分でも悪いのか? ……まさかゲシュオンディスターバーが!?」

「違います姫様。実は―」



猟師の口から語られた王妃の企て。

その事実に王女は目の前の風景がゆがんで見えてしまった。



「嘘だ! ナナリーが! ナナリーがそんなこと!」

「事実です。しかしこのジェレミア・ゴッドバルト、姫様の命を奪うことなど」

「……ジェレミア」



城に出入りする一猟師に過ぎない彼の言葉に姫は少しだが落ち着きを取り戻しはじめた。

彼の忠義の精神は本物だ。だとすると今語られた言葉は真実なのだろう。

未だ王妃が自身の殺害を企てたなどと信じられない、いや信じたくはない。

だが、



「分かった、それで私はこれからどうすればいい」



王女は現実に向き合った。

そしてこれからすべきことを信頼を置ける目の前の人物に問いかける。

問われた猟師はまっすぐな視線で答えた。



「私はこれより熊の臓器を持ち帰り姫様を葬ったと嘘の報告をします。姫様はその間にお逃げください」

「それではもし嘘をついていると知れたらお前が」

「構いませぬ」



猟師は唯まっすぐに答える。

例え己の身が犠牲になろうとも。

その覚悟を受け取り踵を返し森の奥へと足を進めた。

猟師はその後姿を確認すると己も踵を返し城へと向かい始める。



「ジェレミア」

「なんでしょう姫様」

「死ぬなよ」

「イエス・ユア・マジェスティ」



互いに背を向けたままの短いやり取り。

だがそこには信頼という強固な絆があった。

二人は決して振り返らずに己の道を進む。

















「はぁ、はぁ、はぁ」



猟師ジェレミアと別れ、当てもなく森の中を歩き続けるルルーシュ王女。

しかし三日も過ぎるころには王女の体力と精神も限界に近づいていた。

鬱蒼と茂る木々、道と言えるものがない森の中でとうとう彼女は木の根に足を取られて倒れこんでしまった。

直ぐに起き上がろうと足に力を入れる、だが思うように動かない。

元々体力のない王女。

三日も森の中を歩き続けられたのが信じられないくらいだ。

倒れたままの王女。意識が朦朧とする。

しかしこのままここで気を失ってしまえば熊に襲われてしまうかもしれない。

王女は立ち上がろう足に力をこめるが叶わない。

やがて瞳は閉じられ意識を失ってしまった。

そのままどれほどの時間が経っただろうか。

森の中に木々の擦れる音の中に違った音が紛れ込み始めた。

その音は何かの音楽を奏でているようだった。

しかも段々と王女の倒れている場所へと近づいてきている。

そして茂みが僅かに動き出しそこから人影が踊りだしてきた。



「「ハイホ~ハイホ~」」

「……続き分からないんだけど」

「適当でいいんじゃないかな?」

「にゃあ」

「どうせお芝居」

「アーニャ、それ禁則事項だよ」



それは七人の小人(?)、いや六人の小人(?)と一匹の集団だ。

先頭に立つ少年二人が陽気に歌い、赤い髪の少女と眼鏡をかけた少女がその後ろに続いている。

さらに肩に黒猫を乗せたピンクの髪の少女と栗色の髪の少女が最後尾についていた。

彼らは楽しそうに森の中を歩いている。

その中の一匹、黒猫があるものを見つけた。

黒猫は少女―アーニャの肩から飛び降りると走り出してしまう。



「にゃにゃ!」

「どうしたのアーサー?」

「みんなあそこを見て!」



先頭を歩いていた少年―スザクがアーサーが走り出した方向を指差した。

その指の先には倒れているルルーシュ王女の姿が。



「大変! 人が倒れている!」



最後尾を歩いていた栗色の髪の少女―シャーリーがルルーシュへと駆け寄る。

スザクも直ぐに駆け寄り安否を確認する。

正常に上下する胸、脈も安定していることからどうやら無事なようだ。

恐らくは疲労から意識を失ってしまっただけだろう。

王女の無事を確認した彼らは彼女を自分たちの家へと運ぶことにした。

流石にこのような森の中に置いて行くようなマネはできない。

スザクは荷物を降ろしルルーシュの体をその両腕で持ち上げた。

所謂『お姫様抱っこ』という形で。



「しょうがない僕が運ぶよ」

「お願いね。じゃあ私がスザクの分の荷物をってシャーリー?」



赤髪の少女―カレンはスザクの持っていた荷物を持って皆に出発を促そうとしたところ。

一人の少女の異変に気付いた。

そういえば王女の姿を確認した辺りから視界の端でぶるぶる震えていた気がする。

カレンは少し引き気味に問題の少女へと話しかけようとして、



「る」

「る?」

「ルルのお姫様姿。スザク君に抱きあげられて、あぅ!?」



先に仰向けに倒れられてしまった。

その少女は鼻血を流して恍惚の笑みを浮かべている。



「あちゃ~」

「腐女子撃沈」

「運ぶ人数増えちゃった」



要救護者が増えてしまった事実に他の面々は頭が痛くなる。

その原因たるシャーリーは今もなお笑みを漏らして気を失っていた。




















トントントントン。

カンカンカンカン。

幾つもの音が音楽を奏でるかのようだ。

ルルーシュ王女は聞こえてくるその音に意識を浮上させた。

目に見えるのは見たこともない天井。

そして、



「……う、ん? ここはど「フライングボディプレス」ぐはぁっ!」



言葉の途中で爆撃にあった。

丁度、王女の腹の上に黒い物体が落ちてきたのだ。

ドスンとお腹に響くその一撃。

砲弾となっていた黒猫アーサーはこちらを一瞥するとすぐに砲手だろうアーニャの元に駆け寄る。

直ぐに追いかけたいが如何せん腹を抱えてもだえ苦しむしかなかった。



「あ、目が覚めた」

「にゃあ」



目が覚めた。

確かにそうだろうよ、ああされて起きない者は居ない。

だがそれは『起きた』のではなく『起こされた』の間違いではないか?

第一私は起こされる前に起きた、王女は呻き声でそう抗議した。

アーニャの一言で他の足音も近寄って来るのが分かる。

そしてベッドの横に新たに二人の人物が。



「お~目が覚めたか」

「本当? だいじょう……本当に大丈夫なのかなコレ?」



安心したようなリヴァルとルルーシュの現状を見て幾ばくか心配しているシャーリーだ。

とりあえずルルーシュが諸々の説明が出来たのは三十分後のことだった。












やっとのことで会話できるぐらいに回復したルルーシュ王女。

この家のリビングで目の前の人物たちに自分に降りかかったこれまで出来事を説明する。

その話を聞いたスザクたちは王女にここに住むことを勧めてくれるのだった。

確かにそういう打算的な感情がなかったわけではないが余りにもすんなり決まってしまって少々気になった。

だが



「そのかわり俺たちの身の回りの世話よろしくなっ!」

「掃除、洗濯、食事の用意etc」

「私たちは他の仕事をするから」



という一言から納得がいった。

やはり匿う代わりの代償はあって当たり前。

かえってこういう条件があったほうが安心できるというものだ。

だが一つ気になった事が、



「仕事? 仕事とは何をしているんだ?」



このような森の中での仕事というのだ恐らくは力仕事だろう。

だが彼らの中には女性の比率のほうが高い。

それなのに自分だけ家事というのはどういうことなのかという純粋な疑問があった。



「あ~一言で言うと……何でも屋?」

「何でも屋?」

「そうそう!」



返ってきたのは意外な答え。

何でも屋、恐らくは読んで字の通りだろう。



「えっとですね森で起こったトラブルの仲裁や困り事の解決が主な仕事です」

「困りごとって……実際どんな?」

「この前はシマリスとモグラの仲裁だっけ?」



ルルーシュ王女の脳裏にはプンスカ怒るシマリスとプリプリ頬を膨らますモグラの姿が。

取っ組み合い、押し倒し転がりながら穴の中へ。

地の利を生かしてモグラの勝ち、って違う。

頭を押さえて頭痛に耐える。



「……シマリスとモグラって」

「うん、何でもシマリス君が土の中に隠していた食べ物をモグラさんが食べちゃって」

「僕らで別に食料を集めて何とか解決したんだったね」



程度が低い、と思うこと無かれ。

彼らの手によって森の平和が保たれているのは事実なのだ。



「っていうか人間じゃないだろう!」

「当たり前よ。ここ森の中よ。私たち以外にこの森に住む人間なんて早々居ないわよ」

「第一、動物の言葉なんて」

「解る」



ルルーシュ王女の反論に短く答えるアーニャ。

何気にニヤリと笑っておられる。

無知というのは罪だね、そういわれた気がして口元が引き攣る。



「窓口はこのアーサー君です」

「にゃ~」

「お前か」



アーニャから視線をはずしニーナの方に目を向けると黒猫が抱えられていた。

人語を理解し動物のこともわかる猫。

確かに仲介役くらいこなせそうだ。



「それに仲裁だけじゃない、侵略に対する防衛も仕事」

「なに?」



静かに、だが予想外のアーニャの言葉。



「最近はこの森を切り開こうとする人たちもいてね」

「そうしたら森の動物たちは住む場所を追われる」

「そうした事がおきないようにするのがお前たちの仕事か。だがそんなことが可能なのか?」

「大丈夫、こっちには―」



言葉の途中で耳を劈くような警報が。

発生源は壁にかけられた鳩時計。

示している時間は四時三十六分、明らかに中途半端な時間。

やはりこれは非常事態なのだろう。

飛び出しているのが鳩ではなくて真っ赤に輝くランプがその証拠だ。



「なんだこの警報は! しかも赤いランプが光ってあからさまに危険を知らせている!?」

「っち、どうやらおいでなすったわね!」

「カレン、アーニャ行くよ」

「うん」



スザク、カレン、アーニャの目つきが鋭くなり歴戦の戦士を思わせる雰囲気を纏った。

そして部屋に変化が生じ始める。

スザクたちが立った正面の壁が円形の穴を開いたのだ。

人一人が通れるその穴の中に体を滑り込ませる三人。



「どわぁっ!? 壁に穴があいてそこにスザクたちが飛び込んだ!? 更にスクリーンが下りて来ただと!?」

「ごめんさない。そこどいてくれます?」



天井からは大型のスクリーンが下がって床からも色々とせり上がって来た。

そしてものの数十秒でリビングは司令室へとその姿を変えてしまう。

傍らではシャーリーがパイロット三人の映った画面に指示を送っていた。



「発信進路クリアー。各機、発進どうぞ!」

「枢木スザク、ランスロット・コンクエスター――」

「紅月カレン、紅蓮可翔式――」

「アーニャ・アールストレイム、モルドレッド――」








「「「出る!」」」




突如聞こえる轟音。

窓の外を見れば地面に大きな穴が出来ており空には大きな人型の影が。

色々なものを見てルルーシュ王女は果てしない脱力感に襲われた。



「なんなんだこれは」

「えっとですね実は森の奥地に出向いたときに遺跡がありまして」

「そこで見つけたんだよ」



オペレーターのようにニーナと一緒に指示を出しているシャーリーと一段高くなった床の上に立つリヴァルが答える。

因みにリヴァルの目の前には机と椅子があるがそこには何故かサングラスをかけたアーサーが。

しかも器用に腕を口の前で組んでいる。

色々と頭が痛い。



「だが大昔のものだとしてもそれの扱い方をよく知っていたな」

「ロイドさんとラクシャータさんが教えてくれたんですよ」

「? なんだその二人は」

「この森の中に住む奇特な科学者さん」



どうやらこの森は色々とぶっ飛んでいるらしい。

主に住んでいる人たちが。

米神を押さえながら王女はもう一度戦闘を映し出しているモニターを見る。

白い機体が縦横無尽に駆け回り紅い機体がその禍々しい右手から深紅の光線を放っている。

一際ゴツイ機体など雨霰のように光線を放っていた。

そしてその攻撃によって舞い上がるようにぶっ飛ばされる敵。



「まるで人がごみのようだな」



画面の映像にルルーシュ王女が送った一言。

まさに蹂躙としか表現できないそれは彼女の心に何をもたらしたのか。

因みにこの戦闘による死者は何故か0だった。

訳を聞くと『非殺傷設定』なるステキシステムを積んでいるとかいないとか。













と、初っ端から色々なことがあったがルルーシュ王女はこの家のお世話になることを決意。

森の平和を守る彼らの世話を焼くこととなる。

最初のうちはただ家政婦と家主といった関係だった。

だが一月もすればそれ変わり、今では絶大な信頼を得ている。

その要因は王女らしからぬその生活能力の高さか。

掃除をすれば隅々まで手を加えてピッカピカに。

料理でも高い水準の料理を振舞う。

皆への気配りも細かいところにまで気付き優しく接する。

その姿からいつしか『お母さん』なる称号を得ていた。















王女がみんなのお母さんといわれ始めた頃。

城のある一室ではナナリー王妃が魔法の鏡に向かって話しかけていた。



「鏡よ鏡よ鏡さん、この世で一番美しいのは誰ですか?」

『それは王女です』

「またですか……どうやらルルーシュ王女は生きているらしいですね」



ここ数日同じ質問をして同じ答えを返される。

王女を暗殺したはずのその日、猟師ジェレミアがその証拠だと持ってきたものはやはり偽物だったようだ。

忌々しいがすでに処断している。

今頃はどこかで野生の動物の餌になっている、とかではなく農業に勤しんでいるだろう。

城のお抱え猟師からしがない一農民。

これほどの屈辱はないだろう。

あだ名もくれてやった、今は柑橘系の香りに包まれてそのあだ名に悶えているだろう。

そう思うと溜飲も下がるというものだ。

王妃は満足そうな顔をする。

ただ王妃に誤算があったとすればジェレミアに農業の才能があったということだろう。

十数年の後、ゴッドバルトブランドなるオレンジが市場を席巻したのは全くの予想外。


閑話休題。


王妃がジェレミアが全力で地面に伏している姿を妄想するのをやめ今度こそ王女を亡き者にする計画を立て始める。

だがそれも芳しくはない。

なぜならナナリー王妃は足が不自由で城の外に出ることもままならないからだ。

第一そうでなければ最初からジェレミアになど頼んではいない。



「しかし困りました。私はこの城から外に出れない身、王女を殺しに行くことはできません」

「ならば私が代わりに行ってやろうか?」

「!? 誰ですか!?」



王妃の背後。

暗がりの中から一人の人物が出てきた。

その人物はローブを着込んでいるために容姿は確認できないが体型から女性だろうことは分かる。

彼女は自身のことを『魔女』と称した。

その魔女は右手を差し出しある事を持ちかける。



「これは契約だ。お前の願いを叶える代わりに私の願いを叶えてもらう」



まるで頭の中に響くようなその言葉。

王妃は自然と差し出された右手を取ってしまっていた。

























「このオレンジを食え」

「出会い頭で直球且つえらく高圧的だな」

「当たり前だ、私はC.C.だぞ」



ここは七人の小人(?)の家。

皆が留守のときにいきなり押しかけてきた怪しい女性を睨みつけるルルーシュ王女。

だがその視線も目の前の女性―C.C.には効かない。

至って自然体で手の中でオレンジを転がしている。



「大体何故オレンジなんだ? リンゴではないのか?」



至極まともな意見だ。

何故かこの場はオレンジではなくリンゴが合うと思うルルーシュ王女。



「別にリンゴじゃなくてもいいだろう? 遊び心だこれは」



しかし魔女C.C.は動じない。

遊び心でリンゴはオレンジに変わったそうだ。

確かにそれなら納得できる、遊び心は重要だ。

それを失ってしまっては人間の心が荒んでしまう。

納得した王女はオレンジを一つ手に取り眺める。

だが何を思ったかそれをC.C.に返してしまう。

そして口を開く。



「まあいい。百歩譲ってオレンジでも可としよう。だがこのオレンジの品質は最悪だ。
 はり、艶、持ったときの感覚、恐らくは余り実が詰まっていないのではないか?
 それに管理がずさんだったのだろう。ここに傷もついている。よく見れば他のもだ。
 こんな品質のものを売ろうなんてそちらの気が知れな―」

「 い い か ら 食 え ! 」

「ぶふぉ!?」



うだうだ文句を垂れる口を塞いだのはオレンジ。

柑橘系のいい香り。だがそれは凶器へと変わった。

丸々一個口に突っ込まれさらに腹部にワンパンチを貰ったものだから当然丸のみ。

そして詰まった。

呼吸が出来ないから見る見る顔を青くする王女。

そしてパタリと倒れてしまう。



「ふふ、どうやら喉にオレンジを詰まらせたようだな。これでピザ一年分は私のものだ」



王女に近寄りその呼吸が止まったのを確認するとスキップで城へと帰っていった。

待っていろピザ。彼女の思考は既にピザに塗れていた。

残されたのは倒れ伏した王女と籠に入ったいくつかのオレンジ。

その産地はキューエルみかん農場。















スザクたちが森から帰ってくると倒れていたルルーシュを発見した。

はじめはただ気を失っているだけだと思い揺すって起こそうとする。

だがいくら揺すっても起きないそれどころか息をしていない事実に気付いた。

そうルルーシュ王女は死んでしまったのだ。

その事実にみんな悲しみ、涙した。



「おおっ! ルルーシュよ、死んでしまうとは情けない! お前の次のレベルは―」

「所持金が0になったわね」

「え!? 半分じゃなくって根こそぎなの!?」

「返事がない唯の屍のようだ」



リヴァル、カレン、スザク、アーニャは口々に漏らす。



「そこ、不謹慎だよ!」

「「「「ごめん」」」」



悲しみ、涙したスザクたちは遺体を棺に収め最後の別れを惜しんだ。

しかしその時どこからともなく馬の足音が聞こえてきた。

振り返るとそこには白馬に乗った人物が。



「あ! おうじ……様?」



シャーリーが乗っていた人物に話しかけた。

王子は雄雄しく馬から下りると彼女たちから事情を聞きだす。

話を聞いた王子はとても悲しみ一目彼女の顔を見て別れの言葉を言わせてくれと頼んだ。

シャーリーたちはその申し出を快く了解し棺を開ける。

王子は王女の顔を見て思った。

美しい、と。

自然と王子は唇を王女のそれへと重ねた。

するとどうだ、



「ん、うう」



微かに王女の瞼が動く。

王女が生き返った、その事実に周りのみんなが騒ぎ始める。

王子も彼女の生還に笑みを浮かべた。

そして段々と王女の瞼が開かれ、



「目覚めたかぁルルゥーシュ王女よぉ」



視界いっぱいにロールのお化けが。



「うわぁぁぁぁぁあああああああああああああああああ!?」

「ぶるわぁぁぁぁあああああああああああああああああ!?」



驚きから王女は王子のテンプルに見事なフックをブチ込みます。

その拳をくらったシャルル王子は五メートルほど吹き飛びそのまま動かなくなりました。



















「こうしてシャルル王子を倒したルルーシュ王女は見事ブリタニア王国を潰す事が出来ました。
 めでたしめでたし……って、なんだこの問題だらけの話は!」

「でっしょう、まさか皇帝を呼ぶわけには行かないし」

「それだけじゃない!」



読み終わると同時に台本を机にたたきつけるルルーシュ。

色々と文句を言いたいことがあるがそれは目の前の人物ではない。

その目標を探すがいつの間にか煙のように消えてしまっている。



「アーサーは!?」

「ルルーシュが魔女の件を読み始めた辺りで出て行ったわ」

「アァァサァァアアアアアアアア!」



すぐさま後を追いかけるルルーシュ。

彼が出て行った後残されたミレイは机に叩き付けられた台本を見る。

そしてそれを持ち上げるとそっと机の中に入れ保管。

何時の日か実現しないかな、そう思いながら。







E N D










配役


王女  ― ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア


王妃  ― ナナリー・ヴィ・ブリタニア


小人  ― 枢木スザク

      紅月カレン

      リヴァル・カルデモンド

      シャーリー・フェネット

      ニーナ・アインシュタイン

      アーニャ・アールストレイム

      アーサー


魔女  ― C.C.


猟師  ― ジェレミア・ゴッドバルト


王子  ― シャルル・ジ・ブリタニア


鏡   ― ミレイ・アッシュフォード




名前だけの出演


科学者 1  ― ロイド・アスプルンド


    2  ― ラクシャータ・チャウラー


オレンジ農家 ― キューエル・ソレイシィ





監督  ― ミレイ・アッシュフォード


脚本  ― アーサー







あとがき

電波が来たからやった。

今も後悔はしていない。


こんな白○姫ありじゃね?、そう思って書きました。

ピクチャードラマ辺りだといけそうな気がするんだが、皆はどうだろうか。

とりあえずオチの皇帝だけがやりたかった。

満足してます。



[4685] 第十二話  では本編を少し進めようか
Name: 量産化の☆◆30ba27f3 ID:8da1c8cf
Date: 2009/01/01 19:48






 side アーサー




修羅場というものがある。

まあ一般人でも知っている言葉だろう。

辞書などを引くと主に「戦いが行われている場所」や「激しい論争を行っている場所」という意味で記載されているはずだ。

そしてこの言葉は転じて複数の男女間の喧嘩・争いの場面でも使われている。

修羅場、それは決してその中心には立ちたくないもの。

修羅場、それは遠巻きに見ている分にはただの男女のじゃれ合い。

そして何故こんな始まり方をしているかというと。



「やっぱりルルってちっちゃい娘がいいの!?」

「シャーリー落ち着け、俺には君が何を言っているのか分からない」

「私もルルのことが分からない!」



まあこういうわけである。

ルルーシュに迫るシャーリー。

その状況を遠巻きに見ている他の皆。

困った顔のニーナとスザク、苦笑いしているリヴァル、呆れるカレン、そしてただただ眺めている会長と自分。



「あちゃ~修羅場ってるわね~これは。どう思う、アーサー」

「にゃう」

「そうよね~ルルーシュが鈍感すぎるわよね~」



ねー。

横にいるミレイさんに同意しながら止めようとしない。

さっきからルルーシュがチラチラこっちを見ているのも気にしない。

今は状況を見守るだけだ。



「じゃあなんでアーニャちゃんのところに行こうとするの!?」

「いや、だからそれは……」

「じゃあやぱりロリコ―」

「ちがう!」



今はここに居ない人物について盛り上がるシャーリー。

いつか「この泥棒猫!」とか「どいてルル! その(ry」なんて言い出さないか心配。



「でも結構仲いいわよね、ルルーシュとアーニャ」

「会長!」

「じゃあ―」



会長が再び燃料投下。

無限ループって怖い物ですね。














第十二話 ~遭遇~















 side ルルーシュ





授業も終わり生徒会室へと足を運ぶ。

そして室内に入るとまずある人物を探す。

右、左、視線を左右にやるが目的の人物は居なかった。



「会長、アーニャの姿が見えませんけどどうしたんですか?」



中等部のほうの授業はもう終わっている。

アーニャが寄り道をすることはないと踏んで真っ直ぐにここに来たのだが当てが外れたか?

そう思いながらこの部屋の主に問いかけた。

会長は視線を落としていた書類から顔を上げる。



「アーニャ? アーニャならお使い頼んだわよ」

「お使い?」

「そ、お使い。十分ぐらい前かな」



お使い、か。

多少不自然さはあるかもしれないがこれを利用しない手はないか。

これからの行動によって引き起こされる事態を推測し導き出される結果を予測。

多少の問題に目を瞑れば良い結果が訪れそうだ。

これからの行動を決定したところに、



「ルルーシュってアーニャに優しいよな~。気になるのか?」



リヴァルの一言。

この言葉にあまり考えずに答えてしまったのが間違いだった。



「ん? ああ、まあな」

「えっ!?」



何故か顔を赤くして声を上げるシャーリー。

驚いたような表情で自分を見ている。

その視線に疑問を持ったが気にせずにリヴァルに答える。



「道に迷ってないか、ちゃんと店は見つけられたか、とかな」

「あらら、出ましたよお兄ちゃん的発言」



茶化すリヴァル。

確かに気になるが本当の理由を言うわけにもいかないのゆえのいい訳だったが。

彼女の見た目の所為かナナリーに対するような接し方になってしまったか?



「とりあえず様子を見てきますよ、時間があったら街中を案内してきますね」



この言葉が一番の失敗だった。

失言、以前生徒会で巻き起こった疑惑が再び芽を出してしまった。

会長の手によって。



「おやおや~優しいですね~。どう思いますかリヴァル君」

「そうですね~コレはやっぱり」

「だからそう言うのじゃないですから」



いつものことだと軽くいなそうとしたら、

予想外の方向から大型の爆弾が投げ込まれてしまう。



「でもそれって……デートって言うんじゃ」



ニーナのこの言葉で何故かシャーリーに火がついてしまう。

それからは彼女に詰め寄られ『ロリコン』疑惑にまで発展しかけてしまった。

そして加熱し続ける彼女の勢いに負け。

後ろを振り返って全力で戦略的撤退をしてしまった。

背後から声をかけられるが足を止めずに走り続ける。





















「はぁ、はぁ、はぁ」



自分でも珍しく勢いのみで出てきてしまった。

これでは帰ってきたときにまた一悶着あるかもしれない。

その事に頭を痛めつつ横を見る。

そこにはアーサーが居た。

こちらを見上げて一歩前に出る。

どうやらついて来るらしい。

この猫は自分の行動の結果を見届ける気らしい。

常々思うがやはり変な猫だ。

視線を門の外へと向け昨夜のことを思い出す。








その夜、一人で自室のソファーに座り黒の騎士団関係の情報を見ていた。



「なぁ~」

「ん?」



丁度ディートハルトと言う男がもたらした情報に目を通しているとアーサーがパソコンの横に座っていた。

そしてノートパソコンを引ったくりキーボードを叩いている。

これはこいつが会話をするときの行動だ。



「何のようだ、悪いが今忙しい、近く大きな―」



作戦があるから構っていられない、そう告げようとしたが言葉が切れてしまった。

だがそれも仕方がない、それ程の衝撃を与える文面が目に飛び込んできたのだから。



『母親の死の真相について知りたい?』

「なにっ!?」



何故目の前のこいつが母の死について知っているのか。

確かにこいつは色々と知っている。

ギアスのこと、黒の騎士団のこと、自分のこと。

色々と謎だったが今回のことでそれは更に深まった。



「貴様…何か知っているのか?」



掴み掛かり無理やりにでも吐かせたいと言う衝動を抑えそのままのソファーに腰を下ろした姿勢で問いかける。

アーサーはニヤリと笑うと更にキーを叩く。

こちらが興味を持ったことで上機嫌そうだ。



『当時の目撃者をちょろっとね』

「っ!? ……言え、それは誰だ!」

『アーニャ』

「なん…だと?」



予想だにしない回答。

まさかあの少女が自分の目的の鍵を握っているとは露とも思わなかった。

その事実に困惑する。

だがそれ以上に解せないこともある。



「貴様……何処まで知っている? あの日の事を知っているというのは―」

『重要なのはそこじゃないでしょ』

「なに?」

『俺が何を知っているかじゃなくて、ルルーシュが俺の言う事を信じるかが重要だよ』



つまり信用しろ、でなければこれ以上の情報はださない。

そういうことか。

ここまででも十分すぎる情報だがやつが笑っている、その事実が怖い。

恐らくはまだ何か隠していることがあるのだろう。

ため息をつくと先を促すように視線を送る。

その視線に気付きアーサーはニヤリと笑うと続きを打ち込む。



『それに問題が』

「問題?」



いったいどんな問題があると言うのだろうか。

アーニャがラウンズだと言うことならなんら問題はないはず。

ギアスをかけて情報を聞き出せばいいだけなのだから。

だが事は簡単にはいかないようだ。



『彼女は記憶を封印されているだよね。ギアスで』

「なんだと!?」



アーサーの言うギアスという言葉に驚きを隠せない。

ソファーから腰を浮かしかけ何とか止まり姿勢を直す。



「俺のほかにもギアスを」

『因みに皇帝だったり』

「なっ!?」

『偽りの記憶を与えるって酷いと思わない?』

「……本当にお前は何者だ? いや、それよりも―」



偽りの記憶を刻む、それが皇帝のギアス。

そして疑問に思うことが一つ。

何故皇帝はアーニャの記憶を封じたかだ。

記憶を封じると言うことは見られたくないものを見られたからだろう。

だがその事に気付いたのなら口を封じたほうが早いはずだ。

それを記憶を封じるにとどめている理由。

それがいったいどういう理由なのかが分からない。



『まあまあ。それに彼女には他にもギアスがかかっているから』

「……そうか」

『驚かないの?』

「今さらだろ」

『ちぇ、まあ二つのギアスの所為で記憶の欠損が生じて彼女は自分の記憶に自信がもてないらしい』

「……つまりそのギアスを解いて記憶を復活させれば」

『知りたいことがわかるかもね』



アーサーはウインクして右前足を出す。

ガッツポーズのつもりだろうか。

それにしてもさらにもう一つのギアスか。

だがアーサーはその内容については語らない。

先ほどは聞かれるまでもなく答えたくせに今度は秘密にしている。

知らないと言う可能性もあるが、この猫のことだ何かしらの思惑があってのことだろう。

恐らく強要しても吐かないだろう。

追求するのをやめアーサーの言葉を待つ。



『さ・ら・に! 皇帝お抱えの最強の剣の一本を引き込むチャンス!』



確かに。

もしもこいつの言っていることが真実ならラウンズであるアーニャをこちら側に引き込むことも出来るかもしれない。

誰だって自分に偽りの記憶を植え付けた人物を信じることは出来ないだろう。

皇帝にしろ自身に不信を抱いている輩を放置するはずがない。

またギアスをかけるか今度は本当に口封じをするかもしれない。



「つまりこの情報で俺を試しているわけか」

『ノンノン。俺に出来るのは情報提供のみ。時機を見て小出しにしているのは否定しないけど』

「その割には色々と動くじゃないか、色々とな」



含みをこめた言葉にアーサーは眉間に皺を寄せる。

そしてブスッとした表情でキーを叩たく。



『なんのこと?』

「今回のこともそうだが。シャーリーの父親の件、アレはお前だろ? それと仮面を盗んだときもだろ?」

『知らないな』

「……まあいいさ」



白を切りとおすアーサーをそれ以上言及せず笑ってやる。

些か溜飲が下がったところで座る姿勢を変える。

パソコンの画面を見るために乗り出していた先ほどとは違いソファーの背にもたれて足を組む。

手を膝の上で組みチェスで貴族に対して見せるような尊大な態度で答えた。



「こっちはその情報を有効に使わせてもらうさ」

『そお? で、アーニャのことはどうするの』

「そうだな……引き込むにしろ情報だけ貰うにしろどんな奴かもっと把握したいな」

『呼び出せば? そんで話を』

「そんな簡単に―」



言うな、アーサーにそう告げようとするが既に何かを打ち込んでいる。

その文面はと言うと。



『じゃあデートしちゃえ。好きです、突き合ってくださいってさ』

「だからなぜそんな突飛なことに……ってなんだその字は!?」

『おっと変換ミス変換ミス。それに何真面目に返してるんだよチェリーボーイ』



最後の最後で弄くろうとするその性根はどうなのか。

アーサーは俺の様子に満足そうに頷くと更にキーボードを叩く。



『まあ仲良くしておくに越したことはないだろう?』











そんな会話がされたのが昨日の深夜。

このアーサーによって持たれされた情報はリスクが高い。

何せ情報を持っているのが皇帝の騎士なのだから。

だがそれだけに価値もある。

自身の最終目標の一つ、『母の死の真実』。

その真相が分かるかもしれないのだから。



「さて行くか」



目指すはショッピングモール。

だがこの時は想像していなかった。

危険極まりない人物がそこにいようとは。

















 side アーニャ



買い物も済み目に入ったベンチに腰を下ろし携帯を取り出す。

今日は色々なものを見た、そして記録もした。

携帯を操作し今日撮った写真を見る。

後は学園に帰って頼まれた荷物をだけ。

そのはずだった。



「君、暇そうだね」



ふと聞き覚えのない声が耳に入る。

何だと思い携帯に落としていた視線を上げる。

そこには一人の男が立っていた。

ナンパ? 最初に思いついたことがこれだ。

サングラスをしていて耳にはヘッドフォン。

軽そうな男、といった外見。

こういう手合いは相手にすると後々面倒なことになる。

やはり無視するのが一番だろう。

そう結論付けて上げた視線をもう一度携帯に落とし、



「無視しなくってもいいだろ~。それとも他人に興味を持てないの? 持ったとしても覚えておく自信がないから」



目を見開き顔を上げてしまった。

今この男はなんと言った?

『覚えておく自信がない』と言ったのか?

何故この男は自分の一番の悩みを知っているのか。

突然ののことで考えが纏まらずにぐちゃぐちゃになる。


 パァンッ!


不意に鳴らされた音に意識を戻される。

見ると男はニヤニヤ笑っていた。



「なんでだろうね~」

「……何者―」

「あ、ああ~うん。別に喋る必要は無いから。そんなことしなくても僕には分かる」



男はリズムを刻むように手を打ち鳴らし唯笑みを浮かべている。

それよりも『僕には分かる』とはどういう意味か。

ラウンズである自分のことは何でも知っていると言いたいのだろうか。

自分の素性を個と細かく調べる……もしやレジスタンス!?

考えられる組織は複数。その内最も確率の高いのは日本解放戦線か黒の―。



「あ、僕は違うよ。僕はそんな物騒な組織に入っていないから。君に話しかけたのは―」



目の前の男は手を左右に振って否定の言葉を発した。

レジスタンスではない?

男の言葉を信じるわけではないが仮に目の前の男が一般人だとする。

だとすると新たな疑問がわきあがる。

何故自分に声をかけるのか、と言う疑問が。

睨み付けるように男を見るがそれも受け流すかのような態度で男は手を打ち鳴らし。



「君に興味を持ったからさ」



男は言う。

自分に興味を持った、と。

余計に分からない、初対面だと思われるこの男が自分に興味を持つ理由などない筈だ。

だが、



「理由? それはねえ―」



男は口を歪めて更に言葉を紡ぐ。



「君さぁ、なんで二つも人格を持っているの?」



……今 こ の 男 は な ん と 言 っ た ?


男の言葉を聞いた瞬間、意識の下で何かが動いた気がした。



















あとがき

マァァァアァァオォォオォォォ!

というような今回の終わり方。

なんか非常にヤバイ展開?

まあいいや当初の予定通り、予定通り。

シャーリー父のイベントを解除するとどうしてもマオイベントが物足りなくなる。

その為のアーニャですよ!

ただ「アーニャがすき!」と言うだけで出していたわけじゃないのです!(本当だよ?)

さてさて……でもこれからの展開が難しい。

どうやってマオイベントを消化するか……うーん。

ある程度は考えているんですが色々と問題があるかもなので……。

ちょっと更新速度落ちるかもです。

まあ三つほど日常の話のネタがあるからそれを小出しにしながら少しずつ進みます。


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